あるパーティーの備忘録-20
冒険者の店に入った。壁に貼られた依頼書を見に行こうとしたオレは、ガロンのおっさんに止められた。
「まてまて。依頼書を見る前に、登録用紙を記入するぞい」
「登録用紙?」
おっさんに連れられ、カウンターへ。通常の冒険者登録と依頼受注カウンターの他に、被雇用登録と書かれたカウンターがあった。おっさんは被雇用登録のカウンターに向かっていく。
「被雇用登録?」
聞きなれない言葉だ。
「冒険者の力量と希望金額を登録すると、それを見た雇い主からの指名依頼が入るようになっておる。ここでは、ワシらも商品じゃ。他の都市との一番の違いじゃの」
「ふーん」
オレは登録用紙を記入するオッサンの手元を見ながらつぶやいた。
「指名依頼か。なんだか、ベテランみたいだな」
「他の都市の指名依頼はベテランの証じゃが、この都市では違うぞい。指名するのは賢者の学院の学生がほとんどじゃから、あまり高い金額だといつまでたっても売れ残るぞい」
「なんだそれ?」
生徒が依頼出すんじゃなくて、登録した冒険者を生徒が選ぶのか……。
「このシステムにしておかんと、依頼金額の安い学院の生徒からの依頼は、誰も受けなくなるからの」
「…………」
こんなしけた仕事、オレたちが受ける必要ないだろう? オレの疑問が解消する前に、おっさんが希望金額を書き入れた。それを見て、思わず突っ込みを入れた。
「安すぎないか、それ」
オレ達2人で、駆け出しの戦士1人分って、たたき売りにも程があるだろう?
「まあ待つのじゃ」
おっさんは備考欄に次の文言を書き入れた。
“上記金額は初回限定。2回目以降は別途相談”
“当方としては、卒業までを期限とした専属契約を希望する。専属契約の条件に付いては、別途相談”
「専属契約?」
おっさんはドヤ顔で説明を開始した。
「学院の生徒が護衛で我々を雇うのは、1度だけではないからの。課題は次々に出されるから、そのたびに新規で契約するのは、どちらにとっても骨じゃろ?」
「たしかに、面倒だな」
「で、専属契約というハナシが出てくる。学生からの依頼は、冒険者が死んだり、遠くの街まで出かけて留守にしていたりしない限り、優先的に専属契約をした冒険者に回るという寸法じゃ。これなら学生は新規で冒険者を選ばなくて済むし、冒険者は安定した収入を得る。どちらも得をする、理想的な契約じゃ」
「だけどよ……」
オレは乗り気じゃなかった。
「それって、紐つけて飼われてるのと一緒だよな?」
せっかく冒険者になったのに、それじゃあ街の衛兵と一緒じゃないか? ガロンのおっさんはそんなオレの言葉を一蹴した。
「安定した収入が無い冒険者は、大体において早死にするぞ。装備を整えたり、傷んだ武器を整備しにくくなるからの。お主、早死にしたいか?」




