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人が多いことの弊害って、案外すごいのかもしれない。
日を追うごとに状況は悪化しているように思えた。
いよいよ祭りは明日。
どうみても例年より人が多いんだけど…。
どうやらオークションに出品されるという黒竜肉が話題となっているからとかなんとか。
マジか…!
実はこの混雑状況の原因の一端が自分にもあるように思えてきて、つい連日警備補助の仕事なんてのを請けてしまっている…。午前中だけだけど。
街の外に出たくないってのもあるけどね。
私だけではなく、多くの冒険者たちも、街の外へ出てしまうと入門に時間が取られてしまうからと、あまり外へ出なくなっているらしい。
なお、街の中に冒険者がいるからといって、ゴミのポイ捨て問題や野外排泄問題が解決するわけではない。
先日の朝の清掃作業依頼みたいなのは低ランクを想定した依頼料なので、中堅層以上は割に合わないから請けないし。
騒ぎが収まるまで、中堅層以上は街中でのんびりしてる人が多い気がする。
高みの見物じゃないけど、申し訳ないが私も昨年まではあちら側だったよ。
人が多過ぎ問題、最新情報だと、勝手に私有地に入ってゴニョゴニョ、なんてこともあったらしい。
それを聞いて速攻で自宅の防衛機能を上げたよ…!
今は、私とロザリン以外は敷地に入れないようにしてある。
祭り期間だけの特別警戒だ。
とりあえず、ウチはこれで大丈夫だろう。
他にも、行列が道を塞いで通れなくなっていたり、それのせいでレコルナス民が遠回りを強いられていたり。
あと、安い食料が売り切れてしまったり…。
これは本当に良くない。
せっかく生活を持ち直した新人たちが、割高なものを買わざるを得なくなったらと思うと、ちょっと居た堪れない。
ちなみに今日は第二商業区の南側をぶらぶら歩いて警戒中だ。
「ごめんねぇ。ちょっと通してね」
人だかりに阻まれて道を通れなくなっていた高齢のご婦人と子どもの移動を助けたら、今度は何故か私が囲まれてしまったり。
珍しい種族だからか。
私が混雑の原因になってどうする。
ちょっと怖くなって、認識阻害を強めに使って一時退却した。
そんな時だった。
ふと、よく知ってる魔力を感じた。
そうするものだと思っていたので、ほぼ反射的というか特に何も考えず手を伸ばす。
目の前できらりと光った後、それは手元で手紙の形になった。
私はそれをカサリと開いて、読む。
『アリーのせいでノアがレコルナスに来たがってうるさかったので連れてきた。今、列に並んでる。迎えに来い』
…なんですって!?
慌てて南門に走る。
来ちゃったのぉぉぉ!?
近くの区画にいたせいですぐに着いたのだが、南門の外には長蛇の列が出来ていた。
この長さだと今最後尾に居る人は一時間以上待つんじゃないだろうか。
テオたち、どこだろう…。
列に目を凝らしてみる。薄藤色の頭の二人を列の先頭から十人ほど後に発見…!
ノアは呑気に可愛らしく手を振っていた。
つい笑顔で手を振り返してしまったが、フォレストウルフに乗ったノアの後ろでテオが爆笑しているのが見えて、イラッとした。
門の外へ出てしまうと私も列に並ばなければならなくなりそうなので、手続きをしている付近で待たせてもらう。
門番さんはケイティがご迷惑を掛けたときの人だったようで、私と目が合った際に苦笑していた。
私の兄弟が申し訳ない。
判別できないと困るので、テオが掛けてる認識阻害に騙されないように門番さんに補助を掛けておいた。
しばらくして、ようやくテオとノアの番が来た。
「ご家族、ですよね?」
「はい。私の兄と弟です。身分証明もないので、こちらを」
二人分、金貨二枚を差し出す。
「それからこのフォレストウルフの獣魔仮登録もお願いします。主は…兄のテオドールで」
「はい。では中へ入られましたら、冒険者ギルドへ行って、本登録お願いしますね」
「ありがとう」
さくさくと手続きを終えて、邪魔にならない場所へ移動する。
ノアは早速きょろきょろとあたりを見回していた。
「獣魔登録とか要るのか? いつもみたいに認識阻害かけときゃいいんじゃねえの?」
「駄目だよ。本来はそういう決まり事なんだから。人族の街に滞在したかったら、きちんとしといたほうがいいよ」
「兄さん!」
「ノアー。来ちゃったのかー」
「うんっ。お祭見たかったの!」
そっかー。やっぱり見たかったかー。
しかたないなー。
もうお昼だしお腹も空いただろう。玉子サンドでもお食べ。
「…おい、アリー。お前なんで認識阻害も掛けずに顔丸出しなの?」
カツサンドをかじりながらテオが言う。
どうやら気に入ったらしい。
「暮らしてくには顔を覚えてもらわないと不都合なこともあるからだよ。今はケイティもそうしてるし」
「ふーん。俺らも外したほうがいいか?」
「今はレコルナスの人以外の観光客多いから、かけといたほうがいいかもね」
「…なんかすっげえ見られてて居心地悪い」
確かに、エルフだ、とか囁かれてるね。
弱めの認識阻害はいっぺん認識されてしまうとその場での効果は薄まるので、テオたちも今はなんとなくは見えているっぽい。
私と一緒にいるせいでテオが女性だと思われていたのにはウケた。
比較対象を私にしてしまうと明らかに華奢で細いもんね。
「えっ? なんで俺、女だと思われてんの?」
「人族からすると、まず顔じゃ性別判断できないっぽいよ。あと体型もエルフって男女問わず薄いし」
「あー。アリー以外な」
「うるさいよ」
そんなことを言いながら、獣魔本登録のために冒険者ギルドへ行く。
ついでに午前中の警備補助の報告もしてしまおう、と思った。
ギルドについたら、いつもよりも視線を感じた。
なんというか、「ああ、アイツの身内か」みたいなテオとノアに向けられた視線もだ。
ポチさんとフォレストウルフ、それに私とテオとノアの見た目もあって、どう見ても私の関係者にしか見えないらしい。そりゃそうか。
「テオ、どうやら私のそばにいると認識阻害も貫通してバレやすいみたいだぞ」
「マジか。アリーが起点になっちまってんのか……」
「観光客以外には私の関係者だと思われてたほうが安全かもよ?」
ケイティはむしろそれで安全確保してるからな。
さて、ポチさんのときのように登録…しようとしたら、主が身分証明のないテオなことで問題が起きた。
「なら登録っての? すればいいんだろ?」
あっさりそう言ってテオもランクG冒険者に。
そしたらお次はノアが…。
「ぼくもー! ぼく十四さいだよー!」
……そうなんだけどっ。
ノアさんや。
君、まだ幼児じゃないの。
「さっき、とうろくは十三さいからって言った!」
ふんす、と胸を張るノア。偉そうで可愛い。
ギルドの職員さんもくすっと笑っていた。
「身分証明代わりに登録するのもいいんじゃないでしょうか。門での入門料金が変わりますし」
「あ、そっか」
なんとノアまでGランク冒険者に……。
ちょっと動揺が隠せない。
嬉しそうにカードを掲げ持って眺めているノアを抱えてギルドを後にした。
なんだかドッと疲れたよ。
一息ついて、さしあたっての面倒事が片付いたところで問題に思い至る。
泊まる場所問題だ。
今、街中が宿不足なのだから。
やばい。
どうしよう。
「テオ、今レコルナスは空前の宿不足なんだよ……」
「…なんとかなるだろ。いざとなればなんとかするし」
テオはそう言うけど⋯。
ああそうだ。
確か、新居の倉庫に作業員の休憩スペースみたいに区切られた場所があったな。
現状では、まだ改装前の母屋よりは過ごしやすいかもしれない。
先にあっちを突貫工事でなんとかしたら、寝泊まりくらいはできる気がするよ。
ちょっとロザリンに相談してみようか。
銀麦亭へ向かい、昼営業を終えた食堂を片付け中だったロザリンに声をかけた。
「ロザリン〜…」
「アル? どうしたの?」
テーブルを拭いていたロザリンは、顔をこちらに向けるなり固まった。
正確には私の後ろを見て、かな?
「ノアくん!? テオドールさん!?」
「よっ。ロザリンさん」
「お祭りみにきたのー!」
説明も要らない状況に、ロザリンも困惑顔を浮かべていた。
「倉庫についてた休憩場所みたいなとこを急いで改装したら、泊められるくらいにはなりそうな気がするんだけど、泊めていいかな…?」
「倉庫なんかで大丈夫?」
「…なんとかします」
ロザリンは少し不安そう。
「母屋のほうだと急ぎの改装は…」
「そっちだとちょっと半日じゃ厳しいかな」
「…そう。泊めるのは良いんだけど、倉庫は申し訳ないわ」
「大丈夫だよー」
あとは自宅倉庫を今日中に改装するだけだ。
「アリー家買ったのか?」
「うん。つい最近。まだ全然手つかずなんだけど」
「屋根だけでもあれば十分なのにロザリンさん、気遣いすげえな」
「そりゃ、私のロザリンだからね!」
できた婚約者なのだ。
家の前にたどり着き、入れる条件を『私の身内』に変更する。
「えっ。そんな魔法が要る場所なのか、ここ?」
テオは障壁の魔法にドン引きしてるようだ。
「普段なら要らないよ。祭り前で人が多いからただの緊急措置だよ」
倉庫の休憩場所側の鍵を開けて入ると、少し埃っぽい匂いがした。
「アリー、ここ片付ければいいのか?」
手早く灯りの魔法を天井近くに打ち上げつつ、換気しながらテオが言う。
「うん」
部屋の埃を端から洗い流し、乾かした。
とりあえずこれで寝る場所は確保できた。
嬉しいことに、仮眠用なのかちょっと狭い寝台もあったよ。
「なんだ、寝台あるんじゃん」
「私も今知った」
テオと二人で手分けしたからか、小一時間で掃除は終わった。
「ねー、テオ兄ー」
「どうした?」
「うんこー」
遠慮のない一言に、私とテオは慌てた。
「アリー、仮眠設備があったなら便所くらいどこかにあるんじゃね!?」
「そうだね!」
よくダンジョンで使う探査で構造を把握。
ビンゴ!
「こっちにあるっぽい! ノアおいで!」
「おしっこもー」
「はいはい! こっちだよ!」
なんか幼児のトイレ宣言って、妙に慌てるよね。
猶予がなくて。
まあノアは五歳以下の完全な幼児ではないので、そうギリギリではないようなのだけど。
なんとかトイレに駆け込んだところで問題発生。
人族式トイレ、実は汲み取り式が多くてここのもそうだったのだけど、蓋を開けたらノアが怖いと言い出した。
便意まで引っ込むほどに。
うん。汲み取り式って穴が怖いんだよね。
「ノアー。終わったかー?」
「テオ、問題発生。ノアはこのトイレじゃ無理」
「ん?…あ、そっか。人族式のって穴が不気味なんだよな。俺も子どもの頃苦手で街来るときは我慢してたわ」
うーん。エルフ式トイレ用意するかー。
何かいい方法ないかな…。
「慣れるとしゃがまなくていいから、それはそれで便利なんだよな」
「壺に便座つければいいのか…!」
「…いいなそれ!」
いつか使うかもと持ってた粘土をマジックバッグから取り出して造形し、破裂を防ぎながら焼成。
表面は釉薬代わりに先日集めた白っぽい砂を使ってガラス化し、コーティングした。
「アリー、昔からこういうのだけ、異様に得意だよな」
「だけってなんだよ。…よし、完成」
「ノア、これなら怖くねえだろ?」
「えー……」
おそるおそるといった体で中を覗き込むノア。
「…うん。大丈夫。ここでする」
私とテオは二人揃って大きく息を吐き、胸を撫で下ろしたのだった。
ときにみなさん、読むもの探し回ってるとき、AI生成文章コピペ小説ってどう思ってますか。
私、小田薪はこう思いました。
『AIコピペ作品が嫌いだ。 〜スコップに当たる石〜』
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