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069

 銀麦亭に戻ると、朝食の提供が始まる時間になっていた。

 ロザリンもちょうど部屋から出てきたところだったので、三人で朝食をとることに。

 ロザリンは既に銀麦亭のお仕着せを着ていて、朝食後そのまま仕事なのだそうだ。


「ケイティ、街に来る前にお義父さまやお義母さまの説得をするはずだったでしょう?」

「うっ。そうなんだけどぉ…」


 ロザリンとケイティの二人でそんな話もしていたのか。

 ケイティの話によると、母さんは説得出来たのだそうだ。

 ただ、父さんが反対しているという状態だったらしい。

 正直、父さんが娘可愛さに駄々こねてるだけに思える。話を聞いただけの私にもそう思える。


「だって、父さんったら、来年ならいいって言うのよ」

「来年」

「去年も来年って言ったの。元々はアリーが出て行った歳になったらって言ってたの」

「あー…それは駄目なやつだ」


 父さん…。


「それでも、黙って来ちゃ駄目よ。きっと心配していらっしゃるわ」

「…うん」


 なんでロザリンの言葉は素直に聞くんだよー!?


 通信機…は部屋に置きっぱなしだな。

 最近ではノアのおやすみコールのためにマジックバッグから出して部屋に置いてあるのだ。

 部屋に行くのも億劫だし、面と向かってはめんどくさくなる気配濃厚だし、ということで紙とペンを出した。


『ケイティはレコルナスで無事保護しました。

 門での手続きとギルド登録も済ませました。

 とりあえず朝食を食べさせます。

 詳しい話は後ほど。

 アルフレート』


 ケイティは無事保護した件を書いて、目標に向けて飛ばす魔法で送ることにしたのだ。

 手紙を鳥の姿に変えて、ほぼ音速で飛ばす魔法だ。

 手紙は小さな鳥の姿になって、開けた窓から飛び出していった。


「うお、アルフレートが増えてる…」

「増えてない。増えてないよ、ルドルフ」


 そんな軽口を叩いたのは、朝食を食べに来たルドルフだ。マデリーンさんも一緒か。


「いや、そっくりだし。顔だけ」

「えっ…。あたし人族からだとそう見えるんだ…」

「ん?…女?」

「あ、うん。私のすぐ7歳下の…いや今だけ6歳下の妹」


 私の誕生日は冬なのでしばらくは6歳下だ。

 人族からだとエルフの性差は判りにくいだろうから、ルドルフには判らなくても無理はない。

 女性だからといって人族みたいに胸が目立つわけでもないし。

 男性だからといって筋肉量が多いわけでもないし。普通は。


「カタリーナです。昨日成人しました」

「昨日…」


 うん。マデリーンさんもびっくりしている。そうだよね。


「はい」

「成人した翌日に家を出てきたのか?」

「うん」

「…やっぱお前の妹って気配がする」

「ルドルフ。私は君から見るとこんななのかな?」


 そんなことを話しているうちに、開けたままの窓から小さな鳥が戻ってきた。手元で紙へと姿を変える。

 母さんからの返事かな?

 早い。

 絶対、待ち構えていた。


『通信機に出なさい』


 父さんの字だね。

 それしか書いてないよケイティ。

 私は朝食の残りを掻っ込んで、席を立った。


「さっさと食べなさいケイティ」

「…はぁい」


 ロザリンはゆっくり食べててね、と言い置いてから階段をのぼり、自分の部屋へ向かう。

 扉を開けようとしたところで慌てて留まり、ケイティに扉前で待っていてもらう。

 急いで昨夜の名残りを綺麗に消し去ってから、ケイティを招き入れた。

 気まずいにも程がある。


 机の上に置きっぱなしだった円盤状の通信機、なんかめっちゃ光ってる。あちら側の焦りようが伝わってくるようだった。

 触れると、少し待つまでもなく、すぐに繋がった。


『アルフレート。まずは連絡ありがとう』

「あ、うん」

『カタリーナ。まず、無事でよかった』

「はい……」

『次に、勝手に家を出たことについて話がある』

「はい……」

『あなた』

『だが、エレオノーレ』

『まずは話を聞きましょう』

『……分かった』


 両親とケイティの話し合いはしばらく続いた。


『カタリーナ、外の街は集落とは違う。成人したからといって、知らない規則の中で一人で動けるわけではない』

「それは……今日ちょっと分かったわ」

「ちょっとじゃないよ…」


 門まで越えて不法滞在だったじゃないか…。


『アリーは早くから街へ出たけれど、それはアリーがとっても環境適応が早い子だったからよ?周囲の様子を見て合わせていくのがとっても上手』

「…うん」

『アリー』

「なにかな母さん」

『しばらくケイティを預かってもらえないかしら』

『エレオノーレ!?』

『ケイティはまず学ぶべきだわ』


 うーん…。


「しばらく…」

「お兄ちゃん、お願い」


 うーん……。

 

「母さん、父さん。私一人では決められないのでちょっと待ってて」


 一旦、保留!

 急いで再び階下へ。


「ゾフィさん、今一人用の部屋って空いてますか?」

「そうねぇ、今夜と明日は空いてないけど、明後日からだったら空く予定ね」

「予約させてください!」


 次はロザリンに確認だ。

 理由を話すと、ロザリンは二つ返事で了承してくれた。

 元々三人用の部屋なのだから、と。

 ありがたい。


 そして部屋へ取って返す。


「ええと、とりあえず、預かれます」

『お願いするわねアリー。ロザリンさんにも謝っておいてくれるかしら』

「わかったよ。ただし、条件は付けるよ。勝手に外へ出ない。街の規則を覚える。しばらくは私かロザリンか、信用できる人と一緒に動く。あと、壁は越えない」

「最後はもう分かったわよぅ」


 後ろで父さんがぐちぐち言ってそうな雰囲気ではあったけれど、そうして通話は終わった。


「ロザリンは笑って許してくれたけど、だからって甘えていいわけじゃないからね?明後日からはこの宿の部屋が一部屋空くので、そちらへ移ること。滞在費は基本的には自力で稼ぐこと!」

「えっ」

「子ども以外は自力で稼いで生きるんだよ。未成年でも冒険者は13歳以上なら登録可能。他種族なら13歳で働くんだよ」

「…うわぁ」


 大丈夫かな?


「手っ取り早く稼ぐ方法教えてやるから、自分でやりなさい」

「えっ。なんかあるの?」

「あるの」


 まぁ、傷薬でも作って売れば生活は可能なんだよね。

 一瓶で金貨二枚の収入にはなる。

 問題は材料調達だけだ。街から少し離れたところでしか私は見たことがない。


「とりあえず、下に行こうか」

「うんっ」


 ケイティを連れて下へ行くと、ライリー、フェイ、リィナも朝食のために降りてきていた。


「あのね、コレ私の妹で、カタリーナっていうの」

「そうなんだ!確かに面影あるね!私リィナ」

「僕フェイです」

「……ライリーだ」

「カタリーナです。皆さんよろしくお願いします。わぁ。あたし獣人って初めて会ったわ!」

「お、おう」

「ケイティ、そういうのは思っても言い方に気をつけて」

「えっ。駄目だった?」

「駄目というか、相手による」

「難しいわね」

「大丈夫大丈夫! 私もママ以外の純エルフ初めて見た時そんな感じだったし! ちなみにアルフレートのことね!」

「そっか。…ね、みんなアリーと同じ冒険者なの?」


 なんか、人前でアリーとか愛称で呼ばれるとむずがゆいぞ…。


「そうよ。三年前からアルフレートと同じパーティなの」

「ほら、さっき会ったルドルフとマデリーンさんも一緒なんだよ。ね、私、今日はこいつに付き合って採取依頼請けてくるよ」

「わかりました。カタリーナさん気をつけて。アルフさんが居れば大丈夫だと思いますけど」


 ポチさんと私はケイティを連れて再度ギルドへ。

 依頼票を貼り出している掲示板のほうへ向かう。


「んー…と」

「コレだな。メネル草採取」


 まだ共通文字を読むのに慣れていないケイティに代わって、選んだ。

 依頼票を取ってカウンター前の行列に並ぶ。

 既に低ランク層で混む時間帯は終わっているので、それほど列は長くなかった。


「次の方、どうぞ」

「おはようキャサリンちゃん」


 早朝には居なかったキャサリンちゃんだったが、この時間なら居るのか。


「こちらの依頼の受注をお願いします。ケイティ、カード出して」

「うん」

「承知しました。…妹さんですか?」

「…うん。そうなんだ。しばらく面倒を見ることになって」

「メネル草採取についてご説明は要りますか?」

「今回は私からしておくよ。ありがとう」

「では、お気をつけて」


 つつがなく受注完了。

 私たちは門を出て、採取場所へ向かった。


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― 新着の感想 ―
明後日までロザリンとイチャイチャできないな
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