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第七十一話 七大魔家の一族

翌日

 俺たちは、少しでも早く百合を助けるため、その手掛かりを探しに、学校を休んで術木家の別邸を目指していた。


「でも、優奈さんまで来て良かったんですか?」

 俺は優奈さんに、学校を休んでまで来ても良かったのかと問う。


 俺と薔薇は百合を助けると決めたけれど、優奈さんはそこまでする義理は無いはずだ。


「そうね、正直、私もそこまでする義理は無いと思うのだけど、使い魔が助けたいと思っているなら、それに応えるのも主の務めでしょう?」

 それでこそ優奈さんと言うべきか。なんだかんだ言っても、優奈さんもまたお人よしなのだ。







 それからしばらくして、俺たちは術木家の別邸近くまでたどり着く。

「着いたよ、ここが術木家の別邸だ。ここならひょっとすると、百合を助ける手掛かりが……」

 別邸前まで来た薔薇が立ち止まる。

 

「どうした?」

俺は、立ち止まった薔薇に何かあったのかと尋ねる。


「門が、開いてる……!」

「「っ!?」」

 どういうことだ?門が開いている?それはつまり、誰かが侵入したということか?


 もちろん、術木萄越が門も閉めずに逃げ出したなんて可能性もある。

 しかし、薔薇の話によれば、この別邸には研究素材なども置いてあるという。それならば、門も閉めずに逃げ出すなんてことは考えにくいだろう。


 そうなればやはり、誰かが侵入したということか?

 それならば一体誰が?


 俺たちは慎重に別邸の中に入っていく。造りとしては、魔使家の別邸に似ているが、そちらよりは少し簡素な造りになっていて、その分、広くなっている。


 俺たちは別邸の扉の前までたどり着く。

 扉は閉まっているようで、薔薇が、ゆっくりと開けようとする。


 その時、俺たちの背後から声がした。

「これはずいぶんと珍しいお客様ですね」

「「「っ!?」」」


 俺と薔薇は、瞬時にその場を離れ、臨戦体制をとる。

 そして、声の主の姿を確認して、俺は警戒を解く。


 優奈さんが声を上げる。

「あなたは、侍郎さん!」

 俺たちに背後から声を掛けた人物。それは、魔使家の執事、魔使侍郎であった。



「どうしてここに……?」

 優奈さんが魔使侍郎に尋ねる。


「それはこちらのセリフです、お嬢様。突然家を飛び出してたかと思えば、何日も帰ってこず、あまつさえ、このような場に来るとは……!」

心なしか、魔使侍郎は怒っているように見える。他のルートでは、心配しているような風ではあっても、怒ってはいなかったはずだが……?


「ともかく、旦那様は当初、お嬢様が頭を冷やすまで放っておくおつもりでしたが、状況が変わりました。ちょうどこちらからお迎えに上がろうとしていたところです。お嬢様、共に帰りましょう」


 やはりどうにも強引だ。いや、連れて帰ろうとするのはいつも通りなのだが、他のルートよりも強引な感じがする。


 疑問に思った俺は、魔使侍郎に尋ねることにする。

「あの、状況が変わったって、何かあったんですか?」

 魔使侍郎が術木家の別邸にいることも考えると、術木萄越と黒百合が何かした可能性が高いが……。


「あなた様はどちら様でしょうか?」

 魔使侍郎は僅かに警戒心をみせる。

 まだ俺のことは知られていないのか。

 なら、自己紹介しなくちゃな。


「俺は、黒峰刀也って言います。魔使さんの使い魔です」

「っ!?」

 俺は、手のひらの紋章を見せながら自己紹介する。

 まさかの紹介に、魔使侍郎は驚く。


「僕の名前は知っていると思うけど、術木薔薇、僕も魔使優奈の使い魔だよ」

「っ!!?」

 薔薇もまた、紋章を見せながら自己紹介をする。魔使侍郎は、かなり動揺しているようだ。


「お、お嬢様?彼らは一体何を……?いやしかし、確かにあの紋章は使い魔の証……!」

 魔獣ではなく人間の使い魔、それも二人となれば、いくら魔使侍郎でも、動揺を隠し切れない。


 そこへ、さらなる人物が現れる。

「さっきからどうした侍郎。何を言っているの……だ……」

 白いスーツに、白髪混じりのオールバック。厳つい顔をした、人によってはヤ○ザに勘違いしかねない相貌の男。魔使家当主、魔使操蛇だ。


「お父様……!」

「優奈……!」

 優奈さんと操蛇さんの視線がぶつかり合う。

 周囲に微妙な空気が流れる。


「何故ここにいるかは後で聞く。ともかく今は帰るぞ」

 操蛇さんは優奈さんの腕を掴み、この場を去ろうとする。


「ちょっと待ってお父様!一体急にどうしたの!?」

 優奈さんが踏ん張り、操蛇さんの動きを止める。


 操蛇さんは、僅かに逡巡した後、答える。

「昨夜、星詠家当主、星詠未来が、術木萄越が連れた謎の女に殺された」

「「「っ!?」」」

 俺たちは言葉を失うほどに驚く。黒百合に星詠が殺された?

 確かに、黒百合は途轍もない魔力量だった。それでも、星詠を殺すなど、一筋縄ではいかないはずだ。


 何故ここに魔使侍郎と操蛇さんがいるのか謎だったが、そういうことか。

 おそらく、星詠が術木家の者に殺されたことが発覚し、七大魔家当主の代表として、魔使家が調査に来たんだ。


 魔使家であれば、ちょうど当主が、決議の候補者ではないからな。


 そこまで説明した後、操蛇さんが薔薇の存在に気づく。

「貴様は……、術木家の後継者、術木薔薇か!……水蛇!」

 操蛇さんは自身の使い魔、水蛇を呼び出す。


 まずい!ここで薔薇を殺す気か!?いや、殺す気でなくとも、拘束する気だろう。


「待ってください!薔薇は今回の件とは無関係です!」

 俺は薔薇と操蛇さんとの間に割って入り、叫ぶ。流石に、ここで薔薇を拘束される訳にはいかない。


「貴様は誰だ……」

 操蛇さんが、俺に向けて殺気を飛ばす。


「俺は黒峰刀也です。さっき、そこの執事さんにも言いましたが、俺と薔薇は優奈さんの使い魔です」

「っ!……侍郎、本当か?」

 俺の自己紹介を聞いた操蛇さんは、魔使侍郎に真偽を尋ねる。


「えぇ、この目でしっかりと紋章を確認しました」


 魔使侍郎が答える。そして、優奈さんが操蛇さんに向かって、啖呵を切る。

「お父様、私はもう使い魔を手に入れた!私ももう魔術師なの!……友達の大切な人が助けられるかもしれないの。だから、もう少しだけ見逃して」

「優奈……」


 操蛇さんは優奈さんの腕を離す。そして、一考した後、口を開く。

「悪いが、認められない……」

「そんな!」


 だが、と操蛇さんは続ける。

「だが、私はまだ、お前たちの力を確認していない。お前たちの力が有用だと判断できたら、お前たちにも調査に加わってもらう」

「「「!!」」」


 なるほど……、他のルートでの操蛇さんとの戦いは、百合とのルートではこうなるのか……!


 俺と薔薇は一歩前に出る。

「それなら、やってやりますよ。あなたに、俺たちの力を認めさせてあげます」

「どうやら、ここで頑張らないと逮捕されちゃいそうだしね。刀也と僕の力、見せてあげるよ」


 今回のルートでの操蛇さんとの戦い。そして、薔薇との初の共闘が始まる。

 

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