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第十四話 祈りと呪い

刻との戦いの翌日。

 俺は家で目を覚ました。

「ぐぅおおおおあああ!」

 頭に激痛が走り、俺は叫ぶ。

 昨日の夜から結構痛かったけどかなり酷くなってる!

 俺の声を聞いた優奈さんが部屋に入ってくる。

「ちょっ、何の声⁉︎大丈夫⁉︎」

「あぁ、それは魔眼を使った副作用だから心配しなくていいよ」

「刀重郎さん!」

 父さんも俺の部屋に入ってくる。

 父さんが説明を続ける。

「昨日、候補者との戦いで魔眼を使ったんだろ?お前の魔眼は目から入る情報が多すぎるからな。脳が処理しきれなくて悲鳴をあげているんだ。まぁ、死ぬことはない。めちゃくちゃひどい二日酔いみたいな物だから頑張って耐えろ」

 そう言って父さんは部屋を出ていく。

 二日酔いになったこと無いからわかんねぇよ。

 とりあえず優奈さんを心配させないように声をかける。

「あ〜、優奈さん。めちゃくちゃ痛いですけど一応大丈夫なんで心配しないでください」

 優奈さんは戸惑いながら答える。

「そ、そう?それならいいんだけど」

 朝の支度を終えて俺たちは登校する。


 校門の前で祈闘さんと出会う。

 祈闘さんが俺たちに挨拶をする。

「おはようございます。お二人とも、昨日はありがとうございました」

「あ、ああ。おはよう」

 俺はか細い声で何とか返事をする。

 祈闘さんが俺の態度を不審に思い、質問する。

「あ、あの。黒峰さんは大丈夫なんですか?」

「魔眼の副作用がきてるだけだから、死にはしないから大丈夫」

 祈闘さんにもまた副作用のことを説明する。

 朝起きた時よりもいくらか痛みはマシになってきているから、昼頃には痛みはほとんど消えているだろう。

 そんなことを話しながら俺たちはそれぞれの教室に入っていく。


 教室に入って少しするとチャイムが鳴り、先生が入ってくる。

「よーしお前ら席に着いたな、今日は午後から写生大会があるからなちゃんと用意してあるかー?」

 今日は写生大会がある日だったか。

 いつも通り俺にはその記憶が無く、今日初めて知った。


 午前の授業が終わり、昼休みになる。

 今日は優奈さんに加え、祈闘さんも一緒に屋上でご飯を食べる予定だ。


「来たわね、黒峰くん」

 俺が屋上に着くとすでに二人が待っていた。

 今後の話をしながらご飯を食べる。

 話の途中、優奈さんが切り出す。

「そういえば、今日は写生大会があるわね」

 俺もその話に続く。

「ですね。確か、学校の周りの風景を描くんでしたっけ?」

 優奈さんが答える。

「えぇ、そうよ。授業時間中は学校の周りを自由に歩き回っていいそうだから3人で一緒に描かない?」

 優奈さんが提案をする。

 俺もその提案に乗る。

「いいですね。そうだ、どうせなら誰が一番絵が上手いか勝負しません?」

 優奈さんが答える。

「へぇ、私に勝負を挑むなんていい度胸じゃない。北海道の北斎と呼ばれた実力を見せてあげる」

 優奈さんは乗り気なようだ。

 祈闘さんにも聞いてみる。

「祈闘さんもどうですか?一緒に絵を描くの」

 祈闘さんは何故かさっきからずっと黙っている。

 もう一度聞いてみる。

「祈闘さん?」

 すると祈闘さんが弾かれたように答える。

「えっ⁉︎えっとそう……ですね。いいですよ。やってやろうじゃないですか」

「じゃ、決まりね」

 俺たちは午後の写生大会で対決することになった。


 昼休みが終わり、午後の授業が始まった。

 写生大会の始まりだ。

 校門前で二人と合流する。

 優奈さんが話す。

「それじゃあ、誰が一番絵が上手いか対決よ!」

 俺たちはそれぞれの画題を探しに出かけた。


 祈闘さんはわからないが優奈さんはどうやら自身があるようだった、前の俺の絵心はそれなり、といった感じだった。

 だが、今の俺にはある作戦がある。

「ふっふっふっ。この勝負、もらった」

 俺は一人笑っていた。


 授業が終わるまで残り10分といったところになった。

 俺はすでに描き終えていて校門に着いている。

「あら、あなたが一番乗り?」

 そこに優奈さんが着いた。

「皆さんお揃いですね」

 続いて祈闘さんも来た。

 俺は言う。

「よし、それじゃあ勝負といきましょうか」

 続けて俺が言う。

「まずは俺から」

 そう言って俺は自身の絵を二人に見せる。

「へぇ」

「わぁ」

 二人から感嘆の声が漏れる。

 俺が描いたのは僅かには花が残っていた桜だ。

 花びらが散りつつも青々とした葉が茂りだしている様子を描いた。

 その絵はまさにそのまま写しとったかのように写実的だった。

 優奈さんが言う。

「なるほど、やるじゃない。勝負を仕掛けただけはあるわね」

 俺は答える。

「えぇ、なんせ、俺は()が良いので」

 そう言って俺は自身の目を指さす。

 俺の作戦はこうだ。

 魔眼を使い、風景を完璧に記憶する。

 散る花びらも俺の眼からすれば止まっているような物なので後はその絵を描くことさえできればいい。

 そして、俺はそれができるくらいには器用だった。

 ……まぁ、そのおかげでまた頭が痛くなったが。

「なら次は私の番ね」

 優奈さんが絵を見せる。

 この絵は道を描いたのだろうか?

 街中を行く人々がうまく描かれている。

 絵のタッチが少し浮世絵に近い、なるほど北海道の北斎と呼ばれただけはある。

「優奈さんもさすがですね」

 今のところ実力は互角といったところか。

「じゃあ次は……」

 俺と優奈さんは祈闘さんの方を見る。

「えー、ほ、本当にやるんですかぁ」

 祈闘さんは少し恥ずかしがっているようだ。

 もしやこれは……。

「祈闘さん、別に無理をして見せなくてもいいんです。ですが、できれば俺は祈闘さんの絵を見てみたいです」

 祈闘さんは初めからあまり乗り気ではなかったようなので無理強いはしたくないが興味が無いと言ったら嘘になる。

 祈闘さんが答える。

「い、いや、別にそこまで嫌ってわけでも……」

 祈闘さんが絵を見せてくれる。

 それは……、そう、良く言えば芸術だった。

 悪く言えば、カオスだった。

 住宅街の様子を描いたようだが、家らしきものは線がガタガタで歪な四角形となっているか、三角の屋根が乗った図形のような簡素なもので、あたりには何とも言えない生き物が描かれていた。

 優奈さんが尋ねる。

「えっーと、この生き物は……何?犬?」

 優奈さんが楕円形から四本の棒と顔らしき物が伸びた生き物について聞く。

 祈闘さんが恥ずかしそうに答える。

「あの、それは猫です……」

 空気が気まずくなる。

 まずい、これではただただ祈闘さんの不器用を晒しているだけになってしまう!

 俺がこの空気を変えなければ!

 俺もまた祈闘さんに尋ねる。

「えーっと、祈闘さん、この電柱?はよく描けてますね」

 俺は家の隣に描かれている長い棒からいくつかの棒が伸びている絵について言う。

 祈闘さんが答える。

「それは木です……」

 誰も言葉を発しなくなった。

 チャイムが鳴り、先生に絵の提出を求められる。

 俺が言う。

「もう……戻りましょうか」

 二人とも頷くだけで何も言わなかった。



 放課後になった。

 俺たちは今日は俺の家でで作戦会議をすることになった。

 事前に父さんたちには連絡してあるので遠慮なく招く。

 俺は祈闘さんたちを連れて家に帰った。

「ただいまー」

 優奈さんが俺に続く。

「ただいま帰りました」

 祈闘さんがそれに続く。

「お邪魔します」

 姉さんが俺たちを出迎える。

「あらあら、いらっしゃい。また女の子が増えたわね。全く我が弟ながらやるじゃない」

「そんなんじゃないよ」

 姉さんのからかいを流しながら家へと上がる。

 とりあえず居間で作品会議をすることにした。

 優奈さんが話し出す。

「それじゃあ、今日の議題は、次に戦う候補者についてよ」

 俺と祈闘さんが頷く。

 優奈さんが話を続ける。

「私たちは今まで二人の候補者と戦ってきたけど、術木薔薇は正面から、刻印は不意打ちに近い形で勝負が始まった。そして何とか勝利したけれど次もそう上手くいくかは分からない、だから次は私たちから仕掛ける。そのためには次に戦う候補者の選定が必要よ」

 俺たちはまた頷く。

 祈闘さんが言う。

「それについてなのですが私に一つ意見が」

 優奈さんが答える。

「言ってみて」

「はい、次に戦う候補者なのですが、私は呪禍桔梗(じゅかききょう)を勧めます」

 俺が質問する。

「なんでその人なんですか?」

 呪禍桔梗、候補者なのでもちろん七大魔家の当主だ。

 そして、優奈さんのお父さん、魔使操蛇が気をつけろと言っていた相手だ。

 祈闘さんが説明する。

「実は呪禍家と祈闘家は代々ライバル関係にありまして、父と呪禍桔梗もまた互いに競い合っていました。なので他の当主よりも多少は情報を知っています」

 なるほど、七大魔家の魔術は皆、知られているが、かと言って手札の全てが分かるわけではない。

 だから、少しでも手札が分かるというのはありがたい。

 相手も祈闘さんの魔術をよく知っているかもしれないが、祈闘さんの魔術は言ってしまえば身体強化と変わらない。

 知られていてもダメージは少ない。

 俺は優奈さんに言う。

「優奈さん、俺はそれで良いと思うのですが」

 優奈さんが答える。

「そうね、私も賛成よ」

 祈闘さんが言う。

「なら、決まりですね。それじゃあ、呪禍桔梗に不意打ちを仕掛ける方法を考えましょう」

 こうして俺たちはしばらく作品会議をした。


 夜になったので解散することにし、祈闘さんが帰る。

「それじゃあ、お邪魔しました。また明日」

 祈闘さんの挨拶に俺は答える。

「はい、また明日」

 祈闘さんを見送り、俺たちも家に入る。



 祈闘守杜は一人、家に帰りながら独り言を呟いていた。

「今日はお二人に恥ずかしいところをお見せしてしまいましたね。まさかお二人があそこまで絵が上手いとは。私、絵を描くみたいな細かいことは苦手なんですよねぇ。」

 そんなことを言った後、祈闘は先程行った作戦会議のことを思い出す。

 私は今日、二人に少し隠し事をした。

 呪禍家と祈闘家がライバル関係なのも、父と呪禍桔梗がそうだったのも本当のことだ。

 でも、次に戦う候補者に呪禍桔梗を推薦したのは手札が分かるからといった理由ではない。

 私は未だ、祈闘家の当主として認められきっていない。

 そして、私自身もまだ、お父様に追いつけているとは思えない。

 だから、父とライバルだった。あの男を倒すことでせめて自分自身が自分のことを祈闘家の当主として認められるようになりたい。

 そんな自分勝手な理由から次に戦う候補者を選んだ。

 二人には悪いと思っている。だが、あの男にだけは勝ちたい。

 正真正銘の祈闘家の当主となるために。


 夜が更けていく。月だけが彼女を見つめている。

 明日は新月だ。

 

 

 

 

 

 

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