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第六十話 ルートクリア2

星詠及び、天翳大神との戦いの翌日。

 俺と祈闘さんは決議の優勝者を決める魔道具がある場所へと来ていた。


「それにしても、魔使さんはあれでよかったのでしょうか?」

 祈闘さんが疑問を口にする。


 今ここに優奈さんはいない。

 なぜなら彼女は昨日の戦いの後、リタイアしたからだ。


 優奈さん曰く「黒峰くんは一応私の使い魔だけど、流石に他人をいつまでも使い魔にしておくわけにもいかないし、クロもあなたたちのおかげで使役できたもののようだしね。流石にここから優勝争いをするほど恥知らずではないわ」

 とのことだ。


 操蛇さんから使い魔契約の解除法を教わり、すでに契約は解除されている。


 心なしか、解除法を教えた時の操蛇さんの顔が残念そうだったのは気のせいだろうか?


 そんなわけで今俺は、ただの黒峰刀也になって、祈闘さんと共に魔道具がある小さな神社の前まで来ている……の、だが。


「あの、祈闘さん。本当に俺がついて行っていいんですか?」

 俺は祈闘さんにおそるおそる質問する。

 前回は優奈さんの唯一の使い魔だったこともあり、ついて行くことには疑問は無かったが、さすがに今回は、極論を言えば他人である俺が、祈闘さんについて行くのはいかがなものだろうか?


 いや、ストーリーの進行上必要なことなのかもしれないが、とはいえやはり、気にはなってしまう。


「そうですねぇ……、まぁ、たぶん問題だと思います」

「え!?」

 それじゃあ、だめじゃないか!

 やっぱり外で待機しているのが正しいのか!?


 でも、と、祈闘さんは言葉を続ける。

「でも、あなたには見届けて欲しいんです」

 見届けて欲しい……か。

 なら、存分に見届けるとしよう。


 俺たちは進みだす。

 小さな神社の本殿の前に立つ。


 祈闘さんがこちらを向く。

「それでは、いっしょに」

「はい」

 俺は、ただ一言応える。


 二人同時に本殿の扉に触れる。


 目の前が真っ白になった。



「まったく、祈闘殿には困りましたな」

 しわがれた老人の声がした。


 目の眩みが治ると、そこは、学校の教室ほどの大きさで、真ん中に七本の円柱に囲われたオブジェのある部屋だった。


「申し訳ございません『選定者』殿」

 祈闘さんが頭を下げる。

 そこには執事服を着た小さな老人がいた。


「優勝者の使い魔であるならともかく、彼はあなたとは他人なのですがね」

そう言って老人はため息を吐いた。


「はい。ここに部外者を連れてくるなど言語道断です。……ですが、私は彼に見届けて欲しいのです」

「祈闘さん……」

 祈闘さんは老人が相手でも毅然とした態度で貫く。


「まぁ、あなたがそう言うのでしたらこれ以上(わたくし)は何も言いません」

 そう言って老人はまた、ため息を吐いた。


 その後、老人は気を取り直し、終幕の一言を告げる。

「祈闘殿に自己紹介は不要でしょう。それでは、魔術長継承の儀を始めます」


 老人が部屋の真ん中にあるオブジェの向こう側へと進む。


「それでは、祈闘殿、御手を魔道具に」

「はい」


 祈闘さんが進みだす。

 オブジェの前で止まり、手をかざす。


「いよいよだな」

 刀也が語りかけてくる。


 あぁ、これで祈闘さんとのルートも終わりだ。


「候補者、祈闘守杜。汝を第100代目魔術長に任命する」

 祈闘さんが応える。

「心より承ります」

 すると魔道具が強く光りだす。


「ぐっ……!」

 相変わらずすごい光だ。

 わかっていても目が眩む。


 光が収まる。

 すると、祈闘さんに膨大な魔力が注ぎ込まれていた。


 老人はただ一言。

「これにより、第百回日本魔術組合魔術長決定の儀を終わります」


「これが決議優勝の特典の魔力……!とてつもないですね……!」

 優奈さんの時もそうだったが、決議優勝で与えられる魔力はとてつもない量だ。

 四元の魔力量ですら軽く越している。

 もしかしたら、天翳大神ともいい勝負かもしない。


 老人がこちらに近づき、話す。

「魔術長の特権や仕事ついてはおって知らせます。今日はもうお帰りなさいませ」


「はい。それじゃあ」

 祈闘さんはこちらに向き直り、手を差し伸べる。


「帰りましょうか」


 俺はその手をとる。

「はい」


 老人が指をパチンと鳴らした。


 気づけば俺たちは元の小さな神社の前に立っていた。


 元の場所に戻ってきた祈闘さんはそのまま帰ろうとする。


「祈闘さん」

 俺は帰ろうとする祈闘さんを呼び止める。

 

「?なんでしょう?」

「一つだけ聞いてもいいですか?」

 

 頭の中を一つの疑問が渦巻いていた。

 誰かからその疑問を聞けとせっつかれているような感じがする。

 おそらく、この質問はストーリー上でも確実に通らなければならないポイントなのだろう。

 

 俺は口を開き、祈闘さんに尋ねる。

「祈闘さんは、なんで俺に見届けて欲しかったんですか?」


 祈闘さんが目を見開く。

一拍、呼吸をして、俺の質問に答える。


「信じてるからです」

「信じてる?」

 それなりに月日を共にして、共にいくつもの死線を潜り抜けた。

 俺自身祈闘さんを信じているし、祈闘さんからも信じられていると思ってはいたが、それが理由?


「世界で二番目に、神様の次に……あなたを」


 世界で二番目……か。嬉しくはあるが、さすがに神職の人が神様よりも信じている相手がいたらまずいか。


 ん?

 そこで俺はまた一つの疑問が浮かぶ。


 そういえば祈闘さんは神様のことは——


 俺がそこまで思考した時、祈闘さんが俺の手を掴む。


「さ、帰りましょう!」

「あ、ちょっと!?」

 祈闘さんがこちらにはにかむような笑顔を向ける。


 その笑顔を目に焼き付ける。

 そして瞬きをした次の瞬間——


「おめでとうございます。神の存在証明ゴッド・イグジスタントルートをクリアしました」

無機質な、しかし、ナビ子の声だとわかるような声がした。


 景色が切り替わる。

 教室のような空間。ナビ子のいる所だ。


「ここに来たってことは、クリアできたのか」

「みたいだな」

 ここでは、俺も刀也も元の姿に戻っている。


「おめでとう。二つ目のルートをクリアしたわね」

 ナビ子が現れる。

 どうやら優奈さんのルートに続き、祈闘さんのルートをクリアできたようだ。


「世界の繰り返しはどうなった?何か進展はあったか?」

 刀也が尋ねる。

 途端にナビ子の顔が曇る。


「……ごめんなさい。どうやらまだリセットは続くようだわ。次のルート攻略を頼めるかしら」

 リセットの停止にはまだ遠い……か。

 それでも、やると決めたからには最後までやってやるさ。


「わかった。次のルートは……」

 この世界の元となったゲーム。『ノクス・マギア』そのゲームには三人のヒロインがいる。


一人目は魔使優奈。二人目は祈闘守杜。そして三人目は……。


 刀也が呟く。

「百合……か」


 黒木百合。刀也の親友にして、敵でもある術木薔薇の妹だ。

 そして、星詠を変質させた張本人、術木萄越の娘でもある。


 彼女はあくまで魔術師ではないはずだがルート攻略の基本は他と同じでいいのだろうか?


「悩んでいても仕方がない。そろそろ行くぞ」

 刀也が立ち上がる。


「ま、それもそうだな」

 俺も立ち上がり、次の世界へ行くことにする。


 意識が落ち始める。


 次こそは最後の繰り返しにしてみせる。

 俺はそう、強く決意した。

 

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