あるパーティーの備忘録-19
「すませた」
オレは短く答えた。
「では、行くとするかの」
おっさんは、嬉しそうにこう言った。
「これからお前さんが踏み出す一歩は小さな一歩だが、お前さんの人生の中では、とても大きな一歩じゃよ」
「…………」
オレはおっさんを無視して歩き始めた。
「こら! いま、良いことを言ったんじゃぞ。無視して歩き出すヤツがあるか」
ガロンのおっさんは、あわてて走り出し、オレと並んだ。
「オレにも冒険者としての経験はあるんだから、ついてくるなよ」
「お主一人で依頼を受けたんじゃなかろうが。引率付のひよっこが、生意気言うでないぞ」
「…………」
こうして、オレとドワーフのおっさんの凸凹コンビの旅がスタートした。オレの常識が世間とは微妙にズレていることに気付くのは、かなり後になってからのハナシ。
オレとガロンのオッサンは、商会の馬車の護衛をしながら、西に向かっていた。商会の主人は、エステフィンという都市が目的地だって言ってたな。
この街道沿いの草は低く刈られており、盗賊が隠れる場所が無い。最近では盗賊の被害がほとんど出ていない安全なルートらしいが、念のため護衛を雇うのは、商人としての嗜みなんだそうだ。
「ヒマだな」
オレはヒマを持て余していた。
「気を抜くでないぞ」
オッサンはそんなオレに釘を刺す。
「我々は護衛に雇われておるのじゃ。料金分の仕事はやらんとならん」
「へーいへい」
冒険者って、もっとワクワクするようなモンだと思ってたぞ。
エステフィンという都市についた。大河のほとりにある城塞都市だ。水運と陸運の両方で成り立つ交易都市らしい。都市の中央には領主の館。その隣に3本の塔を持つ建物があった。
「でかいな」
オレは初めて見る高い塔を、間抜けな顔で見上げていた。
「これが賢者の学院じゃよ。魔術師と賢者を養成する学校じゃな」
ガロンのおっさんが説明してくれた。このやり取りも、最近では慣れてきていた。
「で、この賢者の学院と、次の仕事の関係ってヤツは?」
次の仕事を探そうぜと言ったら、ここに連れてこられたんだ。冒険者の店で仕事を探すんじゃないのかよ?
「この学院の生徒は、課題で薬草を採収したり、モンスターを倒して素材を採ったりすることがあるんじゃ。その護衛を次の仕事にするつもりじゃ」
「ふーん」
ガロンのおっさんは、単純にオレにこの塔を見せたかっただけみたいだ。観光名所になってるらしいからな。でかい塔を眺め終わったオレたちは、冒険者の店に向かった。
ワクワクするような仕事が転がってるといいんだが。




