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夢の中の鼻歌  作者: 夢路
3/4

二度目の夢

─────────

その後、しばらくあの夢を見ませんでした。


でも、気が付くと、あの歌を口ずさんでしまうんです。

そんな日が続いてまたあの夢を見ました。


その日も、車の揺れで目が覚めました。

……でも、違ったんです。

すぐに全く同じ夢ではないんだと気付きました。


理由ですか?

あの鼻歌ですよ。一回目は調子はずれだったのが、

この時は正しい音程になっていたんです。

なんでかわかりません。

でも"これが正しい音程だ"ってわかったんです。


それにもう一つ。最初から体が動くようになっていました。見回すと運転席にはピエロ、助手席には前回と同じ男性が座っていました。

そして私の左側に若い男性、後ろには同い年くらいの女性とスーツを着た男性の三人が座っているのがわかりました。


一回目の夢で感じた気配はこの方達だったんだと思います。でも、皆動かないんですよ。

助手席の男性のように、ピッタリと前を向いて固まったまま座ってるんです。


まるで、人形のようでした。

じっと座って瞬きもせずに前を見つめていて。

私も夢を見続けたら、こうなってしまうのではないかと思ったんです。


とにかく冷静にならないと。そう思い直して、他に何か違う部分がないかと探している時に、見つけたんです。

助手席に座る男性のポケットから、ナイフの柄のようなものが出ていました。


役に立つものかは分かりません。

でも、ないよりはマシだと思いました。


外は暗くなってきた頃、そっと手を伸ばしました。

ゆっくり、ゆっくり。ピエロにバレないようにって。

柄を掴んだ瞬間、少しだけ息が漏れました。


そのまま体を戻そうとしたときでした。


鼻歌が、止まっていたんです。


次の瞬間、突き刺さるような視線を感じました。


顔をゆっくり上げると、

ピエロがじっと私を見つめていました。


真っ白な顔に血のように赤い三日月型の口だけが、

やけにはっきりと見えました。


「……動いちゃ、ダメだよ。危ないよ」


私がゆっくりと倒していた体を起こして座席に座り直すと、ピエロは前を向いて、あの鼻歌をまた歌い出しました。


あのときの声は、今でも忘れられません。


でも、ナイフを取ることはできました。

手の中のそれを見て、少しだけ息を吐いたんです。

これなら抵抗できるかもしれない、そう思いました。


あの駅に着くと、やっぱりピエロは車を降りてドアの前にやって来ました。


今回も絶対に逃げきる。

そう覚悟を決めてドアが開いた瞬間飛び出したんです。


でも、このとき手首を掴まれてしまったんです。

力があまりにも強かったから振りほどけなくて。


そのときに掴まれていたところが、この痣の部分です。


私は、隠していたナイフを振り回して、必死に抵抗しました。

それに驚いたのか、ほんの少しだけ力が緩んだんです。

その隙に、なんとか振り払うことができました。


逃げられる。

今度こそ、逃げ切れる。


でも、あのピエロは追いかけてきたんです。

すごく足が早かったんですけど、ホームに止まっていた電車のドアが閉まる寸前に、なんとか飛び乗ることができました。

ピエロはドアを叩きながらなにかを言っていましたが、聞き取ることはできませんでした。


私はシートに座って、夢から覚めるのを待っていたんです。起きたら絶対にお祓いに行こうなんて考えながら。


そのとき。

突然、酷く大きい音で何かが流れだしました。

とにかく耳を塞いで、止まるのを待つことしかできませんでした。


でも。

それがなんの音なのか、気付いてしまったんです。


───あの、鼻歌だ。


そして鼻歌が止んだとき、耳元で声が聞こえました。



「つかまえた」



───────────


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