第4話・二週目、001号室
第4話・二週目、001号室
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第4話・二週目、001号室
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――千門ホテル、ロビー――
「それじゃあ、どうする?今すぐ探索を再開する?それとも食堂や浴場で一旦気分転換する?」
「わたしはどっちでもいい……先に眠るから……決めたならわたしを運んでくれ~、彼で」
「まだオレかよ……まあいいけど」
女神ファティラはあっという間に床に転がって眠り始めた。
仕方なく彼女を横に除け、オレたち三人はロビーの絨毯に腰を下ろして次の行動を話し合う。
「今すぐ再開するわ!!」
最初に声を上げたのは、やはりアイリスだった。
「リベンジよ!今回は訳のわからない武器で殺されただけですもの、ノーカウントだわ!!もし野獣や白刃戦なら、わたくしがこんな醜態を晒すはずがないんですの!」
「まあまあ、落ち着いてください。その武器はボクたちの世界のものだから、決してキミが弱いわけじゃないよ。ミサイルに直撃されて生き残れる人間なんて、ほぼ存在しないんだから。」
「むむむっ、慰めはいりませんわ!これはわたくしの問題ですの!王族が同行しているのに、平民が死ぬなんて一族の恥ですわ!」
「そっか、これは文化の違いだな。結果的にボクたちは生きてるんだし、キミの誇りを傷つけるつもりはないよ。そもそも、キミに武器はないだろう?そんなに気にしなくていいのだ」
「慰めはいらないって言ったでしょう、もうー!それに一つ訂正するわ、わたくしは武器を持っていますのよ」
アイリスはイライラしながら言い返したが……まあ、記憶が不完全なオレでも分かるくらい、嫌いじゃないけど、性格的に素直じゃないだけだ。
でも、武器ってどういう意味だろう?
そう思った瞬間、彼女は右手を軽く掲げた。人差し指に嵌めたリングの宝石が眩しく輝く。
「うわっ、眩しい!?」
突然の閃光に思わず目を閉じた。もう一度目を開けると、アイリスの手に長剣が握られている。
「ふふふ、わたくしの武器庫はまだ残っていましたわ」
「え、なにそれ、すごい……」
「うん!平民のくせに、これの凄さが分かるなんて目は良いですわね。そう、このリングはわたくし王族が前線で戦い続けるための基礎――空間魔法を封じた逸品ですの!これがあればわたくしは無力ではありませんわ。だから、早く行きましょう!」
アイリスは自信満々に剣を軽く振り回し、満足すると再び空間へ収めた。
オレと初雪は顔を見合わせ、アイリスの勢いに根負けした。次の行動も自然と決まった。
「なら、アイリスちゃんの意見に従って、今すぐ001号室へリベンジ挑戦しよう!」
「うん!それが良いわ!」
オレはまたもや寝落ちしたファティラをおんぶし、全員でもう一度長い廊下へと歩き始めた。
変わった点は、今回はアイリスが列の一番前を堂々と歩いていることだけだった。
――千門ホテル、廊下――
果てしなく続く廊下は相変わらず両側に無数の扉が延々と並んでいる。
「なあ、探偵さん。本当に出口は配置し直されたのか?もしかしたらまた001号室を開けたら、あのヘリコプターに繋がってるんじゃないだろうな」
「それはボクも初めてだからわからないのだ。その答えは、門を開けてみれば分かるよ。だから、さっさと開けよう!」
「こらそこ!もたもたしないでくださいまし!わたくしが開けますわよ!」
門の前で待ち構えていたアイリスが、苛立ったように叫んだ。
「だそうですぞ、アイリスちゃんが剣を投げる前に集合しましょう!あぁ――そうそう、ファティラさんを起こしてください。」
「今すぐ行くわ!!……ほら、ファティラ、起きてください~。女神なら自分の足で歩きなさいよ。」
「おおー、凄く揺れてる……でも、その要求は断固拒否~。神だから人に甘えていいんです……」
「こら、お前みたいなわがままな神があっていいのかよ」
「ここだよ……一応女神だし」
「あるなら仕方ないか……」
そんな茶番を繰り返しながら、オレたちもようやく001号室の前に揃った。
今回はアイリスが意気揚々とドアノブに手をかける。
「いくわよ……いきなりわたくしが知らない戦場に飛ばないように――」
「今はもう出口じゃないに黙認してるけど……」
「うるさいですわ!開けますわよ!」
そして、扉が開かれた瞬間――見覚えのある光の渦がオレたちを強引に引きずり込んだ。
「まだ違う門だぁぁぁぁっ――!」
「わたくしのせいじゃありませんわぁぁぁぁっ――!」
オレたちが光に飲み込まれると同時に、背後の扉が重々しく閉ざされた。
*
――001号室――
光の渦に客室に投げ込まれた瞬間、オレたちはまるで人間ピラミッドのように重なり合い、小さな山を作ってしまった。
「早くどきなさいまし!重いですわよ!」
「さすがにボクも少し苦しいな……」
一番下敷きになったのは当然、意気揚々と先頭に立っていたアイリスだった。
その上に初雪、オレ、そして一番上にファティラが乗っかっている。
「ほらファティラ、今は眠ってる場合じゃないから、さっさと降りてください」
「はあ……しょうがない……ぷはー!?」
ファティラはぐるぐる回りながら降りようとしたが、ほとんど落ちたようなものだった。うつ伏せのまま絨毯の上にべちゃっと倒れ込む。
オレが急いで降り、初雪とアイリスも次々に立ち上がる。とりあえずファティラの様子を見に行った。
「大丈夫か?ほら、立てる?」
返事がないので、オレは彼女の細い腰を抱えて引き起こした。
体重が軽いせいか、簡単に持ち上がる。
ぶつけたほっぺが少し赤くなっている以外は、特に問題なさそうだ。
「痛い……」
「痛いなら、そういう奇行は控えろよ?」
「……次は、注意する……」
全員が体勢を整えたところで、ようやく周囲を確認する。
……でも、これは――
「――なんか、普通に高級ホテルの客室みたいだな」
「そうだね。ただの客室だ。戦場じゃなくて良かったけど」
「なんだ、危険性がないみたいですわね。これではわたくしの実力を見せられませんわ」
「そっかぁ……わたしは無事、この床の絨毯が……」
ファティラはしゃがみ込み、ふかふかの絨毯をパタパタと手で叩いている。
「とりあえず、ボクたちはここの課題を探そう」
初雪の言葉で、オレたちは部屋の中を捜索し始めた。
まず、オレは入ってきたはずの扉を調べるが、ドアノブを握ってもびくともしない。空間そのものが固められているようだ。
部屋は広く、千門ホテルらしい古典調ではなく、現代的な高級ホテルの客室だった。
足元には柔らかな暗紅色の絨毯が敷き詰められ、壁は洗練された白と黒の大理石模様。
壁の時計が規則正しく時を刻んでいる。
中央には、見ただけで柔らかそうな巨大なベッドがあり、全員で横になれるほどの広さだ……って、ファティラはもう調査を放棄してそこで眠り始めている。
奥にはユニットバスも併設されており、アイリスが興味深げに蛇口をひねったり閉めたりしている。
窓の外は濃い霧に覆われ、何も見えない。
冷蔵庫を開けてみると、高級感たっぷりの赤ワインが冷やされていた。
「みんな~!ボクはテーブルにメモを見つけたのだ!」
その呼び声に、オレたちは初雪の元へ集まった……今回、ファティラも珍しく大人しくベッドから起き上がり、ゆったりとした足取りで合流した。
全員が揃ったのを確認すると、初雪は満足げにメモを読み上げた。
「どれどれ……課題は『6時間経過』だ!」




