あるパーティーの備忘録-18
この時のオレは知る由もなかった。新たに技能を得るための訓練って、あんなにハードなモノだったなんて。
それから3年。オレは15歳になっていた。年齢は、団長に決められたので合っているのかわからないが、そんなことは大した問題じゃない。今日から大人の仲間入りをし、晴れて傭兵団を独立するのだから。
今のオレの装備は、厚手の長そで長ズボンの服の上に、硬皮皮鎧を装備している。同時に鎧と同素材の手甲と脛あてを付け、腰に巻いた剣帯には両刃直刀を差している。ソードの柄は通常よりも若干長くなっていて、片手でも両手でも使えるようになっている。またそれに合わせて刀身も少し長くなっている。 こういう剣は、世間一般ではバスタードと呼ばれることが多いようだが、使えれば呼び名なんかどうでもいい。
背負い袋には代えの靴下や保存食、火打石といった行軍に必要なシロモノを適当に放り込み、その上からフード付きのマントを羽織っている。
「兄ちゃん、どこ行くんだ?」
「いつ帰ってくる?」
「兄ちゃん、遊んで?」
「兄ちゃん、お腹すいた」
フル装備のオレを見つけたチビ共が群がってきた。数人がオレの身体によじ登り、数人が脚にしがみついてきた。オレはチビ共をぶら下げたまま挨拶回りを済ませる。
「兄ちゃん、行っちゃうのか?」
「帰ってこないのか?」
「兄ちゃん、遊んで?」
「兄ちゃん、おしっこ」
オレは尿意を訴えたチビにションベンをさせながら、他のチビ共に答えた。
「いいか、良く聞け。オレは今日でここから独立する。冒険者になるんだ」
オレの宣言を受け、泣き出すチビもいたが、羨ましそうなチビもいる。オレにも覚えがあるが、なんで置いていくんだって気持ちなんだよな。
「気が向いたら帰ってくるから、生きてろよ」
もっと気が利いたことを言うつもりだったが、口から出たのは当たり前の言葉だった。しかも、数年前に聞いたセリフと全く同じだ。
「兄ちゃん、ここにいろよ」
「兄ちゃん、傭兵の方が儲かるぜ」
「兄ちゃん、遊んで?」
「い゛っぢゃ、や゛だぁーーー」
なかなか離れないチビ共を一人ずつ大人に引き渡し、オレはやっと身軽になった。
「生きていたら、どこかで会おうな」
オレはチビ共の頭を1人ずつ軽く叩くと、集落の入り口に向かって歩き出した。
「別れは済ませたかの?」
集落の入り口に、小さなビヤ樽みたいなのがいた。客分のドワーフのおっさんだ。確か、名前はガロンとかいったか? 戦神・ノドレイの神官で、教義に基づき導くべく勇者を探してウロウロしているらしい。
オレの独立にあたり、同行してくれるそうだ。いらんお節介なんだが、強引に押し切られてしまった。なんでも、オレには世間一般的な常識が欠如しているため、危なっかしくて見ていられないらしい。失礼な。オレはこの傭兵団イチの常識人だぞ。




