第十話 3人目
どうも皆さんこんにちは、私は黒峰刀也です。
今日は月曜日、私は今日中間テストを受けました。
察しの良い人はもうお気づきかもしれません。
そう、私は中間テストの対策を何もできなかったのです。
くそう、このクソ高校め、なんでよりにもよって俺の苦手な科目からやるんだ。せめて明日以降なら対策できたのに。
そんな意気消沈としている俺に優奈さんが話しかける。
「何やってるの黒峰くん」
「優奈さ〜ん。俺、何も勉強できてなかったからだいぶまずいんですけど!」
そんな俺に優奈さんは呆れたように話す。
「普段から勉強してないからでしょ。明日と明後日の科目は手伝ってあげるから元気出しなさい」
今の俺には優奈さんに後光がさしているように見えた。
「ありがとうございます〜優奈様〜」
俺は優奈さんに向かって拝む。
優奈さんは恥ずかしがった俺を怒る。
「やめなさい!拝むな!」
俺たちは今日のテストを終えて帰宅した。
帰宅途中、優奈さんが俺に話しかける。
「そういえばあなた、いったいどういう体をしてるの?」
なんだか既視感のあるくだりだ。
優奈さんが話を続ける。
「あなた昨日、お父様と戦う前にも魔使家の魔術師たちとも戦ったのよね?お父様との戦いでもかなり攻撃をくらっていたけど朝起きたら完治してるなんて丈夫すぎない?」
優奈さんの疑問ももっとだ。実際俺も今日は動けないんじゃないかと思っていたが何故か朝起きたら怪我が治っていた。
「いや〜、なんでなんでしょうね。俺にも分からないんです」
「もしかして、本当に契約したことで体が魔獣に近づいたりしたのかしら?」
優奈さんがとんでもない推論を述べるがこの治癒力を鑑みると案外本当に俺は人じゃないのかもしれない。
黒峰刀也から引き継いだ記憶には俺の体のことは何も無い。
しかし、病弱だった俺からすればこの体は羨ましい限りだ。
そんことを話しながら歩いているとふと、一人の女性が目に入る。
その女性は巫女服を着ていて長い黒髪を後ろ手に二つに縛っている。
俺はその女性と目が合う。
そして、その女性が俺に話しかけてくる。
「こんにちわ。良いお天気ですね」
「あぁ、そうですね」
まさか話しかけられるとは思わなかったので俺は微妙な返事をすることしかできない。
女性が話し続ける。
「私、あなたに会いに来たんです。黒峰刀也さん」
どういうことだ?俺に会いに来た?
もちろん俺はこの女性を知らない。もしかしたら黒峰刀也の知り合いなのかもしれないが俺の記憶には無い。
……いや待て、この人どこかで見たことがあるような気がする。
髪を二つに縛った巫女服の女性……。
そうだ!この世界の3人のヒロインの内の一人、名前は確か……。
女性が自己紹介をする。
「私は祈闘守杜って言います。ちょっとお話良いですか?」
そう、彼女の名前は祈闘守杜だ。
……祈闘……確かそれは七大魔家の内の一つだ。
そんな彼女が何故俺に話を?
祈闘が話を続ける。
「まずはこれを見てもらいましょうか」
そう言って祈闘は右手の甲を見せ、魔力を込める。
まさか……!
祈闘は太陽を模した紋様を見せながら話す。
「私、候補者の一人なんです」
「「ッ!」」
俺と魔使さんはすぐに戦闘体制をとる。
確か、薔薇と優奈さん以外の候補者は皆七大魔家の当主だったはずだ。
彼女が祈闘家の人間でさらに候補者ということは彼女が祈闘家の当主!
優奈さんのお父さん、魔使操蛇もかなりの実力者だった。
彼女はそれに並ぶ強者ということになる。
そんな俺たちを見て祈闘は慌てる。
「あ、いやいや待ってください。私あなたたちと戦う気はありません」
「……どういうことだ?」
彼女の行動から察するに優奈さんが候補者であることは知っているはず、そして彼女も候補者なのに戦う気が無いとはいったいどういうことだろう?
祈闘が話を続ける。
「えっ〜とですね、私はあなたたちに共闘を申し込みたいんです」
共闘?決議ってそんなこともできるのか?
ひとまず優奈さんに聞くことにする。
「優奈さん、決議って共闘とかしても大丈夫なんですか?」
優奈さんが悩ましい様子で答える。
「そう……ね。ルール上は問題無い筈よ。部外者の手出しは原則禁止だけど候補者同士の結託は禁止されていない。だから共闘は可能よ。けれど……」
優奈さんが歯切れの悪い言い方をするので続きを促す。
「けれど……?」
優奈さんが続きを話す。
「この決議は正々堂々と行われるべきものよ。なのに共闘なんてすれば卑怯者の誹りを受けかねない」
なるほど確かに日本の魔術師のトップを決める戦いで本来なら1位の人が2位と3位の結託チームに負ければ本当の意味でトップを決めることはできなくなるから当然のことだ。
祈闘が申し訳なさそうな雰囲気で話す。
「えぇ、そうです。これは卑怯者がすることです。ですが私には絶対に魔術長にならなくてはならない理由がある。魔術長になるためなら卑怯者の誹りだって受けます」
どうやら彼女には理由があるようだ。とりあえず、その理由だけでも聞いてみたい。
「優奈さん、とりあえず、理由だけでも聞いてみるのはどうでしょう?」
優奈さんが思考する。そしてため息を吐いた後承諾する。
「そうね、理由くらいは聞いてみるわ。話してくれる?」
祈闘が礼を述べる。
「お二人とも、ありがとうございます」
そして祈闘が共闘を申し込んだ理由を話し始める。
「私は10年前の決議で当時祈闘家の当主だった父を亡くしました。父は歴代の祈闘家当主の中でも指折りの魔術師で他の七大魔家の当主にも負けていませんでした。また人格者でもあり、父の周りにはいつも人がいました。そんな父が10年前の決議で死に、家は混乱しました。基本的に当主は当主の直系に受け継がれます。ですが当時の私は7歳、当主になるには幼すぎました。祈闘家は誰を次の当主にするか揉めて結局、私が15になるまで代理を立て、それからは私が当主になることで落ち着きました。ですが、後継者争いの中で祈闘家は分裂し、その力を急速に失いました」
優奈さんが話を補足する。
「……聞いたことがあるわ。祈闘家の前代当主は実力、人格、共に優秀な当主でお父様も一目置いていたって、でもその後内輪揉めで力を失って七大魔家から降ろす話もあるとか」
祈闘が優奈さんの話を聞いて悲しそうに続ける。
「えぇ、そうです今や祈闘家は魔術長どころか七大魔家の座すら怪しいんです。だからどうにかして決議で優勝して魔術長になることで祈闘家の力を取り戻したいのです。……たとえ、卑怯者と罵られようとも。だけど、私一人では魔術長になれる可能性は低い。だから、当主ではないが故に戦力を欲していそうなあなたたちに共闘を申し込んだんです」
祈闘が共闘を申し込んだ理由は分かった。
この話が本当なら俺も彼女を手伝いたいと思う。
だが、一つだけ聞いておくことがある。
「なぁ祈闘さん」
俺の呼びかけに祈闘が応える。
「はい、なんでしょう」
「一つ質問だ。あんたは普段、魔術師として何のために戦う?」
決議に参加し、戦う理由はわかった。後は魔術師として何のために戦うかだ。
祈闘が答える。
「戦う理由……ですか。そうですね、私はこの土地が大好きです、人々が笑い、暮らすこの土地が。父がそうしたように、今までの当主たちがそうしたように、私はこの土地の人々を守りたい」
彼女の瞳は真剣そのものだ。嘘をついているようには見えない。
「優奈さん」
俺は優奈さんに声をかける。
この人を手伝いたいという意味を込めて。
優奈さんはため息を吐いた後答える。
「はぁ、そうねあなたはそういう人だものね。いいわ、私としても戦力は欲しいし、断る理由も無いわ」
祈闘は喜びを露わにして礼を言う。
「本当ですか!ありがとうございます!」
俺はよろしくの握手をするため手を差し出す。
「それじゃあ、改めて。黒峰刀也だ、これからよろしく」
優奈さんが俺に続く。
「魔使優奈よ、よろしく」
祈闘が俺の手を握り、挨拶をする。
「祈闘守杜です。これからよろしくお願いします」
こうして俺たちに新たな仲間ができた。




