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第三十三話 未来は変わる

「刀也ぁ、起きなさい!」

 俺は姉さんの声で目が覚める。

 時刻は七時半、早く支度をしなければ遅刻する時間だった。

「まずい、寝坊した!」

 俺は急いで下に降りて朝ごはんを食べる。

「まったく、何してんのよ。魔使ちゃんは先に行かせたから、あなたも早く学校行きなさいよ」

 俺は姉さんに叱られながら支度を整え、学校に行く。

 さすがに夜更かしをしすぎたらしい。



「ゼー、ハー、な、なんとか間に合った」

 全力ダッシュ(もちろん魔力は使わずに)をしてなんとか始業に間に合う。

 今日の昼に祈闘さんを優奈さんに紹介する予定だ。

 そして今後の予定を立てる。

 まずは薔薇との戦いについて作戦を立てなければ。

 そんなことを考えながら午前中の授業が過ぎていった。



 午前の授業が終わり、昼休みになる。

「刀也〜、いっしょにお昼食べよ!」

 教室に薔薇が入ってくる。今目に見えている姿だけならとても何人もの人を殺すような狂人には見えない。

 しかし、彼は妹などの無関係の人々を殺そうとするので絶対に止めなければならない。

「悪い薔薇、今日は予定があって一緒に食べられないんだ」

 俺は祈闘さんと優奈さんに合流するために薔薇の誘いを断る。

「えっ……」

 あからさまにすごいショックを受けている。

 一周目でもそうだったが薔薇の刀也に対する好意はとてつもないな。

 そんなことを思っていると心の中で刀也が語りかけてくる。

「薔薇は根は悪い奴じゃないはずなんだ。なのにどうしてあんなことを……」

 そうか刀也も俺を通して一周目のことは見ていたんだ。

 それは当然、親友の凶行と自身の体が親友を殺したことも含まれる。

 俺は刀也に話しかけようとする。

「刀也……」

「いや、気にかける必要は無い。たとえどんな理由があろうとも薔薇のしでかすことは許されないことだ。それは絶対に止めなくちゃならない」

 俺たちが感傷に浸っていると薔薇が喚きだす。

「そんなぁ、やだやだ、どこのどいつだ!僕と刀也の蜜月を邪魔する奴は!」

 こいつ……!本当に妹を含めた何人もの人間を殺す奴なのか⁉︎

 現状、ただのいい年して駄々をこねる恥ずかしい奴なんだが⁉︎

 刀也がまた語りかける。

「普段はまともなはずなんだ……。いや……、うん、普段もまともじゃなかったかもしれない」

 諦めるなよ⁉︎一応お前の親友だろう⁉︎

「黒峰くん?いったい何して……る……の」

 薔薇が駄々をこねることで俺が教室を出られないでいると、俺を心配した優奈さんが教室に入ってくる。

 そこで優奈さんが見たものは(見た目は)美少年が俺の足に縋りついている場面だった。

「えっ……、事案……?」

「ちょっと待ってくれ⁉︎」

 優奈さんがドン引きしているが、決して俺のせいじゃない。百歩譲っても刀也のせいだ。

 さすがにこれ以上事態が複雑になるのは勘弁願いたいのだが。

 その時、救世主が現れる。

 一つの人影が教室へと入ってきて薔薇に近づく。

「な〜にやってんすか兄さん!」

 人影が薔薇に手刀を叩き込む。

「痛っ⁉︎って、百合じゃないか」

 薔薇の妹である黒木百合が薔薇を回収しに来てくれた。

「全くもう、あんまり先輩に迷惑かけると嫌われますよ」

「うっ、それは嫌だなぁ」

 一応薔薇のことはフォローしておく。

「急に約束が入ったんだ。ごめんな薔薇」

「ほら、今日は私と一緒にお昼を食べますよ!」

 薔薇は俺から引き剥がされ、引きずられていく。

 去り際に百合が言い残す。

「そうだ先輩。私、今度陸上の記録会があるんでよければ見に来てください」

 百合は一周目の時と何も変わらない笑顔で俺に言う。

「あぁ、絶対に見に行くよ」

「それじゃあ、先輩、また明日」

「じゃあね刀也」

 百合と薔薇は教室を出ていった。

 優奈さんが俺に近づいて来て言う。

「……ずいぶんと愉快な友達ね」

 俺は刀也の代わりに答える。

「えぇ、長い付き合いです」

 心の中で刀也が呟く。

「そう……、長い付き合いなんだ……」



「えー、と言うわけでお互い自己紹介しましょうか。祈闘さん、こちら俺の主で候補者の1人の魔使優奈さんです。魔使さん、こちら祈闘家の当主で候補者の1人の祈闘守杜さんです」

 屋上で俺は2人をそれぞれに紹介する。

 2人の声が重なる。

「「ちょっと待てぇ‼︎」」

 片や優奈さんが俺に質問を飛ばす。

「祈闘家の当主⁉︎なんで?いつの間に知り合ったの⁉︎」

 片や祈闘さんが俺に質問を飛ばす。

「あなたもしかして、主に言わずに共闘させようとしたんですか⁉︎正気ですか⁉︎」

「あー、お二人とも、ちゃんと順を追って説明するので聞いてください」

 一旦2人を落ち着かせて説明をする。

「まず共闘についてですが、俺と魔使さんは魔術について素人みたいなものなので戦力が欲しいと思ったんです。それで、祈闘家の当主なら何度か見かけたことがあるのでワンチャン共闘できないかと話を持ちかけました。以上、説明終わり!何か質問ありますか?」

「あるに決まってるわ!」

「へぶっ⁉︎」

 優奈さんからビンタをくらう。

「あれで説明になってると思うんですか!」

「ぐはっ⁉︎」

 祈闘さんから手刀をくらう。

 俺は2人の攻撃によって倒れ伏す。

 お、おかしい……⁉︎俺の説明は完璧だったはず……⁉︎

 心の中で刀也が呟く。

「むしろあれでなぜいけると思ったんだ……」

 何故が肉体の無い刀也のため息が聞こえる気がする。

「はぁ、もういいわ。それで祈闘さん、私たちに戦力が足りないのは確かだわ。もしよければ共闘関係を結んでくれないかしら」

「えぇ、私も当主としては若輩者なので共闘はありがたいです」

 何やら2人に固い絆が結ばれたようだ。

 結果オーライということにしておこう。

 とりあえず本題に入ることにする。

「それでなんですけど、これからの作戦とまだ誰かすらも分かっていない術木の枠の候補者について話し合いたいんですが」

 俺の言葉に優奈さんと祈闘さんが疑問を覚える。

「あれ、私、術木の枠の候補者がわからないって話したっけ?」

「私も言ってないはずですが……?」

 ま、まずい⁉︎まだ2人とはそのことについて話してなかったか!

「いや、魔使さんがこの前言ってましたよ」

 声が上擦っている気がする。

 すまないが優奈さんに犠牲になってもらう。

「そ、そうだったかしら。まぁいいわ、話し合いましょうか」

 

 いくらか作戦を立てた後、チャイムが鳴り、俺たちはそれぞれの教室に戻っていった。



 午後の授業が終わり、黒木百合は兄と共に帰ることにする。

「それじゃあ帰りましょうか、兄さん」

「うん、話があるんだよね?」

 2人は夕暮れの道を歩いて行く。

 百合は話を切り出す。

「実は兄さんに言っておきたいことがあって……」

 言葉を詰まらせる百合に薔薇は答える。

「なんだい?僕はお兄ちゃんだからね!妹の言葉ならなんだって受け止めてあげるさ!」

 胸を張る薔薇を見て百合は顔を綻ばせる。

「えっとね、私、先輩が好きなの」

「えっ」

 薔薇の表情が固まる。

「兄さんと一緒に先輩と仲良くなってそれでだんだん好きになっていって、今度告白しようと思うの。上手くいっても、上手くいかなくても、兄さんには知っておいて欲しくて……」

 薔薇は立ち止まる。

「そう、そうなんだ……。百合()刀也に近づこうとするんだね……」

 兄の様子がおかしいことに気づいた百合は尋ねる。

「兄さん……?」

 薔薇が百合に歩み寄る。

「妹だから許していたけど、告白するって言うなら話は別かな」

「どうしたの兄さん?顔が怖いよ?」

 薔薇は小声で自身の技の名前を呟く。

「【鱗甲(スケイル)】」

 薔薇は右手を鱗で覆う。

「ごめんね、百合」

「えっ?」

 薔薇が右手を百合に向かって振るった。


 

 飛び散る鮮血。()()()()()が地面に落ちた。

「何っ⁉︎」

 薔薇は驚く。

 2人の視線はいきなり現れた人影に注がれる。

「危ない、なんとか間に合った」

「刀……也……。どうしてここに……?」

 薔薇は驚愕の表情で俺に尋ねる。

 俺は薔薇に向かって言い渡す。

「百合に、記録会の日付を聞いてなかったからな」

 俺は薔薇にナイフを突きつけて言う。

「薔薇、お前はここで止めさせてもらう」


   今度こそ誰も死なせない。

 

 


 

 

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