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第三十一話 RE:スタート

突然ですが、ツイッターでも時折りショートを投稿してるので興味があればぜひ https://x.com/5qzd9m4669?s=21

「刀也、もう六時だよ、学校が閉まっちゃう前に帰らなきゃ」

 懐かしい声がして俺の意識は夕暮れの教室で目覚める。

 俺を起こしたのは黄金色の髪をした学ランを着た美少年、術木薔薇であった。

 俺はひとまず薔薇に返事を返す。

「あぁ、すぐに帰るよ」

「そう、それならよかった。じゃあね刀也」

 そう言って薔薇は教室から出て行く。

 すでに決議は始まっている。

 今なら不意打ちで薔薇を倒すことで事件を起こさずに済むんじゃないか?

 俺がそう考えた時俺の頭の中に声がした。

「やめておけ、今の俺たちの体は魔術が使えない。それどころか【身体強化】すらまともに使えるか怪しいレベルだ。不意打ちでも殺せない、逆にやられるだけだ」

 「この声は刀也か!ついてきてくれたのか!」

 どうやら刀也も俺の意識と共に体に戻れたみたいだ。

 相変わらず体の主導権は俺のようだが。

「確かに体の魔力がすごい動かしづらいな」

 刀也に言われて気づいたが魔力がとても動かしにくくなっている。

 一周目の時は気づかなかったがこれが本来の黒峰刀也の体の状態なのだろう。

 刀也が言う。

「魔使さんと契約することで初めてこの体は魔術を使えるようになる。まずは魔使さんと出会うぞ」

「そうだな」

 俺は教室を後にした。


 星が輝く夜道を俺は歩いて行く。

「確かここらへんだったよな」

 記憶の通りならここら辺りで優奈さんを見かけるはずなのだが……。

 そんなことを考えていると優奈さんが路地裏に入っていくのが見えた。

 刀也が言う。

「追うぞ!」

 俺も優奈さんの後を着けて間界へと入って行った。


 赤黒く、不気味な世界、間界。

 優奈さんがここで魔獣と契約しようとして失敗するはずなので助けに行かなければ。

 俺は記憶の場所に走って行った。

「きゃあ!」

 俺がしばらく走っていると悲鳴が聞こえる。

 悲鳴が聞こえた方に行くと優奈さんが一周目と同じで魔獣に襲われていた。

 刀也が言う。

「いいか、俺たちと彼女はまだ初対面だ。名前を呼ぶな、そして魔獣とは戦おうとするなよ。死ぬぞ」

 俺は心の中で刀也にわかっていると返す。

「大丈夫ですか⁉︎」

 俺はひとまず、優奈さんの名前を出さずにこちらを認識させる。

「来ちゃダメ!」

 魔獣と優奈さんがこちらを認識して、優奈さんが俺に警告をする。

 魔獣がこちらに襲いかかる。

「くっ⁉︎」

 俺は飛んで回避をする。

「こっちです!」

 そしてそのまま優奈さんを連れて逃げる。



「はぁ、はぁ、ここまで逃げればしばらく大丈夫かな?」

 少し走っただけで息が切れている。

 流石に魔術を十全に使える時のようにはいかない。

「助けてくれてありがとう。私は魔使優奈よ」

 優奈さんが自己紹介をする。

 知っている人に自己紹介をするのは少し気恥ずかしいが怪しまれないために俺も自己紹介をする。

「俺は黒峰刀也って言います。無事で良かったです」

 優奈さんが俺に質問をする。

「間界に入ってこれたし、魔獣にも驚いている様子が無かったけど、あなた魔術師?」

 さて優奈さんがそう考えるのは当然だろう。問題はどう答えるかだ。

 刀也が言う。

「一般の魔術家の生まれだが魔術が使えないと言えばいい」

 確かに黒峰家もちゃんとした魔術家なのだから問題は無いだろう。

「俺は黒峰家って言う一般の魔術家出身なんですけど魔術は使えないので魔術師ではないです」

 俺がそう答えると優奈さんが少し悲しそうな表情になる。

「そう、あなたも魔術家に生まれながら魔術が使えないのね」

 事情は知っているがここは聞いておいた方がいいだろう。

「も、ってことはゆ、魔使さんも俺と同じなんですか?」

 危なかった、危うく優奈さんと呼ぶところだった。

 優奈さんが事情を話し始める。

「あなたも聞いたことがあるかもしれないけれど、私は七大魔家の一つ、魔使家の1人なの。けれど私は魔術を使えない。……いわゆる落ちこぼれってわけね」

 優奈さんは自虐的な笑みを浮かべる。

「お父様に認めてもらうために魔獣と契約しようとしたのだけど、結局失敗してこの様よ」

 そろそろイベントを進めることにしよう。

「じゃあ俺と契約しませんか?」

「えっ?」

 優奈さんが驚く。

 そりゃあそうだろう。なんせ、本来の【使役】魔術は魔獣としか契約できないのだから。

 だが、一周目で優奈さんになぜ俺が優奈さんと契約できたのか聞いたところ、俺の体の中に入った10年前の決議に現れた化け物の要素が【使役】魔術の対象になったのではないかとのことである。

 とまぁ、俺のように魔獣に体が近づいている人間なんてそうそういやしないので、本当に一周目の優奈さんはよく契約しようと思ったものだ。

 優奈さんがひとしきり考え込んだ後口を開く。

「普通は人間との契約なんてできるはずがない。けれど今の私たちには戦う術が無いのは確か、……分かったわ。あなたと契約してみましょう」

「よろしくお願いします」

 二周目での俺と優奈さんとの契約が始まった。


 優奈さんが詠唱を始める。

「私、魔使優奈は汝と契約を結び、汝の主となる。汝の名を述べよ」

 俺はすかさず自分の名前を答える。

「黒峰刀也」

 光が俺たちを包み、俺の右手に収束していく。

 光が収まると使い魔であることを表す紋章が刻まれていた。

 前に優奈さんに聞いたのだが、この紋章は握手をしている手を表しているらしい。

 優奈さんが胸を撫で下ろして言う。

「良かった、成功したようね」

「はい、これで俺は戦えます」

 俺たちは間界から出ることにした。



 俺たちが間界に入ってきた入り口の近くに来ると例の魔獣もそこにいた。

「また会ったな。悪いが押し通らせてもらうぞ」

 俺は懐からカッターを取り出す。

 そして俺がそのまま戦おうとした時、刀也に止められる。

「待て、せっかくだ。ここは俺に戦わせてくれないか?」

「なんでだ?別にあの魔獣は強くもないから簡単に倒せるぞ」

 刀也が俺の疑問に答える。

「この機会にちゃんとした黒峰流の使い方を教えようと思ってな。お前は体の記憶から型を覚えてはいるが、覚えただけで使えてないからな」

 刀也の言葉が胸に刺さる。

 確かに俺は黒峰流を全く使えてない。

 いや、でもしょうがないだろう。なんせ黒峰流を覚えたのは星詠との戦いの直前だ。そして星詠との戦いでは型などほとんど意味を為さなかったからな。

 しかし、ちゃんとした黒峰流の戦い方がわかるのはありがたい。

 なのでここは刀也に譲ることにする。

「分かったよろしく頼む」

 俺は体の主導権を刀也に譲り渡す。


 刀也が言う。

「さて、久しぶりの実戦だ」

 優奈さんが刀也に尋ねる。

「黒峰くん、あなた戦いの経験は?」

「まぁ、それなりってところです」

 そう言って刀也は体とカッターに魔力を通す。

「Gyaooo!」

 魔獣が刀也に襲いかかる。

 身体強化をしているとはいえ、熊ほどの大きさの体躯であの鋭い爪を振るわれたら怪我は免れない。

「黒峰流、【蛇行舞】」

 刀也が蛇のようにうねりながら魔獣へと近づいていく。

「Gyua⁉︎」

 魔獣は突然刀也が目の前に現れたように感じ驚く。

 刀也が型の名前を呼ぶ。

「黒峰流短刀術、【百足這い(むかでばい)】」

 刀也は瞬時に魔獣へと組み付き、魔獣の体を這い回りながら切り裂く。

「Gruuua⁉︎」

 魔獣は悲鳴を上げながら体を十つ程に分割されて死に絶えた。

「っと、こんな感じかな」

「魔獣を一瞬で……」

 優奈さんが刀也の強さに驚く。

 正直、俺も少し驚いている。確かに刀也は魔術こそ使えていなかったが黒峰流の鍛錬を積んでいた。

 それでも魔力を十全に扱えるようになったのはついさっきのはずなのでそれでもこれほどとは思わなかった。

 俺がそんなことを考えていると刀也が言う。

「おい心也、言っておくが俺は7歳の頃までは普通に魔力を扱えたし、ほんの少しの間だが魔術も使えていたからな」

 そう言えば刀也が魔力を扱えなくなったのは10年前の決議での戦いの余波で一度死んでからだったか。

 ともかく後は現実世界に戻るだけだ。

 ……いや待て、確かこの後は……!

 俺は心の中で刀也に対して叫ぶ。

「刀也、後ろだ!」

 同時に別の魔獣が刀也へと襲いかかる。

「黒峰くん危ないっ!」

 優奈さんも警告を飛ばすが、すでに魔獣はすぐ側まで来ていた。

 その時刀也が呟く。

「悪いが見えている」

 刀也が振り向きざまにカッターを振るう。

「【切断(ディバイド)】」

 魔獣は上下で真っ二つに裂かれる。

 切り裂かれた魔獣は魔石となって消える。

 刀也は魔石を拾い、優奈さんへと近づく。

「後は任せた」

 そう言って体の主導権を俺に戻す。

 俺はひとまず優奈さんに手を差し伸べる。

「帰りましょうか」

「えぇ」

 優奈さんは俺の手を取り俺たちは間界の外へと出た。


 俺たちの二周目の日魔長決議が始まる。

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