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ラズーン 7  作者: segakiyui
7.新たなる国

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2140000ヒット、ありがとうございました!

「……状況を教えて頂きたい」

 セシ公は静かに応じた。シートスの猛々しい視線に貫かれながら、1つでも多く、より有効な手を打てる情報を引き出そうとする。

「ご覧になれば良い」

 シートスは冷ややかに続けた。

「外壁より外は預かり知らぬが、内側にはもう、我ら以外何人も残っていない」

「……っ」

 周囲が息を呑み声を失った。イルファが目を剥き、リヒャルティが悔しげに外を伺う。放せよっ、やらねえよっ、と唸ってバルカとギャティから両腕を取り戻す。

 衝撃はあったが想定内だ。セシ公は素早く頭を巡らせる。シートスは何をしに来たのか。何を求めてここから動かないのか。反乱ならばここで防がなくてはならない。入り込まれて、唯一残ったこの地も戦乱に堕ちれば、『人』には未来がないのだろう。

「再度お尋ねする。『太皇スーグ』はどこか」

「…伏しておられる」

 セシ公の返答は周囲を再び狼狽させた。シートスも例外ではなく、微かに揺らいだ視線にセシ公は次の質問を予測する。

「…では、ラズーンの王はどこか」

 アシャは身動きしない。正統後継者を手元に置きながら、なおも王の所在を尋ねるならば、アシャは既にその地位にないと言うことだ。

「私が、任された」

 どよめきに深い吐息が加わった。安堵なのか落胆なのかは見極められないが、今はそう応じるしかない。シートスがしばらくセシ公を眺め、やがて告げたことばはさすがに思いもつかなかった。

「アシャの手当と処分をお願いしたい」

「…処分…?」

 ではアシャは生きている。けれども処分とは罪人扱いの物言い、戸惑うセシ公を見定めたのだろう。無言で状況を見ていたユーノが、平原竜タロから飛び降りた。こちらも怪我をしているのだろう、苦しげに顔を歪めてよろけたが、そのままセシ公の前まで進むと、膝を降り、頭を下げた。

「…セシ公。ユーノ・セレディス、ただいま戻りました」

「ユーノ…」

 何をふざけているのか、こんな崩壊の中で上下関係など無意味、何のために跪く。

 混乱しかけたセシ公は、目の前のシートスが大きく舌打ちをしながらも平原竜タロから降りるのを目にした。ユカルも続き、2人ともユーノの後ろに膝を付く。

「おい!」

 はっと息を呑んだリヒャルティの密かな声が命じ、リヒャルティと『金羽根』全員も急ぎ膝をつく。その波はみるみる周囲に広がった。イルファもレアナも膝を付く。民衆も慌てて地面に身を伏せる。

 周囲には跪く民、眼前には崩れ汚れ切った大地、空だけが澄み渡っている。

「セシ公…ご指示を」

 ユーノが僅かに顔を上げ、セシ公と視線を絡ませた。

 間違いない。ユーノは、今ここに、無理矢理にでも動ける構造を作り上げようとしている、セシ公を1人を押し立てて。

 これが報いか、欲望のまま情報を操り、人を駒として使い、誠意も真実も絵空事として扱う男への報復か。

 セシ公はもう一度空を見上げ、ゆっくりとユーノを見下ろした。

 何を守り、何のために、どこへ行こうとするのか。

「…急ぎ、命じる仕事がある」

 飢えている自分を満たす。足りない情報を集める。

 凝視するユーノの瞳が、僅かに細められ微笑んだように見えた。促されるように続ける。

「がしかし、報告ご苦労であった。まずは体を休め、傷を治すのに専念せよ」

 まるで芝居を演じる役者のように、セシ公は威厳を持って振り返る。見渡して背筋を伸ばし口を開いた。

「門を閉じよ。混乱は続いている。しばらくは『氷の双宮』に籠城し、数日内に国内の状況を探査し、今度の国の行末について、『太皇スーグ』ともども取りまとめていく」

「御意!」

 リヒャルティが声高に言い放って頭を下げ、『金羽根』が倣う。

「セシ公万歳!」「新たなる王、万歳!」

 引きずられるように声を上げて民衆が応じる中、シートス、ユカル、ユーノは静かに一礼したまま動かなかった。


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