表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
51/68

第四十九話 祈り纏いて滅びを越える

「さぁ、最終ラウンドと行こうか」

 四元の言葉をきっかけに全員が再び構える。


「その属性は水、その形を矢に限じ、我が敵を貫け!」

 四元が詠唱を始める。

 間に合うか……⁉︎


(アクア)……」

「させるかっ!」

 俺のナイフが四元を切り裂かんと振るわれる。

 詠唱は間に合わない!


 しかし、俺の攻撃は空を切る。

「詠唱が必要の無い魔術は同時並行で発動できるのだよ」

 四元は【疾風速(エアリアル・ステップ)】で回避したのだ。


「そして、今なら詠唱を完成させられる」

「しまっ……⁉︎」

 四元の手から魔術が放たれる。


「【水矢(アクア・アロー)】!」

 四元が放った魔術は水で出来た矢であった。


 水と言えど十分な硬度があり、いくつかの矢が俺の体を貫いた。

「ぐっ⁉︎」

 ダメージは負ったが、これくらいならすぐに治る。

 それよりも、矢は俺の後ろにも何本も飛んでいった、みんなは大丈夫か⁉︎


 次の瞬間、俺の側を二つの影が通り過ぎる。

「私たちを舐めないでください!」「Gyau!」

 よかった!どうやらみんなも無事なようだ。


 祈闘さんとクロが四元に攻撃を仕掛ける。

「舐めてなどいないさ!」

 四元は祈闘さんとクロの攻撃を紙一重で避けていく。


「クロ、薙ぎ払いなさい!」

「Gyau!」

「チッ!」

 優奈さんの号令でクロがその巨体を活かした薙ぎ払い攻撃を仕掛ける。


 四元はこれを跳び上がることで回避する。

「空中なら、上手く回避できないでしょう?」

 すかさず、祈闘さんが追撃を仕掛ける。


 これなら……!いや、ダメだ。四元は空を飛べる!空中でも回避できてしまう!


「ぬううっ!」

 祈闘さんが跳び上がり攻撃をした。四元は難なく避けるかと思われだが、体勢を無理やり変えることで回避した。


 なぜだ?……いや、そうか!四元は空を飛べる。しかし、それはあくまでも風の魔術で足場を作り、空を歩いているからだ。

 それには緻密な魔力操作が必要であり、咄嗟にはできない。

 また、空中では全体重を魔術で支える必要もあるから、高速機動ができないんだ!


 四元は重力に引かれ、そのまま落下しようとする。


「クロ、追撃!」

「Gyau!」

 優奈さんがクロにさらなる追撃を命令する。


 四元のことだ、もう一撃くらいは避けるだろう。

 だが、クロの攻撃に俺の攻撃を合わせれば、攻撃を当てられるはずだ!


 クロが四元に攻撃を加えようとする。

 その瞬間に俺も跳び上がり、四元に攻撃する。


「まだ、だぁっ‼︎」

 四元は両手を下に向かって突き出す。


「【魔砲・(みどり)】!」

 四元の体が浮き上がる。


 大きな風が巻き起こり、四元は一気に上昇する。

 【魔砲】の反動で浮き上がった⁉︎そんなのアリかよ!


 クロと俺の攻撃は虚しく空を切る。

 だが、あくまで四元は攻撃を避けただけ、何もできないはず……!


「その属性は風」

 四元は詠唱を始める。


「その形を蓋へと限じ、我が敵を閉じ込めよ!」

 今度はなんだ⁉︎


「【閉風壁(ウィンド・ドーム)】!」

 風があたり一帯を包み込む。

 風のドームによって周囲が一種の部屋へと成る。


 こんなことをして何になるっていうんだ?

 何か、嫌な汗が流れる。


 四元が落ちてくる。

 そこにすかさず、祈闘さんが攻撃する。

 「はぁっ!」

 「がっ⁉︎」

 当たった⁉︎四元はもう限界なはずだ。これでもう……。

 

「その属性は炎」

「「「っ⁉︎」」」

 四元が詠唱を始めて、その場にいる全員が驚愕した。

 まだ、倒れないのか!


「その形を押し固め、灼熱の威光を振りまけ!」

四元の手に赤く光り輝く小さな球が生まれた。


「【炎熱豪火球(フレア・ボール)】」

 熱量は凄まじそうだが、あの小さな火球で何をしようっていうんだ?


「はぁ、はぁ……。今この空間は、私の【閉風壁】で区切られている。そして、空間内の水分量を私が調節できるようにもしている」

 急に何の話をしているんだ?

 水分量?それがどうしたというんだ?


「この空間内は、私が先程放った水の魔術によって多くの水分を含んでいる!」

 四元は今火球を用意した、そして水分の話……、まさか!


「この大量の水分が、私の手元の火球に触れれば、その体積を瞬時に大膨張させる!」


 俺は思わず叫ぶ。

「水蒸気爆発か!」

「「っ⁉︎」」

 二人も俺の言葉によって、四元が何をしようとしているのか気づく。


 四元を止めるか?いや、無理だ。間に合わない。

 となると……。

「全員、伏せろ‼︎」

「爆ぜろ!」

 全員が伏せた瞬間、四元が火球を解き放った。


 辺りが空白に染まる。



「はっ!俺は何を⁉︎」

 どうやら、一瞬意識を失っていたようだ。

 俺は吹き飛んで、近くの家に突っ込んだらしい。


「まだ動けるか?」

 刀也が俺を心配してくれている。


「あぁ、なんとか無事だ。それよりも、みんなは……」

 俺は立ち上がり、辺りを見渡す。

 俺は、倒れている祈闘さんを発見した。


「祈闘さん、大丈夫ですか⁉︎」

「え、えぇ、なんとか……」

 よかった。どうにか無事なようだ。

 だが、意識を保つので精一杯、といった様子だ。

 これ以上戦うのは無理か。


 優奈さんは……。

 俺はあらためて辺りを見渡し、黒い塊を見つけた。


 黒い塊が開かれ、中から優奈さんが出てくる。

「みんな……、無事?」

「優奈さん!」

 どうやら優奈さんはクロが守ってくれたようだ。


「これでもだめなら、かなり厳しいのだがな」

 声がした方に振り向く。


 土の塊の中から四元が出てくる。

 自身を土の壁で守っていたのか。


「あぁ、まったく。もうほぼ全ての手札が尽きた。魔力ももう底が見えている。限界だな」

「でも、諦める気は無いんだろう?」

 俺は四元に問いかける。

 奴は、まだ、一ミリたりとも諦める気は無いはずだ。


 真っ直ぐな瞳でこちらを見つめ返し、ただ一言告げる。

「当然」


 四元の体はもう限界だ。

 すでに何度も攻撃を喰らっている。

 とっくに死んでいてもおかしくない怪我だ。

 それを、気力だけで堪えている。


「とはいえ、次の攻撃で最後だ。通じるかはわからないが、私の全てを賭けるとしよう」

 最後の攻撃。ならば使うのはあれしかないだろう。


「秘奥か」

「!知っているのか。……いや、知っていて当然か。君たちはすでにいくつもの死線を乗り越えているのだからな」


 こちらとしてもかなり限界だ。

 先程の攻撃で祈闘さんは動けそうにない。

 クロも俺も、まだ戦えはするが、限界は近い。


 四元が詠唱を始める。

「火よ水よ風よ土よ」

 させないっ!

 俺は駆け出す。


 しかし、四元は高速で下がっていく。

 くそっ!【疾風速】で詠唱完了まで逃げ切るつもりか!


「結合し、反発し、遍くを無に帰す力となれ‼︎ぐっ⁉︎」

 四元の動きが急に止まる。

 魔力が底をついたか⁉︎


「ひねり、だせ!」

 四元は命を削るように吠え、魔術を発動する。


「【(ゼロ)の魔力】‼︎」

 四元の手にバスケットボール大の半透明な魔力球が生まれる。


 避けるか⁉︎いや、ダメだ。避ければ後ろの二人に当たる!

 受けるしか……⁉︎


「クロ、【漆黒盾(しっこくじゅん)】!」

「Gruuuuaaaa!」

 クロが吠えた瞬間、俺の目の前に黒い盾が生まれる。

 それは、どこか操蛇さんの使い魔、水蛇が使う、【氷白盾】に似ていた。


 盾にプラスしてこの体ならなんとかいけるか?

 いや、ダメだ。前回の記憶を鑑みれば、これでもまだ足りない。

 何か、何かまだ手は……!


 その時、静かな、しかし、よく通る声が聞こえた。

「我が、信ずる神よ!畏み畏み、お願い申す。どうか彼の者に、御身の加護を‼︎」


 祈闘家の魔術【祈り】は、本来、他者にかけるためのものである。

 祈闘家の魔術師自体が戦うために、自身に魔術をかけ、身体強化と併用することで、戦闘を可能としていた。


 しかし、本来この魔術は己が守りたい誰かを守って欲しいと、神に祈り、守護を得るための魔術であった。


 果たして現在、祈闘守杜は守りたい相手のために、己がため以上に、全力で祈っていた。


 力が、溢れる。祈闘さんの祈りが俺に力を与えてくれているとわかる。

 これなら……!


「さぁ、決着をつけるぞ!黒峰刀也!」

「こいっ!四元学人!」


 四元が魔力球を放つ。

 絶大な威力をもつ魔術だ。

 いつもの俺なら簡単に死んでいただろう。


 だが!今の俺にはみんながついている!

 負ける筋合いは無い!


 魔力球がクロが生み出した盾に触れる。

 金属を削るような音をして盾が破られていく。


 そしてついに盾が破られる。

 次は俺の番だ。


 ただ切るのではない。

 クロと初めて戦った時のように、魔術を切るのではなく、弾くように突き刺す。

 いわば、魔力に触れられるまったく切れ味のないナイフで攻撃するようなイメージだ。

 これならば、魔力を爆発させずに抑えられる。


「はぁっ‼︎」

 腕に大きな負荷がかかる。

 まるで、腕だけでビルを抱えているようだ。


「ぐっ、あ、あぁ!」

「信じられん!【(ゼロ)の魔力】にその身一つで対抗できると言うのか!」

「身、一つ、じゃ、ないさ。今の俺には、みんながついている‼︎」

 魔力球とて、いつかは消える。

 そして、その瞬間はもうすぐだ。


「黒峰くん!最後よ!全力で行きなさい!」

 優奈さんが、俺に【瞬間強化】を施す。


 俺の力がさらに上昇する。

「う、おおおおおおおっ‼︎」

 とうとう、魔力球は弾け飛んだ。


「バカなっ……⁉︎本当に乗り越えおった……‼︎」


「四元、俺たちの、勝ちだ」

 俺は、勝利を宣言する。


「……あぁ、そうだな。私の負けだ」

 とうとう四元は意識を失って倒れた。


「……よっ、しゃぁーっ‼︎」

 吠える。

 今度こそ俺は、犠牲無くこの戦いを乗り切ったのであった。


 

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ