第二十四話 王都の本邸
更新遅れ申し訳ございません・・・。本当は二週間で更新する予定でした(過去形)
震災でPCぶっ壊れ(現行はクラウド上でしたが)や避難がなければなあ・・・。実は執筆中にもゆれました。まあ、それはさておき、大学もゴールデンウィークまで休みですし、次話は早めに出せるよう努力します!・・・バイト先も忙しいけどネ!
前話のあらすじ:師匠との会談。師匠の王族を守るための覚悟。
「うわぁ・・・人、多いな」
城の正門から出て、街の風景を初めて見た俺はそう漏らした。
・・・え?前に軍部に出かけたときあったじゃんって?あの時は正門からではなく別のところから行ったから見れてないから実質今回が初めての街訪問となる。
「ええ、王都ですから」
「へぇ・・・って、ええ!?」
いきなり後ろから声が聞こえて振り返るとそこには王城の俺付きのメイドのミリア・・・ではなく、スーラン家の俺付きのメイド、リルンがいた。先ほどまでいなかったのだが・・・。
「私はメイドですので」
「いや待て、俺何も言ってない」
心に浮かんだ疑問を、まるで読み取ったかのように答えてくる彼女に恐怖した。いや、ほんと怖いってこれ。以前よりなんか怖い・・・。
「ふふふ、いえ、以前より腕を磨きましたから、ふふふ・・・」
なんだ、威圧感というか、何かが増しているような気がする。
「お?リルンじゃないかい。どうしたんだい、こんなところで」
俺より少し遅れて城から出てきた師匠がリルンに対してそう話しかけた。
「はい、そろそろレイ様たちが帰って来られる頃かと思いまして、迎えに上がりました」
「そうかい?でも、すぐ帰るわけじゃないんだ。ケイン君が観光をしてみたいようだからね」
「観光・・・ですか?」
「ええ、王都には初めて来たわけですから見回りたいと思って」
こてん、と首を傾げて疑問の声を上げるリルンに俺は答える。それに、納得したのかリルンは「ああ」といった。
「では、私もご一緒いたしましょう」
「・・・いや、来なくていいよ?」
おっと、また素が出てしまった。
「いえ、主人のお買い物に付き合いますはメイドの義務ですので」
「え・・・?そうだっけ・・・?」
「ま、いつもはジールについてきてもらってるからね」
リルンの言葉を師匠が肯定した。リルンがついてくるのは決定事項となったようだ。
「まぁ、いいか」
人数が多いのはいいことか。賑やかだし。うむうむ、と頷いていると俺たちの前に三人の男が立ちはだかった。
「おうおう、こりゃあ別嬪さんじゃあねえかよ?」
「ぎゃはは!どうよ、おれらとちょっと遊ばねえ??」
「おーぅ、楽しい思いができるぜぇ」
目の前にいる三人の男は全て、いかつい顔をして、そこそこ鍛えられた体を持つ男たちだった。その目は、師匠やリルンをいやらしい目で見ているのが分かった。
・・・つまり、そういうことか。これは。
はた目から状況を整理すると、大柄な男三人が小柄な女性に迫ってる状況だな。普通なら、男三人のほうが優勢なはずだが・・・。
ちらりと師匠を見る。師匠は口をとがらせている。見た目はむっとした顔をした少女にしか見えないがこれでも王宮魔法使い。この程度のチンピラなら一瞬で制圧できるだろう。
「・・・でもガキはいらねえな」
と、そのとき、チンピラの一人が俺とクーを見ながら言った。
おっと、それはまずいと思うんだ。
俺がそう思った瞬間、ドォンという爆発音とともに、男たちは地面に這いつくばった。俺の顔にも軽く爆風が飛んでくるが、反射的に使用した水魔法で自分の顔の周りの温度を下げて置き相殺することができた。もっとも、手加減されていたようなのでそのまま浴びても火傷などは追わなかっただろうが。
チラリと師匠を見ると、師匠は目じりを釣り上げていた。クーを要らない扱いしたからキレてるのだろう。もっとも、チンピラの頭上に一発軽い爆発を起こしただけで、チンピラはショックで倒れたのでもうどうしようもないが。
数秒待つがチンピラたちが全然動かないので俺はさっと近づく。・・・気絶してるな。
土魔法によってチンピラの手と足を拘束していると兵士が二人こちらへとやってきた。・・・王城に近いからな。当たり前だな。
「一体、なんのさわ・・・げっ、スーラン様!」
「待て、『げっ』てなんだい『げっ』て」
兵士の一人は出会い頭にげっと言って師匠に怒られていた。・・・クーのことで怒ってたし、運が悪い。口は災いの門ということだろう。
「えっと、それでなにかあったか知ってるかい、ケイン君」
そんな同僚を見て、師匠に話しかけるのは悪手だと思ったのだろう。その兵士は俺に話しかけてきた。彼は、俺の数少ない知り合いとなった、門番のエモンドだ。
「え?ああ、この三人が師匠たちに襲い掛かったんですよ」
エモンドにそんな言葉を返しながら倒れた三人を見ると、エモンドさんは「ああ」とつぶやいて
「それは、なんというか・・・災難だったみたいだね?」
と言う。今も怒られている同僚の方を見ながら。
確かに彼のことはかわいそうに思えるけど、一応女性の方を気遣うべきなんじゃないかと思うが・・・まあ、相手が|相手≪師匠≫だしなあ・・・。
そのまま雑談すること数分、師匠の怒りもある程度発散されたのか、エモンドの同僚は解放された。その同僚にエモンドは肩を貸してから俺に向かって言う。
「じゃあねケイン君。手間をかけさせてごめんね」
「いえ。これも王宮魔法使いとしての役目ですから」
エモンドにそう返して彼に、縄を持たせる。その縄の続く先には先ほどの三人の男がつながれていた。この縄は、魔導具の一つ『束縛の縄』だ。この縄で束縛したものはこの縄から脱出ができなくなるというもので、こんなチンピラを捕まえるときには役に立つ。そのため、サイトニス王国ではこの縄を警護の任などについている兵士に貸し与えていた。
とはいえ、一定以上の魔力があれば、レジストが可能で束縛から抜け出せる。・・・もっとも、抜け出すためには普通の縄から脱出する腕がなければ無理だが。俺なら、一か所に炎魔法を発動して少し焼き切ってから脱出するね。
「あの、エモンドさん。その縄だけで大丈夫なんですか?」
一応、俺はエモンドにそう尋ねた。レイ・スーランという名の女魔法使いは実はこの国では有名で、知らないものはあまりいないのだが。そんな彼女に襲い掛かるこの男たちの知能はおそらく低いと思うのだが、一定以上の魔力があれば抜け出すことも一応可能だからだ。
そんな俺の問いに対してエモンドは首を縦に振った。
「ああ、大丈夫だよ。魔力量なら、さっき確かめたしね」
そう言って、エモンドは自分の左目のあたりをトントンとたたいた。その目は眼帯に覆われて見えなかったが、その眼帯の先に何があるのかを俺は知っていた。
魔力視の魔眼。人が体内に保つ魔力量を目で識別できる魔眼だ。実はエモンドは平民の出身である。平民出身の者が王城の、しかも門番という仕事を任せられることはあまりない。というのも、平民ごときにこの国の象徴とも言える王城の、門の守護など任せられるかという意見がクソ貴族の中にあったりするからだが、彼は特別だ。彼の魔眼により、魔力量が多い怪しい人物はすぐに分かるからだ。
最も、その魔力量を見せかけだけでだますこともできるのではないかと俺は考えている(何らかの魔法を使って)のだが、まあ、それを疑いだせば切りがない。そう言ったのは門番ではなく近衛が気にすることだろう。
「それじゃ、観光いってらっしゃい」
同僚に肩を貸しながら開いた手で盗賊につながる縄を引きずりつつエモンドは城の方へ戻っていった。
俺はそれに手を振りつつ、後ろに振り替える。
「・・・そろそろ行きましょうか」
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「ケイン君、こっちの服とこっちの服、どっちがいいと思う?」
「・・・どっち・・・?」
師匠とクーは俺に二着の服を見せていた。どちらも同じものでただ、単純に色が違うってことだったがしかし、色というのは重要である。・・・だって、全体的に黒い服だったら✝漆黒の堕天使✝みたいな感じを受けることもあるし、赤ばっかりだったら目立ちたがりに見えるだろう。服の色というのは第一印象に訴えかける力があるのだ。
「・・・えっと」
しかし、しかししかし。俺は生前そこまでファッションというものに力を注いだことがない人間である。正直、仕事や学校などがない日などはほとんどジャージで過ごしていたような人間でもあるのでファッションに強いといえる人間ではない。
「・・・」
そんな俺の目の前には二着の服。方や赤で、方や青を基調とした服だった。個人的には青が好きだったりするので青い服を進めたいと思ったとき、俺の思考回路にストップがかかった。
待て・・・待つんだ、俺・・・。
静止をかけたのは言わずもがな俺である。こういった時の適切な答えをどっかで読んだことがある、ということを思い出した。
たしか、女性がこういう風に聞いてくるときは、たいてい自分の中では答えが決まっているもの、だった気がする。・・・女性経験豊富とは言えない俺にとっては実感があんまりないが、ここは正直に従っておくのがいいというものだろう。
そこまで考え至ったときに気付いた。・・・はたして師匠がどっちを気に入っているんだ、と。
たらたらと背中が汗で濡れる。じっと師匠を見る。こちらを見つめていた。この様子だと分からないじゃないか。
すっと青い服に近づきながら師匠を盗み見る。俺をガン見していた。
すっと赤い服に近づきながら師匠を盗み見る。俺をガン見していた。
・・・。同じ反応じゃないか。クーの反応で見てみよう。
すっと青い服に近づきながらクーを盗み見る。俺をガン見していた。
すっと赤い服に近づきながらクーを盗み見る。俺をガン見していた。
・・・。積んだ。仕方あるまい。こうなっては最後の手段にかかるしかない。名付けて、「こっちがいいと俺が思ったものを選ぶ作戦」。ネーミングセンス?そんなものより今は目の前の状況の打破が最優先事項だろう。
と、いうわけで。せっかくだから俺はこの赤い服を選ぶぜぇっ!
「師匠、赤い服の方が似合うかと思います」
・・・あ。しまった。青い服を選ぶ予定だったのに。
「む?赤い服の方か・・・。そうかい」
俺の答えを聞いた師匠とクーは顔を見合わせてから、静かに両方の服を戻した。
・・・。ミッション、失敗。
そんな風に失敗を重ねつつ、以後十数回にもわたって師匠とクーから二つの服を選ばせられる任務を遂行していった結果、どうにか最後の方には成功率を9割にすることができた。そのために神経を研ぎ澄ましてどちらが気に入ってるかを確認することができてよかったよかった。
ようやく服屋から出た俺は安堵の吐息を漏らした。ちなみに女子の買い物に付き合った男子の宿命である荷物持ちは、魔法の力を借りて宙に浮かせてある。『飛行』の魔法をちょいと改造した運搬用の魔法、その名も『運搬』だ。これを見た師匠は、ちょっと驚いていた。ふふん、どや。
ただ、この魔法、普通に時間ごとに魔力を消耗していくからあんまり長時間使えないのだけれども。だったら『狭間倉庫』を使えという話なのだが、まあ、これも訓練だと思ってやっている。限界が来る前に『狭間倉庫』にしまう予定だ。まあ、最も。この程度なら十時間程度なら余裕で維持できるので大丈夫なのだが。
さて、買い物も終わったし、師匠の家に行くか。と思って伸びをした俺に師匠から声がかかった。
「さて、次はアクセサリーでも見に行こうか」
俺の笑顔は固まった。
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数時間後、雑貨やらなんやらをいろいろ買った師匠はようやく満足したのか家路についた。俺は・・・もう、疲労困憊だ。二択が多すぎた・・・。今はエロゲの選択肢だって見たくないレベルだ。
「うんうん、いやぁ~男手があると買い物が捗るねぇ」
「・・・ぜえ・・・はぁ・・・・」
「本当にありがとうね、ケイン君」
お礼を言う師匠。だが、俺には答えるほどの余力などなかった。俺の身の丈以上の荷物を抱えているからだ。え、魔法で持てばいい?・・・訓練にならんだろう?・・・とか強がってる場合でもないが限界ギリギリまで頑張るとするか。
「なんか覚悟決めてるところ悪いけどもう着いたよ?」
「はぁ・・・はぁ・・・ついた・・・?」
着いたってどこだよ。と思って俺が前を見ると、そこにはいつの間にか大きい屋敷があった。
「へぇ・・・はぁ・・・なに・・・こ・・・」
「こちらはご主人様の邸宅となります。王都の本邸ということですね」
「ほん・・・てい・・・?」
リルンがそう言っているのを聞きながら俺は考えていた。
そういえば、お金持ちとかって家が何個もあるしな。そうなれば本来住む、別邸別荘とは違う、本邸がある。そして、師匠は準貴族といった扱いにもなる王宮魔法使いだ。なら、邸宅は複数あっても不思議ではない。
そういえば、王都に家があるとか言っていたが、こっちが本邸だったか・・・。そこまで思考が至ったとき、俺の意識は遠のいた。
――なんか、王都に来てからこのパターン多くない・・・?――




