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第五十四話 弾丸《タマ》よりも速く駆け抜けて

星詠との二度目の戦いが始まった。


「クロ、祈闘さん、散開してください!」

「はい!」「Gyau!」

 俺、クロ、祈闘さんは三方向に分かれる。


 一箇所に固まっていても星詠の集中砲火をくらうだけだ。

 なので、星詠の注意を散らすためにも散開して戦うことを決めていた。


「その程度で俺の魔術から逃げれると思っているのか!」

 星詠が手を横に振る。

 それと同時にいくつもの()が現れる。


 来る!

 そう思った瞬間に、俺たちに向かってそれぞれ十個ずつ程のスペースデブリが飛ばされる。


 相変わらず凶悪な威力だ。

 まともに受ければ死は免れないと本能でわかる。

 しかし、それは当たればの話だ。


「はあっ!」

 ナイフで切って、切って、切りまくる。

 この程度の数なら十分に捌ける!


 クロの方を見ると、しっかり捌けたようで、俺と同じく星詠へと迫っていく。


 祈闘さんを見ると、捌けはしたようだが、立ち止まってなんとか、という感じのようだ。


 それでもいい、星詠はもう目の前だ。

 このまま……!

 しかし、現実はそう甘くなかった。


「近づけば、自ずと集まるしかないよなぁ」

「っ⁉︎」

 まずい!星詠の狙いは最初から攻撃するために集まった俺たちに集中砲火することか⁉︎


 俺たちの頭上に五十程の窓が現れる。


 さっきよりも数が多い!捌けるか……⁉︎


「クロ、【漆黒盾(しっこくじゅん)】!」

 優奈さんの声が響く。

「Gyau!」


 クロが応え、漆黒の盾が生成される。

 同時にデブリが盾に衝突する。


 なんだ?やけに数が少ないような……。

 俺が訝しんだ瞬間、星詠が呟いた。


「いい盾だ。しかし、避ければどうということはない」

 よく見れば、すでに半分以上の窓が消えていた。

 撃ったから消えたんじゃない!

 これは、ブラフか!


 俺たちの背後にはすでに、いくつかの窓が現れていた。


「こっ、のぉっ!」

 至近距離かつ高速のデブリだが、どうにか全て切り払った。


「それ、次が来るぞ」

「っ⁉︎」

 今度は星詠の側からデブリが飛んでくる。


 くそっ!

「避けろ、クロ!」

「Gyau!」


 俺とクロは星詠から距離をとることでどうにか攻撃を避けた。


 距離を取らされた!しかし星詠の背後にはすでに祈闘さんが迫っている!


「見えているぞ、祈闘守杜」

「「っ⁉︎」」

 星詠は見向きもせずに祈闘さんに向かってデブリを飛ばす。


「ぐっ⁉︎」

「祈闘さん!」

 デブリの一つが祈闘さんに命中し、祈闘さんは吹き飛ばされる。


「だい、じょうぶ、です!」

 どうやら防御には成功したようだ。

 ダメージは負っているが、どうにか無事らしい。


 やはり未来視は厄介だ……!

 どうにか、どうにか隙ができれば()()でいけるのだが……!


「もう一度!」

 俺たちは再び星詠に向かって駆け出す。


「さっきから――」

 星詠の頭上に窓が生まれる。


「主人ががら空きだぞ」

「っ⁉︎」

 星詠の奴、優奈さんが狙いか⁉︎


「クロ、魔使さんを守れ‼︎」

「Gyau!」

 俺とクロが全力で引き返す。

 間に合うか……⁉︎


「やっと、隙を見せたな」

 星詠が呟いた。


「え?」

 その言葉の意味を、俺は眼前に迫るデブリによって知った。





「はっ、ここは⁉︎」

 俺は教室のような空間で目を覚ます。


「あなたは死んだのよ、心也」

 相変わらず教師のような格好をしたナビ子が俺に死んだことを伝える。


「くそっ!星詠の奴、あんな手を使うなんて」

 優奈さんを狙うことで俺の意識を強制的に星詠からそらし、その隙を狙われた。


「だが、確実に戦えていた。勝つ可能性は十分にある」

 刀也が前向きな意見を述べる。


 確かに、前回よりも戦えていた。

 秘奥を使われればどう転ぶかわからないが、回数を重ねれば勝つ見込みは十分にあると言えるだろう。


「よし、そうと決まったら善は急げだ!」

 俺たちはリスポーンした。





 目の前に星詠が現れる。

「クロ、祈闘さん、散開してください!」

 最初はさっきと同じように散開して攻撃を仕掛ける。


 


 さっきとは少し動きを変えてみたりしたが、未来を視る星詠相手では効果が薄かった。


「さっきから――」

 来た!今度こそ!


「主人ががら空きだぞ」

「クロ、魔使さんを守れ!」

「Gyau!」

 星詠の言葉に被せるようにクロに指示を出す。


 クロと共に引き返す。

 しかし、俺は狙われていることを知っている。

 さぁ来い!


 俺の方に飛んできたデブリを一刀の元に切り伏せる。


「またか」

 星詠が何かを呟いた。


 なんだ?上手く聞き取れなかった。いや、今は戦いに集中だ。


「止めさせんぞ」

 しかし、星詠はさらに窓を作り出す。


 さっきの一発はクロが止めた。

 今度こそ優奈さん狙いか⁉︎


「黒竜よ、貴様は邪魔だ!」

「Gruuaaa⁉︎」

「「クロ⁉︎」」

 クロがいくつものデブリを受け、動きが止められる。

 さらに、他のデブリが優奈さん目掛けて発射されようとしていた。


 俺は優奈さんを守るために駆け出す。


 デブリが発射される。

 もう少しで優奈さんの所に戻れる!

「間にっ、合えっ‼︎」

 デブリよりも僅かに早く優奈さんの元に戻った。

 しかし、そんな僅かな時間では優奈さんを押し出すくらいしかできなかった。

 デブリの雨が俺の体を粉砕した。




 

「ぐっ!まただめだったか!」

「こればかりは少しずつ星詠の行動を知っていくしかないだろう」

 まぁ、だよなぁ。

 そもそも、星詠はそう簡単に倒せる相手ではないから仕方がない、か。


「それでも、もう少し、いえ、なんなら次くらいには倒せるかもしれないわよ」

「本当か!」

 ナビ子の発言に俺たちは驚く。


 ナビ子の言葉が本当かどうか。

 試してみるとするか。

 

「よし、もう一回リスポーンしよう」

 意識が暗闇に落ちていく。



 

 また目の前に星詠が現れる。

 今度こそ……!




 三回目だが、やはり星詠に攻撃を防がれる。

 だが今度は全員を守ることで星詠の攻撃を防げるはずだ。


 星詠が窓を作る。

「クロ、盾を張れ!大きくだ!」

「Gyau!」

 クロが大きな【漆黒盾】を張る。

 これにより、星詠の優奈さんを狙った攻撃も、俺への攻撃も、クロへの妨害も防げるはずだ。


「まただ」

 星詠が呟いた。


「何度も何度も、未来が変わっている。お前を起点に、だ。黒峰刀也!貴様は未来が視えているのか⁉︎」

 星詠の叫びには答えない。

 【誓約】による能力の上昇があれば確かに未来は視えるが、今の俺に視えることはない。


「俺の未来だけは、俺以外、何人たりとも変えさせやせん‼︎」

 五十程の窓が現れる。

 その全てが俺の方を向いていた。


 さらに星詠は止まらない。

「星詠家秘奥【操命術・致命】!」

 星詠が魔術の名を呼んだ途端に怖気がした。

 心臓を直接掴まれるようなこの感覚、秘奥を使われた!


「おい、まずいぞ!今攻撃をくらえば再生できずに死ぬ!」

 そんなことはわかっている!

 ともかく、どうにかして攻撃を防ぎ切らなければ……!


「クロ、【漆黒盾】!そして、【瞬間強化】!」

 優奈さんの号令が響く。

 クロが漆黒の盾を張り、俺の身体能力がさらに強化される。


 そして声が聞こえた。

「我が、信ずる神よ。畏み畏み、お願い申す。どうか彼の者に、御身の加護を!」

 祈闘さんの魔術によって俺の体が強化される。


「ぐっ⁉︎」

「祈闘さん⁉︎」

 祈闘さんは、俺に魔術を施した途端に目や鼻から血を垂れ流した。


「やっぱり、二人同時の強化は堪えますね……」

 祈闘さんは笑いながら呟いた。


 祈闘さんと俺、二人同時に強化すると負担が大きいのか!

「何でそんなことを……!」

 

俺の質問に祈闘さんは笑った顔のまま答えた。

「今、ここが、無理を通すべき所だと、思ったからです。あなたは、絶対に死なせない」

 この場で祈闘さんの強化を解くのは自殺行為だし、あの数の攻撃、それに加えて秘奥を使った星詠の攻撃を凌ぐにはできる限りのことをしたい。


 ならば、俺がやるべきは完全に攻撃を捌き切ること。

「おい、もう盾が限界だ!」

 刀也がそう叫んだと同時にクロが生み出した盾が粉砕された。


 盾で防いでなお、数十ものデブリが襲いかかってくる。

 このうち一発でも受ければ死。

 しかし、今の俺であれば、問題無い!


 俺は襲いかかるデブリを切って、切って、切りまくる!

 刹那の攻防、一瞬にして数十のデブリが切り払われた。


「なぜ、死なぬ‼︎」

 星詠が叫ぶ。

 悪いが、死ぬつもりは無い!


「祈闘さん、クロ!『砲弾』をやります!」

「!はい!」「Gyau!」

 祈闘さんとクロが俺の背後に周る。


「くっ⁉︎させるかっ!」

 星詠が窓を出す。

 おそらく未来でどんな攻撃が来るか知って、迎撃しようとしたのだろう。


 だがもう遅い!

 俺は軽く跳び上がる。

 空中で丸まった俺を祈闘さんとクロが同時に跳ね飛ばす!


 インパクトの瞬間に俺自身も二人を蹴り飛ばすように加速し、その速度は音速を超える!


 星詠の魔術が発射されるが、俺の速度に星詠の狙いがついていかない。


「これで、終わりだぁっ‼︎」

「がぁっ⁉︎」

 弾丸よりも尚、速い速度で飛び出した俺は、星詠にナイフを突き刺し、社へと突っ込んでいく。


 轟音を立てるほどに激しく着弾したことで、星詠はかなりダメージを負っていた。

「終わりだ星詠。降参しろ、お前だって死にたくないだろう?」

「ごほっ⁉︎……ぐっ、見透かしたようなことを……!」

 星詠を魔術長にさせるわけにはいかないが、何も殺す必要は無いはずだ。


 だから降参してくれ……!

 星詠が何かを呟こうとした時、男が現れた。


「無様な姿だな。星詠未来」

「っ!術木……!」


 

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