二度目の夢
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その後、しばらくあの夢を見ませんでした。
でも、気が付くと、あの歌を口ずさんでしまうんです。
そんな日が続いてまたあの夢を見ました。
その日も、車の揺れで目が覚めました。
……でも、違ったんです。
すぐに全く同じ夢ではないんだと気付きました。
理由ですか?
あの鼻歌ですよ。一回目は調子はずれだったのが、
この時は正しい音程になっていたんです。
なんでかわかりません。
でも"これが正しい音程だ"ってわかったんです。
それにもう一つ。最初から体が動くようになっていました。見回すと運転席にはピエロ、助手席には前回と同じ男性が座っていました。
そして私の左側に若い男性、後ろには同い年くらいの女性とスーツを着た男性の三人が座っているのがわかりました。
一回目の夢で感じた気配はこの方達だったんだと思います。でも、皆動かないんですよ。
助手席の男性のように、ピッタリと前を向いて固まったまま座ってるんです。
まるで、人形のようでした。
じっと座って瞬きもせずに前を見つめていて。
私も夢を見続けたら、こうなってしまうのではないかと思ったんです。
とにかく冷静にならないと。そう思い直して、他に何か違う部分がないかと探している時に、見つけたんです。
助手席に座る男性のポケットから、ナイフの柄のようなものが出ていました。
役に立つものかは分かりません。
でも、ないよりはマシだと思いました。
外は暗くなってきた頃、そっと手を伸ばしました。
ゆっくり、ゆっくり。ピエロにバレないようにって。
柄を掴んだ瞬間、少しだけ息が漏れました。
そのまま体を戻そうとしたときでした。
鼻歌が、止まっていたんです。
次の瞬間、突き刺さるような視線を感じました。
顔をゆっくり上げると、
ピエロがじっと私を見つめていました。
真っ白な顔に血のように赤い三日月型の口だけが、
やけにはっきりと見えました。
「……動いちゃ、ダメだよ。危ないよ」
私がゆっくりと倒していた体を起こして座席に座り直すと、ピエロは前を向いて、あの鼻歌をまた歌い出しました。
あのときの声は、今でも忘れられません。
でも、ナイフを取ることはできました。
手の中のそれを見て、少しだけ息を吐いたんです。
これなら抵抗できるかもしれない、そう思いました。
あの駅に着くと、やっぱりピエロは車を降りてドアの前にやって来ました。
今回も絶対に逃げきる。
そう覚悟を決めてドアが開いた瞬間飛び出したんです。
でも、このとき手首を掴まれてしまったんです。
力があまりにも強かったから振りほどけなくて。
そのときに掴まれていたところが、この痣の部分です。
私は、隠していたナイフを振り回して、必死に抵抗しました。
それに驚いたのか、ほんの少しだけ力が緩んだんです。
その隙に、なんとか振り払うことができました。
逃げられる。
今度こそ、逃げ切れる。
でも、あのピエロは追いかけてきたんです。
すごく足が早かったんですけど、ホームに止まっていた電車のドアが閉まる寸前に、なんとか飛び乗ることができました。
ピエロはドアを叩きながらなにかを言っていましたが、聞き取ることはできませんでした。
私はシートに座って、夢から覚めるのを待っていたんです。起きたら絶対にお祓いに行こうなんて考えながら。
そのとき。
突然、酷く大きい音で何かが流れだしました。
とにかく耳を塞いで、止まるのを待つことしかできませんでした。
でも。
それがなんの音なのか、気付いてしまったんです。
───あの、鼻歌だ。
そして鼻歌が止んだとき、耳元で声が聞こえました。
「つかまえた」
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