第三十二話 動く事態
前からすごく時間たってる怖い・・・最近時の流れを把握できてなさすぎる・・・。
待たせてすみません。そして、今回も短めです。・・・早く大掃除して更新もしないと。
前回までのあらすじ:王宮魔法使い筆頭と王宮魔法使い次席の戦いが始まる
時は少し戻り、ダーリア・ガゼンが会議室を爆破し、城が炎上し始めた頃、軍部では
「・・・フッ、フッッ!!」
一人の男が中庭で剣を振っていた。その振り方はとても自然で、まるで上流から下流へと水が流れるかのようであった。
剣を振っている男の名はジーニア。片目に眼帯をつけているかつての大戦の英雄だった男だ。最も、その全盛期には程遠いと本人は言っているが、周りからすればそれでもかなり強い者だと思われた。
「大将!!ジーニア大将!!」
「・・・む?なんだ?」
そんな彼の元へ、一人の若い男が走ってやってきた。その男は近くへたどり着くと肩で息をしながら言った。
「お、王城が・・・!」
その言葉でジーニアは何かあったのかと疑ったが、城に異変があればけたたましい音で異変を伝えるはずの魔法具が沈黙していることからそうではないか、とも考えていた。だが、この軍部は王城の様子をほとんどの場所から見ることができる。だから、何気なく王城に目を向けると・・・
「――王城から煙だと!?」
異常があっていいはずのない王城から、明らかに火事だと分かるレベルの煙が出ていた。それこそ、魔法具が警告を鳴らしてもいいレベルで。
「――内部犯の仕業か!」
魔法具が警告を鳴らすのには、いくつかの条件がある。そのうちの条件に、いくつかある警告が鳴る魔法具に合図を送る魔法具が起動しているという条件があるのだが、それは内部から切ることができる。
つまり、内部にそれがある場所をすべて把握している人物の存在が不可欠なのだ。
「誰が・・・?王族を除けば数人くらいしか候補がいねえが?」
とはいえ、そんなのは考えるのは後でだ。今は、危急の事態だ。
「・・・疲れてるところすまんが、伝令を頼めるか?」
「・・はぁ・・・はぁ・・・はい・・・」
・・・。
「んん、シラハ」
「ここに」
目の前の死にそうな兵士から目を逸らし、とある人物の名を呼ぶ。彼女はすぐに現れた。黒装束を身にまとい、ただ目元のみを晒しだしていた。現れた瞬間は認識できなかった。
「各所に伝えろ。王城に異常あり。各員王城へ行け、だ」
「・・・元帥にうかがわなくてよいので?」
「緊急事態だ。俺は先に城へ向かう」
その言葉だけを残し、俺は城へと駆けた。
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「つまり奴は、勝手に行ったわけか」
「ええ、緊急だそうで」
「・・・まあ、そうだろうな」
ちらりと、外を見る。寮などからバラバラと兵士が出てきて、隊毎に固まっていると子を見るに揃った隊から城へ向かっているようだ。しかし、それが正しい判断だという事はわかる。自分もそう指示を出しただろうから。
「さて、ならば私も出立――!?」
私が椅子から立ち上がった直後、ドォンという地響きと共に地面が大きく揺れた。思わずバランスを崩しかけた私は机に手をつく。
「一体何が・・・」
「元帥、窓の外を」
「窓だと・・・なに?!」
窓に目を向けた私は、思わず自身の目を疑った。なぜならそこには巨大なドラゴンがいたからだ。
あの巨大さはほぼいるはずのない最上級龍の大きさだろう。しかし、そんな大きさのドラゴンが向かってきているのなら数日前に報告に上がっているはずだし、少なくとも数時間前には目視ができるはずなのだが。
「報告に無い最上級龍と、鳴らない警告の魔法具。・・・いったい何が起きている・・・!」
「元帥、指示を」
なるほど、歯を噛みしめて考える暇すらないか。そう自嘲し、私は告げた。
「これを片付けなければ王都が滅ぶか。なれば、告げろ。今から残存戦力にて最上級龍討伐だ!!」
目の前の赤い龍――最上級龍の中でも最も暴れるというグレートレッドを見ながら彼は告げた。王国軍と最上級龍、グレートレッドの戦いが幕を開けた。
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「なにが起きてるんだここは!?」
王都のとある民家の地か。そこには黒ずくめの男たちが会合を開いていた。その議題は、ずばりこの緊急事態のことだ。
王城が炎上、最上級龍グレートレッドの出現、他にも未確認ながら吸血鬼も出現しているという報にここに集まる面々は混乱をしていた。――ただ、一人を除き。
「静かにしろ。ここは騒ぐための場ではない」
「騒ぐための場ではないって・・・あんた正気か!?」
騒いでる面々に冷や水を浴びせるかのような声に、先ほどまで騒いでいた男の一人が声を上げる。普段なら、その男だって冷静でこんな声を荒げたりはしないだろうが、今回ばかりは状況がかなり異なっていた。
すでに、問題は国の存亡にかかわるなどというレベルではなく、下手をすると周辺国家さえ巻き込んで大多数が死亡する事態になっていたのだから。・・・それほど、最上級龍のもたらす被害というのは甚大なのであった。
「正気だ。少なくとも、この場を乗り切る策を考えているだけに卿らよりは生産性もあるな」
「この場を逃れる手段だと!?これでどうやって逃れるというのだ!?そもそも王城に助けを・・・」
「助けは出さない。これは、諜報部長、カリア・セイビアスとしての判断である」
「なっ――!?」
カリア・セイビアス。それは、諜報部で脈々と受け継がれてきた諜報部長の名前である。歴代の部長はこの名を継いでいるのであった。
故に、この名を用いての宣言はとても重い。なにせ、自分に至るまでの歴代部長の名前すら用いていることと同義であるからだ。
なので、反論を口にしようとした男もそれ以上口にできなかった。これ以上言えば消されると判断したからだ。
「だ、だけど王族を助けないというのは・・・」
「忘れたか。我々の目的は、王族を直接的に守ることではない。情報という武器を以てして守るという事だ。そも、我々はこと直接戦闘においては軍に後れを取るからな」
「し、しかし我々でも壁にくらいは・・・」
「くどい。その役目もそもそもが騎士や兵士のものだ。我々の役目とは違う」
そう言って、カリアは周りを睨み付ける。その圧に、口を開こうとしたものは、口にしようとした言葉ではなく「うっ」と苦悶を漏らすのみだった。
そうして、全員が静かになったことを確認してカリアは口を開いた。
「とはいえ、これが国家存亡の危機であることは私も承知している。それこそ、我々も出向かわなければ滅ぶだろうことも。故に諸君には選択肢をやろう」
「選択肢・・・?」
「あぁ。選択肢だ。ただし、これは一度しか選べぬ。慎重に選ぶことだな」
ごくり。と誰かの息を飲む音が空間にいる全員の耳に届いたような気がした。そして、部屋が嫌なほどの静寂に支配される。
「まずは、一つ目の選択肢。これは簡単だ。私とともにこの国を脱出する。確実に助かるとは明言しないが、確率は高いだろう。
二つ目は、諦めてこの街に残る。諦めて最後の王都を見て回ったりすればいいだろう。ひょっとすれば、廃墟の中を生き残れるかもしれんな。・・・王都が更地になりさえしなければだが。
三つ目は、この諜報部を出て、自由になることだ。王族を助けに行くもよし、あのグレートレッドを倒しに行くもよし、もしくは私と別口でこの街から出るもよしだ。
さあ、選べ。時間は有限だ。少なくとも私についてくるという選択肢を選ぶならば五分以上は待たない。何をするにしても時間は少ないからな。すぐに選ぶがいいさ」
そして、カリアは黙り込んだ。もうあとは、彼は待つだけなのだから。目を閉じ、五分経ち目を開けるとそこに残っていたのは誰もいなかった。
「・・・死を選ぶもまた自由――だけど、俺としては二度目の死などもううんざりだがな」
その光景を見届け彼はその建物から外へ――は出ずに、奥の本棚へ足を向けていた。
「もともとは避暑地へ行くために作ったのだけどね。全く、こんな緊急事態に使うことになるとは思わなかった。備えあれば患いなしか」
彼が赤い装丁の本を取ると、ガコン、という音がして、本棚が縦に開く。その先には道が続いていた。
カツカツと足音を響かせていくと奥には異形がいた。
それはヒトの姿をしていて、暗がりならただの人かもしれなかったが、明るいその部屋においても真っ黒であるため、どう見ても人ではない。ただ、特徴があるとすれば、頭のあたりにグルグルと螺子くれた角が一対ついていて、その目が血のような赤色であったことであろう。
「ん?ああ、マスター、転移魔法陣を使われるのですか?」
「あぁ。バルカル。私はこの王都を去る」
「王都を去る。・・・と言いますと」
「あぁ。お前は解放する。地獄へと還るといいさ」
「なるほど。お役目御免と。さよならマスター。労働期間を考えたらお得な契約だったぜ」
「・・・まったくだ。もう少しいる気だったのにな。本当に俺はついてない」
「いやいや、俺のような最上級悪魔と契約できたのは運がいい。他の血気盛んな悪魔ならこんな命令したら逆切れされてたしな」
「・・・その点においては運がいいのかもな。さて、じゃあなバルカル。いずれ召喚できればまた会おうか」
「おう、召喚できたらな。まあ、戦闘系として呼び出したら殺すけど」
「・・・あぁ、その時は別の悪魔にでもあたるさ」
「そうかい・・・じゃあな」
そう言って悪魔が消えた先には魔法陣が一つあった。この魔法陣は転移魔法陣といい、人の世ではすでに廃れた魔法であった。それを彼が先ほどの悪魔と契約を交わすことにより作成および護衛をさせていたのだった。その契約も先ほどで終わり。代償が高くついたがまあ、いい買い物だったと彼は独り言ちた。
「さて、魔法陣起動。それではな、王都」
そう言って彼は消えた。
数分後、この民家は崩れ落ちることとなる。彼が仕込んでいた爆弾によって。そして、彼の魔法陣もその爆発によって埋もれることとなったのだった。




