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第四十三話 蝗害

道を塞ぐトカゲのような魔獣を倒すために俺たちは駆け出す。

「Gyuoooooo!」

 魔獣がその巨体を活かして体当たりを仕掛ける。


「うわっと⁉︎」

 俺たちは左右に飛んで避ける。


「危なかった……が、隙だらけだ!」

 体当たりを回避したことで魔獣の懐に入り込めた。


「おらぁっ!」

 俺は魔術で魔獣の体を切り裂く。


「Gyaaoo⁉︎」

 一部とはいえ腹を裂かれたことで魔獣は悲鳴をあげる。


「よし、このまま……!」

 俺は追撃を仕掛けようとするが魔獣もただではやられない。


「Gruuoo!」

 魔獣はその場で暴れ出す。


「くっ⁉︎」

 俺は巻き込まれないように距離をとる。

 まずいなあまり時間をかけすぎると他の魔獣が寄ってくるぞ⁉︎


 俺がどうすればいいか悩んでいると優奈さんの声がした。

「クロ準備はいいわね?」

「Gyao!」

 クロは自身の膨大な魔力をすでに溜め切っている。


「放ちなさい、【黒葬】!」

「Gaaaaaaa!」

 一条の黒い光が魔獣へと飛んで行く。


「Gruuaaa⁉︎」

 クロの魔力砲は魔獣に直撃し、爆発を起こす。

 魔獣は跡形も無く消し去り、跡には魔石だけが残っていた。


「よし!進みましょう!」

 俺たちがさらに進もうとした時、別の魔獣が襲いかかってきた。


「なっ⁉︎」

 猿のような魔獣だ。

 あまり強くはなさそうだ。これなら……。

 その時、大きな叫び声が聞こえた。


「嘘……だろ……⁉︎」

 俺の目には膨大な数の魔獣が見えていた。

 視界一杯を埋め尽くす、黒、黒、黒。

 いや、正確には黒色ではない。

 集まっている魔獣の数が多すぎるが故に黒色に見えるのだ。


「魔使さん!【黒葬】の用意を!一点突破を狙います‼︎」

 俺は叫ぶ。今にも震え上がりそうな己を鼓舞するために。

 死んだって終わるわけではない。

 それでも、やはり人間というのは死ぬのは怖いものなのだ。

 ここ最近、死を遠く感じていたが故に忘れていたこの感覚を思い出していた。


「ああああああああっ‼︎」

 俺は魔獣の群れに突っ込んでいく。

「私もっ!」

 祈闘さんもそれに続く。


 切る、切る、殴る、切り裂かれる、治す、切る、切る、殴る、噛みつかれる、治す。


 ただひたすらに、ただ愚直に、止まるな、動き続けろ、活路を見いだせ!

 


「準備できたわ!クロ、【黒葬】!」

「Gruuaaaa!」

 クロの魔力砲が炸裂する。

 これなら……!俺はそんな期待の目で結果を待つ。

 魔獣の群れに風穴が空く結……果……を……。


 しかし、現実は非情だった。

 確かに、クロの【黒葬】は多くの魔獣を倒した。

 しかし、その結果見えたのは、クロの【黒葬】を持ってしても先が見えない程に魔獣が多くいるという非情な現実(絶望)だった。


「そんな……」

 その言葉を発したのは誰だったのか。わからない。しかし、その場にいる誰もが同じ気持ちだった。


「まだだ!まだ死んでない!まだっ……!」

 絶望に歩みが止まる。しかし魔獣は止まってくれない。

 それなら、死ぬその時まで進み続けるしかない!


 切って、切って、切り続ける。

 多少の怪我は無視だ。それくらいなら瞬きの間に治る。


「ぐっ⁉︎」

 祈闘さんが押されている。

 気のせいか祈闘さんの近くの魔獣が多いように感じる。

 そうか!この魔獣たちは元々呪禍によって呼び出された魔獣だ。

 おそらく呪禍の意思により、祈闘さんを優先的に狙っているんだ!


「祈闘さん!」

 俺は祈闘さんの側に寄る。

「おそらくこの魔獣たちは呪禍の影響で祈闘さんを優先的に狙っています。気をつけてください!」

「私を……⁉︎なんて傍迷惑な……!」


 俺も、祈闘さんも、クロも、全員が魔獣を倒し続ける。

 しかし減らない。おそらく戦えば戦う程に魔獣が寄ってきているんだ。

 すでに呪禍が呼び寄せた以上の魔獣がいるのだろう。


「きゃっ⁉︎」

「祈闘さん!」

 とうとう祈闘さんが魔獣の攻撃を食らってしまう。


 魔獣はさらに追撃を仕掛ける。

「このっ!ぐっ⁉︎」

 俺は咄嗟に祈闘さんの前に出る。

 そのために魔獣の攻撃を食らってしまった。


「黒峰さん!」

「大丈夫です。これくらいはすぐに治ります」

 実際すでに傷はほとんど消えている。

 だがまずい、流石にみんな疲労の色が見え始めている。

 

 クロですら、すでに何度か【黒葬】を使ったせいであれほどあった魔力も半分ほどにまで減ってしまっている。


「祈闘さん、もう少しだけ頑張りましょう」

「はい!」

 祈闘さんが立ち上がり、再度戦おうとしたその瞬間、鮮血が舞った。


「……え?」

 見ると、祈闘さんの胸から黒い腕のようなものが生えていた。


「Gugyagyagyagya!」

 祈闘さんの背後から下卑た笑いが聞こえた。

 影のような見た目をした魔獣。魔使侍郎が使っていた、シャドーと同種の魔獣だった。


「このっ!」

 俺が影の魔獣を切ろうとするが、影に逃げられる。


「ごっ、ぼっ」

 祈闘さんは血の塊を吐き出し、倒れる。

 瞬間、脳裏に()()()の光景が浮かび上がる。


「祈闘さん!……っ!クロ、祈闘さんと魔使さんを担いで全力で進め!」

 もうすでに間に合わないとわかっている。

 それでも一縷の望みを持って賭けに出る。


 俺が道を切り開いて、クロに二人を逃げさせる。

「黒峰くん、あなたは⁉︎」

「俺が道を切り開きます」


 諦めるな、思考しろ、止まるな、進め!

 もう、もう二度と、死なせたくない‼︎


 俺は魔獣の群れに突っ込んでいく。

 ただ真っ直ぐに切り裂いていく。

 魔獣に噛みつかれる。魔獣に切り裂かれる。

 それがどうした!進み続けろ!


 俺の跡をクロを二人を担いで進む。

 もう少し、もう少ししたらきっと……!

 いくらかの魔獣を倒した時、()()が俺の足を切り裂いた。

 

「ぐっ⁉︎」

 俺はバランスを崩して倒れる。

 次の瞬間、大量の魔獣が俺に雪崩れ込んだ。


「黒峰くん!」

 優奈さんの声が聞こえる。


 しかし、姿は見えない。

 俺の周りはすでに魔獣で一杯になっている。


 魔獣の爪が体を切り裂き、魔獣の牙が体を抉る。

 再生しつつ、攻撃を加えるが、一向に止まる気配がない。


 俺の体はどんどん小さくなっていって、とうとう俺の意識は闇に落ちた。




 そして、俺の意識は教室で目覚めた。

「俺は……死んだのか」

「そうだ、残念だったな」

 声がした方を見ると刀也がいた。


 俺は前の姿に戻っていた。


「はぁい。それじゃあ反省会の時間といきましょうか」

 ナビ子が現れる。久しぶりにナビ子を見た。


「俺……、また祈闘さんを死なせてしまった」

 悔やむ俺に刀也が声をかける。

「お前がそこまで責任を感じる必要はないだろ。それに、そこまで悔やむなら今度は絶対に助けてやればいい。今の俺たちにはそれができるだろ」

 

 刀也の言う通りではある。悩んでいても仕方がない。気持ちを切り替えることにする。

 しかし、大量の魔獣の群れ、あんなもの、一体どうすれば……?


「はぁい!そんなあなたにヒントの時間よ!」

「お前はいつも明るいな……」

 刀也が少しばかり呆れた様子でナビ子を評価する。

 少しばかり暗い雰囲気にそぐわないナビ子の声だが、今は逆にそれがありがたい。


「で、ヒントってなんだ」

 俺はナビ子の言うヒントを催促する。


「あなたたち、何か忘れていない?」

 忘れているもの?なんだ?


「今まで助っ人なんて呼んだことがなかったかもしれないけど、()()()()()()()()()()()()()()()()()()

「「っ⁉︎」」

 俺も刀也もナビ子の言葉にハッとする。


 そうか、決議において候補者同士の結託はありでも、部外者の介入は禁止だった。

 それ故に、俺は優奈さんと契約することで決議に参加していたし、祈闘さん以外の味方がいなかった。


 でも、魔獣との戦いならいくらでも助っ人を呼べる!

 しかし、俺は一つの疑問が湧いた。


「あっ、でも、俺がリスポーンするとして、それって呪禍と戦う直前だろ?それだと、誰も呼べないんじゃ……」

 戦う直前に戻ったところで誰も助っ人を呼べないんじゃ?電話で呼ぶのか?そもそも、間界って電話が通……じ……る……。


 その時、俺はあることを思い出す。

「そうだ!操蛇さんから貰ったガラケー!」

「なるほどな……!」

 刀也も思い出したようだ。


 操蛇さんが言っていた。

 通常、間界と現実世界は携帯が繋がらない。

 しかし、魔術的な加工を施したものは別だと。

 そして何かあった時は呼べと言っていた。

 あれを使えば助っ人を呼べる!


「これなら……、行ける!」

「気づいたのね、なら、行ってらっしゃい」


  俺の意識が遠のいていく。


  俺はリスポーンした。


 

 

 

 


 

 

 

 

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