第3話 ダークワイバーン
セシルが見た北方の空の暗雲は、恋人のティアと愛を語らった数日後、アトランティスに災厄をもたらそうとする現実の脅威となってしまった。杞憂では終わらなかったのだ。
「セシル隊長! 申し上げます! 北の空の暗雲から邪悪な飛竜の群れが現れ、首都に向かって来ております!」
あらかじめ警戒態勢を敷いていた飛兵隊は、北方の空から来る脅威をいち早く察知し、舞い戻った斥候の一人が、今、飛兵長セシルに状況を報告している。
「分かった。我々は国を守らなければならない。出撃するぞ! 俺に続け!」
『はっ!!』
脅威が現実となった以上、肚をくくるしかない。セシルは報告を聞くと即座に下知し、アトランティスを守るため、聖竜リュカオンを駆り、飛兵隊と共に北の空へ飛び立つ。
国防の使命を帯びて城から飛び立つ飛兵隊の勇姿を、ティアは高山都市に設えられた稜線の高台に立ち、天に祈りながら見送っていた。
(神様、どうかセシルに御加護をお与えください!)
最愛の恋人のため、敬虔な祈りを一途に捧げるティアの姿は、何者からも侵し難いほど神々しく、美しい。
飛兵隊の内、北方への偵察に向かっていた部隊は、首都への侵攻を少しでも遅らせるため、発見した邪竜の群れとの戦端を既に開いているはずだ。
(一刻も早く到着しなければ!)
自分を慕ってくれている部下のため、セシルは聖竜リュカオンを最高速で飛行させ、暗雲漂う北の空に向かってゆく。
「救援に来たぞ! みんな無事か! なっ!? これは!?」
かろうじて救援に間に合い、部下たちの無事を確認したセシルであったが、眼前で禍々しくも強大な力を顕現しているダークワイバーンの圧力に、飛兵長として、今まで数々の実戦経験を重ねてきた彼すらも、驚愕を隠せないでいる。
『ガアアアアッッッ!!!』
こちらの様子を窺い、大空にホバリングしていたダークワイバーンを中心とする邪竜の群れは、セシルが持つ神槍ロンギヌスから漂う神気に反応したのか、一斉におぞましい咆哮を上げると、総攻撃を開始してきた!
「各個撃破で応戦するぞ! 覚悟はよいな!」
「はっ! 刺し違えてでも、邪竜を仕留めます!」
決死の覚悟で戦いに臨むセシルと飛兵隊の精鋭たちは、飛竜を縦横無尽に駆り、邪竜のぶちかましや鋭爪による攻撃を受けながらも、次々に敵を仕留めていく!
邪竜の群れを全て打倒し、残るはダークワイバーンだけとなったが、漆黒の禍々しい翼竜は、巨大な翼を大きく振りかぶると、
「ガアアアアアッッ!!!」
『うわあああっっ!?』
咆哮と共に凄まじい風圧を巻き起こし、飛兵隊の大部分を吹き飛ばした! 聖竜リュカオンを駆るセシルと、残った少数の飛兵たちは、かろうじて風の暴力をかわし、戦闘態勢を整え直すが、ほとんど一瞬で窮地に追い込まれてしまった。




