あるパーティーの備忘録-21
「…………」
地獄の沙汰もカネ次第ってヤツだな。オレはおっさんの提案を受け入れた。
「そういうことなら、仕方ねえな」
「人事は尽くしたからの。あとは天命を待つのみじゃ」
ここまでレイブンが思い出していたら、魔術師バルナスがしみじみとつぶやいた。
「あの金額には驚きましたけどね」
大きく息をついて続けた。
「2人組なのに、1人分の料金でしたからね。見間違いじゃないかと、なんども見直しをしてしまいましたよ」
「ワシだけならともかく、レイブンは普通の料金設定では歯牙にもかけてもらえんからの」
「駆け出しの戦士だもんな」
レイブンはしみじみとつぶやいた。いろいろと経験した今だから分かるのだが、依頼者がわざわざ駆け出しの戦士を雇うことは、まず無いのだ。経験のない駆け出しを雇うぐらいなら、少し高くなっても中堅処を選ぶ。それが雇い主の心理であるからだ。
「まあ、レイブンの場合は、いちど雇ってもらえさえすれば、次からも指名依頼を取れるとは思っていたがの」
ドワーフのガロンは得意そうに続けた。レイブンの資質を見出したのは自分だという自負があるからだ。
「冒険者としては駆け出しでも、傭兵としての経験があるから、戦士としての腕は、当時から中級と呼んでも差し支えは無かったしの。しかも、専業戦士ではなく、レンジャーもできる。収集課題が多い学生にとっては、喉から手が出るぐらい欲しい人材じゃろ?」
「はい」
バルナスが大きくうなづいた。
「他の連中が僕より先にあなた方を雇っていたら、僕の主席の地位も無かったでしょうね」
バルナスはガロンとレイブンを雇ったことにより、より危険度の高い森林の深部まで赴くことが出来たのだ。結果、薬効の高い十分に育った薬草を手に入れることができ、生成した薬品のレベルも高くなったのだ。薬学の授業では、生成した薬品のレベルで成績が決定するのだ。
「全ては我が神の思し召しじゃよ」
ガロンは酒の入ったカップを掲げた。
「ノドレイ様に、感謝を」
無言でカップを掲げるメンバー。戦神に乾杯が終わると、彼らの話題は保存食の美味しい食べ方に移っていった。こうして、騒がしい夜は更けていく。
彼らが歴史の表舞台に登場するまで、あと2年……。
-完-




