表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/41

第二十二話 未来は未だ来らず

「あぁ、朝か」

 俺は自身のベッドで目を覚ます。

 四元学人との戦いからすでに四日が経っていた。

 戦いが終わった直後は忙しく、祈闘家に訪問しに行ったり、祈闘さんの葬儀に参加したりなどをした。

 そうしているうちにあれよあれよという間に四日が経った。

 俺はベッドから身を起こし、朝ごはんを食べに下へと降りる。

 リビングに着いた時、俺は父さんがいないことに気づく。

 俺は姉さんに父さんの行方を尋ねる。

「姉さん、父さんはどこに行ったんだ?」

 俺の質問に姉さんが答える。

「今は道場で素振りしてるわ。そうだ、ついでに朝ごはんできたって言いに行ってくれない?」

「……わかった」

 少々めんどくさいが仕方ない、父さんを呼びに行くことにする。


 俺は家の裏口に出る。

 黒峰家は案外大きく、剣術道場もやっている。

 門下生もそれなりにいるらしい。

 と言っても今日は誰も来ない日らしいが。

 道場の大きさはあまり大きくなく、40人がギリギリ入れるくらいだ。

 そんなことを考えている内に道場に着く。

 俺は道場に入って父さんに呼びかける。

「父さん、ご飯ができたって姉さんが呼んでる」

 姉さんのいう通り父さんは1人で素振りをしていた。

 父さんは俺に気づく。

「おお、もうそんな時間か。最近時間が経つのが早く感じるなぁ」

 普段の甚兵衛姿では分かりにくいが父さんの体はかなりしっかりしている。

 父さんが俺に話しかける。

「祈闘さんの葬儀に参加したらしいな」

「……あぁ」

 突然の言葉に生返事しかできない。

 父さんが続ける。

「まぁ、彼女も覚悟はしていたはずだ。とはいえ、お前に責任が無いわけでもない」

 父さんの気配が鋭くなる。

 父さんが壁に立てかけてあった木刀を投げ渡してくる。

「うおっと」

 俺はなんとかそれをキャッチする。

 父さんが言う。

「打ってこい。少し見てやる」

 ……どうやら修行をつけてやると言っているらしい。

 だが、俺とていくつもの死線を乗り越えたつもりだ。

 そう簡単に負けるつもりは無い。

 俺は父さんを挑発する。

「怪我するなよ」

「はっ、ガキが何言ってやがる」

 父さんもまた挑発し返す。

 ひとまず俺は魔力を使わずに打ち込んでみる。

「はぁっ!」

 いくら鍛えているとはいえ父さんはすでに40を超えている。

 スタミナにはこちらに分があるはず。

 連続攻撃で押し込む!

 父さんは俺の連続攻撃をいなし、避け、受けながら話す。

「動きが直線的だな、どうした、型を忘れたのか?最近は稽古をしてなかったからか?」

 父さんの言葉に俺はギクリとなる。

 まずい、黒峰刀也は剣術を習ってたのか!

 俺は専らナイフで戦ってきたので剣術は使えない。

 俺が言い訳を考えていると父さんが言う。

「どうした?今度はこっちの番か?」

 父さんが木刀を両手で頭の上に掲げる。

 一瞬にしてとてつもない気迫が放たれる。

 あれはやばい!避けなければ!

「ハァッ!」

 父さんが体と木刀に魔力を纏い全力で叩きつける。

「どわっ⁉︎」

 俺はその攻撃をすんでのところで避ける。

 破砕音が鳴り響き、道場の床が砕かれる。

 こいつっ、手合わせで魔力を使ってきやがった!

 その少々大人気ない行動になんて言ってやろうかと考えていると姉さんが道場に来る。

「ねぇ、お父さんを呼ぶだけなのに何をして……る……の」

 姉さんの視線は砕かれた道場の床に注がれていた。

 俺と父さんの声が重なる。

「「あっ」」



 数十分後俺と父さんは道場の床に正座させられていた。

「もう!ホントに信じらんない!稽古するにしても普通魔力を使う⁉︎」

 すでに姉さんの説教は30分を超していた。

 まずい、この体は丈夫ではあるがそれはそれとして正座にはあまり慣れていないぞ⁉︎

 父さんはさっきからずっと「はい……はい……」としか言わないロボットと化している。

 お腹も空いてきてそろそろ説教をやめてもらいたいが、姉さんはまだ止まる気配が無い。

 というか俺は悪くないはずなんだが⁉︎

 そんなことを考えていると突然姉さんの矛先が俺に向く。

「ちょっと、聞いてるの?」

 その声は地獄の奥底から響くような低い声だった。

「ハイッ、キイテマスッ!」

 姉さんの声に俺は姿勢を正さざるを得ない。

 このまま姉さんの説教が続くと思われたその時、救世主が現れた。

「あの、どうかしましたか?」

 優奈さんが道場にやってきた。

「あら優奈ちゃん、おはよう。別になんでもないのよ。ちょっとバカ2人がやらかしただけだから」

 バカ呼ばわりされた俺も父さんはさらに小さくなる。

 しかし、姉さんの怒りはある程度晴れたようだ。

 姉さんが俺たちに向き直って言う。

「2人とも、ご飯食べ終わったら床直してよね!」

「「はい……」」

 優奈さんのおかげでなんとか説教が終わってくれた。



 俺と父さんはご飯を食べた後、道場の床を直しだす。

 壊れた床を引き剥がし、新たな板を貼っていく。

 途中、父さんが俺に話しかける。

「さっきは突然、手合わせして悪かったな」

 父さんが気まずそうに話す。

 まぁ、手合わせ自体は別に良かったのだが床を壊したのは俺のせいじゃないと声を大にして言いたい。

「その……なんだ、お前たちはすでに3人の候補者を倒した。1人行方が分からないとはいえ、残る候補者はあと1人だと言えるだろう。いまさら修行したって意味なんてないかもしれないが、ともかくお前に何かしてやりたかったんだ」

 あの急な手合わせは父さんなりの気遣いだったということか。

 なら俺も息子として応えてやるべきだろう。

「別に、気にしてなんかないさ。それに、今はその最後の候補者の居場所が掴めてないからな。決戦までに少しでも強くなっておきたい。……優奈さんだけは絶対に守ってみせるよ」

 優奈さんの父、魔使操蛇との約束もあるからな。

 やれることはやれるだけやっておきたい。

 俺の言葉を聞いて父さんが答える。

「そうか……、ならこれからも修行するか」

「うん」

 こうして父さんとの修行が始まった。





 三重県内 間界 某所、常に紅き月が昇るこの世界に1人の男がいた。

 白い狩衣を身にまとい、星空をそのまま持ってきたような不思議な髪をした男である。

 男の名は星詠未来、日魔長決議の候補者の1人であり、七大魔家の一角、星詠家の当主である。

 

 星詠は1人、間界の中を歩き続ける。

 そこに一匹の魔獣が星詠の死角から襲いかかる。

 完全な不意打ち、魔獣の爪が星詠の体を切り裂く……かのように思われた。

 しかし、そうはならなかった。

 星詠が立ち止まり呟く。

「見えているぞ」

 星詠は振り返りすらしない。

 されど、星詠の近くに一つの円が現れる。

 それは窓だった。窓の先には星空が見えている。

「死ね」

 星詠がそう呟くと光が瞬く。

 次の瞬間轟音が鳴り響き魔獣が消滅する。

 後には魔石だけが残されていた。

 星詠の周囲が輝いている。

 否、その輝きは魔石であった。

 星詠の周囲、数百メートルにわたって魔石がばら撒かれていた。

 これはそれだけの数の魔獣がたった1人によって殲滅されたことを意味する。

 星詠が呟く。

「魔獣狩もそろそろ飽きてきたな。もうよいだろう。決着をつけるとしよう。死の運命を覆し、登り詰めてきた者たちよ。今度の運命()は少しばかり強いぞ?」

 星詠は暗闇の中に消えていく。

 その眼は紅く輝いていた。


 決戦の日は近い、されど未来は未だ来らず

 

 

 

 

 

突然生えたかのように見える黒峰家の剣術設定ですが、一応元からです。

黒峰家は幕末の頃に廃刀令が実施されて尚、刀を愛した『居合バカ』が始めた家です。

黒峰家の系統には刀バカや剣術バカが大勢いていくつもの型が生み出されています

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ