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故に、青春とは脱出ゲームである。  作者: ナヤカ
【第三章】烏丸武人は詭弁を語る
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ゲーム セーブ【6】

待ちきれず更新。我慢足りんなぁ……。

 放課後、自分のアパートへ帰ると部屋の鍵は既に開いていて、中ではロンリー先輩たちが楽しげに麻雀をやっていた。

 そんな彼らは、僕の姿を見つけると慣れたように「おかえりー」と言ってくる。それから、先輩たちは僕に向かってニヤニヤと気持ちの悪い笑みを向けてきた。


「……なんですか」

「やっぱり降ったな?」


 そんなロンリー先輩の声の後、カン先輩とポン先輩、そしてチー先輩たちの笑い声が響き渡った。


「あまり大きな声出さないでくださいよ。この部屋の壁薄いんですから」


 そう言って四人を宥めようとするが、彼らは構うことないとばかりに笑って見せた。


「というか、やっぱり(・・・・)降ったってどういうことですか?」


 それに、ひとしきり笑ったロンリー先輩が答える。


「朝礼だよ。俺らは雨が降ると予想していたんだ」

「何故ですか?」

「俺はお前に、朝礼でのことをみなちゃんに報告するよう言っただろ?」

「……えぇ」

「だからだよ」

「……だから?」


 それから、ロンリー先輩は自慢げに言った。


「みなちゃんは雨女なんだ」

「雨……女?」

「あぁ。だいたい天文部絡みの行事をやると、雨が降る。それは、みなちゃんが雨女だからだ」


 いや、雨女って。それを言うことはなかったが、ロンリー先輩は察したのだろう。「信じてないな?」と、僕をジッと見てくる。もちろん答えはYESだ。雨女や晴れ男の類いなど、科学的根拠は何もないのだから。


「……まぁ、信じられない気持ちも分かる。だが、経験者は語るってやつだ」

「これまでにも雨が?」

「あぁ。みなちゃんを誘った天体観測なんて殆ど雨だ。その確率は五十パーセント」

「ごっ!?」

「だから、ある時から俺らはみなちゃんを誘わなくなった。天体観測なんて雨どころか、曇っちまったら詰みだからな」

「そうですか。……でも、仮に南川先生が雨女だとして、なぜ朝礼で雨を降らせようとなんか?」

「お前、本当は部員募集なんて乗り気じゃなかったんだろ?」

「まぁ」

「だからだよ。せっかく天文部に可愛い後輩が入ったんだ。少しは助けてやらないとなっ……はい、リーチ!」


 そんなことを言いながら麻雀を打つロンリー先輩。彼らが、屋上でちゃんと活動していないように見えるのは、そういったことも関係があるのだろうか? そうだとしたら、彼らは考えていないようで、案外考えているのかもしれない。


「マジかよー。早すぎ」

「またイカサマしただろ、ロンリー」

「そうだ! そうだ!」

「バカ野郎。例えイカサマだったとしても、見破れなかったお前らの落ち度だろーが」


 ……いや、この人たちはただ純粋に麻雀がしたいだけなのだろう。そう結論付けて彼らを放置する。


 雨女、ね。まぁ、雨が降ってくれたお陰で、確かにやりたくなかった事をしなくて済んだのは有難い。それが南川先生のお陰かどうかは別として。


 ……それから、特にやることもないのでパソコンを起動させる。


 こんな時ぐらいしか出来ないので、友人の『脱出ゲーム』をクリアしようというのだ。


 そして、セーブをしていた所から始める。




――ようやくネット探偵から返事がきた。その中身は『相手の場所を特定した』とのこと。しかし、その続きにはこうあった。


『君に彼女の居場所を教えるのは簡単だ。しかし、それを知った君がとる行動に、私も少なからず責任を負わねばならない。だから、簡単に彼女の居場所を教えることは出来ない。そこで、一つゲームをしないか?』


 そうして、メールの最後にリンク先が貼ってあった。それをクリックすると。


――オセロ対決!


「……は?」


『これで白黒つけようじゃないか!』


 これまで、暗い雰囲気を保っていた『脱出ゲーム』が一変し、急にオセロの画面へと変わる。それに、ゲームがバグったのかと思い思考停止する。


 だが、そんなことはなく、相手の名前は『ネット探偵』とある。


 白黒つけようって……別に勝負してなかったよね?


 だが、そんな疑問虚しく、ゲームは開始された。


――先手、黒。ネット探偵。


 その瞬間、僕は急に恥ずかしくなってしまった。何故なら、このゲームを作った友人が「白黒つける……そうだ! 白黒と掛けてオセロを取り入れよう!」等と喜んでいる姿が頭に浮かんだからである。


 ……白黒つけるって、そういうことじゃないから。……この場合、ネット探偵が黒を打ってる時点で白黒ついてるから。


 つまり、既に白黒ついてしまったこのオセロで、主人公は白黒つけるために闘う……完全にオセロは選択ミスだろう。


 そんな事に絶望しながらも、仕方なくネット探偵とオセロを打つ。


 ムカつくことに、相手はかなり強かった。


 何度やっても負けてしまう。なんと、角を三つ取ったのに負けてしまうこともあった。


 どんな難易度にしてんだよ……。


 もはや、脱出ゲームという要素など一欠片もないテーブルゲーム。それでも、僕は粘り強く挑み続けた。


 だが。


 部屋に掛けてある時計が、午後五時を回った所で僕は諦めてセーブする。タイムリミットだった。


 それから立ち上がって部屋を出る準備を整える。


「どこか行くのか?」


 ロンリー先輩に問われ、僕は頷く。そう、これから入宮と葉加瀬と会う約束をしていた。


「ちょっと謎を解きに」

「……は?」


 だが、呆けた先輩たちを残し僕は部屋を出る。待ち合わせ場所は駅前。外は、既に暗くなりはじめていた。


 謎を解きに。それは別に間違った表現ではない。入宮の姉が残した問題を、これから解きに行くのだから。




作者の成長の為、忌憚のない意見をもらえると有難いです。

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