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「さあライリー、行くわよ!」
今日は魔道具に使う水筒を買いに出かける予定。
ライリーも一緒に行ってくれるって。
「カタリーナ、少し服装が相応しくないのではないか?」
会うなりそう言われて、自分の着ているものを見下ろす。
どこかおかしいかしら?
腰の後ろのリボンが目に入って、ちょっと嬉しくなる。
今日着ているのはロザリンさんと一緒に出かけたときに買った可愛い服だ。
袖のない上衣と、膝上丈の短めのスカート。
もうすぐ夏も終わってしまうので、今のうちに着なければ。
「その、⋯⋯ずいぶん肩や脚を出しすぎなのではないか?」
「そんなことないでしょ。よくある形の服だし、リィナちゃんだってこれくらいの長さのを履いてるじゃない」
「それは、そうなのだが⋯」
なんだか変ね。
「⋯⋯えっ!? もしかして、似合ってない⋯?」
可愛い服だと思って、初めて自分で稼いだお金で買ったものなので、似合ってなかったのならかなり悲しい。
「いや、似合っている。似合っているが⋯⋯人目を集める」
「なぁんだ。仕方ないなぁ。じゃあ、ライリー以外にはすれ違っても目を引かないくらいに認識阻害をかけとくわ」
ふふん。女が着飾るのは、他人のためじゃなく自分のためのものなのだ。
ライリーにも認識されないと、はぐれたり困ったことになるので、ライリーは認識阻害の範囲から除外ね。
「これで解決ね。行きましょ」
そう言ったら、ライリーの尻尾の先が、ぴくりと跳ねてた。
あたしがじっと見ているのに気づいたのか、すぐに脚の後ろへ回してしまったけど。
「⋯⋯わかった」
表情からは、何を考えてるのかいまいちわかんない。
「第二商業区で見つかるかしら」
「どのくらいの大きさなんだ? 昨日の木杯くらいの大きさなら第一商業区のほうが品揃えもいいと思うが」
ライリーによると、第一商業区だと冒険者じゃない普通の人が買い物する店が多くて、冒険者向けなのは第二商業区に多いんだって。
なるほど。冒険者向けには、あの木杯くらいじゃ小さいのね。
あとで普通の水筒として使えることを考えると、冒険者がよく使う大きさにしたほうがよさそうね。
「木杯よりは大きいのがいいわ。小さすぎるもの。でも荷物の中で邪魔になりにくい大きさで、冒険者がよく使うような大きさにしたい」
「それなら第二商業区だな」
第二商業区の品揃えのいい雑貨屋さんに連れて行ってくれるそうなので、隣を歩く。
歩調を合わせてくれたりするから、ライリーの隣って歩きやすい。
「どのくらいの量の水が出たら便利なのかな⋯」
「ダンジョンなどに飲水を持ち込むための水瓶の魔道具は、五日分入るものが多いな」
「ちょっと多めにしとこうかしら。飲む水以外にも使えたほうがいいでしょ」
飲む水だけだと一日二リッタで換算して、五日だと十リッタかぁ。
少ないと思うのよ。
十五は欲しくない?
あたしがもし魔法を使えなかったとしたら、複数本持ち込むと思うわ。
「カタリーナ、あの店だ」
「ありがとう! わぁ。あのランタンかわいい。えーと、水筒は⋯」
「こっちだ」
ライリーが示した売り場には、大きさや素材の違ういろいろな水筒が置いてあった。
「革のもあるのね」
「木製や革製の水筒には、内側を防水加工しただけの品と、さらに防水魔法までかけた品がある。買うなら確認したほうがいい」
「⋯そうなんだ」
加工ありきの仕入れとして考えるなら、魔法をかけられていないものを買ったほうがお得かもしれないわね。
「水筒が欲しいのかい?」
「ええ。安い水筒をちょっとまとまった数欲しいの。一リッタくらい入るものがいいわ。防水の魔法は無くていいんだけど」
「それなら⋯⋯こっちの木筒なら十二個あるよ。価格は一つ二百ロフだが、全部買ってくれるなら一つ百五十ロフでいいよ」
お店の人が見せてくれたのは、円筒形の木筒だった。
細工も丁寧だし、蓋の合わせもしっかりしてる。
ライリーのほうを振り向いたら、ライリーも頷いてくれた。
「買うわ!」
「ちょっと待ってな。準備してくる」
そう言ってお店の人は店の奥へ入って行った。
「かわいいのもあるのね」
陶器でできた片手に収まるほどの小さな容器は、木の実と蔦の意匠で綺麗な絵付けがされていた。
⋯ちょっと欲しい。
「それは小さすぎるのではないか?」
「あたしが欲しいの!」
店番をしている間に自分で飲むものを入れとくのにいいんじゃないかしら!?
百八十ロフって書いてある。⋯欲しい。
「おじさん、これもください!」
「はいよ。ちょっと待っておくれ」
「⋯⋯買うのか」
「うん。あたしが使うの」
買ったものを包んでもらって、ほくほく気分で店を出た。
「ね、ライリー。アリーがよく使ってるような金属の塊が欲しいんだけど、どこで買えると思う? あたしもアクセサリーとか作るのに使いたいのよね」
「アルフレート自身の入手経路は知らないが、素材屋に行けば加工用の金属も売ってるぞ。行くのか?」
「うん。行きたい」
そのうちアリーにも購入場所を聞いておこう。
きっといい店を知っているに違いない。
「鍛冶屋や魔道具職人が使う素材屋が第二商業区のはずれにある」
ライリーが案内してくれた素材屋は、様々な金属を扱う店のようだった。
板状のもの、棒材、針金、小さな延べ塊もある。
削り粉や端材、魔石を留める台座に加工してあるものもあるようだった。
「この近辺ではこの店が細工用の金属素材を多く扱っている」
「へぇ。⋯ん?⋯輝黄銀?」
「たしか、少量のミスリルを混ぜてある合金だな」
値札に小さく書いてある説明には、『真鍮に少量のミスリルを混ぜた、細工用の合金』と書いてあった。
純ミスリルほど高価ではないけれど、魔法が定着しやすくて、アクセサリー型の魔道具によく使われるみたい。
色も綺麗だし、性質も丁度いいかも。
ミスリルの比率で色も違うみたい。
淡い金色に銀白色の光が混ざる輝黄銀に惹かれる。
魔法で加工するから、形状は何でも構わないんだけど⋯。
⋯そっか。延べ棒が一番安いのね。
うっ⋯⋯。それでも一キロの塊が八千ロフもする。
隣の銀は、一キロ四千ロフかぁ⋯。
「買うものは決まったかい?」
「えっと、こっちの輝黄銀をこの塊の十分の一だけ欲しいんだけど、小さい塊ってありますか?」
「おう。あるよ」
「あるの!? ⋯じゃあ、こっちの銀も、二分の一欲しいんだけど⋯」
「輝黄銀と銀だな? 合わせて二千八百ロフだ」
お金を払って、商品を受け取った。
そのずっしりした重みに、とてもわくわくした。
疲れていたけど、すぐにでも何か作りたいと思った。
「カタリーナ、疲れたのではないか?」
「えっ? うん、ちょっと疲れたかなって思ってたけど」
足が重いなぁって思っていたけど、やっぱり気づかれちゃったかぁ。
ライリーってすごいな。
「そろそろ昼だ。飯でも食いに行こう」
「うんっ!」
そしてやっぱり優しい!
「この近くに食堂がある。そこなら肉以外の料理も多い」
「あたしも肉でもいいよ? 普通に食べるよ?」
「いや、俺が普段行く店だと肉の割合が多いというか⋯。アルフレートに肉しか無いと嘆かれたことがあって、勧められない⋯」
「あはは。アリー、肉だけだとすぐ文句言うもんね!」
「アルフレートは食事に煩い」
やっぱりライリーも、そう思うんだ!?




