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魔法少女は人殺し  作者: Takahiro
第一章 殺し合いの始まり

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2/11

アシェンプテル

「キミに決めた! 魔法少女になって!」

「へっ……!? え、あの……あれ……? ドッペルゲンガー……?」


 高校からの帰り道、安アパートの目の前で、大した特徴もない少女・出雲月花(げっか)は、自分と全く同じ顔立ち・体格の少女と出会った。


 少女は古代人のような質素な服しか着ておらず、現代社会から酷く浮いているように見えた。


「い、一体、どういう……」

「キミには魔法少女になる素質がある! もう二度とないかもしれないチャンスだよ?」

「魔法少女……? それって、変身して戦ったり何だかんだするってやつ……?」

「うん。戦うこともできるけど、人間離れした能力はたくさんの人の役に立つよ!」

「人の……役に……」


 月花の心臓が高鳴る。目の前にいる少女が何なのか、魔法少女とは何なのか、全くわからない。だが、人の役に立てるという言葉は、月花にとってとても甘美なものだった。


「わかった。私、なるよ。魔法少女に」

「え、もう少し質問したりとかしないの?」


 月花の決断の早さに、不思議な少女の方がキョトンとしていた。


「質問? うーん……魔法少女になるのに、お金が必要だったり、する……?」

「お金? 対価が必要かっていうことだね」

「私、常に金欠なので……」


 月花は苦笑いを浮かべながら頭を搔いた。


「大丈夫! キミは何も支払う必要はないよ」

「その言葉、信じるからね?」

「安心して! 他に質問はある?」

「対価が必要ないなら、私、魔法少女になってみたい。お願い」

「オッケー! じゃあ早速、魔法少女に変身!」

「お、おお……!」


 月花の全身が淡い光に包まれた。可愛い変身シーンでも始まるのかと期待したが、その変身はあっという間に完了してしまった。


「何か……中世の人みたい……」


 灰色と青が混ざりあったワンピースに頭巾という、中世ヨーロッパの村娘のような格好であった。


「キミの名前は、魔法少女アシェンプテル!」

「アシェンプテル……シンデレラのことだっけ」


 そういうオタク的な知識にはなかなか詳しい月花であった。


「おー、物知りだね」

「魔法使いに会う前のシンデレラがモチーフって感じか……。それで、どんな魔法が使えるの?」

「キミの固有魔法は、掃除が上手くなることだね」

「え、あ、そう……。いや、まあ、実用的で役に立つとは思うけどさ……」


 超常の力を得ることができたのは確かだ。口から出かかっていた抗議の言葉は呑み込んだ。


「それと、魔法少女になったら、身体能力が大きく上がるよ。例えば……ジャンプしてみて?」

「ジャンプ? え――」


 ――と、飛んでる? 跳ねた? 電柱より高い!


 アシェンプテルが軽くジャンプしただけで、その身体は電柱よりも高く跳び上がっていた。着地も、身体が自然に対応して華麗に決まった。


「すごい……! すごいよ! やっぱりありがとう! ええと……あなたの名前は、何て言うの?」

「私は『願望機の欠片』だよ」

「願望機の欠片……? それしかないの?」


 ――他にも似たようなのがいるってこと?


「うん。それしかない」

「なら、欠片ちゃんって呼ぶね」

「なかなかのネーミングセンスだね」

「いいでしょ、別に。とりあえず、魔法少女にしてくれてありがとう、欠片ちゃん」

「どういたしまして! 私は小さくなれるから、いつでもそばにいるね。話したくなったら呼びかけて!」


 欠片の体が光ったかと思うと、見る見るうちに小さくなっていき、掌に収まるサイズの赤い宝石になった。


「鞄とかにしまっておけばいいの……?」


 その宝石に問いかけると、アシェンプテルの頭の中に声が響いた。


『うん。この姿は頑丈だから、雑に扱ってくれて大丈夫だよ』

「はは……。丁寧に扱うよ」


 ○


 アシェンプテルは変身したまま、すぐ目の前の安アパートにある自室に帰宅した。一人暮らしの学生向けによくある、狭いワンルームだ。


 ――おお、すごい。これが私の魔法……


 帰宅して早々、アシェンプテルは自分の魔法の効果を実感した。多少荒れているその部屋を、どんな順番で掃除すれば最も効率がよいか、本能的にわかるのだ。物陰に隠れたゴミの場所もわかる。


「せっかくだし大掃除しよ! 欠片ちゃん、手伝ってくれる?」

『そういうのは仕事じゃないんだけど……。うん、いいよ』


 願望機の欠片は月花の姿に戻ると、明らかに嫌そうな顔をした。欠片は窓拭きくらいしかしなかったものの、日付が変わる前に月花の自宅はピカピカになった。


 ○


「新しい魔法少女は掃除が上手くなる魔法を持ったアシェンプテル。これで16人目、最後の一人ね。マトモそうだけど、暫く監視させてもらうわ」

「そんな魔法、放っておいてもいいんじゃないの? 私たちの脅威にはならないよ」

「情報収集は必要よ。この千里眼で、危険因子は常に監視しておかないと」

「さっすが、お姉ちゃん!」


 双子の和装の魔法少女、ツクヨミとクラミツハは、アシェンプテルの誕生を最も早く察知していた。

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