第九十九話 メタ話
前話の編集前のタイトルを見た人はその記憶を抹消してください。いいですね?
今回のループが始まった日、優奈さんとの契約を終えた日の、翌日となった。
俺は、起床し、優奈さんと共に朝の支度をする。
「それじゃあ行きましょうか、優奈さん」
「……ええ。あなたのことについて、色々と話してもらうわよ」
昼休みが始まるチャイムが鳴る。
優奈さんと屋上でお昼を食べながら、事情の説明を行うのだが、屋上へ行く前に、対処しなければならない問題がある。
「刀也〜、いっしょにお昼食べよ!」
金髪の美少年、術木薔薇が教室へと入ってくる。
薔薇も一緒に事情を説明するということを考えたが、正直、面倒なことになる未来しか見えないので、やめておいた。
「悪い薔薇。今日は用事があって、一緒には食べられないんだ」
俺は、申し訳なさそうな顔をして薔薇の誘いを断る。
「そんな……。刀矢が、僕の誘いを断るだなんて……」
薔薇はかなりのショックを受けたようで、よろめいている。
こういった姿を見ると、薔薇もやはり、根は悪い奴ではないのだとわかる。
「大丈夫だ。あくまで今日だけだ。明日からはまた一緒にお昼を食べよう」
俺が言い聞かせるようにそう言うと、薔薇は様々な感情がないまぜになった顔をする。
「う〜。仕方ない、か。用事があるんだもんね。わかったよ。今日は我慢するよ」
そう言って、薔薇は教室をとぼとぼと出ていく。
「さて、俺も行くとするか」
薔薇が教室を出たのを見て、俺は立ち上がり、屋上へと向かう。
「あ、先輩!」
俺が教室を出ると、横から声をかけられる。
「ああ。百合か」
短く切り揃えた黒髪と、浅黒く焼けた肌が特徴的な少女、術木薔薇の妹でもある、黒木百合だ。
「先輩。さっき兄さんが落ち込んだ様子で廊下を歩いて行きましたけど、何かあったんですか?」
どうやら落ち込んでいる薔薇を見たようで、百合は何かあったのかと尋ねてくる。
「ああ、実はな——」
それに対し俺は、一連の流れを百合に話す。
「……なるほど。それで兄さんがあんな感じに……」
ただ昼食の誘いを断られただけでああなることに違和感を持たれないのは、さすが薔薇と言うべきか。
「薔薇はずっとああだからな。周りはもう慣れている」
刀也の呟きに、俺は心の中で苦笑する。
「それじゃあ、俺は行くとこがあるからもう行くよ」
あまり長話をすると、優奈さんに迷惑がかかるので、俺は話を切り上げる。
「それは失礼しました。では先輩。さようなら」
「ああ。またな」
百合の別れを告げ、俺は屋上へと向かっていく。
「優奈さん。お待たせしました」
「ええ。そろそろこっちから迎えに行こうかと思ったくらいよ」
屋上につき、俺は優奈さんと合流する。
「それじゃあ、あなたについて、色々と話してもらおうかしら」
弁当を広げながら、優奈さんが言う。
「はい。全部話します」
俺は、この世界のシステムや、俺の前世について話し出す。
「……この世界がループしていて、あなたは転生してきて、すでに三回も私と出会ってるですって……!?」
優奈さんが俺の話を聞き、頭を抱える。
「信じられませんか?」
俺は、優奈さんに尋ねる。正直言って、逆の立場なら鼻で笑っていただろう。
「……にわかには信じ難い……けれど、あなたの話が本当ならすでにわかっているんじゃない?契約した使い魔と主は、無意識レベルで心が通じ合う。だから、なんとなくだけどあなたが嘘をついていないってわかるわ」
と、優奈さんが言う。
そう言えば確かに、契約してからは優奈さんとなんとなく意識が繋がっていたってけか。
「ああもう……!ただでさえ最近は悩みが多いのに、ここにきてさらに悩みが増えるだなんて……!いっそ嘘ならよかったのに……!!」
と、またもや優奈さんは頭を抱える。
「大丈夫です。俺が優奈さんの悩みを解決しますから」
「悩みのタネが言ってんじゃないわよ!」
俺の言葉に優奈さんが激しくツッコむ。
だがしかし、事情の説明は前座なのだ。故に俺は、本題に入る。
「それでですね優奈さん。あなたの悩みを解決する代わりに、あなたに手伝ってもらいたいことがあるんです」
「……?手伝ってもらいたいこと?」
うんうん唸っている優奈さんに、俺は本題の内容を話す。
「俺には、助けたい人がいます。その人を助けるためには、さらなる力が必要だ。だから、俺が決議で優勝できるように手伝ってもらいたいんです」
「…………はぁ!?」
俺の言葉に、優奈さんが驚く。
「優勝ってあんた、そもそも参加すらできていないじゃない!」
優奈さんの指摘はもっともだ。しかし、決議優勝の魔力、それほどの強化がなければ、システムには到底敵わない。
それどころか、決議優勝の魔力があってなお、届かない可能性が高いだろう。なので、俺が、俺たちが思いつく限りの強化を試し、挑むつもりだ。
そのための計画を、俺たちは考えた。
「はい。優奈さんの指摘はもっともです。なので、協力者が必要なんです」
「その協力者って……?」
優奈さんが尋ねる。
「術木家の当主。術木萄越です」
俺は、協力者の名前を言う。
「術木萄越、ですって!?」
優奈さんがまたもや驚く。
「術木家の当主にどうやって協力してもらうのよ!だいたい、協力してもらえたとしてどうやって……」
まだ優奈さんには、今までのループで起こったこと全てを話したわけではない。
なので、その反応もやむなしだろう。
しかし俺たちは、術木萄越の性格を知っている。
やりようによっては、こちら側に引き寄せられると考えている。
「そのための第一歩として、術木萄越の息子であり、候補者の一人でもある、術木薔薇を狙います」
俺は計画の次の段階を話す。
「術木薔薇……!確か、この学校の生徒だったわね。そして、術木の枠の候補者は不明だった。彼がそうなのね……!」
優奈さんが、俺からもたらされた情報から、思案し始める。
「息子である術木薔薇とパイプを繋げば、術木萄越とも繋がれる?いやでも、そう簡単にいくのかしら?——」
数分ほど、優奈さんは思案する。その後、顔を上げて尋ねる。
「勝率は?」
「五分五分です」
俺は、正直な感想を述べる。薔薇を仲間にするまではいい。しかし、その後が問題であった。
「萄越の性格なら、可能性はあると思うが、萄越の性格ゆえに、断られる可能性もあるからな……」
刀也も、この計画の先を憂う。
「……はっきり言って、あなたの計画は希望的観測が多いわ」
優奈さんから、切れ味の鋭い指摘をもらう。
「けれど、あなたの持つ情報。それと、あなたの目標を鑑みれば、五分五分というのは十分な可能性ね」
「それじゃあ……!」
俺は、期待のこもった声を出す。
「ええ。あなたが私の悩みを解決する代わりに、私もあなたに協力するわ」
こうして俺は、優奈さんの協力を取り付けることができた。
「それで黒峰くん。……いえ、ここは炎上寺くんと呼んだ方がいいかしら?術木薔薇と接触するのはいつにするの?」
優奈さんが、薔薇との戦いをいつにするのかと問う。
「今日です!」
「はい?」
聞こえなかったようなので、俺はもう一度言う。
「だから、薔薇と接触するのは今日です」
「……」
何やら優奈さんの様子がおかしい。プルプルと震えている。
「なんっで、そう性急に事を進めようとするのよ!?」
屋上に、優奈さんの怒号が響き渡った。




