第18話・二週目・002号室・日常のひとコマ、古き屋敷の探索始め
第18話・二週目・002号室・日常のひとコマ、古き屋敷の探索始め
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――002号室・錬金術師の始祖の街、フラム・家――
オレたちは家に入り、玄関でスリッパに履き替えた。
「ほら、ファティラもオレの耳を噛まないで、早く靴を脱ぎなさい」
「はむかむ……残念、でもわかった、よ……」
やっと甘えん坊状態のファティラが妥協したから、オレは彼女を床に下ろした。
って、こちらに足を伸ばすのは、靴の履き替えを手伝って欲しいのか?まあ、大したことじゃないから良いか。
これは、見たことのない細い紐で編まれたサンダルだ……オレたちが遠征の時に初雪からくれた贈り物か?わざわざ簡単に脱げるデザインに選んだんだな。
「はい終わりー」
「ありがとう、よ」
「そういえば、その服は何?どうして元の、金の細糸による刺繍が施された純白の布地が膝元までしなやかに垂れる前垂れと、帯紐で仕立てられた……その、あちこちがガードが薄い装束は?これはお前が千門ホテルの中で、最初から着ていた服じゃないか?」
「それは……この世界の服の生地は硬い……肌が痛い……『元に戻す』に考えると、何とかできた、よ?」
「何とかって……ファティラだし、まぁ良いか。ところで、なんだか懐かしい匂いがしない?」
そう、家に帰ってからずっと何か食欲をそそるいい匂いがする。あと少しだけ、この匂いの正体を思い出せそうな……
「それは……あっ!サプライズするから言えない……初雪と約束したから」
ファティラは言いかけた言葉を途中で止め、口にしてはならないことを言ったとばかりに、慌てて両手で口元を覆った。サプライズって、特別なお料理か?
オレが考えている時、キッチンの場所からバタバタの足音がして、ここにやって来た。
来たのは白い雪の妖精のような、左右で瞳の色の異なるロリ少女。あれはエプロン姿の初雪で、おたまを持ちながら出迎えに来た。
「助手くんとファティラ、お帰りなさいのだ!助手くんはちゃんとファティラをお迎えにしましたで偉いのだ!遠征で疲れるだろう?アイリスちゃんは只今お風呂中だから、アイリスが出たらゆっくりしてぽかぽかの湯で疲労を洗い流してくださいのだ!」
「おお、探偵さん!オレたちはただいま帰ってきました!相変わらず元気いっぱいだな。」
「もちのろんさ~、ボクはいつでも元気だぞー!赤桜ちゃんも、お帰りなさいのだ!」
「キー!(ただいま!)」
「この子は『ただいま』って言いましたよ。」
「うん、ただいまのだ!赤桜ちゃんもボクたちの家族だから、挨拶は大事だぞ~」
初雪は腰を下ろして、オレの腰に付けた赤桜の柄を軽く撫でた。
なんか元気いっぱいの初雪を見ると、家に帰った実感がすごく溢れ出すみたいな感じだ。
「やあやあ~、この三日ってボクは大変だぞ?ファティラの甘えは全部ボク一人で受け入れたからのだ……助手くんも大変だな。もし疲れた時はボクに頼れるもいいのだ?……でもさー、ファティラのその舐め方で凄いな、麻痺のように指一本すら動けないのは初体験しましたのだーー」
「ファティラだから仕方ない……でも、もしオレが疲れるならその時は頼むぞ……なんか探偵さんの顔を見ると、すごく家に帰ってきた実感が出たな、日々のことはありがとう。」
何故だろう、オレは感謝や自分の好意を伝える言葉を言えるうちに、早く言っておきたいと思うから。オレは素直に初雪に日々の感謝の気持ちを伝えた。
……これは本来のオレからの残しものだろうか?経歴が奪われても、空洞なる未練が残された。何か大切な人を失った、或いは会えないの遠出から?
結果として、オレの感謝を受け入れた初雪は一瞬で止まり、テンションが上がって返事した。
「えへへ~、こんなにボクを褒めるも、ただ晩飯が大盛りになるだけだぞ~、ついでに謎の鳥肉の唐揚げが三つ増えるだけだよ?」
「大盛りになるのか!本当にありがとうございます。」
「良いって、良いって~!早く家に入ってくださいのだ!アイリスが連れ帰った肉と、ボクが商売する時にやっとカレー用スパイスを集めたから、ボク西園寺家の秘傳カレーを作れるのだ!」
「おおーー!!本当ですか!?オレはずっとその噂の西園寺家の秘傳カレーが食べたいです!」
このいい匂いはカレーだったのか……ここは異世界だから、その可能性がうっかり気付けなかった。
秘伝カレーが……一体どんな味だろう、こっくりーー
「ふふ~、是非期待してくださいのだ!あと、ファティラは助手くんを食べるのは程々にだ?その指、美味しい?こんなに美味しく食べるって、ボクも少し興味がありそうのだ~」
「ハムハム……(しょっぱくて美味しい、よ……でもお料理も食べたい、わたりました、よ……)」
「うんうん~、何か言ったのが全然わかりませんのだ!火が付いているからボクはそろそろキッチンに戻れるのだ!ボクの料理を期待してくださいのだ!」
それを言うと、初雪は風のような素早い速度で玄関から走り出し、キッチンの方向へ消えた。
オレの指を自分の口に突っ込んでベロで挟んで味わっていたファティラの、そのもちもちの頬を手で握って、オレの腕から離した。
「ぷぇー?もう、味わいさせない、の?」
「もう、どうしてこんなに他人の味をこんなに気に入ったのですか?お前は輪廻転生を守る魂の女神じゃないのか、暴食女神」
「これは、もちろん美味しいから、よ?……暴食の女神に成れるも良いかも、変わる、か?」
「いやいや、それはやめてくださいよ!全能だから本当にできるみたいですけど!まだポジションを変わったら面倒になるから」
オレに噛まれないために掴まれた彼女は抵抗しないけど、その変化のない表情から少しだけ落ち込んだりみたいだ。
「なら、やめた、よ?……私に舐めたり噛んだり、嫌?私を嫌いになった、が?」
「そんなことは無いよ!ファティラのことが嫌いに絶対にならないから!」
もう、この顔にされたら、オレは思わず彼女をしっかりと抱き締めた。
「う、うぅー」
「あ、ごめんなさい!うっかり抱き締めたから」
「苦しいけど……好き」
くっ、またファティラらしい変なことを言った。まぁ、この茶番劇はそこまでにしよう。
「それじゃあ、オレたちもそろそろお風呂にしようか……アイリスはまだお風呂中だろう?」
「おお……レッツ、ゴー」
*
やっと家に帰ったオレとファティラは、仲良しにお風呂へ歩み出した。
その時、アイリスはちょっといいタイミングで中から出てきた。
湯上がりの火照りを肌に残したまま、彼女はバスルームから現れた。その戦闘用の魔動鎧と武器は収納して、家の私服に着替えていた。収納されたあの小さな王冠も頭の上に付けている。
濡れた蜂蜜色の金髪から滴る水滴が、首筋を伝って赤いナイトドレスの胸元へと落ちていく。
たっぷり疲労を流したから、表情も普段と逆で、ロリ姿とぴったりした幸せそうな柔らかさになっていた。
「あら、お前たちはもう帰ってましたか?」
「アイリス、お前は本当に先に熱々の湯にゆっくりしたな!」
「ふふ~、それは当たり前だろう。自分の言葉に責任を持つことこそ、王族の資質というものですわ~。でも、どうしてそんなに急いでいるのですか?もしかして、覗きするつもり?ファティラを連れたのに、良い度胸じゃないわ。死にたいのか、変態ですか?」
「こら!誰が覗き魔ですか!ただファティラに洗ってあげようと思っただけだ。」
「へぇー、そうなんですか?でも残念でしたわ♪わたくしは既に出ましたから、任せたわ~。これからはお風呂上りのミルクティーを飲むから、お先に~」
アイリスはその言葉を残して、隙だらけの歩みでリビングルームへ消えていった。
「行っちゃったな」
「行っちゃった、よ……どうする、が?」
「まぁ、オレが洗ってあげる……まだ自分で洗えてないのか」
「うん……水圧が強すぎて、蛇口をしっかり握っていられないから、だめよ」
「その無気力って、どうにかならないのか」
「出来ない、よ?……今は既に、全力で強化魔法をした、よ」
「もう!?このようなぷるぷるするのに!?」
「えっへいん~……無気力、だ!使徒よ、女神を全力で奉仕してください、よ?」
「どうしてこんなに自信満々ですか……」
仕方なく、オレがやるか。
……
…
「はい、バンザイ」
「バン・ザイ~」
ファティラのその奇妙な服は、帯を引っ張ると前垂れした布が落ち、あっさりと脱げた。
浴室は湯気で少し霞んでいて、壁に水滴が伝っている。アイリスが満たした浴槽にはぬるめのお湯の水面が静かにわずかに揺れているだけだ。
「ほら、髪と背中はオレが洗うけど、前は自分でしてくださいね~」
「どうして、全部にやらない、か?……でも、良い子だから、わかりました」
なんか、謎の光っているから泡の流れの確認に少し邪魔だけど。何も抵抗はしないから、大人しくそこに座っているから簡単に洗い流せる……本当に何その触感が超絶気持ちいい肌なんだ。
順調なオレと逆に、ファティラが自分で前を洗ったのはすっごく緩やかだった。
「ごくらく、ごくらく」
「ん……暖かい」
オレは彼女の細い腕を支えて、そっと湯船に下ろした。
ファティラはほとんど力を入れず、オレに身を委ねるように体を預けている。完全にゆっくりした顔になった。普段が眠そうな目が更に狭くなった。
なんか、湯に沈んだ時は、彼女の薄くて細さがはっきり感じられた。うすほそで華奢な体躯なのに、ちょうどいい肉感があって健康的な透き通るような白さが際立つ。
まるで人形のように静かにされていて、女神らしくてどこか現実から少し外れた神秘的な空気が漂っている。
「ん……すやー、ぽぽぽぽーー」
「急に沈んだ!?おい、ここで寝ないでください!」
うたた寝して湯船に沈みかけた彼女の体を、慌てて水中から引き上げた。
もう、本当に陸上で溺れないでください。せっかくミステリーの雰囲気が台無しだよ、もうーー
*
「やっと全員集合したな。これは結構自信作だから、ごゆっくり召し上がれのだ!それじゃー」
「「「頂きます」」」
オレとファティラがお風呂から出た時、食卓はもう四人分の唐揚げカレーが用意されていて、初雪とアイリスがオレたちを既に待っていた。
「なんか、すごくいい匂いだ、美味しそう」
「見た目はあれだけど、これは助手と初雪の世界の料理ですか?」
「わたし、知っている、よ……カレーに呼ばれる料理、よ」
初雪は胸を張って、自信満々にアイリスにお勧めする。
「そうそう!良いから良いから、一口で試してくださいのだ!きっと、この味に魅了されるぞ~」
こんなにお勧めなら、オレも一口に……これは!?
このカレーは濃厚でコクがあり、まろやかで食べやすい。スパイスの香りが良く、ルーはとろっとろで、具材も柔らかく煮込まれている。甘みと辛さのバランスが絶妙で、じっくり煮込んだ深い味わいが口の中に広がる。後味がしっかりしていて、何度でも食べたくなる中毒性のある味だ。
まさに、初雪がすごく誇った秘伝のカレーだった。
気づけば、いつの間にか、お皿の上に載っていた料理は跡形もなく消えていた。
周りを見ると、アイリスとファティラの方向も同じくお皿の上に載っていた料理は跡形もなく消えていた。
あのいつでもゆっくりしたファティラもこんなに完食したのは想定外だった。
残されたのは、オレたちに満足した視線だけだった。
「美味しいだろう~?まだあるよ、もう一杯、する?」
「お願いします!」
「わたくしも、お願い致しますわ!」
「うん……もっと食べる、の。」
初雪の確かな腕前によって作られた至高の料理を食べた……それは本当に美味しかった。
*
――002号室・錬金術師の始祖の街、フラム・古き屋敷――
「やっとこの日が来ましたね……」
「うん、なにが中にいるだろう?ワクワクのだ!」
「はぁ、お前たちは興奮し過ぎわ」
「はう……疲れた、眠い、よ」
オレたちはネルくんたちと合流して、共に古き屋敷の前に集合し、屋敷の外を見た。
「くっ、先祖様の屋敷を壊すなよ!」
「ネルくん、こんなに緊張しないでください。これは約束した鍵よ。」
ソフィアさんがオレに金色の鍵を渡した。複雑な紋様が刻まれていて、不思議な雰囲気の鍵だった。
「落ち込むも変わってないから……この屋敷は複雑な術式によって施された施錠があるから、あの豚はご先祖様の屋敷は奪われない。本当に、大事にしてください!」
「その、坊ちゃん。今は身分を隠したはず……」
護衛としての人狼戦士、キャルロさんがネルくんの発言にため息をついた。
教会から派遣されたリーシャも慌ててネルくんに言う。
「その、ネル様ーー。早く錬成を始めないと」
「くっ、僕はいつか必ずに屋敷を取り戻すから!僕たちに要事があるから、本当に本当に壊さないでください!」
「しないから、こんなに心配はいらないですけど……はい、鍵」
「わひゅうー!魔法の鍵のだ!一体どんな原理だろう、すっーごく興味深いのだ!」
なんか、騒がしいネルくんのパーティーが急いでどこかへ走り出した。
オレは貰った鍵を、キラキラの目でこちらを見ている初雪に渡すと、すぐ観察が始まった。
「だから、平民は……ん?この鍵はなんか妙な術式が付いていますわ」
「……まだ入れない、の?」
ファティラの言葉で、初雪とアイリスの観察が止まった。
「そうだな、始めようのだ!」
鍵を持った初雪が前に行くと、その屋敷の扉が自動的にゆっくりと開いた。
重々しい金属擦過音を響かせながら、大門がゆっくりと開かれていく。その奥には、整えられた庭園と、歳月を刻んだ古びた屋敷が姿を現した。
「それじゃあ~、『古き屋敷の探索』はこれから始めよのだ!」
初雪の宣言と共に、オレたちは屋敷へ歩み出した。




