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2-3 邂逅 のち 悔恨

 茂は自宅までの道程をてくてくと歩きながら、ポケットからガラケーを取り出す。少しばかり高い塀のある曲がり角に差し掛かり、曲がる瞬間に素早くガラケーに登録されている番号へとコール。

 相手が出る前にそのままポケットへとその緊急連絡用のガラケーをねじ込み、私用のスマホを空いた手で何気ない風情で玩ぶ風に装う。さらにキッチンナイフの入った袋を掴む掌の中に、ある物をアイテムボックスから取り出してはた目には見えないようにこれまた装う。

 さて、なぜこんなことをしているのかというと。


(……めっちゃ、誰かにつけられてるじゃん。えーと、出来たらまだ全裸コートの変態の方が良かったんだけどなぁ。こりゃあ、もしかしなくてもバレたか? 結構最近は大人しくしてたんだけど……。何が悪かったのかなぁ……)


 はぁ、と天を仰ぐ。

 そのうちに身バレする可能性については、散々白石総合物産側から複数のパターンを提示されている。直接は会ってはいないが、白石グループの顧問弁護士の事務所内にその場合の専門チームをすでに組んであるそうだ。穏便な一パターンとして記者会見の会場手配から各マスコミへのプレスリリース、政府並びに地方公共団体の長に対する一連の騒動の謝罪を含めた書面の準備に、家族・友人に対する取材攻勢をいかに少なくするかのテンプレート。

 正直読み進めるだけでげんなりするようなパターンの物もあり、この一月というものまさに身を潜める様にして生活していたのである。不審に思われる可能性があるのは強いて言えば昨日の衣装合わせ位だ。


(……だってのに、何で久方ぶりの楽しいショッピングの日に来るんだよっ!! もっと違う日でもよかっただろ!? やっぱ昨日のが原因か?)


 尻の穴から背筋に上ってくるような言いようのない焦燥感に身を焦がす茂。

 後ろからつかず離れずの距離を同じ速度で移動してる複数の気配を感じつつ、さらに周辺の状況を確認することにする。以前よりも少しだけ知覚範囲の広がった「気配察知:小」を発動し、近くに潜む不審者の位置を詳細に捉える。


(……完っ璧、頭お花畑の痴漢じゃないわな。というかあの阿呆こないだ捕まったって話だったか。そういえば)


 先日より幾度か現れていた全裸の上にコートだけを羽織った、昔ながらの典型的変質者であるが、地域住民にとっては幸いなことに現行犯でお縄となっていた。

 この市内中がテロリズムの嵐に襲われ、不安に覆われたその直後のことだ。市内全域に厳重な警察の警戒が敷かれ、さらには住民すべてが周囲の小さな異変にもピリピリとした緊張感を維持していた。まあテロリストが潜伏しているかもしれないのである。当然のことといえるだろう。

 解説すると非常に頭の悪いとしか言いようのない経緯を辿ることになるのだが、そんな市内の警戒度マックスの夜間に市内で聞き込みをしていた刑事二名の前に自ら現れ、まあためらいもなくモロ出しを敢行。驚くでもなく、日々さしたる進展もなくトゥルー・ブルーの地道な捜査にイライラを募らせていた刑事に、恐ろしい勢いで“逮捕する”と怒鳴られたその変態は逃げ出した。だが逃げ出した先にいたパトカーで周辺を巡回中の警察官二名に出くわし、結果として計四名に荒々しく取り押さえられる事となったそうである。

 現在、取り押さえられる際に固い固いアスファルトに擦られてけがをしたため、入院中ということだそうだ。まあ、何一つ同情する必要のない自業自得という状況である。

 まず間違いなく数年後にはテレビのオモシロ事件簿で再現VTRと共に面白おかしく紹介されることになるだろう。そして思い出したようにまた数年後にも面白くコスられて、その数年後にも、とエンドレスの地獄が待っていることだろう。


(……うわ、電波死んでるし。……ってなると個人のレベルじゃなくて結構マジな、組織的な奴等ってことか。しかもこの感じだと今すぐでも仕掛けてくる気満々だな)


 スマホが圏外に変わったのを確認し、不自然でないようにスマホを掲げて電波が途切れて困ったような仕草を装う。

 その場で立ち止まり、ゆっくりと電波を探すようにしてぐるりと一回転。後方から接近しているはずの反応に注意を払いつつ、視線をそちらへと向ける。

 さすがにそういう突発的な行動にも対応できるだけの距離は取っているのだろう。立ち止まって見渡す範囲には人影は一つも見えない。

 だが、茂にはわかる。立ち止まった瞬間に「気配察知:小」で動いていた反応がいくつか、ぴたりと“だるまさんがころんだ”でもしているかのように挙動を止めている。


(なーるほど? こういう位置取りなわけね。んじゃ、覚悟決めるかぁ……。すげー気が進まないけど…………)


 はぁ、と最近おなじみになったため息をつきながら、家までの最短ルートを少し外れて神社へと向かう遠回りのルートに足先を向ける。

 財布を取り出し、硬貨を数枚手に取った。

 つい三十分前まではニコニコしながら鼻歌混じりで帰路に就いていたというのに、今は辛気臭い顔で深く深ぁぁぁくため息をついている男は先ほどよりも幾分老けて見えた。






『シゲル・スギヤマは村瀬神社境内を通過。現在神社の付設公園内に移動。ベンダーでドリンクを購入しています』

『五号、映像は届いているな。目標であるシゲル・スギヤマはリスト項番では六位だ。より上位の対象者が居る以上、今回の作戦が全くの無駄となる可能性がある。場合によってはお前の判断で即時離脱も許可する。ただ、完全にシゲル・スギヤマを「光速の騎士」の候補から除外できない。ここで真偽の判断はしておきたい』


 耳元から届く通信と、視界のうち左半分に投影されている半透明のディスプレイ。対象者杉山茂が、疲れた表情で公園に置かれたベンダーの下部取り出し口からペットボトル入りの炭酸飲料を手に取る映像を投影しているそれに集中しながら返事をする。


「では、百%での稼動は避けたほうが無難ですか?」


 若い中性的な声色で答える。

 男とも女とも言えない声色のそれにはどこか残念そうな感情が含まれている。全力では戦えないという制約はその五号と呼ばれている者にとっては不本意だったようである。


『一当たりしてみての結果次第だ。「騎士」と断定できるだけの何かをお前が感じられたならば構わん。ただ、反動を考えるにせいぜい二度までの稼動としておくべきだな』


 しわがれた、だが力強い声が耳に届く。

 その声に若干の緊張を感じる。

 それを受けて五号のほほがこんなときだというのに少し緩む。


「了解。では、仕掛ける。各スタッフはバックアップを頼む」

『了解』『了解』


 左のディスプレイの映像と、外部カメラから直に映る右の映像が一致する。

 そしてペットボトルをぐびぐびと飲んでいる男、杉山茂がこちらに視線を向けた。

 一瞬、びくっと痙攣したかのようにしてこちらを凝視すると、その場を後ずさった。


「さあ、本物かどうか。答え合わせに付き合ってもらおう!」


 五号の声には喜びが混じっている。五号の通信を受けた者達はそう感じていた。






 被験プラン五号と呼ばれていたそれは、スマホの画面を見ながらベンダーで買った炭酸飲料を飲んで一息入れている杉山茂の前に唐突に現れる。

 棒立ちの茂は、口に含んでいた炭酸を噴き出して公園の地面を濡らした。


「お、おおぅっ!?」


 驚きを装うつもりであったが、それ以上に五号のビジュアルインパクトが強い。素でビビッた。

 なぜならこの日も高い時間帯に。


(ま、真っ黒…………。え、えげつないくらいに怪しいっ!?)


 ベンダーとゴミ箱にベンチのある休憩スペースから離れること約十メートル。そこにいるのは頭の先から膝下までを完全に外套というよりは、ローブ然とした厚手の布に包んだ人影である。サイズからするとかなりがっしりしたフォルムではあるが、隠すことを目的としたそんなものを被られていては全体像が見えない。

 はっきり言うがこんな人物が街中を歩いていれば、確実に耳目を集めるだろう。いや、確実に昨今の治安情勢を考えれば、即おまわりさんへと直電コースだろう。

 ぐい、と噴き出してしまった炭酸で濡れた口元を手の甲で荒く拭う。

 すこしばかり演技でもしようかと思っていたがそんな必要もないほど、ぽかんとした馬鹿面をさらしている自信がある。


「あ、あのぉ……? な、何か御用で?」


 お宅どちらさんですか、と聞いてみるだけは聞いてみる。

 まあ間違いなく無駄だというのはわかっているのだが。

 瞬間、小さな金属の擦れる音が茂の耳に届く。


ヒィィィィィィンッ…………!


 普通の人間には聞こえないほどの音であるが、幾分その普通の範疇からはみ出している茂の耳には響く。

 一番近いのはクーラーの起動時の音だろうか。

 茂は手元のスマホを掲げて準備する。当然だが、この状況下であちらさんが引いてくれるような都合のよい偶然など起きはしない。

 ならば、その状況下に持っていく必要があるのだ。

 通話も通信も出来ないスマホはただの板、ではない。

 そう、通話が出来なくてもアプリも基本の機能も使えるものはある。

 録画状態に持っていったそれを胸ポケットに突っ込んで、カメラ部分を相手に向ける。


ドンッ!!


 地面にくっきりとした焼け焦げ跡と、靴跡を残して一気に茂へと突進してくる五号。

 足元は完全に逃げの体勢に移していたとは言え、あまりのその加速度に茂の回避がほんの少し遅れることになる。


ぱきゃぁぁぁんっ!!

どごごごっ!!


 茂の代わりにと言うわけではないが、炭酸飲料のペットボトルがいい音をたてて爆ぜ飛んだ。

 しゅわしゅわと色鮮やかなそれが地面に広がるのと同時に、地面をえぐるようにして五号が突進を止める。一直線に突っ込んできた五号。

 最後には境内に置かれた石灯籠にめり込んで激突する形でブレーキをかけた五号は、苔むした石灯籠を一部砕いて脱出。地面へと細かな破片が散らばり、遅れて半ばから灯籠が崩れ落ちた。

 そしてかろうじて回避に成功した茂は冷や汗が噴き出した額を荒く腕で拭う。

 交錯の瞬間の“小細工”が功を奏し、体へのダメージは無かった。


(や、やべえ。……普通に当たったら、ミンチになって死ぬぞ!? 正気か、この阿呆ども!!?)


 突っ込んだ姿勢からゆっくりと茂のほうに向き直る五号。

 鈍重な印象の動きではあるが、スタートからのトップスピードまでの到達があまりに速い。


(だけど、なんとなーく判った。……コレならどうにかできる)


 茂はそれでも、この五号の性能というか仕組みを若干であるが理解した。

 小さく小さく聞こえないほどの音であるが、あれは恐らく吸気音だ。あのローブの下にあるものは、何らかのエンジン的なものを装備した鎧なのではないか。

 かすかにではあるが五号の通り過ぎた空間に何か熱せられた金属臭も漂っている。コンピューターの集積するサーバー室の中で嗅ぐようなあの独特のにおい。

 そして今の一回で足元のローブで隠していた部分が破れている。

 そこから覗くのは金属的な光沢のある鎧というか、パワードスーツというか。

 ここ最近、似通ったコンセプトの鎧を見せられるだけ見せられてきたもので、どことなく開発者の意向を理解できてしまう。

 突進をする際の起こりとも言うべき吸気のタイミングを見計らえば、回避は十分に間に合う。数度繰り返せば、恐らく完全にその性能を把握できるだろう。そしてあの様子ではこちらの“小細工”にも気づいていないようだ。

 だが、正直な話をしよう。

 どうしてそんなものにバカ正直に付き合わねばならないのか。

 いや、付き合うだけの義理なぞ何一つないのだ。


すぅぅぅっ…………!


 相手の吸気音を耳にしながら、こちらも準備を始める。

 その様子を見た五号側も何かが起きる気配を感じたのだろう。吸気音が少し収まる。

 茂の行動を見て対応するつもりなのだろう。

 だが、それは悪手だった。

 五号側が先に仕掛けるべきだったのを失敗したといえる。つまり先に動いたのは茂であった。


すぅぅぅぅっ…………!


 大きく肺いっぱいに吸い込んだ息を一気に吐き出す。


「たぁぁぁぁぁすけてぇぇぇぇぇ!!!? へんっ、しつっ、しゃっ!!だぁぁぁぁぁっ!!!!」


 全力で助けて、と叫んだ。

 情けなく、そして腹の底から響くような力の入った、ヘルプミーのレスキューサインを。本気の本気で叫んだ茂の声量は、周りに家屋がない公園内を越えて、住宅街にまで優に届く。

 がくっ、と目の前の五号がほんの少しだが体を崩したようにも見える。

 その隙をつき、こっそりキッチンナイフを入れていた袋を掴む手の中に、事前に出しておいたその付属しているピンを片手で思い切り引き抜く。

 引き抜いたピンが抜けると同時に、それが本来の機能を発揮した。


ビビビビビビビビビビビビ!!!


 けたたましい大音量がその「不審者撃退用防犯ブザー」から途切れることなく鳴り響く。先日の裸コートの変質者が現れた際に「森のカマド」スタッフ全員に貸与されたそれは、犯人逮捕後も店長の伊藤の厚意によりスタッフ貸与のままとなっていた。まあ、露出狂の変質者よりも実際に銃器を振り回したテロリストが町に潜伏している可能性もあるからだが。

 ちなみにこの市内の防犯グッズ取り扱い店の売り上げは前年比で二百パーセントを超えたそうである。市内小中学校への生徒への全数配備などもニュースとなっていた。個人でも購入する者が多くなったとのデータも出ているとのこと。

 さて、そんな町中の人間が持っている防犯ブザーの爆音に虚を突かれた五号はどうするか動きが止まる。

 もし仮に杉山茂が「光速の騎士」であるのならば、向かってくると考えていたからだ。それが、最初から逃げの一手を採る。

 全力で周囲に助けを求め、防犯用のブザーを鳴らし、そして今五号の目の前で。


「へ、変態だぁっ!? だれか、だれかぁぁぁっ!!! 警察呼んでぇぇぇぇぇっ!!」


 再びの腹の底から響くSOSの叫び。周囲は住宅街で人気が少ない日中とはいえ、家の中にいる者もいるはずで、けたたましいブザー音に全力での叫びを加えれば、緊急通報されることは想像に難くない。

 しかもいまだ先日来のテロリズムの脅威が、個々の住民の心にささくれとなって残っている。自身がそれに直接関係していなくとも友人の友人が銀嶺学院の生徒であったり、職場の同僚の息子娘がそうであったり、チキンレースを繰り広げた道路沿いに居を構える者もいる。地方都市ということもあり、突き詰めて行けばどこかしらで繋がりがある物なのだ。

 そして一頻り騒ぎ切った後で、茂は脱兎のごとく五号に背を向けて走り出す。

 つまり、全力でトンずらするつもりなのだ。

 それを追跡するかどうか。


『……待て、五号。周辺警戒中の隊より報告があった。警察がそちらへと向かっている。……複数の通報があったようだ。最短で四分弱でそこに到着する。残念だが撤収せねばならん。シゲル・スギヤマにこれ以上関わる時間が無くなった』


 

 電波を遮断し、携帯での連絡は出来なくさせたが直に引いた固定電話までは手が回らなかったのである。恐らくは周囲の善意の第三者が警察に通報したのであろう。

 五号の視線の先には足をもつれさせながら逃げ出していく茂の姿。それは騒動に巻き込まれた一般人が這う這うの体で逃げ出していく様だ。どう見てもそれは「英雄然」とした「光速の騎士」の姿と一致しない。

 ばたばたと防犯ブザーの音と共に遠ざかる茂の姿を見ながら五号は答える。


「了解。これより撤収する。退避ルートの指示を頼む」

『回収用の車両を向かわせる。ディスプレイに表示された回収ポイントに移動を』


 ぷつ、と一旦通信が切れる。

 防犯ブザーのあの音は茂がピンを刺し直したのかいつの間にか消えていた。

 そして踵をかえそうとした瞬間に気づく。


(なんだ、これは?)


 どこかに引っ掛けたのだろうか。腕の辺りの隠ぺい用のローブが引き攣れたような形でちぎれている。下の金属的な光沢をもつこのパワードスーツにも薄く一筋の線が入っている。

 石灯籠にでも突っ込んだ時に恐らくこすったのだろうと、思い直し五号はその腕に適当にローブを手繰り寄せ、回収ポイントへと歩き出した。






「うぁぁぁぁっ……!? やっぱ、ちょっと欠けてるぅぅっ……!」


 神社の公園から這う這うの体で逃げ出すか弱い一般人を演じ切り、その後ケータイの電波が回復する所まで駆け抜けた茂は、哀愁を帯びた声を上げる。

 路地裏のごみ回収のネットが転がる薄暗い場所で、彼が手にしているのはついほんの一時間前に購入したキッチンナイフお値段二万三千円である。

 真昼間にこんな薄暗い場所でそんな刃物を見つめているなど、住民に見られれば通報モノの蛮行であるが、茂としてはそれどころではない。

 言うまでもなくド新品で、これから五年くらいは大事に使っていこうと思って買ったというのに、刃先がちょっとだけ欠けていた。


「うぅぅ……。まだ一回も使ってないのにぃぃ」


 指先で撫ぜても欠けた刃先は戻ってはこない。

 だが、あきらめがつかない。二万三千円。二万三千円だ。


「くそぉ。かったいんだよ、あいつ!」


 最初のあの突進の際にぎりぎり回避しきれないと判断した茂は、その時唯一持っている刃物。二万三千円のキッチンナイフを使わざるを得なかった。

 瞬時に袋の中のキッチンナイフだけをアイテムボックスに収納。そして外箱を袋に、キッチンナイフだけを五号の死角になる位置で取り出して突進してくる五号の進路を逸らすのに当てていた。

 ちなみに聖騎士のナイフは今は自宅の台所の包丁たてに掛かっていたりする。

 五号の進路がそれでほんの少しずれて、茂は直撃を回避できたし、逸らした瞬間にはキッチンナイフはアイテムボックスの中。

 ただし、本来の用途外で使用したキッチンナイフは残念な結果になってしまったが。


「うぅぅ……。まだ一回も使ってないのにぃぃ」


 あきらめがつかないのだろう。同じことをまた口に出していた。

 ただ、正確には一回使っている。思い切り用途外ではあるが。

 そんなうなだれる茂のズボンに突っ込んだガラケーがぶるぶると震える。

 キッチンナイフをアイテムボックスへと放り込み、ガラケーを開く。


「……セーフハウスで相談を? マンションの方じゃなくて?」


 これからどうするかということを電波が通じるエリアで門倉にメールしたのだが、返事として返ってきたのはそう書かれたメールの題名と添付された地図ファイルであった。


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