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七人の魔法少女~魔女を見つけ出す人狼ゲームの転生先は最初に処刑されるネタキャラでした~  作者: 蓮見たくま


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2/6

1.『7 Turn』


「それじゃあ、今日も配信始めていくよー!」


 ヘッドセットの位置を調整し、私はモニターに向かって声を張り上げた。


「記念すべき『7 Turn』七千七百七十七回目の配信! 今日も完全勝利を掴むから、ちゃんと見届けろよ、お前たち!」


 ゲームを起動すると、見慣れたオープニングが流れ始める。


 やがて画面いっぱいに表示されるタイトルロゴ。


 ――『7 Turn』。

 これこそ、私の人生を大きく変えた最高のゲームだ。


 今から半年ほど前、とあるゲーム会社から発売されたこの作品は、いわゆる人狼ゲームの一種である。


 プレイヤーは七人の魔法少女たちとともに、あるデスゲームへと参加する。


 目的はただひとつ。

 彼女たちの中に紛れ込んだ魔女を見つけ出し、処刑すること。


 制限は七ターン。


 それまでに魔女を見つけられなければ、世界は滅亡する。


 ここまでなら、私もやりこむことはなかっただろう。


 けれど、『7 Turn』には他の作品にはない特徴があった。


 それが――魔法だ。


 登場する七人の少女は、それぞれ異なる魔法を持っていた。


 それぞれの能力を駆使して相手を欺き、真実を暴き、ときには殺し合う。


 人狼ゲームにおける役職の代わりに、魔法が存在しているのだ。


 さらに、このゲームにはもうひとつ重要な要素がある。


 アイテムだ。

 その数、七十種類以上。


 魔女を見つけ出すためのものから、自分の身を守るもの、さらには相手を強制的に処刑するものまで、効果は実に様々だ。


 どの魔法を誰が持ち、どのアイテムを使うのか。

 その組み合わせ次第で、ゲームの展開は大きく変わる。


 しかも、少女たちの会話や行動まで毎回変化するという徹底ぶり。


 高度なAI技術が搭載されているらしく、同じ状況でもまったく違う反応を見せることがあった。


 ストーリーらしいストーリーはなく、オンライン対戦もない。


 ただ七ターンの人狼ゲームを繰り返すだけ。


 それなのに、私はこのゲームが世界で一番好きだった。


 もっとも、普通のプレイヤーなら、とっくに飽きているだろう。


 けれど、残念ながら私は普通じゃない。


 半年間、毎日配信。

 一日十時間以上プレイしたことだってある。


 今ではアイテムの種類も効果もほぼ暗記済み。魔法との組み合わせだって、頭に叩き込んである。


 おそらく、ここまで『7 Turn』をやり込んでいる人間は、世界中を探しても私くらいだろう。


「さーて、今回は誰が魔女なのかな? みんなも一緒に考えてくれよ。まあ、私より先に当てるのは無理だろうけどね!」


 自信満々に宣言すると、画面端のコメント欄が一気に流れ始めた。


『絶対スリィちゃん。今日こそスリィちゃん』

『うおおおお! 絶対先に当てたるで!』

『まけろ』

『オイお前ら静かにしろ! 七千七百七十七回目のフォーちゃん死亡シーンが来るぞ!』

『ロゼ様の煽りいただきました!』


「おい、今まけろって言った奴! 覚えたからな!」


 コメントに軽口を返しながら、何気なく同時接続者数を確認する。


 ⋯⋯ん?


 思わず目を疑った。


 表示されていた数字は、三万。


「⋯⋯三万?」


 マジか。


 今、この瞬間に三万人以上が私の配信を見ているということ?


 普段の倍以上だ。


 やっぱり七千七百七十七回目という節目だからだろうか。いつも以上に人が集まっているらしい。


 さすがに少し緊張する。


 けれど、すぐに深呼吸して気持ちを切り替えた。


 大丈夫。


 私は配信者ロゼ。


 視聴者に呑まれてどうする。


「よーし! それじゃあ、始めるよ!」


 ゲームが進行する。


 いつも通り、七人の少女が自己紹介を終え、最初の議論が始まった。


 そして、一ターン目が終了。


「はい、一ターン目終了! それじゃあ、記念すべき最初の投票結果は⋯⋯」


 まっ、結果なんて見るまでもないんだけどね。


「⋯⋯うん。やっぱりフォーちゃんか。ごめんね、みんな。私、またフォーちゃんを救えなかったよ」


 わざとらしく肩を落としてみせる。


『知ってた

『今日も平常運転』

『フォーちゃんを救う会、解散』

『七千七百七十七回目の犠牲者』

『フォーちゃんかわいそう』

『むしろここまで来ると様式美』


「お前ら、本当にひどいな⋯⋯」


 そう言いながらも、私の口元には笑みが浮かんでいた。


 このゲームには七人の魔法少女が登場する。


 その中でも、私の配信で圧倒的な人気を誇っているのがフォーちゃんだ。


 緑色の髪に、いつもオドオドと周囲の顔色を窺う臆病な性格。

 何かあるたびに泣きそうになり、誰かに怒られればすぐに謝ってしまう。


 見ているだけで放っておけなくなるような少女だ。


 ただし、彼女にはひとつ致命的な問題がある。


 必ず一ターン目で処刑されるのだ。


 どれだけ議論で守ろうとしても、別の少女に疑いを向けても、結果は変わらない。


 投票が始まれば、必ずフォーちゃんが最多票を獲得する。


 私も何度か助けようとした。

 わざと自分が疑われるように立ち回ったこともあるし、他の少女を徹底的に追い詰めたこともある。


 けれど、何をしても無駄だった。


 まるで最初から結末が決まっているかのように、彼女は必ず処刑されてしまうのだ。


 もはやゲームの仕様としか思えない。


 そのせいで、フォーちゃんは私の配信における名物キャラクターになってしまった。


 七千回以上も処刑されているのだから、そりゃあ人気も出るだろう。


「さて、一ターン目が終了。ここからが本番だね。次のターンから魔法とアイテムが解禁されるよ!」


 私は画面を見ながら指を鳴らした。


「全員の魔法は把握済み。今回配られたアイテムは六(・)つ(・)。さあ、見せてあげるよ! ロゼ様の頭脳プレイ!」


 そこから先は、いつも通りの展開だった。


 少女たちの魔法とアイテムがぶつかり合い、議論が白熱する。


 誰かが疑われ、誰かが反論し、時には予想もしなかった行動で場が荒れる。


 何度か驚かされる場面はあったものの、私の予想はおおむね的中していた。


 そして、三ターン目。


「いや、これ絶対シックスちゃんが魔女でしょ⋯⋯って、ちょっと待って。何で私を吊ろうとしてるの、こいつら?」


 画面を見ると、少女たちの投票先が次々と私に集中していた。


「うわ、最悪。魔法とアイテムの組み合わせが悪かったか⋯⋯」


 このままでは、次の処刑で私が脱落する。


 別に負けたところで、どうということはない。


 何千回と遊んできたゲームだ。負けることだってある。


 ただし⋯⋯記念すべき七千七百七十七回目に、何もできずに負けるなんて御免だ。


「⋯⋯仕方ないな」


 私はアイテム欄を開いた。


 そこに表示されていたのは、銀色に輝く一本のナイフ。


「アイテム、銀のナイフを使うよ!」


 途端にコメント欄がざわめいた。


『出たwww』

『五分の一は無理だろw』

『完全に運ゲー』

『よし負けたな。風呂行ってくる』

『頼むぞロゼ様』


「お前ら、私を誰だと思ってるわけ?」


 私は不敵に笑った。


 銀のナイフ。

 対象をひとり選び、強制的に処刑できる強力なアイテムだ。


 ただし、選んだ相手が魔女でなければ、自分の陣営は壊滅する。


 まさに一発勝負。

 普通のプレイヤーなら、こんなお遊びアイテムを本気で使わないだろう。


 でも、私に迷いはなかった。


「弱気だなぁ、お前ら。いいから見とけって」


 マウスを動かし、ひとりの少女にカーソルを合わせる。


 これまでの行動、発言、魔法の使用タイミング。


 すべてを考慮したうえで選んだ相手だ。


 外すはずがない。


「この世の不条理は、私に攻略されるためにある!」


 クリック。


 画面に銀色の光が走った。


 選択された少女の姿が消える。


 そして、表示されたのは――。


『WITCH ELIMINATED』


「っしゃあああああ!」


 思わず椅子から立ち上がった。


 大当たり!


 見事、魔女の処刑に成功したのだ。


『うおおおおおお!』

『マジかよwww』

『やっぱりロゼ様なんだよなぁ!』

『神回確定』

『女神! 女神!』


「これがロゼ様の実力よ! これからは『7 Turn』の女神として崇拝しろよ、お前たち!」


 私はカメラに向かって指を突きつけた。


 気分がいい。


 まさに最高の勝利だった。


 同時接続者数もさらに伸びている。登録者だって、今頃増えているかもしれない。


 これくらい調子に乗ったって、バチは当たらないだろう。


「いやー、最高! やっぱりこのゲームは面白いね!」


 私は上機嫌のまま、次のゲームを始めようとした。


 そのときだった。


「⋯⋯ん?」


 タイトル画面に戻ったモニター。

 ゲームクリアの文字の下に、見慣れないアイコンが表示されていた。


 白い四角形の箱に、赤いリボン。


 まるでプレゼントボックスのようなデザインだ。


「⋯⋯何これ?」


 マウスカーソルを近づける。


 こんなの今まで一度も見たことがない。


 七千七百七十七回もプレイしてきた私が、だ。


「もしかして⋯⋯隠し要素?」


 それしか考えられなかった。


 七千七百七十七回目のプレイ。

 ひょっとすると、この回数に到達したプレイヤーだけが受け取れる特別な報酬なのかもしれない。


『何それ?』

『初めて見た』

『隠しイベント?』

『押してみようぜ』

『怪しいからやめとけw』


「いやいや、こういうのは自分で確かめるから面白いんでしょ」


 私は笑いながらマウスを動かした。


「せっかくだし、ありがたくいただきまーす!」


 クリック。


 刹那、画面に砂嵐が走った。


「え?」


 ブツッ。


 不快なノイズとともに、モニター全体が白く染まる。


 同時に、身体から力が抜けていった。


「ちょ、なに⋯⋯これ⋯⋯?」


 マウスを握る指が動かない。


 ヘッドセットから流れていた音声も、コメント欄の声も、急速に遠ざかっていく。


 何が起きているのか分からない。


 ただ、意識だけが暗闇へと沈んでいく。


 まずい。


 何かがおかしい。


 そう思ったときには、もう身体の自由が利かなくなっていた。


 そして、意識が途切れる寸前。


 耳元で、誰かが囁いた。


『さぁ、楽しいゲームを始めましょう』


 知らない女の声だった。


 ――次の瞬間、私の意識は完全に途切れた。


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