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よもやまストーリー  作者: 妻戸裕次


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21/22

第21話ー卑弥呼とサナエ丸、ジュリアナ夜話ー

時の川をさかのぼる卑弥呼、弥生へ帰るはずが、なぜか途中下車。


「なんやこの光……星が地面に落ちたんか?」


ネオンがにじんで、風も踊る夜の街。そこは昭和の終着駅、バブルの真っただ中。


扉ひとつ開ければ――そこは別世界、ジュリアナ東京。


扇子がひらり、羽がふわり、音はドンドン、心はトントン。


理屈なんぞはクロークに預けて、みんな身体でしゃべっとる。


「ほほぅ……これが“まつり”か。我が時代の巫女もよう舞うたが、ここまで腰は振らんかったぞ」と、感心しとる卑弥呼の目に飛び込んできたのは――


ひときわキレのある舞い手。

サナエ丸卑弥呼、若き日の姿。


「アンタ、ええステップやなぁ」


「そっちこそ、衣装が時代越えすぎやで?」


出会いは一瞬、言葉は軽妙。

けれども、不思議と通じる“芯”。


「うちは未来から来たんや」


「ほな、うちは未来へ行く途中や」


なんやそれ、と笑いながら、

二人はフロアに溶けていく。――


あの時代の人らはな、ピカピカやない。


むしろ、ちょい無理して、ちょい背伸びして、それでも笑うてた。


グラスの氷がカランと鳴って、夢も一緒に揺れとった。


「この時代、ずっと続くと思てるやろ?」と卑弥呼。


「思てるで。せやないと踊られへんやろ?」とサナエ丸。


その言葉、妙にまぶしい。――


夜は更けて、音はまだ鳴り止まん。けれど、どこかで分かってる。


この宴も、この光も、

いつか静かに消えること。


せやけど――

「消えるから、ええんやろな」

卑弥呼がぽつり。


「せやな。せやから今、全力や」サナエ丸が笑う。――


帰り際、二人はすれ違うように別れる。


未来へ行く者と、過去へ戻る者。


けれどもその背中には、同じ熱が残っとる。


火傷注意の情熱と、ちょっと不器用な優しさ。――


昭和いう時代はな、完璧やない。


せやけど、転がりながら、光っとる。


どこか欠けてるその形が、妙に愛おしいんや。


――今日もどこかで、誰かの胸の奥で転がっとる。


昭和の“流石”。

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