第11話・二週目・002号室・新人試練
第11話・二週目・002号室・新人試練
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――002号室・錬金術師の始祖の街、フラム・冒険者ギルド――
翌日の朝は早々に訪れた。
オレが目覚めた頃には、アイリスはとっくに起きて旅館の裏庭で朝練を始めていた。
そのため、朝に弱い初雪とファティラを起こす役目はオレの担当になっていた。
あれは本当に大変だ。
起きたばかりで頭がぼんやりしている初雪は、とんでもない甘えん坊と化す。
同時に、まるで蛇のように無意識に関節を極め、絡みついて離れない抱擁を仕掛けてくるのだ。
特にファティラの惰眠は凄まじく、起こすのに時間がかかる。
急いで女将から四人分のパンを貰い、ギルドへ走り出してギリギリ間に合った。
「これで試練の参加者全員集合ですね。今回の冒険者新人試練の説明を始めますよ。」
リリアンはギルドの訓練場にいる全員に話しかけた。
ここにはオレたち以外にも、同じ試練に参加するパーティーがおり、人数は結構多い。
オレはキラキラ目をした初雪の暴走を抑えるため、後ろから彼女の口を必死に塞いだ。
「ねえ、アイリスって見る目があるでしょう?ここに要注意のパーティーがいますが」
この時、王女であり、傭兵でもあり、広い見識を持つアイリスに向かって、オレは声をかけた。
「そうね、ここに集まった全員をわたくしの目で見ると、ほとんどのルーキーですわね。少し目に入るのは……あそこにいるハンター集団と、そこの赤毛少年のパーティーだわ」
オレは彼女が指したパーティーの方向にちらりと視線を向けた。
ハンター集団と呼ばれるパーティーは、三角帽子を被り、マフラーで口元を覆い、マント付きの装備を身に纏い、腰にクロスボウとナタを下げていた。
なんか邪神も狩れそうなプロの集団だな。
そして、赤毛の少年は……あった。あれは何だかオレたちと逆のパーティーみたいだ。
こちらがロリばかりなら、あちらは……なんか恥ずかしそうな若い少年と、彼を包囲するお姉さんたち。
そのメンバーはエロティックな悪魔みたいな異族のシスター。
「そのような装備、本当に大丈夫ですの?」という防御力ゼロに見えるビキニアーマーを着たケモミミの戦士。
と、その少年を後ろから抱き締めている人族の魔女?
あ、その少年と目が合った。
その視線は……同じ世代の子と一緒に冒険したいという羨ましそうな目線だった。
なんか悪いけど、うちの子たちは大分そっちのお姉さんと同じ、或いは年上の年齢詐欺……
「ーうわ!?痛い!!どうしたの、みんな!?」
初雪は口を塞いでいたオレの手を噛み、アイリスはオレの腰に肘打ちを入れ、何時でもどうでも良い顔をしていたファティラまで杖でオレの頭を叩き込んだ。
仲間たちの息の合った連携攻撃に不意打ちされたオレは、思わず小さく叫んだ。
アイリスは不機嫌な表情でオレを睨みながら答えた。
「助手、お前は考えていることが顔に出るタイプだって、まだ理解できていないの?お前は学習能力がないの?その記憶はミジンコ程度の?」
「まさか……」
「えぇー、そうよ。それと、わたくしは年齢詐欺ではありませんわ。見た目の通りのレディですわ。」
ファティラも半目を細めて、満点の笑顔でオレに向かうが、あれは本当に怖い凄まじい圧迫感の睨みだった。
「わたしも……少し怒った、よ。別神の使徒に魅了されるのは、ダメ!……さもないと、別神の殺意が溢れる、の」
そして、『わたしが怒った!ムカーー!』みたいに拳を握ってアピールしながら、両手を振っていた。
「なんかごめんなさい。こら、初雪も噛まないで、傷を舐めないでください……勘弁してくれ、どんどん痛くなってきたから。」
オレの謝罪に、彼女は口を緩めて大人しく戻った。
「ぷはー、血の味ってしょっぱいな……ボクは寛容ですから、今回だけ許してあげるけど、次はまだあのような巨乳に惑うならもっと本気で噛み落とすから、覚えておいて。……そのような脂肪の塊は何が良いのか、本気でわからないのだ。もっとボクみたいな希少な存在を大事にしてくださいのだ」
怒らせた理由はそれぞれだが――
「先に言っておく、アイリスに怒らせた理由に弁解できないのはともかく。それ以外のは冤罪です!」
ん……あの少年もこちらを見ている原因は、オレみたいな遭遇をされていたから、その視線が同類を見つけた暖かいものに変わっていた。
「……それが新人試練の試験内容です!これからはパーティーの名前を登録して、依頼書をお渡しします。パーティー単位でここに集合してください!」
ヤバい、リリアンが何を言っているか聞き逃した。そこで――
「初雪……探偵さん、試験内容は何だったか知ってる?」
「もちろん!同時に話すでも、十人以下ならボクは問題なく聞き取れるのだ!今回はくじ引きで、試験内容はギルド管理下のF級ダンジョンを探索するに決定されました!その内容は依頼書をもらえば分かるよ!」
「どこかのお偉いさんがよ、お前は……ならオレたちも集合しよう。そしてパーティー名も考える。」
そう言うと、オレたちはリリアンの元へ、他のパーティーのように集合した。
文字は読めないが、何度か見ると奇妙に読める感じだ。
えっと、『火龍の牙』、『雷鳴の閃光』……なんか定番的なカッコいい名前だ。
『ドラコンスレイヤー』?そう名付けたのは明らかに村から出た新米パーティーだろう。夢がある名前だな。
あ、あのハンター集団のパーティー名が出た。どれどれ、『コロロ村狩り同好会』……完全に冒険者ではないがい!
その歴戦の雰囲気は集団狩りで作られたものか?
そして、その赤毛少年のパーティーも出た……『ネル君と愉快な仲間』……それは想像以上酷い名前だ。大分彼の仲間が勝手に決めたんだろう?
「次……あ、昨日出会ったばかりでしたね、ハツユキご一行。何のパーティー名を決めますか?この名前は大事に決めた方が良いですよ、もし世に出るならパーティー名は共に有名になるからね。……本当に変な名前を出さないでください。先の名前で職員たちは笑いを堪えるのが限界に達していました。」
初雪は理解したように頷くと、話し始めた。
「そんじゃあ~、『初雪と愉快な……うううーー」
「こら!先に言うんじゃないわ!」
彼女が完全に言い終わる前に、慌てて口を塞いで遮った。代わりに、オレたちが一番頼もしいアイリスが前に出た。
「あのバカの言葉は無視してくださいまし。ゴホン、『ラランド王国傭兵団』……それは無理が、なら『千門の探索者』で良いわ」
流石アイリス、時々変なことをする初雪と違って、穏健な答えだ。
「へぇ~……『ファティラの使徒たち』はダメ、が」
「ダメわ。わたくしたちはあなたのお使いじゃないわ」
「残念、だ……」
名残惜しそうにファティラはわがままを言わずに諦めた。
「パーティー名は『千門の探索者』に決定でよろしいですか?」
「はい、これで良いです、リリアンさん。」
「分かりました。はい、『千門の探索者』にクエストの依頼書をお渡しします。」
「うん、お願いします。」
オレは初雪を放して、リリアンの手から依頼書を受け取り、広めの場所に移動して全員で円陣を組んだ。
やっと自由になった初雪はその内容を読み上げ始めた。
「どれどれ~、依頼者は冒険者ギルド、依頼内容はF級ダンジョン『風の遺跡』の『五階に到達する』こと。期限は黄昏まで……おお、おまけに報酬も出るのだ。銀貨4枚なんて大金なのだ!普通なら、これが終われば一ヶ月は仕事をしなくても生活できるのだ!」
「それは当たり前ですわ。危険のあるダンジョンに潜り、魔物と戦う可能性もあるわ。たとえ試験でも、リスクに見合った代償を支払うのは当然のことですわ」
「五階層……」
ファティラは依頼内容を見ると、その眠そうな半目はさらに死んだ目になった。
「なんか……疲れそう……倒れないに頑張、る?」
「倒れないでください、マジで。疲れる前にオレに言ってください。」
「……うん、そうする、よ」
オレたちが依頼書を確認している間、すべてのパーティーが名前を登録済みに依頼書を受け取った。
リリアンは二回拍手して、ここの全員の注意を引いた。
「はい~!注目、これからダンジョンへ案内しますよ~!今回は試験だから、隠蔽が得意な現役の冒険者先輩たちが隠れて見守っていますから、何時でもギブアップですよ。」
説明の後、リリアンは目標のダンジョンへ案内した……ギルドの地下に鉄門で閉ざされたダンジョンの入口がある。
*
「新人のみんなさん、準備はいいですか~!競争するも良し、協力するも良し、法律を守る範囲で共に頑張りましょう!それでは~、始め!」
リリアンはどこからかギルドの紋章が入った旗を取り出し、勢いよく振り下ろした。
それと共に、新人パーティーたちは一斉に入口へ走り出した。
「オレたちも早く行こう!」
「そうそう~!未知なる世界への冒険だ!」
「待ってですわーー!」
オレもそう思って初雪と共に走り出そうとしたが、アイリスが後ろからオレと彼女の服を掴んで止めた。
「え、どうした?早くしないと……」
「はあ、まさかこんな簡単な罠を仕掛けるなんて。リリアンさんも良い性格ですわね。」
アイリスの皮肉に、リリアンは営業スマイルで受け止めた。
「それは私のアイディアじゃないですよ。ギルドの伝統ですから。」
「はあ、仕方ないわ。わたくしが説明してあげます……そもそもこの試験は早い者が勝ちではないし、ランキングもないわ。要求されているのはただクエスト達成のみ。だから、早めに競争する必要はないの。ゆっくりと、先駆者たちが脅威をクリアした道を歩めば良いわ。」
アイリスの説明で、オレはリリアンの方を見ると、彼女は何も言えず変わらない笑顔のままだった。
しばらく待っていると、アイリスは五本の浮遊武器から刀を選んで握った。
「そろそろ行きましょうか」
彼女の導きで、オレたちも意気揚々とダンジョン『風の遺跡』の入口へ……
「その……ファティラさんはこのまま放置ですか?」
「「「あーー」」」
リリアンの声で、オレはハッとして、いつの間にか眠って取り残されていたファティラを連れていくのを忘れていたことに気づいた、急いで早く回収する。
良い気分が台無しになった……




