第三十三話 槍の雨
あけまし・・・。。。
新年初投稿です。いや、この章のまとめがなかなか思いつかずに。いや、締めは決めてましたが、詳細が・・・。まあ、どうにか、こうにかという形で今回の話はかけました。・・・ちょっと走りましたが・・・。
前回のあらすじ:王都の様々な動き。
ドカンと魔力の爆発が起こった場所へ向かった。ちょうど、壁に大きな穴が開いていた。そこからなら楽に入れるだろう。
穴に入り次第、『気配感知』を発動させる。・・・クソ、大気中に魔力が飛び散って、反応が鈍い。ちらりとあたりを見渡すと、三人の人物が目に入った。
一人は・・・そう、師匠の妹クー。彼女は床に倒れていた。・・・寝かせられたのか。
もう一人は、師匠。だが、ひどい傷を負っていた。
最後には・・・王宮魔法使い筆頭、ザーギス・コノラーだ。・・・だが、仲間のはずの師匠と向き合っているだと・・・?
「どういうことだ・・・?!」
俺はおもわず叫んでいた。その瞬間、師匠とザーギスはこちらを向く。それを確認してから俺は『幻惑』を放つ。・・・俺を目にしたものに特定の光の信号を送り、三半規管を混乱させる魔法だ。受けた瞬間、天地がさかさまになり、立っていられなくなる。
「な・・・に・・・?!」
そう呟きを残して二人は倒れた。それに合わせて、俺は師匠の元へ『短距離転移』を行使し、隣に立つ。そのままザーギスの視線を向けながら、師匠に回復魔法を放つ。・・・魔力を思い切り流し込んで。
「師匠、どういうことです。なんであいつが・・・」
「・・・ボクと彼は敵同士。これで今はいいんだ・・・」
「・・・分かりました」
この状況になったわけを師匠に聞こうとしたが、彼女は話さなかった。それなら仕方はないが、彼を殺すしかない。・・・だが、その前に
「ガラニス」
「ここに」
名を呼べば悪魔がすぐそばにいた。今呼び出した奴だが、彼に迅速に命令する。
「あそこに倒れている子を安全かつ最速でスーラン家の屋敷に届けてくれ。道中は必ず守れ、いいな?」
「御意に」
その言葉を残し、彼はクーを連れ去った。代償となる魔力入りの宝石は高水準なのを与えた。報酬は十分、なら契約を守る悪魔は必ず彼女を屋敷まで送り届けるだろう。師匠も送り届けたかったが、あの悪魔の運搬能力では一人が限界だ。
「セット!目の前の悪に死を、『串刺しの宴』!!」
それを端で見ながら目の前に宝石を転がし、起動の呪文を唱える。瞬間、宝石に込められていた魔法が発動する。・・・『串刺しの宴』は、土属性の魔法で、俺のオリジナルだ。起点から放射状に土の槍を発生させる。ここが、外なら魔力をフルに土槍の作成のみに使えたが、今回は土の発生にも魔力を用いていた。・・・だが、範囲はそれでも十分だ。
「・・・いや、まさかこんな城の奥で土の槍に串刺しになりそうになるとは思わなかったぜ」
もくもくと上がった土煙の中からザーギスが現れた。・・・どうやら防いだようだ。
「まったく、スーランといいお前といい、不確定要素が多い。本来の予定ならすでに制圧しているはずだったのによ」
パンパンと服についた土汚れを払うザーギス。その佇まいは隙だらけのようにしか見えなかったが・・・今行くと確実に手痛い反撃を受けるだろう。
「・・・なるほど、やはり攻撃にも来ないか。その年で末恐ろしい。お前が敵なのが残念なほどだ」
「は、お生憎だな。師匠をこうした相手の味方になんてなれるものか」
めんどくさいとばかりにため息とともに漏らされた言葉に俺は敵意を以て返した。
「だが、まだ青臭いと。一応聞いておこうか、ケインジス・ラーデンス、こちらに降る気はないか?こちらに加わるのであればそこにいる師匠は見逃してやろう」
「・・・いや、ないね」
「ふん?お前は身内を守るためなら自己を犠牲にするタイプだとこの五年で思っていたのだが?」
「確かにそうだよ。・・・でも、その約束が果たされるような気がしないんでね」
この五年間、ザーギスと俺はそこそこ付き合いがあった。その付き合いで互いの考え方はそこそこ理解している。・・・そして、それから考えるにこいつは本心で師匠に手を下すことがなくても、ほかの連中の命令の結果で、師匠を見逃すことはないのだろう。・・・ザーギス・コノラーは敵を見逃すような真似はしないのだから。
「・・・そうか、ならばお前は我々の敵というわけか」
「そう・・・」
「いや、待つんだケインくん・・・」
「師匠・・・?」
ようやく傷の再生が安定した師匠が口を挟んだ。
「ザーギス。・・・ボクの命ならくれてやる。だからケインくんとクーだけは・・・・」
「なるほど。たしかに、そこのケインとクーならこれから次第で敵でも味方にでもなるだろうな。・・・だが、俺には見過ごせねえ」
そういってザーギスは足を開く。臨戦態勢だ。
「つまり、交渉決裂。お前たちは私の敵であり、そしてここで死ぬ」
その言葉と共にザーギスは何かを放り投げた。その物体は・・・細長い筒状の物でその先端からは導線が出ていて、その先に火がともっていた。
「!・・・吹き飛べ!!」
魔力をそのまま風に変換し、全力で強風を吹かす。そして筒状の物体・・・ダイナマイトはザーギスのところへ向かった。
「・・・なるほど、あいつの言うとおりだったか」
そう呟き、ザーギスは手に持ったナイフを一閃し、導線を切った。
「ケイン。お前のその子供らしくない慎重さや、そして初見のはずのものに対する、初見とは思えぬはずの即断的対処法、・・・お前も転生者か」
すっと冷や水を浴びせられたかのように激情が沈下する。
「・・・」
「沈黙は是なり、といったところか。ここまであいつの言う通りだと怖気も走る」
あいつ、ね。ということは、なるほど、こいつは転生者ではないのか。だが、バックに転生者がいる、と。
・・・バックだと?
「あいつ、って誰だ?」
「答えるとでも?」
こいつは、王族至上主義、というか、王族を守ろうと必死になっていたはず。つまり、答えが無いのが答え・・・?・・・だが、こいつのバックにいる王族は誰だ・・・?第二・・・は、さんざんカマをかけたが引っかからなかった・・・というか、あの人ならこんな、革命のようなことをせずとも次期王の座は確立されているはずだ。
次点で第三王子、俺も一回しか会ったことないな。強欲で傲慢な好色デブ、って印象だ。・・・転生者である可能性はあるかもしれない。俺はしようとは思えないが、ハーレムなんて男の夢であるし・・・実際やろうにも権力か金とかがないとできないのだろうが。
そして、第四王子、生まれた時期とかは俺と同じくらい・・・だっけか。だが、実際、転生者ってのはそんなにいるもんなのか?この前会ったフクショクテン・・・服飾店のやつもなんか、シフトって言葉への慌てようから転生者と余り会ったことのなさそうな反応だったみたいだし、俺もこの五年、全然会ったこともない。
最後に第三者。他にいる可能性か。・・・いや、奴は王族を守ることに固執している。・・・それはないか。
「沈黙は是なり・・・お前の言う通りか」
その俺の言葉にザーギスは目を細める。そして、魔力を放出しだす。
「まあ、この期に及んで「あいつ」など関係ない。お前たちはここで死ぬのだからな」
つまり、あの魔力は決意なのだろう。自らの部下でもあった師匠と俺を消すという・・・
「・・・まあ、俺としてはお前とは敵対したくなかった」
「・・・そうだな。魔法使いにとって俺と敵対するのは得策とは言えないな」
「ただ、勝てる策がないとは言ってないが」
「・・・なに・・・?」
一瞬、ザーギスの魔力の放出量が揺らいだ瞬間、俺の右の中指にはめた指輪を左の人差し指で触る。
「第三魔力炉、起動」
「魔力炉・・・だと!?」
魔力炉。それは、迷宮と呼ばれる場所で発掘される魔法道具の一つだ。一般に迷宮で落ちる魔法道具は性能がいいものとして知られている。・・・というのも、魔法道具は遥か古代の文明による遺産とでもいうべきものだから、らしい。・・・つまり、人間の手で作れる。
魔力炉というのは、魔力を注げば、魔力を増幅してくれるという道具だ。つまり、この魔法道具を使うには魔力を直接扱える技術と、場合によっては自分の内臓魔力をはるかに超える魔力を扱う技術を持つ必要がある。
だが、この魔法道具はレア度がかなり高く、手に入りづらい。だからこそ、ザーギスは驚いたのだろう。・・・だが、この程度、王宮魔法使い筆頭ともなれば持ってるだろう。・・・使わせる前に倒す。
「サウザンド・フレア!」
背後に魔法陣を多数展開する。・・・展開された魔法陣は全て『炎球』の魔法陣だが、この数は、たとえ、ザーギスでも脅威のはずだ。
「・・・!炎神よ、わが身を・・・」
「遅い、サウザンド・アイスランス!!」
対炎魔法の防御魔法を展開しようとするザーギスに、続けて氷でできた槍を大量に放出する。特定の魔法に特化した防御魔法は、その特定のもの以外の魔法にはとても弱い。なので、対魔法使い戦では複数の属性で攻めるのがセオリーだ。・・・当然、それは集団の話で、単体で複数の属性を扱えという意味ではない。だが、ケインは呼吸するかのように複数の属性で、複数の魔法を扱う。だが、その相対する男も只者ではない。
「・・・ただ魔力を以て我を守れ、『硬盾』」
魔力の使用量を無視した防壁が二属性の魔法から、ザーギスを守る。
「・・・ほう、確かに属性を特定してない防御壁なら魔力が続く限り防ぎきるだろうな。・・・魔力が続く限り、だ。使ったらどうだ、魔力炉を」
前言撤回だ。魔力炉の魔力が尽きるまで攻撃すればつぶれるだろう。あとは、苛烈な攻撃により攻撃の暇さえ与えなければいい。
「俺に魔力炉を使われて困るのはそちらだろう。先ほどの大量の魔力、魔力炉が魔力を失うほど膨大なものだと思うが?」
「・・・いいや、心配には及ばない。・・・第二魔力炉起動」
「・・・なに?」
「ではな、死ね。『サウザンド・ダークランス』」
黒色の何かが槍の形を取り目標・・・ザーギスの方へ矛先を向ける。
「魔力炉、起動!ただ魔力を以て我を守れ『硬盾』!」
「まあ、それだけで終わるわけでもない。『サウザンド・サンダーランス』、そして『サウザンド・フレアランス』」
黄色い稲妻と赤い炎がそれぞれまた槍を形作り、ザーギスへと射出される。無数とも呼べる槍がザーギスの作る『硬盾』を削りゆく。どう見ても劣勢は明らかだった。・・・一対一ならば。
「止めだ・・・・ッ!」
「危ないッ!!」
ドッと背を押される感覚。俺はつんのめる・・・というよりは突き飛ばされるように壁際へと追いやられる。
「ぐっ・・・!」
肺の中にあった空気が絞り出されるような感覚に俺はせき込む。・・・だからこそ、反応が遅れていた。
「・・・ちっ、目標がずれたか。まあ、いい。どちらも殺すところだったからな」
「え・・・?あ・・・?」
目の前に、腕が落ちていた。それは、師匠のような小さい手で。
あと、おそらく一話で次の章へ




