シリシアンのお仕事①
シリシアンの声を聞いて、リアムはほっとする。
彼は数十段ある長い階段のほぼ真ん中あたりで、リアムを待っていた。
なんだ、いるじゃんか。
紛らわしいことしやがって。
召し使いを置いて先に行くなよ。
リアムは独り毒づき、小さな羽をパタパタさせながらシリシアンのもとへ向かった。
階段を上りきると大理石を敷き詰めた広いアプローチがあり、その先に巨大な黒い鉄扉が見える。
鉄扉の前には銃を持った魔人造兵士らが直立していた。
黒服に銀色の釦をふんだんに付けた兵士達が、シリシアンへ敬礼をする。
リアムはそこでやっと、自分が召し使える主が、ただの金持ちなだけでなく、地位も階級も高いらしいヤツだと気付く。
とはいえ、主の階級がどうよりも、今はこの大きな扉が、どのようにして開くのだろうか、という好奇心の方が勝っていた。
リアムはワクワクしながら待つ。
しかし、巨大な鉄扉は固くピタリと閉じたままだ。
「リアム、こちらだよ」
リアムはまたしてもシリシアンに呼ばれる。
シリシアンは少し離れた場所でリアムを手招いていた。
彼の前で、片開きの小さな木製扉が内側へ開くのが見えた。
「あ」
そっちが開くんかぁい!
リアムはシリシアンのもとへ、また足早に向かう。
「あの扉は、ほぼ飾りだよ。古の森に住む巨人属用に作られたけれど、彼らがここに来たという記録は一度もないんだ」
「……」
リアムはシリシアンの顔をじっと見る。
「そりゃ、あんな期待に満ちた顔で扉を見ている人がいれば、それに添えなくてなんだか悪いな、と思ってしまうよ、僕じゃなくったって」
「……好きじゃない」
「え?」
「そういう、先回りみたいなの」
「どういう意味?」
「確かに自分は何も知らないけど、本当に殆ど何も知らないけど。でも、そうやって答えを先に言われるの、なんか気分が悪い」
「……」
「馬鹿にされてるみたい」
「……そんなふうに思わないでほしいけど……」
「一度は自分で考えたいし、それも楽しみってことあるじゃん」
「そうか……わかったよ。今後は気をつける」
シリシアンは肩をすぼめ、しょんぼりした様子でリアムに謝った。
「そうやって、すぐ謝っちゃうとこも。なんかムカつく」
「え、何か言った?」
リアムの罵倒はシリシアンの耳に届かなかったようで、幸いにもただの陰口になる。
「きっとあの母親のせいだな」
「母上がどうかした?」
「べつになんにも言ってない」
「そう? 今度こそ何か言ったよね?!」
「ところでここはなんなの?」
会話に疲れ始めたリアムが話題を変える。
「……答えていいわけ?」
「は?」
「だって、いったん自分で考えるって、今」
うわっ、めんど!
面倒くさいヤツ!
という顔でシリシアンを見返すが、一番面倒なのが自分だとリアムは気付いていない。
「いいよ、いったん考えるから」
「ヒントいる?」
「だから、そういうとこっ! 言いたがりなの?」
「うん、そうか。ごめん」
シリシアンは長い睫を伏せうつむく。
はたから見れば、リアムが主人だと間違えることだろう。
「ほら、もう入るぞ!」
リアムはシリシアンを差し置き、先に扉をくぐるのだった。
※( `д´)、、ネタバレ厳禁なの?!




