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第十一話 刻印の魔術師

今日は5月19日中間テスト最後の日だ。

 優奈さんの手助けもあり、なんとかそれなりの成績を取れそうだ。

 俺たちは学校から帰るその足で間界へと向かう。

「それにしてもまさか、祈闘さんが東神高校の生徒だったとは」

 隣を歩く祈闘さんが答える。

「えぇ、私があなたのことを知っていたのも東神高校の生徒だったからなんです」


 

 遡ること2日前、俺たちが共闘関係を結んだ後。

 俺は祈闘さんに提案をした。

「え〜っとすいません。共闘関係を結ぶのはいいんですが2日待ってくれません?」

 俺の提案に祈闘さんが答える。

「あぁ、いいですよ。中間テスト中ですものね」

 祈闘さんの言葉に俺は驚く。

「えっ」

 俺の言葉に祈闘さんが驚く。

「えっ」

 何故祈闘さんが今俺たちが中間テストだと知っているんだ?

 祈闘家は近畿地方が縄張りらしいがそんなことまで分かるのか?

 俺の疑問に祈闘さんが答える。

「私は祈闘家の当主ですが、学生でもあります。あなたたちの同級生ですよ」

「なっ、なんだってー‼︎」

 俺はその日一番の声を出した。

 どうも東神高校は祈闘家の当主が家系の者に向けて開いていた学校が元となっているようで学校の上層部は祈闘家とズブズブらしい。

 なので、突然魔術絡みの用事ができても早退や欠席がしやすいため都合が良いそうだ。

 俺がこの世界に来て初めて登校した日に遠くで見えた巫女服の人は祈闘さんだったのだろう。

 そんなわけでこれからの作戦などを決めるのは中間テストが終わってからになった。そして現在に至る。


 俺たちは東神高校の近くの路地裏に入る。

 祈闘さんが俺たちに話しかける。

「それじゃあ、間界への扉を開きますね」

 俺たちは祈闘さんが開いた扉に入る。


 いつ見ても赤黒い空をしている。

 見た目はさっきまでいた所と変わりがないのに不気味な雰囲気を醸し出している。

 祈闘さんが話し出す。

「それじゃあ、まずは私の魔術……というより、戦い方を見せますね」

 そう言って祈闘さんは魔獣のいる方向に向かっていく。

 祈闘さんが何枚かの紙がついた棒を懐から取り出す。

 あれは……何だ?よく神社の神主などが何かしらのの儀式をする時に振るのを見たことがある気がする。

 祈闘さんが説明を始める。

「私の武器はこの大幣(おおぬさ)です。神道の祭祀において使われる汚れや災いを清める道具を使って戦います」

 あれは大幣と言うのか。あれを使って戦うと言うが空を飛びながら弾幕でも張るのだろうか?

 その場合共闘しづらそうだ。

 一匹の魔獣が祈闘さんに気付き、襲いかかる。

 祈闘さんは一切慌てずに何やら詠唱を始める。

「我が信ずる神よ、畏み畏みお願い申す。どうか我に御身の加護を!」

 祈闘さんの魔力が跳ね上がる。

 まるで俺が魔使さんに強化された時のようだ。

 だけど魔力量が尋常じゃない!

「いきますっ!」

 魔獣はもう祈闘さんの眼前まで迫っていた。

 祈闘さんもまた構える。

「えいっ!」

 祈闘さんが大幣を魔力で強化し、全力でフルスイングする。

 大幣は目にも止まらぬ速度で振り抜かれ、魔獣は水風船のように弾け飛ぶ。

 飛び散る肉片、降り注ぐ真紅の雨、これが……祈闘家の戦い……!

 祈闘さんが近づいてくる。

「とまぁ、こんな感じです。実戦だと武術とかも使うのでまた少し変わりますが、基本的には自分を強化して殴るのが祈闘家の戦い方です」

 祈闘……、祈り、闘う。魔使家もそうだが、なるほどピッタリな名前だ。

 七大魔家は皆、魔術や戦い方から家名がつけられたのだろうか?

「それじゃあ、次は私たちの番ね」

 優奈さんが話し出す。

「知ってると思うけど私の魔術は【使役】魔獣と契約して使い魔として戦わせるわ。だけど今の私の使い魔は黒峰くんだけよ」

 優奈さんの言葉を聞き、祈闘さんが驚く。

「噂には聞いてましたけど本当に人を使役してるんですね。【使役】魔術でこんなことができるなんて」

 優奈さんが補足する。

「本来ならできないのだけど何故か黒峰くんはできたのよね。それと、私は彼の持つ魔術も使えるわ」

 優奈さんの言葉に俺は尋ねる。

「結局、俺の魔術って使えるようになったんですね」

 操蛇との戦いではできたようだが、あのすぐ後に試してみたができなかったのだ。

 だから、あの時はまぐれでしばらくは使えないのかと思っていたができるようになったのだろうか?

 優奈さんが誇らしそうに言う。

「ふっふ〜ん。私を舐めないでちょうだい。お父様との戦いの直後はできなかったけど、すぐにコツを掴んでできるようになったわ」

 操蛇は熟練の使役魔術師は使い魔の魔術を使えると言っていた。

 つまり、優奈さんはたった数日でその域に達したということである。

 つい最近まで契約すらできなかったとは思えない速度だ。

 そんな俺たちに祈闘さんが質問する。

「あの、それで黒峰さんの魔術はどのような物なのですか?」

 俺は祈闘さんの質問に答える。

「俺の魔術【切断】はだいたいなんでも切れるって感じの魔術です。シンプルですけど意外と強いですよ」

 なんて自画自賛してみたりする。

 そもそも、やれ再生する触手やら、体が水でできている竜やらと戦っているのがおかしいだけでこの魔術は強いはずなんだ。

 魔使家の魔術師と戦った時は魔使侍郎のシャドー以外は一撃で倒せたのだからその強さは間違いないはずだ。

 祈闘さんが少し考えた後話す。

「……なるほど、遠距離攻撃を持っていないのは厳しいですが前衛が二人なら距離さえ詰められれば勝機は十分にあり得ますね」

 どうやら祈闘さんのお眼鏡にもかなったらしい。

 祈闘さんが話を続ける。

「今日はもう遅いですし、明日また、すり合わせもしましょう」

 ケータイを見ると気づけば時刻は6時を過ぎていた。

 確かにそろそろ帰らなければならない。

「ではまた」

 俺たちはそう言って各々の家に帰った。



 翌日

 俺たちはまた高校近くの間界に来ていた。

「それじゃあ、連携の練習を始めましょうか」

「はい」

 早速近くの魔獣で練習をする。

 相手は大型の魔獣で、トラックのような大きさの狼だ。

「それでは、私は右から黒峰さんは左からお願いします」

「わかりました。優奈さん、強化を」

「えぇ、【身体強化】!」

 それぞれの準備が整い、魔獣に挟み撃ちを仕掛ける。

祈闘さんと俺が魔獣の両側に移動する。

「いきますよ黒峰さん!」

 祈闘さんが俺に呼びかける。

「はい!」

 俺はそれに応える。

 祈闘さんは魔獣から数メートル程離れた所でしゃがんで、まるでバネのように力を溜める。

「【祈闘神楽・天の羽々矢きとうかぐら・あめのはばや】!」

 弾丸のように飛び出す祈闘さん、俺も同じタイミングで魔獣に斬りかかる。

「【切断】!」

 片方から串刺しにされ、もう片方からはざっくりと切られ、魔獣は悲鳴をあげる。

「ギュウア⁉︎」

 大量の血を吹き出して魔獣は倒れる。

 そして、一つの魔石となって消えた。

 祈闘さんが俺に近づいてくる。

「連携、バッチリでしたね。これなら十分に戦えそうです」

「あぁ、そうですね」

 実際、彼女の実力は本物だ。

 継いでからたったの2年とはいえ、七大魔家の当主に相応しい力だ。

 これなら俺たちも他の候補者に勝てるかもしれない。

 その時、俺たちの間から声が聞こえた。

「君たち、なんだか楽しそうなことをしてるね」

「「ッ!」」

 俺たちは驚きつつも咄嗟に距離をとる。

 そこにいたのは一人の男性だった。

 肩まで伸びた水色の髪に黒のシルクハットが覆い被さり、マジシャンのような風貌をしている。

 しかし、その顔には道化師のようなメイクが施されていた。

マジシャン風の男が手に持った杖を回しながら言う。

「ひどいなぁ、そんなに驚かないでよ。ちょっとしたドッキリじゃないか」

「あなたは!」

 どうやら祈闘さんはこの男を知っているようだ。

「この男を知ってるんですか、祈闘さん?」

 俺の質問に祈闘さんが答える。

「えぇ、よく知ってますとも。なんせ、この男は七大魔家の一つ、『刻家(きざみけ)』の当主、刻 印(きざみ しるし)なんですから!」

 刻と呼ばれた男が言う。

「紹介どうも、そこの君は初めましてだね。と言っても僕は君のことを知ってるんだけどね。黒峰刀也」

 どうやら刻は俺のことを知っているらしい。

 そしてこいつは七大魔家の当主ということは候補者だということだ。

 刻が言う。

「もうわかってると思うけど僕は候補者だ。だから、君たちと戦いに来た。まさか祈闘家の当主もいるとは思わなかったけどね」

 そう言って刻は祈闘さんの方を見る。

「戦ってる様子でもなさそうだし、なんなら、一緒に魔獣と戦っていたってことは手を組んだってことかな?」

 刻の祈闘さんを見る目が威圧的なものに変わる。

 それでも祈闘さんは怯まずに言い返す。

「えぇ、そうですよ。運が悪かったですね。あなたは今から袋叩きにあいますよ」

 刻の顔が貼り付けたような笑みに変わる。

「へぇ、それは楽しみだ。それじゃあ、やろうか」

 俺たちは魔力を纏い戦う準備を整える。

 さぁ、どうくる⁉︎

「それじゃあ、いくよ」

 刻の姿が一瞬にして消える。

「そしてさようなら」

 耳元で刻の声が聞こえた。

 その時、俺の足元が光りだす。

 祈闘さんが叫ぶ。

「黒峰さん!そこから逃げて!!」

 閃光、そして爆発。

 俺の姿はかき消えた。

 

 

 

 

 


 

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