第14話・二週目・002号室・エレメント・その二
第14話・二週目・002号室・エレメント・その二
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――002号室・錬金術師の始祖の街、フラム・風の遺跡、第五階層――
螺旋階段の最下層に近い場所で、オレはファティラを褒めるためにナデナデしているだけなのに、なぜか初雪も急に加わって、妖刀ちゃんまで振動で『仲間外れにしないで』と願ってきた……刀はどうやって撫でるのか迷ったから、柄で良いか?柄を撫でるとなんとかその振動が止まった。
最後はアイリスまでナデナデを要求してくるのは想定外だった。
「にゃんふ……にゃん……ん……あれ?もう、おわり、の?」
「これは良いね……癖になるかも、でも時間が遅いし、さっさとミッションをクリアするのだ!」
戦闘前の準備をするはずだったのに、なぜか突然なでなで大会になってるんだけど。
「ふ、ふん~、ま、まぁ~、悪くないじゃないか~。わたくしの頭を撫でるの無礼さを許してあげるわ」
「え!?アイリスから要求してるのに、理不尽!?」
「うるさいうるさい!全部お前の手が悪いんだ!わたくしが許すと言っただろうから、黙って受けるなら良いのに!……今後はわたくしの頭を撫でる権力を与えるから、さっさと続けて!」
「その、早くボスと戦えないと時間が……」
「それは……仕方ないわ、レッサー・ウィンドエレメント風情なら、時間はかからないわ。覚えてろ、行こうわ!」
「え、オレは何を覚えてるんですか!?」
「ふんだ、自分で考えてごらんなさいわ。」
アイリスは上機嫌が不機嫌が訳のわからない言葉を投げると、最後の階段を降り始めた。
残されたオレと初雪とファティラは急いで追い付き、ボスエリアへ入った。
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――002号室・錬金術師の始祖の街、フラム・風の遺跡、第五階層、ボスエリア――
ーーネル・フラム・アドラーの場合ーー
F級ダンジョン『風の遺跡』の最深部、ボスエリアで、四人組の新米パーティーがダンジョンマスター『レッサー・ウィンドエレメント』と既に長い時間戦っていた。
「ぐっ……!まだ、あの風壁を突破できない!」
レッサー・ウィンドエレメントを纏う風が障壁のように立ちはだかり、僕がポーションを投げても吹き戻されてしまう。
「ネル様、もうダメです~!私の魔力はもう限界です~!回復は二回分だけ残っています~!」
『魔族の聖職者』、教会から支援されたリーシャは泣きそうな声で緊急事態を伝えた。彼女のそのエッチなシスター服は魔族に規定された正装らしく、恥ずかしくても変えられない。彼女元々は村娘らしい。
「おい、坊っちゃん!こいつの力は明らかにレッサーを越えてるじゃないか!もはやA級魔物のエレメントへ進化してるんじゃないか!!」
『狼族の戦士』キャルロ。僕の実家、フラム家を守る護衛長で、ある事情で家から出た僕と一緒に護衛の役割を果たす忠義な人だ。名高い武人だが、物理攻撃しか使えないのでレッサー・ウィンドエレメントには近づけない。
「いいえ、あれは実体がある以上、レッサーに間違いない……が、変異の超常個体の可能性は排除できない。」
「ならお嬢様の魔法で何とか解決すればー」
「無理よ。たとえわたくしが魔法の天才で二重属性の学園一を卒業した魔女でも無理。だって、わたくしが持つ属性は水と風だから、水は有効ダメージが入らない、風は吸収される。だから今は強化と妨害に専念する。ほら、魔法が来ますよ、この魔力パターンは『風刃』、『狂風』、『瞬間狂嵐』……あと、『突風』の三十連撃も同時に発動するわよ!」
「まだえぐい魔法が来るのか!?」
「みんな様、早く避けてください~!!回復はもうすぐ無くなります~!」
「坊っちゃんとお嬢様は早く回避を!」
『魔女』、どういう称号を選んだ魔法学院から卒業した我が姉、ソフィア・フラム・アドラー。今はもう安全ではない家から無理矢理に僕と一緒に旅行するよう願ってここにいる。
そして、僕はこのフラム街で誇り高き先祖、『始祖の錬金術師』ウィリアムズ・アドラーの子孫であり、この街の領主、錬金爵ネル・フラム・アドラーである……はずが、両親が怪しい不明の原因で死んだ後の継承儀式で、中央の書類を持った豚のような男が私兵と共に現れた。
そいつの名前はどうでもいいが、その豚が持っていた書類にはこう書かれていた。
「ネル・フラム・アドラーは、錬金爵を継承するには未だ若年である。よって、先祖秘伝の秘薬を錬成させる、古き儀式『錬金爵継承の試練』を完遂するまでの前に、本領地の統治および管理は、代官がこれを代行する」
それはもう廃止され、何世代も行われていなかった古い継承の試練を、急に完了するよう要求される。
王の印が刻まれた以上、僕は従うしかない……けど、その代官は豚のような醜悪な姿と同じく、我が家アドラーの名前を好き放題使って民を陵辱し、僕の試練に必要な素材を得るのを邪魔する。
そのような明らかに王の律法を公然と違反する悪人でも、証拠が手に入らず、貴族権限が凍結された以上無力の僕は何も出来ない。
だから、民の為に、先祖の為に、家族の名誉の為にも、一秒でも早く継承しないと。
そのために、家の従者たちを一時家に帰し、先祖が住んでいた家を売って素材に必要な資金を用意し、自分を冒険者に登録して自ら素材を集めるつもりだった……最初の一歩で、このダンジョンマスターに邪魔された。
「ネル様、早く決断をください~」
「坊っちゃんはどんな決断をしても、私はそれに従うから、その意思を教えて!」
「ネル君、どうする?」
これは、仕方ないのか……
「今回は諦めるけど、次は絶対に通るから……『ギブアッーー』」
「おう、ネルくん~、只今来ましたけど、途中加入欲しい?助け人が必要か?」
僕が諦めの宣言をする前に、ダンジョンに対してのんびり過ぎる声がそれを止めた。
その声の方向は、螺旋階段のところだった!まだこの試練に残されたパーティーがいるのか!
「おい、その言い方は軽すぎますわ。あいつが友だちなら良いけど、もし傭兵にこんな言い方をしたら、向こうはこちらをなめているか挑発だと誤認して敵を増やすわよ!」
「まぁまぁ、アイリスちゃんは真面目すぎますよ~。ほら、同じ冒険者になりたい仲間だから、そこまで気にしないのだ!それに僕の観察眼から見れば、そのパーティーは何処かのお偉いさんのパーティーに間違いないから、この細かいことは気にしないはずのだ~」
「早くかいれ……寝たい、食べたい、ゴロゴロしたい、ナデナデしたい」
螺旋階段からやって来たのは、ギルドで一度面識した、僕たちと真反対のパーティーだった……パーティーの名前は確か、《千門の探索者》。何故僕の名前が……あ、そのふざけたパーティー名から分かるのか。
でも、僕たちみたいに使命を背負っていない、思うがままに冒険するのは羨ましい。
あのパーティーで、一番前にはここで珍しい黒髪黒目の青年で、変な形の剣が腰に付いている。
彼の側で叱る、後ろに五本の武器と両脇に鉄板のようなものが浮遊する金髪の小さな少女……その隠さない品と見たことのない武器から見れば、その令嬢は何処からの貴族か豪商の娘だろう、大分。
後ろには雪のような白い髪で、色が違った両目の小柄な少女。その長すぎる髪は結ってギリギリ地面に接触していない。彼女の言葉で、もはや僕たちの正体が見破られそうだ。
最後は、同じ白い髪のロリ少女で、何やら疲れそうに見え、杖を持っているから彼女は魔法使いだろうか?……でも、何故光っているのだろう?人で光っているのが?でも、うちの姉は同じ魔法使いなのに光っていないはずだけど……
でも、これなら希望がまだある!
「共闘お願いします!」
「ほらアイリス、何が大丈夫じゃないそうじゃないか。おうー、共に頑張りましょう!お願いしますよ~!行くぞ、妖刀ちゃん!」
「何が複雑な気持ちでしたわ……まぁ、良いわ。この世界のエレメントはどれほど強いのか、試しにするが!」
「ボクは……うん、この嵐を見ればバールで何も出来ないじゃない?なら、チアガールみたいに応援するのだ!フレー、フレー、頑張れー!」
「早く帰る為……少し本気、よ!」
彼らのパーティーがこちらの救援要求を受け入れた瞬間、このダンジョンマスターの異常性を共有しようとした!
「その、気をつけてください!この『レッサー・ウィンドエレメント』はーー」
でも、彼らの行動で僕の言葉はそこで止まってしまった。
「風の壁なら……『逆風』、よ」
そのレッサー・ウィンドエレメントの周りに纏い、無数の鋭利な刃のような風壁が逆転され、嵐で打ち消された。
「これは、何で暴力的な風の使い方ですか!?堕ちるでも、あれは精霊なのに……そのお方の魔法使いは精霊以上ですか!?」
姉もびっくりした顔で見れば、これは明らかに学園首席卒業した彼女も出来ない仕業だろう。びっくりなのはこれだけじゃない。
「道が開けたわ!助手、わたくしを合わせて、追いつけますか?」
「努力してフォローします!妖刀ちゃん、オレの剣筋を修正してください!」
お互いに珍しい形の武器を操って、金色と黒色の軌跡を残し、まるで長年付き合いの仲間みたいに縦横無尽に交錯する斬撃がその翠色の水晶体にヒビを刻む。
「うわこの斬神流の剣筋は妖刀の仕業?本気で気持ち悪いわ!わざわざわたくしが唯一で真剣勝負に負けた剣術を選ばれるのは良い度胸じゃないわ!何が『幼女を殺せない』が、誰が幼女ですわ!?人をなめるにも程があるわ!もう、ムカつく!」
「おおーー!?腕が変な形に動く、関節が変な声が響きます!?それにこの構えはオレが選んだんじゃありませんけど!?その殺意が溢れた目で見るな!?オレはいつでもアイリスの事が立派なレディだと思ってるから、命だけは許してください!」
「もういい、この後でわたくしの機嫌が直るまでにナデナデしないと殺すぞ、その忌々しい呪いされた刀と一緒にね!」
『カダカダ、カダカダ(壊せる、壊せる!?)』
何が喧嘩をしながら、斬撃が止まらない。
それに、レッサー・ウィンドエレメントの方は不気味なほど反撃が来ない。僕はその原因を知りたくて姉を見ると……彼女は顔が青くなり、汗が流れていた。
「あり得ない、全部向こうの魔力パターンを読み込んで、一歩前に逆の魔力を送って消した!?あの、アホみたいな顔で!?ボーッとした顔で!?」
全然、弟としての僕を気にする暇もなく、恐ろしい顔で《千門の探索者》の魔法使いに視線を投げていた。
「はーう、眠い……もっと早くできないの~……いっそそのまま全部壊せば……アイリスは怒るから、ダメ、が……なら、支援する、『エンチャント・火』……良い子にすれば誉めてくれます、が?」
彼女は目を半開きにしてあくびをし、ボーッとした顔をしているけど、その杖に嵌めた宝石は壊されたように明滅を繰り返し、晶体を攻撃する二人の武器に火が付くのは、魔法が発動した証明だった。
「これは良い火だ、効いているわ!おいー!あそこでサボってないで!早く加勢してください!」
「フレー、フレー!が・ん・ば・れー!……え、ボクですのだ!了解のだ!見ろよ、我が聖剣の威光!……どういうわけで、ファティラ!エンチャントお願い~」
「お、おうー?坊っちゃん、私は行ってきます!」
あの金髪の子の怒鳴りで、先から何処かでポンポンの玉を持って応援していた子が金色に輝く鉄の棒を持ったまま前に走り出し、キャルロも困惑の顔で大剣を構えたまま加勢する。だが……
「ここで、私たちはここで必要ないんじゃないか……」
「そう、だな……僕も同じ気持ちだった……。共闘より、完全にあのパーティーだけで十分じゃないか……」
「あのような神域の魔法使いがいる限り、あの『レッサー・ウィンドエレメント』は完全に封殺され、唯一有効なのはその固さだけなら敵にならない……」
先の前に僕たちと一緒に戦っていた新米パーティーはこんな強さを持っていなかったから、このパーティーがおかしい可能性が高い。
この街は錬金術始祖の街だから、冒険者も素材狩りが得意だけど、戦闘力はこんなに高くない。
標的の秘薬に必要な素材は危険な魔物が多い。それじゃない、ーー
「このような強力なパーティーがこの街に登録した限り、家を奪還する時間が短くなる」
「依頼が……彼らの強さで、依頼に必要な素材を調達できる……でも、ほぼ全てがあの豚に奪われた以上、わたくしが手に持っている手札は、先祖様の屋敷だけが」
これで協力が成立できるが、交渉次第だな……貴族として、錬金術として、腕が鳴るぜ!
「ネル様の顔が邪心を感じてますです!」
「ネル君、その顔が!」
見ろよ、ご先祖様!僕は絶対にあの豚を領地から追放するから、ククク、クハハハー!




