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第二十七話 誓約

 俺はまた教室で目を覚ます。

 俺はまた星詠に勝てなかった。

 あいつは強い。絶望的なまでに。

 何度リスポーンしたって勝てないんじゃないかとさえ思う。

「不安そうね」

 ナビ子が俺に話しかける。

 俺はナビ子に弱音を吐き出す。

「あいつには勝てない……。ここはゲームとは違う。……現実なんだ。攻略法なんか存在しない……」

 俺たちは未だ星詠に攻撃が掠りすらしていない。

 秘奥を引き出せはしたが、あれは引き出させたというより気まぐれで使ったに過ぎないのだろう。

「えいっ⭐︎」

 ナビ子が俺の頭に手刀を入れる。

「痛っ⁉︎えっ、なっ、何⁉︎何で⁉︎」

 ナビ子に手刀を入れられた意味がわからず俺は動転する。

 ナビ子が俺を叱る。

「あのねぇ、あなた、私のヒントを全然理解していないじゃない!」

 ヒント……、確か「あなたは1人で戦っているんじゃない」だったか。

 俺はナビ子に尋ねる。

「あれは優奈さんに魔力を供給してもらえって意味じゃないのか?」

 俺と優奈さんの魔力を合わせて再生しながら近づいていけば星詠に届くと言う意味なのかと思ったが違うのか?

 いやまぁ、確かにそれでは届かなかったが。

 ナビ子が言う。

「全部は言えないけれど、もう少しだけ言ってあげるわ。あなた、魔使優奈に信頼されてるの?」

 信頼?されてるよな?俺はしているつもりだが、まさか信頼されてなかったのか?

 いやしかし、信頼されていなければここまで付き合ってはくれないだろう。

 ならば信頼されているということではないのか?

 俺は思考の渦にハマり停止する。

 そんな俺を見てナビ子が言う。

「コミュニケーション大事!さっさと話し合いしてきなさい!」

俺の意識が遠くなっていく。

「ちょっ、まっ……」

 俺は強制的にリスポーンさせられた。




 俺の意識は間界の伊勢神宮で目覚める。

 話し合いなんてここからどうすればいいんだよ!

 ともかく、話し合う時間が必要だ。

「すいません優奈さん」

 俺は優奈さんを突如抱える。

「えっ⁉︎ちょっ、何っ⁉︎」

「逃げますっ!」

 俺は優奈さんを抱えて星詠から逃げ出した。


 未来で見えていたが意味が分からず置いてきぼりにされた星詠未来は叫ぶ。

「どういうことだぁー‼︎」




「はぁ、はぁ。これくらい逃げれば時間は稼げたかな」

 俺たちは伊勢神宮から少し離れた建物の影に隠れていた。

 事態の飲み込めない優奈さんが叫ぶ。

「ちょっと、どういうつもり⁉︎戦うんじゃなかったの⁉︎」

 なんと言えばわからないのでひとまずこう答える。

「えっーと、このままじゃ星詠に勝てそうになかったので作戦会議をと思いまして」

 優奈さんが尋ねる。

「わかるの?」

 俺は真剣な顔で答える。

「はい、少なくとも今の俺たちじゃ絶対に勝てません」

 だが、実際どうするか。

 今は隠れられているがすぐに星詠は追ってくるだろう。

 そうなれば戦う他無い。

 しかし、戦えば確実に俺は死ぬ。

 そうなれば無限にリスポーンし続けるだけだ。

 物語は進まず、完全に停止する。

 流石にそれはまずいだろう。

 俺と優奈さんは頭を悩ませる。

 そして俺は思いついたことを優奈さんに尋ねる。

「いっそのこと、逃げちゃいます?」

「えっ……?」

 俺の考えを説明する。

「おそらく星詠には勝てません。だから、ここでリタイアして逃げちゃうんです。星詠が魔術長になっちゃいますけど、案外世界は無事なままかもしれませんし」

 戦うことを選べばこの世界に先は無い。

 ともすれば何度も優奈さんを殺すことになる。

 それだけは避けたい。

 優奈さんが怒り、叫ぶ。

「そんなことをしたら今までの努力を否定することになるじゃない‼︎」

 俺は冷静に答える。

「ですが、死んでも努力は無駄になります」

 正確には死ぬわけではないが()が無ければ同じことだろう。

 優奈さんはさらに反論する。

「それじゃあ、守杜の願いは、祈闘家はどうなるの⁉︎」

 祈闘さんには祈闘家のことを頼まれた。

 それには魔術長になることが一番だが、それは叶いそうにない。

 俺は叫ぶ。

「じゃぁ、どうすればいいんですか‼︎星詠には勝てない!俺は、()()()()()()()()()()()‼︎」

 突然飛び出た、心の底からの本音。

 俺自身も気づいていなかったが俺が逃げようと思った一番の理由はどうやら優奈さんを死なせたくないかららしい。

 操蛇さんとの約束があるから?違う、ただ純粋にこれまで共に暮らし、共に戦ってきた彼女を守りたいのだと思うからだ。

 顔が少し赤くなっている気がする。

 優奈さんを見ると優奈さんも少し赤くなっている気がする。

「そっ、そう……。私を……死なせたくないから……か」

 優奈さんは言う。

「それでも私は逃げない」

「でもっ!」

 俺は反論しようとするが優奈さんに制止される。

「一つ、勝てるかもしれない方法があるわ」

 俺は優奈さんに尋ねる。

「勝てるかもしれない方法?そんなのがあるんですか?」

 そんな物があるなら早く言って欲しかったものだ。

「それで、いったいどういう方法なんです?」

 俺は優奈さんにその方法を尋ねる。

 優奈さんが答える。

「一言で言うならより深い契約よ」

 より深い契約?俺は言葉の意味がわからず思考する。

 優奈さんが説明する。

「それは魔使家の秘奥魔術。名を【誓約】」

「誓……約?」

 確かにただの契約よりはより深いように聞こえるが。

 いったいどういうものなのだろう?

 優奈さんが説明を続ける。

「魔使家は【使役】魔術によって魔獣と契約して、使い魔として使役する。そしてその契約数は術者にもよるけど何体でも契約できるの。私はあなたが初めての契約だったから指揮に慣れるためにも他に契約していなかったけど」

 そう言えば魔使家の別邸で10人の魔術師と戦った時、複数体を使役している魔術師がいた。

 あの時は特に疑問に思わなかったが、あれはそういうことだったのか。

 優奈さんが説明を続けていく。

「だけど、秘奥を使えば魔術師は一体の魔獣としか契約できなくなる。【誓約】を交わすことで生涯において契約できる相手をただ一体に縛ることで【誓約】を交わした相手の潜在能力の全てを解放して、更なる力を与える。これが魔使家の秘奥【誓約】の効果よ」

 【誓約】……確かにそれなら星詠にも勝てるようになれるかもしれない。

「じゃあ、優奈さん、早速お願いします!」

 俺は優奈さんに【誓約】をお願いする。

 そして優奈さんはこう返した。

「私は、本当はこの戦いが終わったらあなたを解放するつもりだった。あなたが何と言おうと私があなたを巻き込んだことで始まったから」

 このゲーム(世界)において、あの出会いは確定されたものだろうから優奈さんが気に負う必要は無いのだが、ひとまずは黙っておく。

「【誓約】を交わしておいてさよならするほど私はお人よしじゃない。それに、きっとあなたもついてこようとする。それでは今度こそあなたを縛ることになる。それでもいいの?」

 驚いた。まさか優奈さんがそんなことを気にしていたとは。

 だから俺は当然のようにこう返す。

「前にも言ったじゃないですか。俺は優奈さんの使い魔ですからどこへだってついて行きます、って」

 優奈さんは少し赤面しながら言う。

「本当に⁉︎本当にいいのね!絶っっ対に逃がさないからね‼︎」

俺は優奈さんの言葉に冷静に答える。

「はい、これからもよろしくお願いします」

 優奈さんは深くため息を吐いた後に言う。

「はぁー。よし、私も覚悟を決めるわ」

 優奈さんが詠唱を開始する。

「我、魔使優奈は汝、黒峰刀也と生涯の契りを結ぶ。

 汝、その生涯を我の剣として、盾として尽くすと誓うか?」

 初めて契約を交わしたあの日を思い出す。

 そして俺は優奈さんの言葉に応える。

「はい、誓います」

 すると優奈さんは()()()()()()()()

 衝撃の行動に俺は動転する。

「ゆっ、ゆっ、優奈さん⁉︎いっ、いっ、一体何を⁉︎」

 優奈さんは赤面しながら叫ぶ。

「うっ、うるさいわね!こっ、これが私の覚悟よ!」

 次の瞬間、右手に刻まれている使い魔であることを表す紋章が紐の結び目のような見た目に変化して体の奥底から魔力が吹き出した。

「こっ、これは!」

 優奈さんが言う。

「成功したわね。これで【誓約】は成立したわ」

 とんでもない力だ。

 確かにこれなら星詠に勝てるかもしれない。

 優奈さんが俺に手を差し伸べる。

「さぁ、行くわよ!」

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