第三十話 ▶︎あたらしくはじめる
今回は番外編付きです
見慣れた教室、ナビ子のいるリスポーンするための部屋。
それは別にいい、問題は何故今ここに飛ばされたのかだ。
そしてこのシステムウィンドウのようなものは一体何なのか?
使い魔ルートとは一体何のことなのか?全くわからない。
「やっぱりここに来てしまったのね」
聞き慣れた声、ナビ子の声だ。
俺は振り向く、するといつもの女教師のような服装ではなく、初めてここに来た時にナビ子が着ていた純白のドレスを着ていた。
「ナビ……子?俺は死んだのか?」
俺はナビ子に質問する。
「結果から言えばあなたは死んでいないわ」
ナビ子は俺が死んでいないと告げる。
しかし、それならば何故俺は今ここにいるのだろう?
俺はナビ子に質問する。
「じゃあ、なんで俺はここにいるんだ?死んでないならここに来るはずがないだろう⁉︎」
「あなたは死んでない。けれど、一つの物語が終わってここに戻って来たの」
一つの物語?一体どういうことだ。
「ここはゲームの世界、そしてこのゲームには3人のヒロインがいる。つまり、この世界には3つの筋書きがあるってことよ」
それじゃあ、俺はその内の一つ。優奈さんがメインヒロインのルートをクリアしたからここに戻って来たってことか⁉︎
俺は思わず叫ぶ。
「それじゃあ、この世界にこれ以上の先は無いってことかよ‼︎」
俺の叫びにナビ子が答える。
「いいえ、本来ならこの世界にも先はあるはずよ」
どういうことだ?本来なら先はあるのか?でも今はそうじゃない、一体何故だ?
「この世界はシステムが支配してるって前に言ったわよね」
「あぁ、そして俺はシステムに守られているからリスポーンできるって聞いた」
システムはこの世界における物理法則のようなものでシステムによってこの世界は維持されていると聞いた。
「システムはね、この世界の永続を目指している」
永続?そんなことが可能なのか?
……いや待て、まさか⁉︎
俺の表情を見てナビ子は言う。
「気づいたようね。そう、システムは規定化された3つの物語を繰り返し続けることでこの世界を永遠に存続させようとしているの」
物語の繰り返し、それによる世界の永続。
なんとまぁスケールの大きい話だ。
だが、物語の終わりを認めず、繰り返し続けるなんて認められない。
その世界に先は無い。
そんなのは死んでいるのと同じだろう。
俺はナビ子に尋ねる。
「ナビ子、どうすればこの世界を先に進められる?」
「まずは3つの物語全てを攻略してみてくれる?もしかしたら、3つの物語の結末、そしてその未来を見ればシステムは物語の繰り返しをやめてくれるかもしれない」
なるほどシステムに物語が終わることの良さをわからせることで説得しようというわけか。
その時、俺は一つの疑問が湧き起こる。
「そういえば、ナビ子はシステム側じゃないのか?前にナビゲート・システムって名乗ってなかったか?」
ナビ子だってシステムの一部だろうにシステムに反抗しているように思うのだが、どうしてだろう?
「システム……メインシステムはこの世界を管理する存在。それに対して私は、このゲームにおいてプレイヤーと触れ合い、導く存在。だから、大元を辿ればシステムの一部だけど半ば分離した存在なの」
なるほど、だからナビ子はシステムに反抗できるか。
合点がいった。
ナビ子が言う。
「それじゃあ改めてクリア宣言をしましょうか」
クリア宣言?もしかしてここに来た時に鳴っていたあの音声のことだろうか?
そういえばいつのまにかシステムウィンドウも消えてしまっていた。
ナビ子の声が機械的なものに変わる。
「おめでとうございます。使い魔ルートをクリアしました」
ナビ子の声と同時にまた、あのシステムウィンドウのようなものが現れた。
改めてルートの名前を見る。使い魔……優奈さんがメインヒロインのルートらしい名前だ。
続いてナビ子が話す。
「ストーリーを新しく始めますか?」
俺の目の前のシステムウィンドウのようなものが変化する。
そこには『あたらしくはじめる』と書かれた下に はい と いいえ があって、今は はい が選択されている。
俺はナビ子に尋ねる。
「新しくストーリーを始めるのはいいんだが、ヒロインの攻略なんて一体どうすればいいんだ?」
ナビ子が機械的な音声から元の声に戻して答える。
「それはもちろん、仲良くなりたいヒロインと一緒に過ごして、寄り添っていくの。そうね、出会いが遅くなると仲良くなりづらいし、新しく始めたらまずは祈闘守杜を探してみたらどうかしら」
それはつまり、俺にギャルゲーの如く好感度稼ぎをしろと言うのか⁉︎
いや、ギャルゲーのように結ばれることが目的ではないのだが、それでも友達の少ない俺には難題だ。
困り果てている俺を見てナビ子が言う。
「私としてはあなたが手伝ってくれたら少しはやりやすくなると思うのだけど?」
ナビ子は俺の少し隣を見ている。
俺もナビ子の視線の先を見る。
そこにいたのは黒髪でメガネをかけて、学ランを着ている男子だった。
「黒……峰……刀也?」
俺はあまりの驚きに声が漏れる。
そう、そこに居たのは紛れもなく主人公だった。
どうして彼がここに居るんだ⁉︎
黒峰刀也が口を開く。
「なんで俺が手を貸さなきゃいけないんだ?そうだろう?炎上寺心也」
黒峰刀也がそう言った時俺の姿が生前のものに戻っていることがわかった。
黒峰刀也が立ち上がりこちらに近づいてくる。
「どこの誰とも知らない奴に体を乗っ取られて、俺の知り合いと仲良くしている様をずっと見ていた。事情は聞いている。けど、だからって納得できるわけじゃない」
黒峰刀也の怒りはもっともだ。
俺は転生してから彼のことを思い出すことはほとんど無かった。
申し訳ないと思うこともほとんど無かった。
だからこそ、これは絶好の機会だと思う。
今までは謝ることすらできなかったが、今は謝る対象がここにいるのだから。
俺は立ち上がり謝罪をする。
「すまなかった。君の体を突然奪ってしまって。君の、人生を奪ってしまった」
訳もわからずこの世界に転生したとはいえ、俺が彼の体を奪ってしまったことは本当なのだから、それについては謝罪するべきだろう。
俺はナビ子に尋ねる。
「ナビ子、彼の意識が残っているなら体を返してやれないのか?」
ナビ子が困ったように答える。
「残念だけど、すでに一度試したわ。あなたが了承すれば一時的に体の主導権を渡すくらいはできるけど基本的にはあなたの意識が主人格になってるみたい」
ナビ子でも無理なのか。ならば、俺にはどうしようもない。
「すまない、黒峰刀也。いつか必ず君に体を返す方法を見つける。それまで、もう少しだけ君の体を貸してくれないか?」
俺は必死に頼み込んでみる。
正直、逆の立場ならば全力で拒否するが、彼はどうだろう?
黒峰刀也がため息を吐いて答える。
「はぁ、分かってる。今この世界にはあんたが必要だ。手も貸してやる」
「ありがとう」
黒峰刀也が俺に手を差し出してくる。
「改めて挨拶をしようか。俺は黒峰刀也、刀也でいい。よろしく、心也」
俺は刀也の手を握り返す。
「あぁ、よろしく、刀也」
握手を交わした俺たちにナビ子が話しかける。
「ちょうど仲良くなったところで、ストーリーを始めてみる?」
「あぁ」
俺はナビ子に返事をして改めてシステムウィンドウを見る。
「それじゃあ行くぞ!」
俺はすでに選択されている はい を押す。
途端に意識が遠くなっていく。
リスポーンの時と同じようで少し違う感覚をおぼえながら俺は、俺たちは新たなストーリーを開始した。




