第15話・二週目・002号室・クリア、合格、交渉
第15話・二週目・002号室・クリア、合格、交渉
==========
――002号室・錬金術師の始祖の街、フラム・風の遺跡、第五階層、ボスエリア――
「これでトドメを刺すわ!ファティラ、こいつに大きな一撃で粉砕なさい!」
「おおー……『ドンカンー!!』にする、よ。」
もう随分壊されたように見える翠色の水晶に向かって、アイリスはファティラに全力攻撃を命令した。
が、あのケモミミ戦士がそれを止めた。
「待って待って!『風精の翠石』は貴重素材だから、できれば素材を壊さないでください!」
「なら、ファティラ!お前は他人の努力をふざけたみたいな力で、ちっとだけの魔法でトドメを刺してください!」
「他人の努力を、踏まれない、けど……わかり、ました……『ドン~』で行きます、よ~」
相変わらず雑の声だけど、その翠色の水晶は突然爆発し、ほぼ壊れないまま破片として散った。
何が、危険なダンジョンマスターだけど、あっさりと解決された……まぁ、今回はファティラが規格外だからしょうがないが原因だ。
でも、これで獲物を奪われるに文句させないようにね?
まぁとりあえず、今は鉄板のような盾を使って素材を集めているアイリスを手伝おう。
「やあー、体力が致命的に足りないけど、明確な指示を伝えれば、ファティラの魔法はすごいのだ!ボクの攻撃は何と言うか、焼け石に水というか、雀の涙ほど少ないのだ!体力は致命的に無いけど!」
「二回言った……まあ、そのご本人が聞けば、何がドヤ顔にして、自慢そうに『無い、のよ……無力、だ!』って、そう言うから、良いか。」
「そうそう!何がそう言う画面が出たのだ!」
「無力だから……わたしをもっと甘やかしすぎてダメにするまで、そうしないとダメだ、よ……」
「真似が上手なんだ、助手くん!まさかそのようなスキルが隠してあるなんて~」
「いや、それはオレの言葉じゃないですけど……」
その声が出た場所は、オレの背中に急にぺったりとくっついてしまった、とっても柔らかい身体の持ち主だった。
「またまた~、助手くんって冗談が上手になったのだ!」
「冗談、じゃない、よ」
「いや、まさか~、ファティラの体力でここに来るのはこんなに早くないよ~」
「転移、は良い魔法、よ……」
「なるほど、ファティラならそう出来るのも不自然ではありませんのだ」
後ろから伸ばされた小さな手がオレの頬を撫で、耳をもぐもぐし始めたから、早く気をつけてください!
探偵さんで普段鋭い感覚は何処へ飛んでいったのですか!?もう石拾いの時間じゃない、早くこちらを見てください!
ダメだ、オレが何を言いたい時、話の前にファティラの舌がオレの耳に舐めかかってきて脱力してしまったけど!?っていうか、その脱力感は決して普通じゃない、麻痺のような力で全然動けないまま地面に倒れたのは絶対おかしい。まだ全能で何かを実現した謎技に間違いない!?
彼女は後ろから顔は見えないけど、それは絶対に呆けた表情でイタズラをしたいんだろう。
「だか……弱すぎて転移の負担すら耐えられない、全身は痛くなる、よ……はむはむ、『ふ~、好き、大好き、よ~』」
「ふえぇぇー!?助手くんがいきなり何を言うのですか!?まさかボクの事でそういう目で見るなんて、完全に想定外でしたよ~、告白されるのはこんなに恥ずかしいですけど、全然知らないかた……でも、この時は自分の声で言うべきじゃないが、ボクは真面目に答えるから、もう一回言ってくださいーー」
うわ、今回は噛むと舐めだけで済ませない。耳元から息を吹きかけて、ドロドロなASMRを始めてしまったけど!?それとあれはオレの言葉ではない!ファティラがASMRを真似するために、オレに言わせているのだ。ドストライクの彼女から『好き』は何度も聞いたが、あれは恐らくLoveじゃなくて、純度100%のLikeに間違いありません。
「ーーうええおおええぇぇ!?ファファファ、ファティラ!?いつの間にかーー!答えないのも分かる、きっと最初からそこにいます……そこでキミに舐めて地面にひれ伏せた助手くんの状況を見れば大体分かるけど、この問題を教えてください……悪口と、その告白は……」
「ふふ……ドッキリ大成功、だ~!もう、助手……動けるのはダメ、カッコつけるの時だから、あーむ……ペロり、ちゅるり~……これで腰が抜けた、動けない……そう、先から初雪と話し合えるのは、全部、このファティラ、だ!……でも、わたしは嘘を付かない、初雪も好きだ、よ?……もちろん助手も大好き、アイリスも好き、わたしに優しする人は全部好き、よ。」
「そ、そっか、あっははー、その系の好きだな……ボクの自意識過剰みたいだな、ちょうどさっきの爆破で穴が開いたし、ちょっと自分を埋めてくるのだ……」
オレは仲間の中でも随分弱いことに自覚があるけど、力は初雪に強くても近接格闘なら勝てない。アイリスは小さいけど、オレたちで一番強いのは誰にも文句無しだろう。
けど、けどさ、まさかオレは普段世話している、幼子より脆い、無気力なファティラに完全制圧されるとは、オレの認識を越えた、理解できない事件だった。どうして、ただ耳や頸や頬を舐めるだけで、致死量の気持ちよさで力が入らないのか理解できないけど、これがテクニックで説明できるものなのか……!?
「良い子、良い子……普段は世話されたお返しに、わたしに甘えるも良い、よ……もっと気持ちいい事をする、の?」
ずっと背中から顔が見えないまま声と触覚だけ感じるから余計に感じる……恐ろしい魔性と包容力、女神なのに天然の小悪魔……!この断りにくい誘惑がーー
「お前たちは遊んでないわ!!早く素材を拾うのに協力して来なさい!初雪は芋の真似を止めて、助手もカーペットの真似をやめなさい!」
「あっ、はいのだ!今すぐ自分を収穫するからこの槍を投げる構えをください!」
「わたし、転移の反動で身体が痛い、ほぼ動けない、よ……」
うん、やっぱり断るが、絶対にアイリスが怖いから断るんじゃない……そういえば、ここで別のパーティーがいるんだっけ……うん、メンタルヘルスの為に、考えるのは辞めよう。
っていうか、初雪は本当に自分を埋めるのか!?てっきり初雪流の冗談だと思っていただけなのに、実現するとは……。
あと、オレはカーペットを真似していないけど!?これはほぼファティラのせいですけど!?
アイリスの言葉でファティラの責めが止まったから、オレもそのあり得ない脱力感から回復した……うわ、耳元がファティラのせいでベタベタだ。
けど、動けるならーー、オレは地面から上がり、背中にべったりして好き放題イタズラしたファティラを捕まえて、両脇を抱えて正面に持ち上げた。
「おー……高い、高い~……?」
抵抗はなく体重が軽いから、お人形みたいに揺れる。こら、いやらしい舌なめずりしないでくださいよ。
「ファティラ、その舐め方は一体なんだ?こんなのまだあの雑なテクニックじゃないような、実は毒を入れたりしていないよね?文字通りの毒舌じゃないようね」
「テクニック、よ?……あの時は、『面白いそ、こそこそ忍び寄るす、付いてに助手もイタズラする』に思うと、なんとかできた、よ……しょっぱくってけど、美味しい、よ……もっと調味すれば、もっと良い、かも?」
「こら、他人の事を食物みたいにグルメ評価するのは止めてくださいよ、オレは食物じゃないよ……特に魂を本当に食べるからこの怖さは段違いだけど。もう悪い子の真似を辞めてくださいよ。もしイタズラ心が止めないなら、せめて人前でいたずらするのはやめて。それに、オレはいいけど、他人にそんなことをするのは行けないよ。ほら、ネルくんたちはびっくりするじゃないか」
オレはファティラを回してネルくんの方向に見せつけると、あちは顔が赤くて、三人のお姉さんがネルくんの目を隠しながら、こちらをちらちら見ている。ほらな、ファティラがやった事は刺激が強すぎて、あちの保護者たちが教育上よろしくないと認定されるじゃないか。
「うん、わかった……我慢するから、宿でさらにすごい事をする。……それに助手、初雪、アイリス、仲間たちの魂は食べない……カルマが限界に溜まって転生が出来ないも、ずっと傍に置いとく……未来永劫に、よ?」
「いやいや、それ、全然わかってないけど……それの後ろのその激重の発言は怖いけど」
オレがそう言うと、ファティラは手を伸ばしてオレの頭を撫でると同時にそう言った。
「怖くない、怖くない……お友だちはずっと傍にいるのは、普通?……ずっ友、です?」
「だから魔性に言うのに……まぁ、今回はこれで良いか、早く素材集めに協力しないとアイリスの槍は飛んで来るから、行こう!」
「転移の反動で動けない……背負って……」
「こんな短距離で反動は高くないですが!?」
「だって、普段の転移方法が奪われた……人間の転移と似合わない、の」
「あちはまだサボりするなら、本当に槍を投げるわよ!」
「今行くー!」
まったく、先は魔性の小悪魔なのに、まだ甘えん坊に戻れた……真反対の属性で、この色々が雑な子なら違和感が不思議ほどに似合えるな……属性をどれだけ盛れば気が済むんだ。
まさかのオールコンプリートを目指す、ですか……!?
共に落ちた素材を集めると、やっとこのダンジョンから出た。
一応風精の翠石はネルくんのパーティーで『僕たちは有効打を与えられなかったから、素材は全部こっちのモノでいいって。』から全部あげるらしい。
*
――002号室・錬金術師の始祖の街、フラム・ギルド――
オレたちはダンジョンから、ギルドの集合場所へ戻ってきた。
途中で脱退して諦めたパーティーは、落ち込んだまま先にそこにいた。傷は既に治されているみたいで早いな。あ、錬金術がこんなに繁栄する街だから、異世界で定番のポーションがたくさんいるはずだろう。
受付嬢のリリアンは前にいて、こちらを見ると元気いっぱいに宣言した。
「これで最後の二つパーティーも帰還されたので結果を発表します!まさかのまさか、今回はなんと~~全員合格しました!パチパチ!」
それもそうだ、最後までたどり着いたのはオレたちとネルくんの二つのパーティーだけ……ん?全員?
「その、俺たちはあのエレメントに負けても合格なんですか?」
疑問するのはオレだけじゃない。あのハンター団体のリーダーが先に質問した
。
「はい!あなたたちはバッチリリクエストを完成しましたよ?ほら、あそこに書いてあるでしょう?『五階に到達する』って。ああ、でも次はもっと依頼書をしっかり見た方が良いかな、あのエレメントと戦うのは消耗しすぎるよ?でも……」
それを言うと、リリアンはこちらに顔を向けた。
「あの逸脱のエレメントを倒せるのは想定外でした。あのレッサー・エレメントは本物のエレメントほどの魔力を保有しているのにずっと進化していない、レッサー状態を維持する。F級の種族だけど、あの個体だけがA級に評価されるレアモンスター。この試練の目的は新人のみんなさんが安全な状態でダンジョンの怖さを知ることだけど……まぁ、ダンジョンのボスは復活するし、A級魔物すら倒せるなら問題はないでしょう!そうそう、その風精の翠石はギルドで買収するから、品質次第でいい値段で売れるよ~!」
なるほど、でも仲間たちでびっくりしたのはオレだけに見えるけど。
「そんなの最初から分かるじゃないわ?あのエレメントと戦うのは旅費の為よ。ついでにお前たちに実戦経験を積んで欲しいだけど……ファティラが頑張りすぎて、単純に鉱石採取みたいになったけど」
「ちちちー、助手くんはまだ甘いのだ!こんなの一目で見破れないなら探偵助手にはなれないのだ~」
まさか、ファティラも気付いていたのですか!?
「その、ファティラは……」
「わたしは知らない、よ……そもそも、気にしない、やればやるだけ、よ」
これはこれで、職員の手から順番にカードを受け取った。
あれは何か知らない金属のカードで、名前とFの階級が刻まれている。
「これで合格が……、明日から金策しようか」
オレがそのカードを観察している時、誰かの声が横から響いた。
「その、少し時間を頂いても良いですか」
この声は……
「ネルくんだよね。オレに何の用ですか?」
あれは先が知り合いばかりの赤毛少年がいた。
「少し商談がしたいんだけど」
その表情は大敵に向かう決意した表情だった。
*
「本当に良いのですか!?」
「ええ、良いわよ。わたくしたちはただ拠点が必要だから、たとえボロな屋敷でも、少しメンテナンスすれば良いわ。」
オレたちとネルくんのパーティーはギルドの会議室を借りて商談した。
まさかオレたちが目標する屋敷がネルくんのものだったとは、完全に想定外だった。
それに、あのパーティーのメンバーたちは意外とまともだった。
パーティーのリーダーは錬金術師のネルくんで、あの魔女っぽいお姉さんのはソフィア、ネルくんの姉だった。
その神職者は悪魔じゃなくて、魔族のお姉さんリーシャは普通の良い人だった。その服装は魔族のシスター服らしい。
ケモミミの戦士のキャルロも、意外に礼儀正しい女騎士みたいな人だった。ついて、彼女の犬じゃなくて、狼らしい。
ネルくんが提出する要求は、リストに書かれた素材を集める必要があるから、その集めるのに協力して欲しいというもの。
その代わりに、屋敷の金額は素材の価値で減らすこと。
こんなに都合の良い提案から、もしオレなら考えもなく答えるけど、今交渉しているのはアイリスがメインで、初雪がフォローする。
先のように、アイリスは平然と巧みな嘘で真の目的を隠し、初雪は脇から嘘の破綻を埋める……彼女たちの合力でオレたちの利益を最大化されながら、向こうの利益も確保する。
あんまりも怖すぎて、オレは傍でファティラと遊んでいて、あちの事を聞こえない振りにした。
そもそもオレは考えることが表情でバレるタイプだから、このような商談に参加しない方が良いかも。
「チェックメイト……弱い?」
「あっちゃー、まだ負けがー。」
商談に邪魔しない場所で、ファティラとギルドの備品からチェスみたいなものを探して、ルールは少し違うけど、ファティラの全能で何とか分かった。その結果は六連敗だった……オレは絶対に弱くない、きっとファティラが強すぎるから!
「負け犬、わたしに『あーん』して、よ」
「はいはい、オレは負けるから仰せのままに、女神様。」
オレは負けるから仕方ない。テーブルに置いてあった小さいケーキみたいなものをファティラが大きく開けたお口にあげる……こら!オレの指まで食わないよ!その舌癖は本当に悪いです。
「その、お二人様は付き合ってますか?」
ずっと黙ってチェスを見ていたシスター、リーシャさんが急に話した。
その急な質問で、オレとファティラはお互いに見ると、同時に答えた。
「そうじゃないけど?」
「まだ無い……よ?」
「ふえー、でも、お二人様はダンジョンの中であんなことをするなんてー!先は、その、『あーん』もするのにー!」
あんなこと?ああ、ファティラのイタズラの事だったっけ。
「まぁ、あれはファティラだし、このような奇行は普通じゃないが?」
「うん……普通、の?」
「いやいや、こんなのおかしいですよー!普通なら仲間を舐めないってー!おかしいのは私だけですかー!?」
うん、ああ、分かってました!リーシャさんはシスターだからこういうの耐えられないが、そんなに色気溢れた服装を着ているのに、その本性は純粋純潔な子だったな。
「まぁ、まぁー。これはこれで、リーシャさんは商談に参加しませんでしたか?」
「それは、良いじゃないか。私は教会から派遣された身分だから、このような決断には参加しないよ。」
「なるけどーー」
「チェック……七連勝でした……ほら、おやつをあなたの女神様に献上なさい、使徒、よ」
「はぁ!?いつの間にか!?それにオレはお前の使徒ではないけど……ほら、今回はフルーツクッキーよ。」
この距離ならよしっと、これで指が食われないよね……
「痛い!?お前、そこまでオレを食い気ですか!?」
距離を取っても、ファティラは急に突進してオレの指と共にクッキーを食った……噛み跡が残されたじゃないか。
横にいるリーシャは顔が真っ赤になって、こちらに指を指したままフリーズした。
「人前でえっちのはダメー!」
「えっちのはしていませんけど!?」
「しているのにー!私の目で見ましたー!」
「もぐもぐ……もぐもぐ……」
リーシャさんの指摘で混沌になるその時、アイリスの声がそれを打破した。
「お前たちは何を遊んでいますわ?商談が成立したわよ。」
「くそ、結構自信があったのに、冒険者との商談で負けるなんて……」
「まぁ、ネル君。結局は私たちに損はないのと同時に素材が得られるから、良いじゃないか」
「でも、ご先祖の屋敷をこんなに簡単に売ることになって……少し複雑な感覚」
「その点も契約で約束しただろう。屋敷の改造は最低限で、彼女たちがこの街から移動すると、それは優先的に私たちに売り返すこと。彼女たちは冒険者だから、一つの街に長く留まれないよ。」
あ、オレたちが千門ホテルに帰還することまで考えていたのか。そしてこの点を契約に追加すれば目標額が更に減らされる。
「ねぇねぇ探偵さん。その契約書はオレに見せてくれますか?」
「うん?良いよ、見てご覧……待って!その手はどうしてベトベトなのだ?……その噛み跡で分かる、まだファティラのせいかな、なら重要な部分を教えるかな~!そうね、簡単に言えば、屋敷の値段は変わらない金貨百枚で、もしボクたちがリストに掲載された素材を提供すれば、その素材の金額の1.2倍で屋敷の値段を減らします!このようなルールを設定されたのだ!でも、もし屋敷を売れば、金貨百枚でネルくんに売り返すの約束二つかな~」
うん……素材は1.2倍で買収されるみたいで、材料の優先供給権の約束が……まだ何の成果も出していないオレたちにとって、この約束は滅多にない破格の優遇だ。
だがそれは同時に、彼らがこのリストの素材をいかに喉から手が出るほど欲しているかが暴れる。
金を儲けることなど、オレたちにとってはただの過程に過ぎない。真の目的はその屋敷に実在するかどうかもわからない「傑作」だ。
「良い商売でしたな、探偵さん」
「ククク、だろう~」
「「クハハハハ~!」」
オレと意図が分かった初雪はオレと同じ陰険な顔をして、同時に笑った。
そう、まるで悪の代官と悪徳の商人みたいに……あ、昔のオレから時代劇の記憶が発見された。
「姉様、まさかこの契約書に罠文字が書かれていましたか!?」
「それは無いはず……念のため、もう一度検査しよう。」
「坊っちゃん、お嬢様。私も共に検査します」
「その、私もご一緒しますー」
なんか勘違いされている、ごめん。




