第三十話 王宮魔法使いと悪魔
前回のあらすじ:ケインのストレスマッハのため現れた謎の人格VS悪魔・・・など。
今回も短めです・・・すみません・・・・
「あぁ・・・くそ。やっとか」
ケインの足元に魔法陣が光っていた。それを悪魔――レアニスは、首だけの状態で見届ける。
「なんだこれはぁ・・・?」
「・・・は。見ればわかんだろ、そんなこと」
不思議そうに呟くケインにレアニスは馬鹿にしたように返した。それを受けたケインは足元に広がる魔方陣を読み解く。ケインの知識を使って。
「・・・《魔力封じ》」
「・・・あぁ。そいつは本当に多食らいの魔法陣でなぁ。そいつの近くでバカスカ魔法を撃ってると・・・魔力を吸われる。そして、魔力が必要値になったときに至ったときに魔法陣内の者が封印されるってことだ」
「・・・!!お前ぇ、マスターをぉ・・・」
「勘違いするなよ。封印するのはお前だけだ」
「なんだとぉ・・・」
「伊達に長生きしてると思うな。お前のような輩から一つの人格を封印するなんてこと、何度も行って、何度か成功してる」
「・・・レアニ――」
「・・・『魔力封じ』あらため、『人格封じ』、起動」
レアニスが起動の言葉を口にした瞬間、まるで糸の切れた人形のようにケインは倒れこんだ。それを、レアニスは一瞬で近寄り受ける。
「地神よ、我が意に形をもたらせ・・・『土物作成』」
そして、レアニスが瞬時に台を作り、無属性の魔法『物動』で、ケインを台の上に載せる。
「――っか!ったく、世話のかかるマスターだぜ」
そう言ってから、ケインから目を離したレアニスは壁に描かれた赤い魔法陣――足元でこと切れている人々の血で描かれた魔法陣を眺める。
「人の血で描いた魔法陣にしか反応しない悪魔は数あれど・・・その魔方陣の内側に心臓を配置までさせないと呼び出されない悪魔は、一人しか心当たりがねえ。やっぱり・・・あいつか」
魔法陣を見たレアニスは渋い顔をして目を逸らした。
「・・・さて、それじゃマスター連れて、マスターの師匠でも探しに行くか」
そう言って、レアニスはケインに治癒魔法を浴びせてから肩に担いで歩いて行った。
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「・・・なんて奴だよ。まさか本当に爆破するなんて」
爆炎の中、ただ一つしか張られなかった結界のおかげで無事だった三人(一人は気絶していた)は、周りを見渡し、その二人の中の一人――レイ・スーランは、そうつぶやいた。
周りは死屍累々といった有様だった。いくら常人よりは魔法耐性が高い(服の防御性能的な意味)とはいえ、全身を一気に熱風にあおられてしまっては、流石に大怪我は免れない。・・・まだ、数人はかろうじて息をしているので、急いで回復役を呼べば助かるのだろうが・・・
「お~やおやおやおや、スーラン殿は無事、ですねえ」
「・・・まだいるのかい」
この惨状を引き起こした張本人――ダーリア・ガゼンはこちらを見ながら声を上げる。それにレイは舌打ちをしそうになる。そして、その右手に赤い箱があって、その箱が爆発の原因かもとレイは推論づけた。
ダーリア・ガゼンは優れた魔導具作成者だ。その分、実戦には向かない人間でもあるのだが、何分、道具を使えば詠唱より早く行動することも可能なのだ。
――つまり、この状況では逃げることも、助けることもままならない。本当にいまいましい。
「貴様、なんのつもりで――」
「この惨状を、ですか?あらあらあらら、ギジス殿はご存じないと?」
「――何の話だ!土神よ、あの者を貫け『土槍』!!」
ガゼンの言葉に、怒りがこみ上げたギジスは上級土魔法、『土槍』を放つ。『堅牢なる槍』の異名を持つ彼の得意技であるその魔法は、見てから対抗策を打てる者など、ほとんどいない。そして、その打てる者のリストにガゼンの名前はない。ゆえに、その『土槍』はガゼンの腹を貫く。
「――、正直に言えば、命は助けてやろう。さあ、理由を吐くのだ!」
その光景を認めて、ギジスは一旦怒りを鎮める。王宮魔法使いというものは、時に冷静さがなければ務まらない。そして、その時が今だと確信していた。
対するガゼンは体をぶるぶると震わせているだけだ。その反応に、もしやショックのあまり気絶したか、とギジスが顔をしかめた時だった。
「くくく――ひひひ・・・ひゃはははは!!!ま、まるで痛くない!!あはは!!弱い弱い弱い!!」
けたたましい哄笑を上げながら、ガゼンはうつむいていた顔を上げた。その顔に彩るのは狂気、だった。
「――な」
その光景に、ギジスは目を剥いた。彼の経験上、『土槍』で貫いた相手は程度の差はあれダメージを与えていたのに、ガゼンに対しては全くの効果を及ぼしていないように思えたからだった。
否、事実全くの効果を及ぼしていない。
「よいしょよいしょと」
そういう御伽噺でもよんでいるかのような軽い口調でガゼンは腹に刺さった『土槍』を抜く。抜いた直後には血がだくだくと流れていたが、すぐに止まる。普通なら血の不足で流れるものがなくなったと考えるべきだが、その傷はふさがっていた。
「な――んだって・・・?」
その光景に呆然とするレイ。致命傷を治す魔法はあれど、致命傷を治す魔導具があるとは聞いたことがない。それをガゼンが発明したというのか、とレイは考えた。だが、その考えは次の瞬間砕けることとなる。
「でもでもでもでも、なんだか喉が渇きますね。なぜなぜなぜなぜでしょう」
そう言って、ガゼンは一つの黒焦げ死体に近づく。そして、それを片手で持ち上げて――歯を立てた。
「――ん・・・味は悪いですが、なかなかなかなか喉が潤されますね」
そういってガゼンはくい、と口元を袖でぬぐい、手に持ったものを捨てる。その口元は赤く塗れ、そして人間ではありえないほど長くなった犬歯がのぞいていた。
「――吸血鬼」
するり、と流れた言葉が自分のものだと、レイが認識したのは、じっとガゼンが自分のことを見ていたからだった。
「吸血鬼などではないわ。我々はその俗物のようなものではなくもっと高尚なモノ、そう新人類と呼ぶがいい」
そう言ってこちらに近寄るガゼンに向けて手のひらを向ける。そして、吸血鬼に対して有効な魔法を唱えた。
「炎神よ、清き炎で悪を滅せよ『聖炎』!!」
現実ではありえない白い炎が飛び出す。そして、それはガゼンに当たると瞬間勢いを増してガゼンを燃やす。
「ぐぁ・・・!あぁぁぁ!!!!」
よし、今度は効いている。レイは強張っていた表情を少し緩める。だが、ガゼンはそのまま、身を炎に焦がれさせながら近づいてきた。
「ゴロ・・・!!ごロスごろすごロス!!!」
そう言って近づこうとはするが、足はだんだん灰になり、こちらに伸ばした手も先から灰になっていく。
「あああ・・・・消える消エル消える・・・?!」
「あぁ。消えなよ・・・」
「あああ・・・あああああ・・・!!」
そして、そのまま浄化の炎はガゼンの体を燃やし尽くし、彼は消滅した。そこで、ようやくボクは安堵のため息をつく。
「ふぅ・・・。終わったか。もう大丈夫だよクー・・・ってあれ、気絶してるや」
「・・・幼子には少々厳しい光景であったからな」
「・・・まあ、そうだね。クーがトラウマを抱えなければそれでいっか」
そう言ってボクは前を向く。
ずいぶんと風通しのよくなった王城の廊下があった。
「・・・王族の方々は無事なのか?」
「どうなんだろうね。ただ、急がないとマズそうだ」
チラリとボクは廊下に転がる、陛下の首を見つめる。他の王族がああなってないという保証はないからね。急ぐほかはない。
「・・・ところでギジス、逃げる気はないの?」
「・・・あるわけなかろう。私は恩知らずではないのだから」
ボクは王族に恩がある人間だから逃げる気は一切なかったが、彼もそのたぐいのようだ。しかし、何はともあれ彼が残ってくれるのは大きい。
「・・・じゃあ、作戦を決めようか。ここで分かれるか、それとも一緒に行くか」
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「チッ・・・どうなってやがる。やたらめったら気配がねえな」
ケインを抱えたままケインの師匠――レイ・スーランを探すレアニスは、気配感知を最大限利用しているが一向に、彼女の気配をとらえることができなかった。・・・というのも
「『匂い』が濃すぎる。・・・やっぱり奴の仕業か」
どうやら、大気中の魔力の濃度が高すぎるせいで、ジャミングされているようだった。脳裏に浮かぶある知り合いの姿についつい苦虫を噛み潰したような顔をするレアニス。それを振り切るように一度立ち止まる。と、その瞬間
「・・・!」
バックステップで下がるレアニスの前に、炎でできた大きな槍が突き刺さる。
「ふぅん?あれをよけるんだ」
「誰だッ!」
ギロリと睨むレアニスに肩をすくませて、一人の少年が出てきた。年のころは十三の程の、成人前の子供だった。
「私は、王宮魔法使いの一人さ。最も、そこで寝ている君の主の師匠ほど、名の知られたものでもなくその他大勢と言ってもいいくらいの身の上だけどね」
「・・・子供か?」
その少年をみて、ポツリとレアニスが呟いた一言で少年は激高した。
「・・・おい、汚らしい悪魔め。口を慎め、私はとっくに成人している。生意気な口を、私の許可なく開いたら次は滅するぞ」
「・・・あぁ、なんだ。成人なのか。そんなナリだからてっきりまだ子供かと・・・おぉっと」
少年――いや、男の話を聞いてそう漏らしたレアニスに男は手に持ってる何かを投げた。それを、レアニスはひょいとよける。
「許可なく口を開くなと言ったはずだ!」
「おーおー、切れやすいこって。まったく、カルシウムが足んねえんじゃねえか?」
「カルシウム・・・?なんのことかわからんが汚らしい悪魔が口にするものだ、善きものではなさそうだな」
「おいおい、いくら悪魔だからってそこまで邪険にするなよ。まったく、それにカルシウムはお前らだって摂取しているだろうに」
「光神ウスキアよ、目の前の魔を滅せ、『白零線』!!」
「っと、あぶねえなお前。人に向けて魔法を撃つなんてよ」
戦闘中であるにも関わらず、軽口を叩くレアニスを男は忌々しく睨み付けた。詠唱短縮した、悪魔にとって有効な攻撃となりうる神聖魔法を撃ったが、それを目の前のレアニスが軽々とよけながら口を開くのでますますイライラが募る男にレアニスは続けた。
「で、小僧?もう終わりか?」
「私を小僧と呼ぶなぁぁぁ!!」
「冷静をついに欠いたか。終わりだ」
激昂した男に一瞬で差を詰めたレアニスは、左腕を一振りする。・・・それだけで、男は軽く爆ぜた。
「・・・。どんなものかと思ったがここまでもろいか。本当にこいつは王宮魔法使いか?まだ、マスターの方が強そうなんだが」
「まあ、そう言うてやるな。確かにそやつは未熟な奴だ・・・。いや、だったか。まあ、それでも王宮魔法使いの一人だ」
レアニスの呟きに答えるかのように柱の陰からまた男が一人現れた。それを見てレアニスは顔をしかめる。
「おいおい、目の前で仲間が一人やられるの見ただろうが、なんで逃げない?」
「貴様のような汚らしい悪魔などに巻いて見せるしっぽなどない。まあ、それ以前の問題として、貴様ごときの悪魔などすでに何体も討伐しているからな」
「俺ごとき、ねぇ・・・?」
その言葉にレアニスは首をひねる。目の前の人物は、確かに先ほどの者よりは強そうではあったが己の主や、もしくはその師匠より強そうには見えなかったからだ。
端的に言えば、負けるビジョンが浮かんでいなかった。
「・・・疑わしそうな顔をしているが、真の力を開放すればおのずとわかるか」
そう言った次の瞬間、男の気配が変わった。それは、この城に入ってから感じていたものでもあった。
「・・・なるほどな。お前、吸血鬼か」
「そうだ。真祖様に授けていただいた」
「授けた、ねぇ・・・」
レアニスは男の言葉に呆れの感情を浮かべた。
「そんな風に真祖の方は考えてねえだろうけどな」
「・・・どういう意味だ」
「しょせん、お前も駒としか見られていないってことだ」
「ほぅ・・・?」
レアニスの言葉に怒った男はぎろりと殺意のこもった目で睨み付ける。
「ほう?この私を愚弄するか?」
「愚弄も何も真実だろうが」
「ふ、侮るな悪魔ごときが。光神ウスキアよ、聖なる罰を此処へ『聖なる裁決』!!」
男が詠唱を終えると同時に白い光がレアニスを包み込む。
「ぐ・・・ぁぁぁああああ!」
「悪魔め。大きな口を叩いておきながら結局は我が前に・・・」
「・・・ってとこか。ふぅむ、今のマスターと契約して位が上がったとは思ってたが、まさか神聖魔法のダメージを少しも受けなくなるとはな」
「・・・な、に」
叫び声をあげていたはずの悪魔が思案顔で、光の中に包まれながら冷静な声で呟くのを見て男は思わず後ずさった。
「いや、契約前でもダメージは軽度だからと思って受けてみたが予想以上の強化だったな。やっぱ、このマスターは当たりだ。本当に俺は運がいいな」
「あ、悪魔が光魔法を受けて・・・効果なしだと!?」
「・・・ん?ああ、そうだぜ?まさか俺もこうなるのは予想外だったが・・・案外悪くねえ」
「き、貴様・・・化け物・・・」
「おいおい・・・化け物はねえだろ?俺はさっきてめぇが言ってた汚らしい悪魔、なんだぜ?」
腰をつき、後ろへ下がろうとする魔法使いの真後ろに、レアニスは短距離転移を行う。どす、と背中にぶつかる何かの存在に魔法使いは「ヒッ」と短い悲鳴を上げながら後ろを振り返った。
「・・・まあ、まさか今の王宮魔法使いってやつがここまで弱いとは思わなかったが。その分マスターは守りやすいし文句は言わねえな。じゃあな」
「待・・・」
「待たねぇよ」
左腕を一振り。再び、それでもう一人の魔法使いの命は消えた。
「・・・ったく。昔の奴なら俺が上位のものだと分かれば二三個ほど、切り札を切って多少なりともダメージを与えるってのに。お前らマスターの足元にも及ばねえな」
そう言ってレアニスは死体に背を向け外に向かって歩き出した。
・・・十月は一回も更新できなかったなぁ。
どうも、作者です。月に二十日バイトが入り、休み時間のほとんどは講義の課題であるグループでやらなければならない課題に追われ(しかも、必修科目から二科目分)、てんやわんやの一か月でした。・・・ほんと、小説書く休みとかほしい。
・・・という言い訳はさておき、本当に遅れて申し訳ありません。しかもボリュームもないというひどい事態には自分でも目を覆いたくなります。次回こそ、早く更新したい・・・。




