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第20話・二週目・002号室・『埋もれた傑作を再び日の目を見せる』

第20話・二週目・002号室・『埋もれた傑作を再び日の目を見せる』


==========

――002号室・錬金術師の始祖の街、フラム・古き屋敷の秘密地下工房――


その瓦礫の下から白い足を見ると、オレは混乱した。


「え、あれは人形よね、アイリス、初雪……」


「うるさいな……わたくしは只今バイタルサインの確認中で見当たらないですが?」


「ともあれ、これは明らかに事件の匂いのだ!これも課題の一部ですがな~」


少しパニックしたオレと比べて、アイリスは冷静に『あれ』を検査し、初雪は死人がどうか全然気にしないまま瓦礫の山を観察する。


「アイリスって、検死もできるのですか!?」


「はぁ。傭兵として、このくらい簡単なならできるわ。これ、とっくの昔に手遅れだわ、完全に死んでいたわ……温度が無く、脈動が感じないわ。」


「キイィー(主、血はもう流れない……でも、なんが違うけど)」


アイリスと赤桜の言葉でオレは目の前に死体が存在するという現実を、認めざるを得なかった。


「やっぱり事件のだ!それに、完全に密室殺人事件のだ!あ、でも、ただの屋根の崩落による圧死、すなわち事故死の可能性も高いのだ!ボクの調査で、この瓦礫が落ちた時は結構時間がある、そしてその地下室の保存状態から考えると、ここは随分間に誰にも入れない状態で~、ここはこの謎の死者だけが知っている場所に間違いないのだーー!!これは一体どのような存在で?ここにどのような関係があるが?すっごく、解明したいのだ!」


どうして死人が出るもこんなにテンションが高いのか……そもそも死に鈍感で、自分の生命にも執着のない初雪に対して、他人の死はどうでも良いかもしれない。それよりその死因の謎を解ける方が彼女の注意力を引くのだろう。


アイリスなら、まぁ、それ以上酷い戦場の経歴者として、平然に対応するのも当たり前よな……


「それ、魂がまだ居る、よ?」


先からずっと黙っていたファティラが急に発言した。それはこれまでの結論を覆す発言だった。


「ファティラ!その言葉は本当ですか!」


「うん……この目から見れば……安定的な魂の輝きが見える、よ?……なんが普通との違うけど、居る、よ?」


「そんなバカな!わたくしの検査は……いや、わたくしの誤りではない、ここは別の世界だから、あり得るですが……?」


最初、アイリスは自分の結論が間違ったことで反論したが、すぐ冷静になった。


「とにかく、早く掘り出せよよ~!ここに居る以上なら、きっと課題と何が繋がるに間違いないのだ!あ、ここにたどり着いた階段の数から考えると、ここは地下三階みたいの深度だし、普通の方法では数日かかるだろう……なら、ここはファティラに任せるのだ!」


それは……確かに、ここにたどり着く階段は無駄に長いとは言え、地下三階ほどの深さは知らなかった。なら、ファティラの魔法で何とか解決するかな?


「何を……すれば良い、の?」


「そうだな……そのアニメや動画みたいに時間魔法で屋根が崩れる前に時間を巻き戻したり、或いは土魔法でこの瓦礫を埋めたりできるかな?」


「両方も、出来る、よ?……どっちが、する?」


「出来るが、相変わらず体力以外なら万能過ぎる、ファティラは……すごいな。なら、時間を巻き戻して、二度崩落させない為に土魔法で強化するなら、出来るかな?無茶はしない程度」


「出来る、よ……えい、『しゅうっぱんー』」


相変わらず雑で変な『詠唱?』をすると、目の前にいた、あの人を埋めた瓦礫の山が逆再生のように元に戻り、周りと同じ天井に直された。


「ふんっーー。今更は驚けないけど、相変わらず凄いな魔法わ。」


そして、あそこに埋められていたものがもう一度、オレたちに見えた。


あれは、なんが紫色の中に黒色に輝く、金属の機関に固定される水晶の機械とーーその前に倒れた、人形のような小柄で、ふわふわな白髪の少女。


「大丈夫ですか!」


オレは急いで彼女を支える。とっても軽くて、ファティラといい勝負程度の軽さだ。


でも、何より、オレが彼女を支えると、先から見えなかった顔がみんなに見えた。


これはーー


「この顔って、あの屋敷にいる絵と同じ顔のだ!あの真ん中の子のだ!」


「それは、確かにそうでした……でも、あれは遠い昔のことだよね……本当に生きているかしら?」


「わたしの目、疑う、の?」


ファティラを疑うつもりじゃないけど、アイリスの抱く疑問に、オレも同感だった。


だって、オレの腕の中の彼女から生気が感じない。身体もとっても冷たくて、その目は固く閉じられて、全然開かない。


「むー、怒った……わたしがみた魂を引き出せ見せる、の」


しまった、ファティラは完全にぶっちぎれた。


そう言いながら彼女は足をドスドスと踏み鳴らして、手は危ない動きでこちらに近づく。


「まだまだーー!そうすると完全に死んじゃうから、やめてください!」


「でも、これで、わたしは嘘じゃないに証明できない、よ?」


オレは慌ててファティラを止める。彼女がオレの言葉を聞いてくれたのは幸いだ。


その時、初雪もこの子とファティラの間に立って彼女を止めた。


「あー、ボクもその魂を見たいだけどーー、もし何が問題があるなら、『課題』は失敗かもしれませんから、そうしない方が良いかもだ。」


初雪は相変わらず彼女らしく倫理観ゼロの発言だった……何だか、オレが考えたフォローとは違うけど、ファティラは辞めたみたい。


「わかった……なら、わたしに信じる、の?」


「それはもちろんです!」


「うんうん。ボクも信じるよ?でも、今の問題はどうやってその子を起こすだろう?」


初雪の質問で、みんながこちらに集まって、この子を覗き込む。


ん……外傷は、見えないみたい……だけど、胸の起伏はなく、まるで息をしていないようだった。


一瞬で『やっぱり死んでいる』という考えが頭の中に浮上するけど、言うとファティラは怒るから言わない方が良い。


「女神ファティラ、お前はこの子はまだ生きていると言うなら、何がこの子を起こす良いアイデアがあるかな?」


「ん……何とか、わかりました、よ?……その子に、血が必要、の。」


「「「血?」」」


どうして起こすのに血が必要だろう……この子は吸血鬼で、今は休む状態とか?それなら遠い昔から今まで生き延びることが理解できた。


でも、吸血鬼なら……その特徴的な鋭い牙があるはず。


「なら、確認するなら……失礼した。」


オレは指でその唇を開けて、その口中を覗き込む。


「どうしたわ?何が気付けましたわ?」


アイリスはどうしてオレがそうするのか疑問するけど、初雪は一目でオレが何を考えているかわかったようで、ニヤニヤしてオレに話した。


「助手くん~、これはボクと同じことを考えるなだ~!でも、牙は見えない、人間とそっくりの歯しか見えないのだ。でも、変のだ。口中は湿って、唾液が見えました、これは身体機能がまだ動ける証のだ?これは、そう!『冬眠』みたいのだ!」


そう言えば、指先に触れた内側の粘膜は、生体特有の柔らかさと水分を帯びていた。


「なら、誰が血を渡すのか考えるかな……痛い!?」


その口中から指を引き出した時に、うっかりしてその犬歯にちいさい傷をつけて、一滴の血が、この子の口に落ちた。


「ひいぃー!?傷口から血を吸われる!?冷たいものが触った、それは舌に舐められたのか!?」


その瞬間――先ほどまで微動だにしなかった少女が、急にパチンと口を閉じ、オレの血を美味しそうに飲み込んだ。さらに、驚くべきことに彼女の両手が素早いスピードでオレの手首をがっしりと掴んできたのだ。


――くっ、力強い……!?


「助手、大丈夫ですか!もし危険なら、わたくしがその腕を切り落とすわよ!」


「あわわ、本当に動き出した~」


「ふふっ、だからわらしは言った……この子は生きている、の~」


「キンキン!!(よくも、主の血を吸うなって!羨ましぃー……やっぱ、今すぐその腕を切り飛ばす!)」


珍しく真剣にオレを心配してくれるアイリスと、興味深そうで面白がる初雪。そして、勝ち誇ったような生意気なドヤ顔でニコニコしているファティラ。

……あと、赤桜、その心の中の物騒な声がダダ漏れだからな?オレの血を飲みたいのが……やっぱり赤桜は良い子だけど、根っからの主殺しの妖刀だよ


でもーー


「みんなさん落ち着いて……なんか、変化がーー」


先ほどまで死人のようだったこの子の肌に、みるみるうちに温もりが戻り、微かな呼吸の音が聞こえ始めた。


そして、ずっと固く閉じられていたその瞼が、ゆっくりと持ち上がる。


それは蒼き瞳には、絵と違って、その瞳に桜色のクローバー紋様が刻まれている。


「……んっー?」


は何度も目をパチパチと瞬かせ、ようやく自分の手をガッチリと掴んでいる相手――オレの存在に気づいたらしい。


その子はゆっくりと、オレの手首から手を離した。


オレはその隙を逃さず、急いで彼女の口から指を引き抜く。


うわ、まだベトベトする……しかも血を吸われたせいで、人差し指の血の気が引いて真っ白になってしまった。


「ファティラ……水お願いします。その、二人分でお願いします。」


「わかった、よ?……『えいー』」


オレの願いに応じ、ファティラが空中に二つの小さな水球が浮かび上がった。


一つで自分の指に付いた唾液や血を洗い流し、もう一つを少女の前に差し出す。


「どくどく……んっ」


潤いを得たその子は、オレに支えられながら、ゆっくりと自分の足で立ち上がった。


その子は静かに辺りを見回し――最後に、その視線を目の前にいるオレたちへと定めた。


そして、澄んだ鈴を転がすような美しい声で、静かに言葉を紡ぎ出す。


「ティの炉心を再起動の魔力を渡し、助けてくれでありがとう……ティの名前はティ・アドラー。偉大なるパパーーウィリアムズ・アドラーに創った、最後で至高なる傑作。『錬金人形(ホムンクルス)』です。」


その儚げな可憐さと完璧に調和した銀鈴のような声が、静まり返った地下工房に心地よく響き渡った。


どうやら、オレはこの客室の冒険が終わりに近いに感じたーー

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