第21話・二週目・002号室・ティ・アドラー
第21話・二週目・002号室・ティ・アドラー
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――002号室・錬金術師の始祖の街、フラム・古き屋敷の秘密地下工房――
「『傑作』、そう言いましたわ」
「そうだな、言ってましたわ~」
「わたくしに真似すんな、初雪!」
「そして、先から埋めされた、よ?」
オレたちはティ・アドラーと自称する少女を見つめ、今回の課題の目標が突然すぎて少し混乱していた。
彼女は錬金人形、ホムンクルスと自称したけど……どう見ても人間とそっくりだ。
それに、この街中で他の錬金人形の姿なんて見たことがない。……
そんな疑問を抱きながら彼女を観察する。
ふわふわとした長い髪に、肉が付いているぷにぷにとした小さな体のロリっ子。
その服装も目を引く。
この街の雰囲気とは違い、袖で手がすっぽり隠れるほど大きめのサイズで、フードが付いた黒の膝丈トレンチコート。
その中には白から水色へ優美なグラデーションを描くドレスを身につけ、ドレスにはウィリアムズ・アドラーの像が着ていたローブとお揃いの金色の紋章が刻まれ、胸元には赤色結晶のネックレスが下げられていた。
あ、そういえば、その蒼き瞳には、桜色のクローバー紋様が刻まれていることは人らしくない。炉心も言ったし。
彼女は本当に「錬金人形」と呼ばれるホムンクルスのことだよな……そういえば、彼女が言った事はホムンクルスなのに、どうして「錬金人形」という漢字がわかるかな。
まぁ、千門ホテルの神秘的な力で自動翻訳されているのかもしれないが。
「その、ティは何が変な事が言いましたなの?ティはどれ程埋められたかわからないから、もしかして今の言葉は、文法や言語が昔と違っているなのか?」
その子、ティは急に不安な表情になって、オレたちの顔にチラチラと視線を送ってくる。
「いやいや、そうじゃなくて、ただ情報が多すぎて少し整理する時間が必要なんだ」
「あ、そういうことなのが。なら、ティは待ってますから、ゆっくりしてくださいの。」
ティはそう言うと、彼女と同じ瓦礫に埋められていたクリスタルに嵌めた機械を検査し始めた。
なんか、さっきまで瓦礫の下で動けなくなっていたとは思えないほど、驚くべき元気さだ。
この機会で、オレたちは円を作って意見を交わすことにした。
「なんと言うか、その見た目とそっくりした、ふわふわとした不思議な子だな~!」
「でぇ、これからはどうするのだ?その子を地上へ連れ出すだけでクリアになるのだ?なんか、ボクが商会で作った影響力は台無しみたいのだ。」
「それは、オレにもわからない……。『傑作』と呼ばれるから、てっきり何かの装置やエリクサーの類いかと思ったけど、まさか人間……いや、人形の女の子が出てくるなんてな。ファティラと赤桜はどう思う?」
「わからない、よ?……なんとかなる、よ」
「キィ……(何処か切れば命を絶えるがわかるけど、思考はちょっと……)」
どうやら、オレだけじゃなくて、ここにいる全員がティの存在に困っているみたいだ。
「なら、一応彼女にオレたちの事情と今回の『課題』の目的を話して、協力を取るかな」
「助手くん、それだ!良い案のだな!」
「わたくしも異議なしわ。」
「さっさと解決して、帰って眠たい、の……眠い、腹減った、体力切れ寸前、の」
全員の意見が一致したところで、オレが代表して、あちこちに忙しくて謎の機械を検査しているティに話しかける。
「その、ティちゃん、今は良いかな?『ちゃん』付けて大丈夫でしょうか?」
「はい、大丈夫ですの!なんでしょうなのか?」
オレの呼びかけに、彼女はぴょんぴょんと軽やかな足取りで駆け寄り、じっとこちらを見上げて近づいてきた。
その桜色のクローバー紋様が刻まれた蒼い瞳に、オレの顔がハッキリと映し出される。
「その、オレたちの事情でキミの合力が必要だから、先にこちらの事情を教えたいけど、今いいかな?」
「うん、全然良いなのよ?」
「それじゃあ、どこから話そうか……」
*
オレの説明を聞いたティは大人しく、オレの下手な説明を聞いてくれた。
「なるほど、ティはわかったの。あなたたちは別々の世界で、『千門ホテル』に呼ばれるものに拉致され、色々な課題を解決しないと戻れないの事ですなのが。そして、今はここに来ましたの原因は、課題『埋もれた傑作を再び日の目を見せる』を達成するためで、その『傑作』であるティの協力が必要……ということですのね?」
「はい、その通りです!」
言いたいことが多すぎて説明もかなり混乱していたはずなのに、ティが一発で理解してくれて助かった~。
「あの支離滅裂な説明でよく理解できたものだね、ティちゃん!そして助手くん、もう少し説明スキルを磨いた方がいいぞ?探偵の助手たるもの、事件の概要をスッキリ説明できなきゃダメなんだからのだ!」
「うん。珍しく、わたくしも初雪の意見に同意するわ。こんなことなら、最初からわたくしが話せばよかったわね」
くっ、初雪とアイリスたちの言っていることはオレ自身も自覚していた事実だったから、言い返す言葉もなく……
「キイィー(あるじ、口下手でも大丈夫、戦えばいい……あ、アイリス殿に勝てないけど……)」
赤桜ちゃんがオレに励ましてくれたのはありがたいが、その一言がかえって逆効果というか、傷口に塩を塗るようなものだった。
その時、誰かがオレの背中を優しくポンポンと叩いてくれる。
「ファティラ……?」
「どんまい……わたしと、一緒、よ?」
話し方がおかしいファティラと同じレベルに認定されたのが……
「えっと……協力の件、ティは喜んで手伝いますのよ。でも、別の世界から来ましたというのなら……ティは改めて詳しくて自己紹介しますの。」
「詳しくって?何のことですか?」
「うん。ティの名前はティ・アドラーの。邪神を封印した偉大なるパパ、『ウィリアムズ・アドラー』は『不死の霊薬』の製作を放棄し、その素材を禁忌を破れて作られた『錬金人形』の。亡くなった大事な娘ーー『ティリス・アドラー』を模倣したの最後傑作の、パパにとって第二の娘ですの。」
それを言うと、彼女は自分の胸——心臓の場所に、手を重ねた。
「この体は『不死の霊薬』の素材を込めるから、ティは死にませんの。この古龍の心臓を素材に作った炉心で魔力があれば再点火出来るの。パパの日記を読むと、ティは知ってました、これは全部、娘は二度死なせないために頑丈の方に作れましたの。」
「不死身が……」
「まさか本当に不死のものを作れるなんて……この世界の始祖錬金術師は只者ではないが分かったけど、そこまでのは想像を超えたわ。」
「不死が、あれは凄いなことわかりましたけど……ボクたち解明者が研究した怪異は噂があるなら不滅から、不死の資料ならはよく見えのだ」
だから彼女は瓦礫に埋もれてもこうして復活できたわけか。
オレたちが「不死」という途方もない事実に対してそれぞれの反応を見せる中、ティは話を続けた。
「そして、ティはここに来るの原因はパパのお墓参りと、邪神封印した装置を検査するの。」
「「「邪神の封印?」」」
ここにあのような物騒な機械があるが……あ、ティが先からずっと調べていた、水晶が嵌めた機械のことか?
「はい。その通りですの。この機械こそがパパが作った『邪神の欠片』を封印した装置ですの。……でも、ティの調べて、ティは埋めた時で、他の場所に設置した四つの装置は既に壊されたみたいの。もし、この最後の装置が破壊すれば、大邪神ディルームは復活するの。」
「邪神の復活、だって!?なんだかその言葉を聞くだけでボクの血が騒いできたぞ~!」
「こら初雪。お前は探偵(自称)なんだから、危機的な状況にワクワクしないでくれよ」
「悪い悪い~ボクから起こす気は無いぞ?でもさぁ、相手は本物の邪神だぞ?ちょっとロマンを感じないかい?見たくないのが?」
「それは……」
見たいが、見たくないなら、絶対に見たいに決まっているが……。いや、ヤバいやつはこのまま大人しく眠られていた方が一番良い……
オレはそんなことを考えていると、不意に脇腹へ軽い衝撃を受けて思考が中断した。
「ん?ファティラ、どうしたんだよ?」
その衝撃の元は、不機嫌そうの表情をして、『へいー、へいー』と拳でオレの腰を殴ったファティラだ。彼女にしては珍しく無気力モードではなく、痛みこそ全くないものの、連撃のスピードが徐々に上がり、ついには残影が見えるほどの高速ペチペチになっていたーー
「この浮気ものめ……わたしの使徒のくせに、いまはわたしじゃない神に考えるだろう、よ!えぃー!えぃー!えぃー!」
「ちょっ、落ち着いてくださいよ。そもそもオレは使徒じゃないし。これは普通、普通程度の好奇心だけから、ね?」
初雪とオレとファティラ三人の茶番劇を無視して、アイリスは短い溜息をついてティに質問する。
「はぁー、呑気な連中め……でぃ、ティ、その『大邪神』なんて派手な二つ名で呼ばれているものは一体何なの?」
「あれはティが生まれる前のことだから、ティが知っているのはパパの日記に書かれていたことだけですの。詳しいことはわからないのだけど……」
それを言いながら、ティは自分のトレンチコートから、ボロボロな古い本を持ち出せて読み始めた。
「えっと、邪神降臨の日のページは……あった、『誰にも気づけないまま、創世の女神への信仰が「ディルーム神に捧げる」に入れ替わった。友のフェリーステラは旅人の不思議な力のおかげで影響を受けないから、彼女はいつでも周りに浮かべた分厚い魔法本で俺たちの頭を次々に殴りつけ、正気を取り戻させてくれた。世界を救う為に、俺たちはフラム村から、友たちと共に四人が邪神を封印する為に旅をする。田舎の薬屋の俺は本当に出来るかな。』のことが書けましたの」
「なるほど、あれは恐らく『精神汚染』ーー精神ウィルスの一種かもしれませんわ。あれは外道な連中が好んで使う厄介な手口だわ。」
アイリスの推測で、ティはそれを肯定して頷いた。
「恐らく、そうみたいですの。いつもおかしな連中が封印装置を破壊しようとやってくるの。ちゃんと隠しておいたはずなのに、邪神にでも魅入られたというのだろうのか?だからパパから『自由に生きて』と命じられたティは、世界を渡り歩きながら、自分の意思にパパの代わりにあちこちの封印装置を点検して回ることになったのだったに決めたの……だけど、今のところ無事な封印はここだけみたいですの」
「なるほど、なんがティちゃんは古き封印の守り番人みたいの偉い人のだ!あんな風に瓦礫に埋もれちゃったりしたけど。」
「こら初雪、言い方が……」
「それは否定できませんの。ティの怪力をしても、覆い被さる土の量が多すぎて自力では押し退けられなかったのです。まさか、天井が突然崩落してくるとは思っていなかったのですよ」
『ビーーーッ、ビーーーッ、ビーーーッ!』
「ん?なんだ、この声は?」
なんか、変な声が聞こえたから、オレたちの会話が遮られた。
「あれ、初雪とティのところで、響いた、よ?」
「ボクですが……ああ~、この屋敷のカギが響いのだ!」
「これはチャイムの音ですの。ティのカギも響いた、誰が前門のベルをポチッと押したみたいですの。」
「チャイムの音って、なんが無駄に便利な効能が付けましたわ」
ティと初雪は同じカギを出した。あの複雑な紋様が刻まれていて不思議な雰囲気の鍵に嵌めたラピスが明滅する。
ティはあのカギの紋様を軽く触ると、カギの振動から誰かの声が響いた。あれはーー
「ネルくんか?」
『あ、やっと繋がった!こちはネルだ!緊急事態から、僕たちに早く入れてください!頼む!』
「緊急事態?わかりました、すぐ扉を開けますから待っていてください。」
『助かったー』
雑音と共に、ネルくんの声が消えた。
「切れたね~」
「『緊急事態』か……わたくしの感から、あれは嘘じゃないわ。」
「ネル?あなたたちのお友達の?」
「ええ、そうよ。このフラムの領主として、ウィリアムズ・アドラーの子孫ですわ。」
アイリスの言葉で、ティはこつん、と首を傾げながら、一体どういうことかと視線を向けてきた。
「パパの子供は二つだけのはずですの?ティのオリジナルのティリスが死んだ頃は十歳だったし、ティも子供がいませんのよ?どこからここに継承した、に血のつながりの薄い親戚の?」
「まぁまぁ~、こんな事は後でしましょう~!アイリスも急いでに言っただろう?早く地面へ戻ろうのだ!」
とりあえず全員で地上に戻る方向で一致し、一同は再び階段の方へと歩き出すーーが、ファティラがオレの手をキュッと引っ張って動きを止めた。
振り返ると、あそこには死んだ目のファティラが潤んだ瞳で顔を上げ、じっとこちらを見つめてきた。
「まだ階段……それに上、の……助手、構えて、運んで~」
「はいはい、おいで女神様。」
「やあー!ベター、よ!」
ファティラはぴょんと跳ねるようにオレの背中に飛び乗り、その首にキュッと両腕を回してしっかりとしがみついた。
「なんだよ、いつもより妙にベタベタしてないか?」
「さっきの罰、よ。わたしに嫉妬させた、不忠な使徒への罰、よ」
「だから完全な冤罪だって言ってるだろ……!」
「ふふっ……♪」
はあ、と一つ溜息をつきつつも、オレはファティラを落とさないようしっかり背負い直すと、先を進むみんなの背中を急いで追いかけた。
ネルにいったい何があったというのか、あんなに切羽詰まった声を出して……。
地上で彼と合流すれば、その理由もきっとわかるはずだ。




