第二十七話 気絶からの復活
て、三週間の定期更新(震え声)
でなくてまた遅れました・・・。すみません。来週から夏休みなので執筆ペース上げれたらなあ・・・と思います。あと、今回はぶつ切りのような感じで終わってしますがご容赦ください。
あった~らし~い朝が・・・・。
そうか。今日も朝に起きたのか。
師匠のワンパンによって意識を沈められていた俺はベッドの上で目覚めた。・・・。正直な話、五年前からマジな感じの試合を行うたびにこうして屋敷で朝目覚める、といった事態が多くなっていた。五年もこんな感じのことがあれば、正直慣れてしまうものでなんかこうして起きるのもいつものことかーくらいで済まされるようになってきた。
「おはようございます、ケイン様」
「あ、うん。おはようリルン」
いつものように傍で控えている俺の専属メイド、リルンにそう返して、俺はよっこらしょっと体を起こす。
「いつつつ・・・」
体を起こすと体の節々が痛みを訴える。中でも一番ひどいのは腹のあたりだ。傍によって来ようとするリルンを手で止めて、治癒の魔法を使用する。すーっと体から痛みが抜けていく。・・・ふぅ。
痛みは体の危険信号だ。だからその危険を取り除いてやれば自然と痛みは引く。・・・ほとんどはそうだ。
さて、と俺が立ち上がると今度こそリルンが近づいてきて俺の服を脱がしてきた。
・・・。いや、別に今からアレなことするわけでなく単純に着替えのためだ。二年ほど前から師匠が、「そろそろ君も貴族風の暮らしになれた方がいいと思うんだ」とか言い出してこんな感じになってしまった。正直、一人で着替える方がいろいろ気軽なのだが。
「終わりました、ケイン様」
「うん、ありがと」
着替えが済んだ俺は鏡の前に立ち、今日の服を見る。・・・ふむ、なかなかいいセンスだ・・・と言っても俺はそこまで詳しくないのだが。ただ、今日の服はいつも通り動きやすそうな半そで半ズボンとかでなく、・・・ジャージ?
「今日もトレーニングなのですよね?ですのでこのような服にしてみました」
淡々とそう語るリルンに俺は尋ねた。
「・・・これ、どこで買ったの?」
「こちらは、最近できた『フクショクテン』とやらで購入しましたが・・・お気に召しませんでしたか?」
「・・・いや。聞いただけだよ。これはどっちかと言えば気に入った」
改めて見下ろす。水色が基調となって、白のラインが入っているいかにも普通のジャージ。だが、こんなもの、この世界では俺は見たことがなかった。
「リルン、今日の訓練は中止。この服を買った店に連れて行ってくれ」
ちらりとリルンの方を見ると、リルンはこちらに頭を下げていた。
「かしこまりました」
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着替えを終えて顔も洗った俺は木刀を持って素振りをしていた。え?何?これも訓練じゃんって?基礎を固めてるだけだから訓練じゃないな。こう、訓練ってのは手合わせをして自分を高めていく感じじゃない?・・・ん?なんだろうか、今自分で変なことを言った気がしてきたが・・・。特に変ではなさそうだな・・・?っと、こんなことを考えてはいけない。
無心になって素振りをしていると、街の方の教会の鐘がなった。・・・時刻換算で六時の鐘だろう。
その鐘の音を聞いて俺は素振りをやめる。・・・するとだらだらと体中に汗が滴っているのが分かった。まあ、気持ち悪い。が、魔法があればすぐに解消する。
「ウォッシュ」
そう唱えるだけで(実際は唱える必要もないが)、俺のオリジナル魔法のウォッシュが発動する。効果は単純。使うとシャワーを浴びたようにすっきりする。消費魔力も少なく済んだ俺もお気に入りの魔法だ。キャンプとかに行って風呂に入ったり水浴びできない状況下ではかなり重宝する。
とはいえ、俺は風呂に入るのが嫌いってわけではないので、普段は専ら汗をかいたときやほこりっぽくなったときなどに使う。まあ、便利である。
そんな風に汗を洗い流しスッキリしたところで俺は屋敷に戻る。屋敷に入るとき、入口のところで待機していたリルンが俺の後に追従するが、俺は気にしない。・・・これも師匠による貴族特訓によるもので慣れてしまった。
「リルン、汗のにおいとかは特にしないかな?」
「はい、ケイン様からはいつもどおりいい匂いがします」
「そ、そう・・・」
リルンに汗のにおいについて尋ねるが全く当てにならない。・・・まあ、あまりにひどければ流石に止めるだろうからいいか。
そんなことを考えながら俺が向かったのは師匠の寝室だった。
「さて、と」
師匠の寝室のドアの両方には明かりのつけれるような燭台がおいてある。・・・とはいえ、これはただの燭台ではないのだ。
「赤き炎は闇を照らす。青き炎はより熱く燃える」
そう俺がドアの前で言うと、燭台の上のろうそくが急にボボッと火を灯した。それを確認して、俺は部屋のドアのカギをポケットから取り出し、鍵穴に入れる。鍵を回すとカチャリ、という音がした。
ドアを開けるとそこは・・・書斎だった。壁にずらっと並んだ本、その近くにある大きな机と座り心地がよさそうな椅子。そして、机の上には山と積まれた書類の山。さらにその奥の方にもう一つドアがある。
つかつか、と部屋の中に歩み入りドアへと近づき、もう一つのカギを取り出す。そして、ドアを開錠して再びドアを開けると、今度こそベッドルームが見えた。赤い枕に赤いベッドというすごく赤い部屋だ。・・・どれだけ赤が好きなんだろうか。
そして、つかつかとベッドに歩み寄り、俺はあらかじめリルンに持ってきていてもらっていたものを、リルンから受け取った。それは・・・お玉とフライパンだ。
「リルン、耳を塞いでおいて」
そうリルンに言うと、リルンは俺の耳を塞いできた。・・・いやいや。
「そうじゃなく、自分の耳。俺は魔法でなんとかするから」
そう言うと、リルンは渋々と言った体で自分の耳を塞いだ。それをわき目で見届けて俺はオリジナル魔法『耳栓』を使う。まあ、空気を固定し、音が鼓膜に届かないようにするって感じの魔法だ。
そして、俺は、左手に持ったフライパンと右手に持ったお玉を頭上に掲げ、そして。勢いよく打ち付ける。
カーンカーンカーン!!!
「どぅわっ!?なになに?!火事火事?!!?!?」
すると、ベッドの中の人物が勢いよく起き上がった。びょんびょんと四方にはねた髪、寝起きだからぼーっとし感じの目、そして火事かと叫び出す大声。どれもが見慣れた(聞きなれた)ものだ。・・・まあ、それも当然だろう。だって師匠だし。
「おはようございます、師匠。朝ですよ?」
「ふえ!?朝!?!?」
師匠は普通にあいさつした俺の方を見てフリーズする。そのまま視線がまず、左手のフライパンへと動いて、続いて右手のお玉へと向く。最後に俺の顔に視線を戻してようやく事態を把握したようだった。
「また君の仕業かーー!!!!」
師匠の怒鳴り声を聞きながら俺の一日は今日もスタートした。
####
「全く、今回ばかりは心臓に悪いよ」
「すみませんって、師匠・・・。ほんの出来心だったんです」
食卓でも師匠の機嫌は悪くぷりぷりと怒っている。・・・最近あんまり聞かねえなぷりぷり。
「だいたい、あんな非常識な起こし方しないくてもいいじゃないか」
「まあ、でも結果的に師匠も起きたんですし、結果オーライ・・・」
「なわけないじゃないか!ほかにも起こし方あるだろう!?」
おっと、師匠の不機嫌メーターがまた下がった気がする。大丈夫かな、師匠。
「まあま、クールダウン。クールダウン」
「いや、君がここまで熱くしたよね!?」
「え・・・?師匠・・・朝っぱらですよ・・・?そんなこと・・・」
「この子本当に八歳児なの!?」
絶叫する師匠を弄るのは日課だ。こうすることで毎日のストレスが消費されるのである。・・・最も、これで師匠のストレスがたまり、講義においての俺のストレスも溜まってしまうもんだし、う~ん・・・。
たぶん、ここから先は考えてはいけないのだろう。
うん、おいておこう。
「さて、では師匠・・・行きましょうか」
「ぐ・・・ぬ・・・ぅ。こ、この恨みはいつかの試合で・・・」
なんか不穏なことが聞こえるけれど無視無視。俺の平穏な日常に要らない要素は排除すべきだ。そう、耳からは排除排除。
「ところで、師匠・・・。今日の恰好は・・・なんてーか、新しいですね」
「ん?ああ、リルン君が買ってくれたって言ってね。ありがたく使わせてもらってるのさ。使い心地もいいし」
そう言って伸びをする師匠の着ているもの、それはジャージだった。しかも、普通のジャージではなくて、俗に芋ジャージと呼ばれるやつだ。師匠の年も相まって、もう家くらいおしゃれしなくてもいいよね的な女子高生的雰囲気を感じる。
「・・・ん?なんか今、余計な事考えなかったかい?」
「き、気のせいですよ」
「そうかい?・・・ならいいかな?」
ほっ、なんとかごまかされてくれたようだ。
そんな感じでいつもの朝の一幕を演じて、俺と師匠は食堂に向かう。閉じられている扉を開くのは、師匠の仕事だ。・・・普通はこういうのは従者とか弟子がやるべきだって?まあ、これには理由があるのだ。・・・それは・・・
「待たせたね!おはよう!!」
バーンと勢いよくドアを開ける師匠。それに反応する人物が食堂内にいた。
「・・・おはよう、お姉ちゃん」
彼女の妹のクーだ。相変わらずかわいく育っている。そんな彼女がちょこんとお辞儀するのは身内贔屓かもしれないがかなり可愛い。
「おっはよう!クー!!」
そして、師匠は妹に対し勢いよく抱き着こうとする・・・が、ひょいとクーは躱す。そして師匠は顔から壁にぶつかり女生とは思えない声を出した。
「ぎゃぶ!」
「・・・おはよう、ケイン」
「うん、おはよう」
師匠をあっさりと躱したクーはちょこんとお辞儀をして俺にあいさつする。俺は普通に返したが、すごく心臓がバクバクしている。・・・いや、かわいい。
「ちょ、ちょっとクー!ケインとなんか話してないでお姉ちゃんともっと話をしようよ!!」
「・・・」
「無言は辛いってクー!!・・・でも堪らない」
若干危ない面が入ってきた師匠を留めていると、メイドたちが朝ごはんを運んでくる。そして、騒がしい朝の一幕はとりあえず閉じるのであった。
####
「さ、行こうかリルン」
「はい、ケイン様」
朝ごはんを食べ終わって俺は街へと繰り出すことにした。とはいえ、一目で金持ち!とわかるような恰好では変な連中に狙われる(対処は簡単だが、面倒くさい)ので街に繰り出す用の恰好をした。こういう時のための服は用意してあった。あんまり目立たない格好だ。
「・・・で、リルン、その恰好で行くの?」
チラリと振り向くと、リルンは・・・メイド服を着ていた。・・・いやいや、いくら俺がこんな格好でもそれじゃ気付かれるでしょうっての。
「ええ、この服は私の正装ですので」
「いや、正装で行くような場所じゃないでしょ」
真顔で告げるリルンに対して俺も真顔でツッコミを入れる。リルンはやはりずれているな。
「・・・着替える気は?」
「ないですね」
「・・・。」
俺の問いを一蹴するメイドに俺はため息をついて、一つの魔法をかけることとした。『変装』というこれまたオリジナルの魔法だ。これは、『光学迷彩』とにたような感じで、光の加減に細工するもので、・・・端的に言えば見た目を変えるものだ。もっとも、見た目は変われど体積とかそういうのは変わらないので触られたら違和感がありそうだが、それは大丈夫だろ。・・・その魔法をかけた結果、リルンはそこらにいそうな町娘って感じに見えるだろう(俺の想像的)。まあ、目立ちまくるほどではないはずだ。
「・・・?なにかされました?」
勘が鋭い・・・と思ったが俺はごまかして外に出るのを促した。リルンはうまくごまかされたのか俺についてきた。そして、俺たちは屋敷から出た。
屋敷から出てもここは街ではない。・・・当然だ。師匠は下手な貴族家より金を持つ王宮魔法使いの一人。であるので、当然本邸があるのは貴族の家ばかりがある貴族区とよばれる区画である。
実は、王都は上から見て四つの区画に分かれている(ように見える)構造となっている。ちょうどいいくらいに東西南北に分かれているのだ。ちなみに真ん中は王城である。つまり、王都は城下町ということだ(当たり前だな)。
さて、それで分かれてる方向だが、まず西が貴族区。ほかの区画とは違うのだと主張するかのように壁が築きあげられており、中に入るには数十メートルの壁を超えるか門番が見張っている門から入るしかない。もちろん、貴族区に住んでいる貴族はもちろん顔パスで通り抜けれるし、壁も兵士によって見張られているために上っていても普通に見つかる。なので、忍び込める者はほぼいないだろう。
そして、北区。北区は冒険者たちが集う冒険者区と便宜上呼ばれる区画となる。実際は冒険者ギルドがあって宿屋が多い区画なので、冒険者以外にも旅の者とかが訪れる区画だ。やはり宿屋がこぞって集まってるだけあり、どの宿屋もレベルが高い(低いところはその分宿泊費が安かったりする)。尚、貴族区には入れなかった貴族や普通の平民はだいたいここで生活を築いている。
次が南区。ここは商業区と呼ばれ商人や店が集まる区画となる。四つの区の中で一番活気づいてるところだ。様々なものが買えるため、この商業区が目的で王都を訪れるものが多いとか。
最後に東区。ここは対外的には平民区・・・と呼ばれるが実態はスラムである。非合法な組織がうごめいているらしいが、騎士たちもそれをとらえることができずあくまで噂だけとなっている。とはいえ、王都で一番治安が悪いのだけは確かだろう・・・騎士団が定期的に見回りしているのにも関わらずね・・・。
そして、今回俺が向かうのは南区。つまり商業区だ。そう、今朝のジャージというやつを売った人間を問い詰めに行くのだ。




