第21話ー卑弥呼とサナエ丸、ジュリアナ夜話ー
時の川をさかのぼる卑弥呼、弥生へ帰るはずが、なぜか途中下車。
「なんやこの光……星が地面に落ちたんか?」
ネオンがにじんで、風も踊る夜の街。そこは昭和の終着駅、バブルの真っただ中。
扉ひとつ開ければ――そこは別世界、ジュリアナ東京。
扇子がひらり、羽がふわり、音はドンドン、心はトントン。
理屈なんぞはクロークに預けて、みんな身体でしゃべっとる。
「ほほぅ……これが“まつり”か。我が時代の巫女もよう舞うたが、ここまで腰は振らんかったぞ」と、感心しとる卑弥呼の目に飛び込んできたのは――
ひときわキレのある舞い手。
サナエ丸卑弥呼、若き日の姿。
「アンタ、ええステップやなぁ」
「そっちこそ、衣装が時代越えすぎやで?」
出会いは一瞬、言葉は軽妙。
けれども、不思議と通じる“芯”。
「うちは未来から来たんや」
「ほな、うちは未来へ行く途中や」
なんやそれ、と笑いながら、
二人はフロアに溶けていく。――
あの時代の人らはな、ピカピカやない。
むしろ、ちょい無理して、ちょい背伸びして、それでも笑うてた。
グラスの氷がカランと鳴って、夢も一緒に揺れとった。
「この時代、ずっと続くと思てるやろ?」と卑弥呼。
「思てるで。せやないと踊られへんやろ?」とサナエ丸。
その言葉、妙にまぶしい。――
夜は更けて、音はまだ鳴り止まん。けれど、どこかで分かってる。
この宴も、この光も、
いつか静かに消えること。
せやけど――
「消えるから、ええんやろな」
卑弥呼がぽつり。
「せやな。せやから今、全力や」サナエ丸が笑う。――
帰り際、二人はすれ違うように別れる。
未来へ行く者と、過去へ戻る者。
けれどもその背中には、同じ熱が残っとる。
火傷注意の情熱と、ちょっと不器用な優しさ。――
昭和いう時代はな、完璧やない。
せやけど、転がりながら、光っとる。
どこか欠けてるその形が、妙に愛おしいんや。
――今日もどこかで、誰かの胸の奥で転がっとる。
昭和の“流石”。




