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 休日四日目。

 今日は気分もいい。

 天気もよくて気持ちのいい風が吹いてる。


 今朝は以前お客からプレゼントされた袖のない上衣とスカートを着てみた。

 選んだのが私の客だから仕方がないのかもしれないけど、やっぱり胸が目立つ。

 今は上から私自身が目立たないようにするためのローブを羽織っているからいいけど。


 どいつもこいつも、と思うけど、きっと彼も喜ぶ。

 あんまり性欲強くもないっぽいのに、そういうのにはしっかり反応してくるのよね、彼も。


 彼は他の高ランクの冒険者たちと同様に、あまり朝早くからは活動しないと言っていた。

 冒険者というのはランクによって生活パターンまで変わってくるものらしい。


 確かに、ランクアップの記念に高級店に来たかったのだとやってくるまだ若い子たちは早朝に帰っていくし、強そうなベテランの人たちはかなりゆっくりしていく。


 彼が定宿にしているのは銀麦亭。

 食事が美味しいのだとあの綺麗な顔で笑って言っていた。


 そろそろ高ランクの人でも出掛ける時間帯らしく、大通りにもちらほらと独特の雰囲気の人たちを見かけるようになってきた。急がないと。


 これでも急いで来たのだ。

 普段あまり早く起きることがないせいでもう多くの人は働き始めている時間なのだけど、これでも頑張って早起きしたのだ。


 昨日のうちに確認しておいた銀麦亭までの道を思い出しながら急いで歩く。

 この先の角を曲がれば銀麦亭があるはず。

 パンの焼けたおいしそうな香りがする。

 確かに彼の言う通りみたい。パンの美味しさを力説してた彼を思い出して、ついくすっと笑ってしまう。


 銀麦亭の前で立ち止まり、ローブを脱いで、彼がくれたポーチにしまう。

 マジックバッグになっているのだけど、すごくちっちゃくて邪魔にならないし、見た目もとってもカワイイ。


 扉を開けて入ると、カウンターにはちょっとふくよかな、多分若い頃は相当な美人だっただろう女性の姿。

 優しそう。

 ちょっぴり世話焼きタイプみたいなこの女性が、彼の言っていた女将さんだろう。


「いらっしゃいませ。お食事かしら? もしお部屋を探してるならごめんなさいね、お部屋は今満室なの」

「あのっ、アルフレートさんという冒険者のかたは、こちらに泊まっていますか?」

「あら、アルくんのお客様? アルくんは今朝はまだ、降りてきて無いわねえ。まだ寝てるかもしれないわ。食堂で待つ?」

「待たせてください」


 食堂の席へ案内されて、「サービスよ」と言ってお茶を出された。

 すごくドキドキする。


 彼が私をどう思っているのか。

 どの程度愛してくれているのか。

 もし彼に予定があったとして。

 急に訪れた私を迷惑がるか。

 私のためにどれだけ時間を割いてくれるのか。

 それを確かめずに居られなかった。


 この宿は客の三分の一くらいが冒険者で、残りのほとんどは商取引のために街を訪れた商人らしい。


 料金が高めみたいで、冒険者もランクの高めな人しか居ないみたい。

 少しだけウチと客層がかぶっているのね…。

 知り合いに出くわしたりしないか、少し気になった。


 …などと考えたせいだろうか。


「あ? ロザリン!?」

「あら先日ぶりね」


 隣のテーブル席に居たのは、数日前に泊まって行ったアルフレートのパーティのリーダーだという、ルドルフだった。


「あら知り合い? アルくんを待ってるんだけど、アルくんってまだ寝てるのかしらねぇ?」


 両手に何枚ものお皿を持った女将さんがルドルフの前に朝食を並べていった。


「アルフレート?あいつ今日もまだ本調子じゃねえから休むって言って二度寝してたが…。この調子じゃあいつ昼まで眠こけるぞ。ちょっと呼んでくる」


 ルドルフは席を立って階上へと上がっていった。

 ずいぶん面倒見が良いのかもしれない。

 無理にはいいの、という言葉は私の口からは出てこなかった。

 少しして、ルドルフが戻ってきた。


「着替えてすぐ来るって言ってたぞ」

「ありがとう」

「……あー、その、なんだ、珍しいな?」


 随分気が利くのね。さほど話題など無いだろうに、話を繋いでくれる。

 以前会ったときは唯々がさつなタイプに見えたのに、パーティリーダーを務めるだけのことはあるということみたい。

 ルドルフに話しかけられたことで、こちらへ近づいて来ようとしていた商人らしい上等な服を着た男が元いた席へ戻って行った。


「そうね。……ねえ、アルフレートに何かあったの?」


 本調子ではない、という言葉に、胸がざわついた。


「あー、ちょっと魔力使い果たして数日ぶっ倒れてただけだ。今日で六日目だからぼちぼち普通に動けるようになってんじゃねえかな」

「そう」


 ひどいことではなかったみたいで、安心した。


「来たみたいだな」


 たん、たん、とやけに間が開く。

 階段を駆け降りる…というより飛び降りる足音。


「アルフレート、ショートカットし過ぎ」

「急いでたんだよ。ろ、ロザリンちゃんおはよう」


 淡藤色の髪、形の良い眉、長い睫毛に縁取られたアーモンドアイは夏の空みたいな青色、陶磁器みたいに滑らかで白い肌、すっと通った鼻筋とピンク色の唇。すべてが絶妙なバランスで配置されている。

 それが気まずそうに苦笑いしながら、私の居る席まで足早に真っ直ぐ歩いてくる。

 迷惑だったかしら…。


「おはよう、アルフレート」


 声を掛けたら、苦笑いは花咲くような笑みに変わった。


「おはよう! どうしたの? ねえその服、すごくかわいいね!」


 くるりと後ろに回ってまで私を眺め、褒めてくれた。


「ありがとう。アルフレートが誘ったんじゃない。どこか出掛けないかって」


 そう言った途端、彼の顔が真っ赤になる。

 元々の色が白いからすごくわかりやすいのよね。


「いいの!?」


 くるくると表情のよく変わる彼は嬉しそうに笑い、私の向いに座った。


「駄目ならわざわざ来てないわよ」

「そうだね。ね、ロザリンちゃん、朝食食べた?」

「食べてないわね。…食べる習慣が無いのよ」

「そっかー。私ね、銀麦亭の料理大好き。すっごく美味しいんだよ」

「そうね。ここへ来るときもとても良い香りがしたわ」


 パンの焼ける香ばしい香りが思い出された。


「あらあら。二人分必要かしら?」

「そうね……スープとパンを少しだけいただけますか?」

「ええ。少々お待ち下さいね」


 厨房に戻った女将さんが、私のぶんと彼のぶんをすぐに運んできた。


「すごく器用ねあの運び方」

「だよねえ。私もいつもそう思う。ね、食べよ。美味しいよ?」


 彼が彼の皿から切り分けた一口ぶんのオムレツをフォークで差し出してくる。

 口を開けてそれを食べると、彼はようやく自分のしたことに気づいたみたいに真っ赤になってフォークと私とを交互に見ていた。


「甘酸っぱ!何だこの空間!」

「う、ぅうううるさいよルドルフ!」


 ルドルフの居るテーブルにはパーティメンバーなのだろう獣人の男性、魔法使いっぽい男性、褐色の肌が魅力的な剣士っぽい女性、金髪の美少女がいた。

 金髪の美少女はよく見たら耳が尖っているようだった。

 エルフ、じゃない、ハーフエルフね。

 綺麗だけど、彼みたいな造り物みたいな完璧な美しさではないもの。

 それでも彼と半分は同じ種族の女性。すごく綺麗なひと。そう思ったら少し胸が痛い気がした。

 もうひとりの女性は彼と私のことをちらちらと見てる。

 ……彼女は彼のことが気になっているのかもしれない。だからきっと私のことも気にしてる。

 そう考えてしまったら、すごく嫌な気分になった。そんなふうに思ってしまう私自身も嫌だった。


「ね、今日何処行く? 行きたいとこある?」

「特にはないのだけど…」

「じゃ、中央商業区のあたり行ってみない?」

「そうね。行ってみましょうか」


 中央商業区はこの街で一番華やかな場所。

 遠くから運ばれてきた品々が並ぶ、活気のある地区。

 貴族お抱えの大店などもだいたいは中央商業区に店を置いている。


「あの辺り、よく行くの?」

「うん。いろいろ面白いもの売ってるから楽しくて」

「ひとりで?」

「あ、うん。人とペース会わないから私は基本的に単独行動だしね。でもこれからはポチさんがいつもそばにいるから嬉しいんだ」


 ポチさん、と彼が呼ぶのは先日ダンジョンで従魔にしたのだという大きな一角狼。こうして見ると毛並みも見事だしなかなかに精悍で美しい。


 本来は恐ろしい魔物なのだけど、とてもおとなしくてすりすりと私にも寄ってくるさまが可愛く思えなくもない。今も足元で静かに待っている。


 以前冒険者に聞いた話だと、従魔というのは長く一緒に居ると主人のものの考えかたや性格が少しずつうつっていくものらしく。

 今でも既に彼を彷彿とさせる、のほほんとした雰囲気があるというのに、これ以上似るというのかしら。


「このスープとパン、すごく合うわね…」

「そうでしょう?」


 前から思っていたけれど、彼は食事の所作も綺麗。

 私もお店での教育で貴族の前に出ても恥ずかしくない程度の一通りを学んだけれど、お手本をしてくれた講師よりも綺麗だった。

 貴族階級の形式張ったマナーとかいう話ではなくて、動きが美しいのだと思った。

 時には周囲の冒険者に合わせて大きな口を開けて頬張ったりしてみせもするけども。


 それにしても朝から量が多いわね。


「朝からたくさん食べるのね」

「んー。これくらい食べないと身体が維持出来ないんだよ。どうやらエルフは燃費悪いみたいで」

「そうなの?」

「元々はほとんど身体を動かさない生活してる種族なわけだけど食べる食事量自体は他種族と変わらないからね。私の場合、運動量もあるから余計に食べとかないとまともに動けなくなっちゃうの」


 食べても太らないなんてちょっと羨ましいわね。

 

「んんっ。今日も美味しかった!」


 美味しそうに食べる彼が可愛いなと思った。

 見ていて飽きない。

 ちらりと見ると、剣士っぽい彼女も彼を眺めていた。


「さて。食べたし、行こっか」


 先に立って手を差し出すさまはさながら貴公子のようだった。

 テーブル上に銀貨を一枚置いて立ち上がり、私は彼の手をとった。


「ええ」

「ポチさん行くよ」

「ガウ」


 私の右を彼、左をポチさんが歩く。

 彼の左腕に自分の腕を絡め身体を寄せると、彼は吃驚した顔で私を見下ろした。

 





 今すぐ去れ私の煩悩。

 修行僧になったつもりでロザリンちゃんと歩く。


 だって私の左肘がっ。

 ロザリンちゃんのスイカに挟まれてます。

 歩くたびにむにむにと……。

 いい匂いするし可愛いし。


 ポケットに手を突っ込んでさり気なくポジション直したり、ついニヤけそうになってしまう表情筋を制御するのに忙しい。


 周囲の野郎どもからはポチさんと私で挟むことでガード。右手側はいざというときのために空けておく。

 中央商業区ならともかく、この辺りはまだ手が塞がった状態で女性を連れて歩けるほど治安は良くないのだ。


 とりあえず不用意に触れようとすれば警告的にパチッと衝撃を感じるように障壁を張っておいた。

 魔力のほうは半分ほどに回復したので、竜と遭遇でもしないかぎりはもう安心。

 回復量も毎秒炎の矢0.5発分の速度まで戻った。

 多分今日の午後には完全に普段通りに戻るかな。


 ロザリンちゃんがきてくれたのが今日で良かった。

 昨日の段階では連れ歩くには不安だっただろうから。

 魔法を使えない状況のエルフにはこの世界は危険過ぎる。


「この辺りは初めて来たわ」

「今は近道だから通ってるけど、本来女の子が1人で通っちゃ危ないとこだからね」


 ロザリンちゃんなんてさぞかし美味しそうに見えることだろう。


「ポチさんが居ると抑止力としてかなり効果あるね。私だけのときはそれなりに絡まれてたんだよ」


 いつも可愛いロザリンちゃんだけど今日は更に可愛い。

 髪型もだけどお化粧もいつもとどこか違う。

 私はこっちのほうが好みだな。


 服も似合ってる。

 …服。いつも殆ど露出度高めな姿か裸のロザリンちゃんしか見たことなかったわけだけど、服…。


 着てるほうがドキドキするってどうなの。

 すっごく可愛い。

 胸の大きさを強調しつつウェストの細さ、ヒップラインの美しさも要求される難易度高そうな服なのに、着こなして似合ってるロザリンちゃん。

 凶悪仕様だ。


「それは、こうして歩いているだけならあなた成人したてくらいの細めの男の子に見えなくもないもの」

「やっぱりそっかー」


 そんな会話をしながら歩いていれば中央商業区はすぐだった。そのための近道だったし。


「本当に近いわね」

「絶対私の居ないときには通らないでね?」

「大丈夫よ。わかってるわ」

「うーん。ああそうだ、あの店寄っていい?」

「良いわよ」


 なんか心配なので、アクセサリー屋さんへ。

 店先にはお手頃価格のジュエリーアクセサリーと、大小様々な魔力結晶。奥にはお高めジュエリー。


「わぁ、ずいぶん純度高い魔力結晶揃ってるね。豊作?」


 男性店員に声を掛ける。

 もう1人の女性店員に話し掛ける勇気は私には無い。

 女性店員さんはロザリンちゃんに似合うものを探すお手伝いを頼もう。


「ええ。最近持ち込まれるようになりまして」

「もしかして、火炎結晶の森関連?」

「そうなんです。よくご存知ですね」

「これでも冒険者だからね。すみません、とりあえずこっからここまでください」


 魔力結晶っていうのは主に魔道具に掛ける魔法を保持させるために使うパーツなんだけど、いろいろ使い道があって便利。

 竜の巣があった場所とかダンジョンで採掘できるんだけど、採掘に行く苦労を考えると買ったほうが早いので最近は買うようにしている。

 手持ちの在庫も心許なくなっていたので丁度いい。

 

「あと、あっちの見せて。そのちっちゃいヤツ。うわ……純度半端ないね…。うん?10万ロフってなんかコレ値段おかしくない?」


 安い。ついてる価格の倍ほどしてもおかしくないのだけど。


「ええ…。品自体は良いのですが、ここまでの純度になると、お買い求めになる方がいらっしゃらないもので」

「なるほど。じゃ、それもください。あと、宝石部分をそれに着け替えられる台座で彼女に似合うやつがあれば、それも欲しいです。台座の素材は出来れば地金がミスリルのやつで。なければミスリルのインゴットを譲ってください。チェーンは長めで出来れば服の中に隠せる程度欲しい」

「ミスリルでこのサイズの石ですと、この辺りですね。ある程度調整できますからどれでも対応しますよ」

「ロザリンちゃーん、この辺からも選んでー」


 女性店員さんと談笑してたロザリンちゃんを呼び寄せる。


「いいわよそんな高いもの…」

「男性の好意は受け取って差し上げるものですよ? 彼氏さんのためにも選んであげて下さい」


 ナイスアシスト店員さん!

 そして彼氏か。いい響きの言葉だね。生まれて初めて言われたよ。


「でも…」

「私の心の平穏のためにお願いします」

「じゃぁ…」


 ロザリンちゃんが選んだのはわりとシンプルなペンダント型。

 シンプルデザインで私個人の好みではあるけど、ロザリンちゃん、お値段で選んでない?

 金属少なくて一番安いやつだよねそれ。


「本当にコレ?」

「ええ」

「…まあいいか。すみません、石を付け替えて下さい」

「はい。少々お時間いただきますので、店内をご覧になってお待ち下さい」


 男性店員さんが作業のため奥へ引っ込んでいく。

 ロザリンちゃんが1人で店内を眺め始めた隙に女性店員にこっそり声を掛けた。


「あのぅ…」

「はいっ!?」

「彼女が一番長い時間見てたのってどれですか」

「こ、こちらですっ」


 店員さんが示したのはシンプルな作りの指輪だったけど綺麗だし確かにロザリンちゃんに似合いそうに思えた。


「彼女の指のサイズわかんないんですけどどうしたらいいと思います?」

「ええと、どの指かは合うと思いますよ?」


 そうだった。そういえばこの国じゃ薬指につけるとかそういう意味合いも風習も無いや。


「じゃあ出来れば左手薬指に合いそうなサイズでこのデザインのはありますか?」

「彼女さん、指が細めなので、こちらでしょうか」

「じゃ、それもください」

「はいっ。………あの、お客様? お会計が二十六万五千六百ロフになるんですが…」

「ああ、はい」


 大金貨2枚、金貨6枚、小金貨5枚、大銀貨と銀貨が1枚ずつ……。

 多い。コインの枚数が多い。

 キャッシュカードが欲しいとか無茶な贅沢は言わないが、紙幣があれば楽なのにと思わないでもない。


 会計が済んだのでロザリンちゃんに近づいて、真横に並ぶ。


「アルフレート、こういうの、困るわ」

「本来ならこういう店に来たらサラッとスマートにアクセサリーなんか買っちゃうんだろうけどごめんね、私そんな気の利いた男じゃない。実は今あっちで石を変えてもらってるやつ、アクセサリーじゃなくてがっつり実用品なんだ。護身用の魔道具に加工しようかと思って。私が安心したいんだよ。ロザリンちゃんは嫌かもしれないけど…最低限あれは受け取ってもらうし持っててほしい」


 色気のない話で申し訳ないのだけど、単なるアクセサリーのプレゼントではなく実用品なのだ。


「私、望んでなくてもそれなりに妬みも恨みも買っちゃうから。現状では今私の一番狙われたくないとこがロザリンちゃんなの。私の大切なひとのうち、ロザリンちゃんを狙われるのが一番困る」

「そういうことなら受け取るわ。ありがとアルフレート」


 いつもみたいに、ふわっとロザリンちゃんが笑う。


「お待たせいたしました」


 さて、仕上がってきたペンダントの確認。

 うん。良さそうだ。


「いいね。ちょっと貸してもらえる?」


 右手に持ち、えいっ、と最大出力で一気に魔力を込めて自分の魔力で満たし、下地を作る。

 コレで下準備OK。

 薄青く光ってて、綺麗。

 あとは魔法を込める。


 発動条件はロザリンちゃんが望まない危害を加えられたときにしよう。

 効果は…反射と、私への情報発信と、位置情報発信、あとはロザリンちゃんの意思によって反撃…と防御…?

 これくらいか?


 いくら純度高い結晶でもちょっと詰め込み過ぎたか、バチッと火花が散った。


 それでもとりあえず成功。なんか妙に魔法の掛かりが良すぎる気がしたけど、失敗もせず成功したんだからいっか、と思った。


 テストしたいものだけど、ちょっと難しいね。


「…ふぅ」


 できた。

 目をぱちぱち瞬かせているロザリンちゃんの後ろに回って首に掛けてみた。

 うん。可愛い。


「良いね。めんどくさい注文に対応してくれてありがとう。おかげでいい出来だ」

「………は……。こんな、一瞬で魔道具を…」

「ナイショでお願いします」

「は、はい」


 ロザリンちゃん専用護身用魔道具を入手した私たちはそのまま店を出たのだった。


 指輪を渡すタイミングを逸してしまったのが痛かった。






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