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第十五話 黒桔梗

俺たちは紀伊山地近くの街に来ていた。

 「ここが……呪禍桔梗がいるかもしれない場所か」

 今日は土曜日で学校が休みなため、朝から呪禍桔梗がいると思われる場所に来ていた。

 祈闘さんの話によると呪禍桔梗はこの近くから間界に入り、間界の山で彼女の父親と戦いを繰り広げていたそうだ。

「それじゃあ、行きましょうか」

 二人が頷き、俺たちは間界に入る。


 今日も間界は赤黒い空に覆われている。

 俺たちは山の方へと向かって行く。


 俺たちがしばらく山を登っていると遠くで大きな魔力を感じた。

 俺は祈闘さんに尋ねる。

 「祈闘さん、これって」

 「はい、おそらく、呪禍桔梗かと」

 それから俺たちは慎重に進んでいく。


 さらにしばらくした後、俺たちは少し広い空間を見つけた。

 そこには一人の男がいた。

 あの服装は確か、狩衣という平安時代の貴族が着ていた服だ。だが、本来は白っぽい色であろう狩衣はまるで夜闇のように真っ黒に染められていた。

 さらに男は被り物をしていて顔は隠れている。

 その被り物からは艶のある黒髪が伸びていた。

 ……間違い無い、祈闘さんから聞いていた呪禍桔梗の人相と一致する。

 あっちがまだ気づいていないうちに奇襲を仕掛ける!

 その時、呪禍桔梗が声を出す。

「おい、そこにいるんだろう?3人とも出てこい」

「「「ッ⁉︎」」」

 俺たちは全員が驚く。

 こちらの居場所がバレている⁉︎

 どういうことだ⁉︎

「まさかっ!」

 祈闘さんがあたりを見回す。

 すると俺たちの少し後ろの上空に小さな物体が浮いていた。

 祈闘さんが言う。

「すいません、二人とも。どうやらつけられていたようです」

 つけられていた?どういうことだ?あの物体が何か関係あるのか?

 俺がそう祈闘さんに尋ねようとすると呪禍桔梗が近づいてくる。

「やぁ、どうも。久しぶりだな祈闘守杜。そしてそちらの二人は初めまして。呪禍家の当主、呪禍桔梗だ」

 俺は呪禍に尋ねる。

「よく俺たちがいるってわかったな」

 俺の質問に呪禍が答える。

「あぁ、それはだね。私の式神で君たちをつけさせてもらったのさ」

 式神?あの漫画などで陰陽師などが使っているあれだろか?

 式神と呼ばれたらしき物体はよく見ると紙でできているようだ。

 あれを使って尾行したということか?

 呪禍が説明する。

「あれはただの紙に私の魔力を注ぎ込むことで自由に操作できるようにしたものだ。それを我が家では式神と呼んでいる。君たちのことは刻 印と戦っていた時から尾けていたんだ」

 どうやら2日も前から尾けられていたらしい。

 全く気づかなかった。自分がマヌケなのか、それとも呪禍が上手だったのかは分からない。

 呪禍が話を続ける。

「さて、わざわざここで待っていたんだ。戦うとしよう」

 瞬間、呪禍から大きなプレッシャーが放たれる。

 俺たちは咄嗟に臨戦体制をとる。

 俺は祈闘さんに教えられていた呪禍の魔術を思い出す。

 呪禍家の魔術の名は【呪術】、人と人、物と物を魔力で繋ぐことで相手本体に何もしなくてもダメージを与えられるという。

 式神というのもおそらく自身と紙を繋ぎ、魔力を使った有線のラジコンのように操作しているのだろう。

 相手本体に何もしなくてもダメージを与えられると言うと強そうに聞こえるが、人と人、物と物を繋ぐには相手の一部、人なら髪や血などが必要らしい。

 だが、逆に言えば、相手の髪などをなんとか入手さえすれば後は逃げるだけで勝てるのだから恐ろしい魔術だ。

 2日前から尾けていると言うのにそれをしないのはおそらくあの式神は情報入手しかできず、何かしら物を運んだりなどはできないのだろう。

 とはいえ、戦いが長引けばいつ髪や血を取られるかが分からない。

 だから、速攻で決める!

 俺は祈闘さんに声をかける。

「祈闘さん、行きますよ!」

「はい!」

 祈闘さんも返事をし、俺と共に呪禍へと向かって行く。

 それを見た呪禍が言う。

「速攻か、良い判断だ。だが、私もただではやられはしない!」

 呪禍の背後からいくつかの式神が出てくる。

 呪禍が魔術の名を呼ぶ。

「【呪術・狐火】」

 式神が突如として燃え出す。

 そして、そのままこちらに突っ込んでくる。

 祈闘さんが言っていた火の玉を飛ばしてくる魔術か!

 どうやって式神を燃やしているかは分からないがとにかく今は飛んでくる火の玉の対処だ。

 俺に二つ、祈闘さんに二つの計四つの火の玉が飛んでくる。

 俺たちはそれらを切り、叩き落とす。

 俺たちはさらに距離を詰める。

 このまま決める!

 呪禍まで後少しとなったところで呪禍が言う。

「少々、惜しかったな」

「ぐっ⁉︎」

 突如として俺たちは膝から崩れ落ちる。

 何だ⁉︎頭がぐるぐるする、立ち上がれない!

 祈闘さんがうめくように言う。

「黒……峰……さん、体の……どこか……に、式神がついて……いるはず……です。それ、を」

 俺は何とか首の後ろに付いていた式神を切り裂く。

 すると体が軽くなり立ち上がる。

呪禍が言う。

「ほう、私の【呪術・呪病】を受けながらそこまで動けるとはな。大したものだ」

 俺はすぐに祈闘さんの式神を取ろうとする。

 呪禍が言う。

「敵の前でよそ見か?」

「っ!」

 呪禍が俺に殴りかかる。

 俺は何とか腕でガードする。

「ぐっ!」

 少し吹き飛ばされたが問題無い。

 祈闘さんには悪いがしばらく耐えてもらい、呪禍を叩く!

 俺は呪禍の方へと踏み出す。

 その時、呪禍は式神を取り出して言う。

「呪術においてもっとも有名な物を知っているかね?」

 奴は式神の他に黒く細長い物体を持っていた。

 あれは、髪の毛?

 祈闘さんが叫ぶ。

「黒峰さん!早く呪禍からあれを奪ってください‼︎」

 呪禍が言う。

「もう遅い!【呪術・鏡応じゅじゅつ・きょうおう】!」

 呪禍は取り出した式神に髪の毛を入れて、懐から取り出した短刀で串刺しにする。

 心臓が強く脈打った。

「えっ?」

 俺は口から大量の血を吐き出す。

 攻撃を受けていないはずなのに俺の胸には大きな刺し傷のようなものが現れている。

 俺は前のめりに倒れ込む。

 優奈さんが悲鳴を上げる。

「黒峰くん!」

 俺は疑問を口にする。

「何……で⁉︎」

 呪禍が説明する。

「祈闘から聞いていたのだろう?私の魔術は人と人、物と物を繋ぐ魔術だ。先程君を殴った時に君から髪の毛をいただいておいた。後はそれを形代に入れれば形代と君は繋がり、形代に与えたダメージが君にも与えられるようになるのさ」

 呪禍は一呼吸置いて祈闘さんの方を向いて言う。

「悲しいなぁ!祈闘守杜!貴様が他人を巻き込んだことで彼は死んでしまうぞ!お前が戦う力の無い凡夫故に彼は死ぬのだ!」

 祈闘さんは倒れたまま何も言うことはできない。

 俺は呪禍の言葉に怒りを覚える。

「て……めぇ……!」

 祈闘さんが呪禍家と祈闘家はライバル関係と言っていた。

 仲が悪いのかもしれないと思っていたがこれほどとは。

 祈闘さんは悪くない。俺たちは俺たち自身の選択で戦った。

 祈闘さんが悪く言われる筋合いは無い!

 どうにか立ち上がろうとする。

 心臓が潰されているらしく、流石に治ることはないがもう少しだけ動ける。

 立ち上がった俺を見て呪禍が驚く。

「驚いた。まさかその傷で立ち上がれるとは。だがもう限界だろう?立っているだけで必死なはずだ。今の君に何ができる?」

 あぁ、そうだ。これは何の意味も無い、俺たちの敗北という結果が覆るわけでも無い、ただの俺の自己満足だ。

 それでもこの死ぬまでの僅かな時間でこいつを一発だけでもぶん殴る!

「がぁっ!」

 俺は全身全霊で走る。

 呪禍が驚きつつも火の玉を飛ばすことで迎え撃つ。

 どうせ死ぬんだ、回避する必要は無い。そのまま突っ込む!

「何っ⁉︎」

 呪禍が驚く。

 俺は体のあちこちに火傷を負いながら走る。

 呪禍はもう目の前だ。

「おっらぁ!」

 最後に残った力で奴の顔面に拳を叩き込んだ。

「ぐぅあっ!」

 呪禍は数メートル程吹き飛んだ。

 そして俺はそのまま倒れ込む。

 最後に二人に言葉を残す。

「すみません、二人とも。次は……勝ちます」

 そこで俺の意識は消え去った。

 

 

 

 

 

 

 

【呪術・狐火】拠点内の炎によって式神を燃やし、リンクさせておいた式神を燃やすことで火の玉にして飛ばす。式神をたくさん使うので、できればあまり使いたくない。

【呪術・呪病】相手に式神を付着させ、式神を通して自身の魔力を流し込むことで相手の体内の魔力の流れを乱し、平衡感覚を狂わせる。

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