第3話・001号室
第3話・001号室
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―― 001号室 ――
出口と間違えた扉をくぐった瞬間、オレたちがたどり着いたのは――
周囲を黒い鋼鉄が包み込み、耳をつんざく騒音が響き渡る。ガラス窓の外を見ると、硝煙にまみれた灰色の空と、閃光を放ちながら飛び交う銃弾の嵐が広がっていた。
「まさか、ここはヘリコプターの中!?」
「ナイス推理だ、助手くん!ボクも同じ推測に至ったよ。正確に言えば、これはただのヘリじゃない。軍用の輸送ヘリコプターだな。」
記憶の問題で自信はなかったが、外の光景は映画でしか見たことのない戦場そのものだった。
初雪の補足で、オレの推測は肯定された。
「『ヘリコプター』って何ですの?この飛行艇の名前?……まあ、今はそんなことを考えてる暇はないわね。わたくしの世界は常に覇権戦争の戦乱の中にあるから、この雰囲気はよく知っているわ……ここは、まさに『戦場の熱気』ですわ!」
アイリスも同じような結論に至ったようだ。
勝ち気な碧眼が鋭く輝いている。
「……あ、わたしの目に見えるものは減ってるけど……このくらい近くなら見えるわ……ふふ、積み重なったカルマが限界に達した魂を発見♪……女神として、廃棄処分すべきね……」
オレの背中から降りた女神ファティラが、虚空に向かって手を伸ばす。
するとその手に、光り輝く小さな青いガラス玉のようなものが現れた……あれが魂?
彼女は口を開け、魂を舌の上に乗せてぱくりと閉じた。口の中でころころ転で味わいがした後、白い喉が小さく動き――ごっくんしちゃった。
「……人生が濃縮された味、悪くない~」
「あれは魂か?お前、魂を食ったのか!?」
「……うん、これは女神の力じゃないよ、もともと私にできることです。……そこまでカルマが溜まると転生しても改心できないから、転生の女神は自由に処分できるの。……わたしは食べるけど、他の神様なら永世の罰を与えたり、罪に応じた苦痛を味わわせたり……砕いて処分する子もいるわ。……だから、わたしに食べられたくないなら、真面目に生きなさい……そうしないと、食べちゃうぞ~?」
そう言った後、両手を上げて猫のように爪を立て、歯を見せて威嚇するポーズを取る。
しかし無気力ダウナーのせいで、ただ可愛くしか見えない。
危機感の欠片もない会話に、ついにアイリスがキレた。
「こらそこ!おしゃべりは後にしなさい!早くここにある課題を見つけなさいよ!この人たちの命は軽い場所ですわ!いつ攻撃に巻き込まれて死ぬかわからないんだから!!」
「はい……」
「アイリスに怒られた……わかったー」
正論に押され、オレたちは会話を切り上げて周囲を探し始めた。
オレたちをここに送るの扉はすでに消えていた、オレは人数分の軍用パラシュートを発見し、初雪は近くの椅子の上に作戦計画書らしき書類を見つけた。
「これはほとんど読めないけど……一つだけ読める!どれどれ、『この作戦は第17戦線への空挺降下』……どうやらこの001号室の課題は、この地点に到達することみたいだ。誰かパラシュートの経験者いる?」
「オレはない。記憶がないからよくわからないけど……」
「パラシュート?ここから降りるものですか?それはありませんわ。そもそも飛行艇なんて希少で、空を飛べるのは魔法使いと竜騎士だけですの。わたくしは魔法と武術を両方使う魔法戦士ですけど、高度な飛行魔法は使えませんわ。」
「……わたし、女神だし……本来は飛べるけど、今は……無理……」
当然、ここで一番パラシュート経験がありそうなのは初雪だけだった。オレたちは期待の眼差しを彼女に向ける。
「やあ、その熱い視線はどうしたんだい?ボクに惚れた?まあ仕方ない、ボクは神秘的な雰囲気で、美しい顔立ちにスタイルも抜群だからね。」
「こら、なにうねうねしてるんだよ!あとお前はちびだろ!探偵ならオレの意図くらいわかるだろ!……はあ、初雪はパラシュートできるのか?」
オレの質問に、初雪は両手を腰に当ててドヤ顔で答えた。
「できないのだ!」
「できないのかよ!?」
「そうだよ!ボクの趣味あるスポーツは格闘技だけ。時間はほとんど論文と怪異研究に費やしてるから。その期待を裏切ってごめんなさい。」
これからどうするんだ……と全員が途方に暮れたその時、軍用ヘリコプターの後部ゲートが突然開いた。
「きゃああっ!?」
「うわあああっ!」
凄まじい暴風が一気に機内を襲い、超高空特有の薄い空気が肺を締め付ける。
紙類が外へ巻き込まれ、機体が激しく揺れた。
その瞬間、ラジオからノイズ混じりの重い声が響き渡った。
『新兵ども!何をモタモタしている!一週間の訓練は何だったんだ!すでに予定空域だ、さっさと降下作戦を開始しろ!』
しかしオレたちは機内のロープに必死でしがみつくだけで精一杯。パラシュートを装着する余裕など全くない。
風の咆哮がうるさすぎて、叫ばないと声が届かない。
「なんか軍隊の人が命令してるみたいだけど、どうすればいいんだよ!!」
「装備なしで飛び降りたら確実に死ぬのだ!!」
初雪が叫び返したその時――
「……#%#&!%@……」
「もっと大きな声で話しなさいよ!!!」
女神ファティラが何か言っているようだが、声が小さすぎて全く聞こえないから、アイリスが苛立って怒鳴った。
言葉が通じないと判断した女神ファティラは、無言でとある方向を指差した。
オレたちがそちらを見ると――
「あそこにあったパラシュートはどこ!?」
女神ファティラがハンドサインで何かを伝えようとしている。
どうやら「そこ、放置、もの、外、落ち」……器用だな。
これを繋げると「そこに放置されたものは外に落ちた」……!?
「もう落ちたのか!?」
「おや、詰んだみたいだね。短い冒険でした。ロビーでまた会いましょう、死に戻りで。」
「諦めるの早すぎるわよ!!もっと別の方法があるでしょ……!?って、何か柱みたいなものが高速で接近して――!?」
アイリスが何かを察知したように、後方を振り返った。
「あれはミサイルだぁぁぁっ――!」
初雪の言葉が終わる前に、オレたちはミサイルと共にヘリコプターごと、盛大な爆炎の花火となって吹き飛んだ。
*
――千門ホテル、ロビー――
「「「「はうっ……!?」」」」
四人が同時に、悪夢から一気に引きずり出されたように目を開けた。
見慣れつつある、典雅で妖しい千門ホテルのロビーが視界に広がる。
「なんか……悪い夢を見た気がする……」
「これは残念なスタートになったね。いきなり全員死亡か……まあ、001号室だったから出口の配置はリセットされたはず。実質的な損失はないよ!」
初雪はいつもの調子で明るく言うが、アイリスは明らかに動揺を隠せない様子だった。
「損失はあるわよ!!怖かったんですの!蘇生するって知ってはいたけど、死ぬ体験なんてごめんですわよ!!」
「大丈夫、回数を重ねれば慣れるから。気にしないで!」
「ぐぬぬぅぅ……!どうしてそんなに冷静ですの!わたくしが臆病者みたいじゃないですわ!」
「まあ、怪異の調査中に死ぬのも本望だからね。単純に好奇心が生存本能を上回ってるだけさー」
「お前……狂ってない、よね?」
「別に、ボクはいつも通りだよ?」
初雪とアイリスがいつものように口喧嘩を始めている横で、オレはまだぼんやりしている女神ファティラに近づいた。
「……ねえ、大丈夫か?女神だから死に慣れてるのかと思ったけど、衝撃だったんじゃ――」
うわ……なんかスッキリした表情だ。
「疲労が……消えた……蘇生の効果?……死ぬって、こんな感覚だったのね……なんか不思議で、ウズウズする……」
「なんか、大丈夫そうに見えるな?」
「わたしを心配してくれるの……?やっぱりきみは良い人だな、好き。……わたしは大丈夫よ。むしろさっきより元気になっちゃった……無気力は相変わらずだけど……」
こうしてオレたちは無事に復活したものの、初めての探索はあっけない全員死亡で幕を閉じた。




