Side4 修行中の王女
前回のサイドのあらすじ:村を焼かれた少年は、人間への復讐を決意する
今回は少なめな感じです(大体いつもの四分の一)
午前五時。
朝日が昇る前に彼女は目を覚ます。寝床から抜け出して修行着を身にまとう。修行着は簡素なもので、数年前まで着慣れてたドレスなどとは違いささっと着れてしまう。そのせいか、冬は寒く感じるが結局動いた後は暖かくなるので着こむよりは温度の調節がやりやすく、いいものだ。
そんなことを考えながら部屋から出ると、日も出てないのもあって廊下は真っ暗だった。だが、日中に何度も通ってる廊下は大体の構造を把握している。それに、もう少ししたら目も慣れるだろうから何かにぶつかる心配もないだろう。
「・・・さて」
そして、裏庭に出た。手には部屋から持ってきた、木で形作られた木剣を握った。だが、この剣の中には鉄も入ってるので、鉄剣よりは軽いが普通の木剣よりは重い。それを、両手にもち、振る。
「フッ!」
もう一度持ち上げて、おろす。
「フッ!」
これは、日課の素振りだ。今は1000回を目安に行っている。とはいえ、午後にも別にあるので一日1000回ではない。・・・前は、100回もいかないうちに体力が切れていたものだったが、今はそんなことはない。
素振りをすることしばらく、朝日が昇り始めて周りが明るくなったころ、
「・・・おはようございます、お嬢様」
「ええ、おはよう」
声のした方へ体を向けるとそこには、執事然とした人物が立っていた。・・・それもそのはず、彼の職業は執事だ。私に仕えてくれている。とはいえ、この屋敷において、私は家主ではないのだから彼の仕事もそこまでない、というか全くないと言い切ってもいい。それでも、彼は何かと私を気にかけてくれていた。
「お嬢様、朝食の時間です。皆も集まっております」
「・・・分かったわ」
この屋敷にある食堂へと歩を進める。廊下には誰もいない。おそらく、食堂へ向かうのは私が最後なのだろうな、と思いながら歩き続け、やがて大きな扉の前についた。それは両開きの大きな扉だ。まあ、それはどうでもいい。その扉を押して入ると中にいた全員の顔がこちらを向いた。
「・・・遅くなって申し訳ない」
そう謝罪を口にして席に着く。それを見届けてから部屋の奥にいる男が声を上げた。
「さて、全員揃ったな。それでは朝食を取ろう。今日も一日生きたことを感謝します・・・神よ」
男が食前の祈りをささげるのを聞いて、何人かが同じように食前の祈りをささげる。それを終えてから皆は一斉に食事を開始した。
今日も今日とて食事の量が多いが、もはや慣れている私はすぐに食べ終わった。周りを見ると、最近入ったと思しき、幼い少年たちが懸命に食事を口に運んでいた。
「お嬢様、これからどうされますか?」
「・・・ん?なにかあったかしら?」
「いえ、今日も何もない日ですが」
「そう・・・。なら、今日も鍛錬するわ」
執事の言葉にそう返しながら私は食器をそのままに部屋を出る。この部屋で食事をする人数はとても多いので返却台とか作るとかなり混雑したりするため、全員食べ終わった後に召使いたちが片づけを始めるのだ。この家はとても大きいし、使用人も多くそのようなことも可能なのだとか。
まあ、それは修業が目的の私達には関係ないのだけれど。
「・・・ああ、そういうことね」
「は・・・?何がでしょうか?」
「いえ、貴方が普段はしない質問をしたから何かあったかと思ったけれど、そう。そろそろ五年が経つのね」
私がこの貴族家に頼み込んで修行を始めたのは五年前にあったある事件が原因だ。その事件によって私はある決心をしたのだ。とある、重大な決心を。
「・・・覚えてらっしゃいましたか」
「ええ。忘れるはずもないわ。あの事件がきっかけで私はここに来たのだから」
「・・・後悔されていらっしゃいますか?」
「後悔・・・ね。しているとするなら、それはあの日の未熟な私に対しての後悔よ。現状に対して何らかの不満があるわけじゃないわ」
「そうですか・・・」
そう言ったっきり何も返さない彼を背にし、私は空を見上げる。今日は雲一つない晴天だ。さぞかし、修行にも熱が入るだろう。ふと、五年前に分かれた彼もこの空を見ているのだろうかと考えた。
「・・・なあ爺や」
「何でしょうお嬢様」
「・・・この空、彼も見てるのかなあ」
「・・・きっと見ていますとも」
「そうか・・・」
爺やの言葉を受けて、涙があふれてきた。だが、私はその涙を袖で拭い視線を前に戻す。
「彼だって頑張っているのだ。私もまだまだ頑張らなければな」
「・・・はい」
そう言って私は今度は訓練場に足を向けたのであった。
「・・・頑張ってください、ローズ様」




