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あ……ありのまま昨夜起こったことを話すよ!
早々に消えたはずのお祭りえっちプランだったけど、なぜか最後の最後で復活していた。
何を言ってるんだかわからないと思うが私も何をされたのかry…。
いや、私は普通に帰ろうとしたんだよ?
朱里さんの記憶にあるあの漫画、六部以降の記憶がないんだけど、どうなったんだろう。
続きがあるらしいのに記憶の中にないんだ。
まあそれはいい。そんなことより朝食だ。
「ロザリン。おはよ」
「…おはよう」
ぎゅっと抱き着かれたので、抱きしめ返す。
啄むみたいなキスだけして寝床から出た。
ちょっと寒い。冬の気配が近いなぁ。
テオたちの居る倉庫のほうが体裁は整ってるし、あちらに押しかけて朝食にしようか。
「ロザリン。着替えって持ってきてる?」
「…何着かはアルのくれたマジックバッグに入れたまま持ってるわ」
それは都合がいい。
「着替えて倉庫のほうに集まって朝食にしない?」
「いいわね」
「みんなで食べよう」
「ええ」
そちらに行くので一緒に朝食を食べよう、とテオに手紙を飛ばす。
少ししてテオから了承の返事が来た。
ロザリンが身支度に使うかと思い、桶にぬるま湯を入れてテーブルに置いておく。
「よかったらこれ使って」
「あら、ありがとう」
私は階下に降りて用を足して、また主寝室へ戻った。
ちなみに母屋のトイレも急いで昨夜のうちに使えるようにしたよ!
シた後って尿意もすぐくるから必要性には早いうちに気づけたよ!
さて、身支度だ。
私の身支度なんて、ただ顔を洗って着替えるだけなんだけどさ。
いつもあんまり早く終わってしまってロザリンに気を使わせてしまうことがあるため、実はロザリンの身支度がある程度進むまで、ダラダラ過ごして待つことにしている。
種族的なものなのか、髭とか生えないので、することがないのだ。
以前ロザリンにも聞かれたし、野営後の朝にルドルフたちにも聞かれたことがあるが、私の鼻から下に産毛以外の毛が生えたことはない。
ちなみにルドルフは一晩経つと結構なヒゲ面になる。
ライリーは…どこからがヒゲなんだろう…。
ロザリンは髪を整えたり、肌を整えたり、服を選んだりと忙しそうだ。
私も服くらい選ぶべきなのか?
…うん。無理だな。
いつものように適当に選んだ上下を身に着けて身支度完了。
「ロザリン、終わった?」
「ええ」
「じゃ、行こっか」
荷物を全部片付けて、倉庫へ向かう。
その途中の通路でケイティに会った。テオに呼ばれたらしい。
なんかすっごい足取り重いし、ぐったりしてるな!?
「ケイティ、大丈夫……?」
「だいじょ…ばない。お客さん来すぎよぉぉぉぉ…」
「…ま、繁盛したみたいでなによりです?」
「疑問形…!」
「テオー。ノアー。おはよう」
倉庫の休憩所になっている区画の扉をノックすると、テオから返事があった。
「おはよ」
中に入ると、テオは起きて着替えていたものの、ノアはまだ夢の中だったようだ。
まぁ、子どもだもんな。
……とはいえ、寝相がすごい。
掛け布団は半分床に落ちていて、本人は何故か枕の上で寝ている。
子どもはこういうもの、という朱里さんの記憶はあるが、ちょっとこれはすごいな。
最初に寝かせた場所から半径二メートル以内は十分移動範囲内、って本当なのか。
自分らが子どもだったころは当事者なせいか寝相が悪い自覚自体がないのって不思議だよね。
「テオ…」
「…夜中に三回は直したぞ。それに小便で一回起きたし」
「マジか…」
「今日はいつにも増してノアの寝相がすごいわね…」
テオとケイティが言うなら、寝相がすごいのが通常運転なのだろう。
「…起こす?」
「それは可哀想じゃないかしら。よく寝てるわ」
「寝かしとけ。メシの時間になれば起きるだろ」
「そうそう。お腹すいたら起きてくるわよ」
まあ、そう言うなら…?
「じゃあ、朝食にしようか」
テーブルの上を綺麗にしてから、マジックバッグから作り置きのサンドイッチの他、温野菜、昨日買った祭り屋台の料理を出してみた。
何も挟んでないパンも置いておこう。コーヒーや茶などの飲み物各種もね。
フォレストウルフにはツノウサギをあげよう。
温かい料理を並べ、食べ始めてしばらくすると、後ろで布の擦れる音がした。
「……なんか、いいにおいする」
「ほら起きたし」
テオとケイティは、やっぱりノアと一緒に暮らしていただけのことはあるんだな…。
「おはよう、ノア」
「……おはよぉ、兄ちゃ…ふあぁ」
「顔洗うの自分でするか?」
「テオ兄、やってぇ…」
「なら息止めろー」
魔法で出した水でノアの顔を洗ってやったり、意外とよく世話を焼いている。
…私、テオにそんな優しくされたこと無いのに…!
「ね、アリー。イルメリンソースある?」
「ん」
瓶詰めにしたイルメリンソース――まあ、マヨネーズだ――を出してやると、ケイティはこれでもかと特盛りになるくらい温野菜に掛けていた。
ケイティは昔からマヨラーなので仕方ない。
塩コショウ派のロザリンの手元には、ミルを出しておく。
「あ、俺も。ケイティ、イルメリンソースとって」
「はーい」
「ノアは何食べたい?」
食べたいもののリクエストがあれば聞くよ?
そう思って尋ねた。
「ぼく黒竜のおにく食べたい」
ここ数日のレコルナスの混雑状況の原因の一部と言われるブツをリクエストされたよ…! いいけども…!
ちょっと薄めに切った肉を炙って、テーブルの中央に置いておく。
食べたい人はそこから取って食べてくれ。
フォレストウルフにも一切れあげておく。
ノアは何も挟んでいないパンに黒竜肉を挟み、かぶりついていた。
「そういえばケイティ、昨日ってそんなに忙しかったの? 昨日の朝すっごい行列だったけど」
「忙しいなんて可愛いもんじゃなかったわよ……」
なんか美味そうと思って私も黒竜肉を挟んだパンを頬張りながら、向かいを見る。
ケイティは相変わらずげっそりした顔で温野菜を食べていた。
おそらくエルフが三人も居る店で偽物もないだろう、と傷薬が売れに売れたらしい。
「最初はね、傷薬が結構売れるなーってくらいだったのよ。初日の午後あたりから水筒が忙しくなってきて、夕方にはペンダントのマジックバッグが売れ始めて……」
夕方の店じまいはかなり大変だったそうだ。
今日はここまで、と区切ったらしいんだけど。
「二日目は?」
「朝から全部よ」
前日買えなかった人たちが朝から露店の前に居たんだそうだ。
「ライリーが居なかったら一日目であたしは倒れてたわ」
「そんなにか」
「あー。確かに。朝イチの列の整理とかも助かったよな。俺じゃ無理だし」
「荷物も運んでくれたし、変なのが割り込もうとしたら立ってるだけで引き下がるし。助かったわぁ……」
なるほど。最高の人選だったっぽいな。
「ぼく来年もお祭り見たい」
「あら。楽しかったのね?」
「うん!」
楽しそうなノアを見て、テオも満足そうだ。
「ノア。メシ食ったら帰るぞ」
「ぇええ!?」
不満げなノアと、それを静かに見守るテオ。
私のときは問答無用で耳掴んで引っ張ってきてたな。
「もう帰るの?」
「帰るぞ」
「もうちょっといたい……」
名残惜しそうに言いつつ、上目遣いでこちらを見上げてくるノア…!
「うっ…!」
「その顔に騙されんな、アリー。また来ればいいだろ、ノア」
わかってるんだけど…!
知識と感覚ではわかるんだけど、ついノアには甘くなっちゃうよ…!
「…またおいで。ノア」
「待ってるわ。ノアくん」
テオが無言でノアの頭に手を置き、くしゃっと髪を撫でた。
「……うん。…かえる」
何なんだ、テオの兄レベルが十五年前より明らかに上がっているぞ。
その後、朝食を食べ終えたテオとノアは、帰る支度を済ませた。
「ロザリンさん、アリーも。ありがとな。あと急に来て悪かった」
「べつに、驚いただけだし」
「ロザリンさんと仲良くな。まあ、だいぶ仲は良いみたいだけど。ケイティも。元気で」
「うん。テオ兄もノアも、手伝ってくれてありがとね」
来た時と同じようにフォレストウルフに乗って、二人は帰っていった。
*
銀麦亭の部屋へ戻ると、ポチさんがスネていた。
ドアを開けて入ったら近づいてはくるくせに、全然触らせてくれない。
じっと私の顔を見てくるのだ。
非難してるみたいに、きゅーん、とか鳴きながら。
「ポチさん、ごめんて」
撫でようと手を伸ばしたら、すいっと頭だけ避けられた。
でも離れてはいかない。
めんどくさいな君!?




