第二十三話 師匠の覚悟
もうしわけありません!PCの調子がおかしく文字を打てませんでした。え?バックアップ・・・?クラウドに保存してなかったんで続きを書けませんでした。・・・おかげでかなり遅れてしまい申し訳ありませんでした。重ねてお詫び申し上げます。今後もこの作品を閲覧いただければありがたいです。
前回のあらすじ:同年代(四歳)の少女、クーと同じベッドの上で目覚め、メイドのミリアの誤解は解けたけれど、その事実を隠ぺいする前に師匠に見つかりました。
「あぅーーー。うぁーーー」
男女添い寝事件と後に呼ばれることになる(かもしれない)俺とクーが一緒に寝ていた問題の追及も完了したころ。俺は、赤ん坊のようにしか話せなかった。
「え、えっと・・・」
「あぅあ?」
ボーっと地べたに座り込む俺の前には師匠がいる。顔から汗がしたたり落ちていた。
「な、なんかやりすぎたかな・・・?」
「あぅ?」
やりすぎた?そうかな?地上に舞い降りた天使と一緒に裸で同じベッドに寝たんだ。ならばこのくらいの罰位当然なのではないだろうか?
「と、とりあえず・・・ごめんね?」
「あぅあぅ」
師匠は謝ることないという感じで言葉を返そうと思ったのだが、言葉が上手く出ない。うぅむ、どうしたことか。ああ、治癒魔法を使えばいいのかな。
「・・・んん。あーあーあー」
お、声が出た。
「あ、治った・・・。よかったよ・・・」
発声練習をしていると師匠はなぜか、先ほどまでの俺のようにへたり込んでいた。?一体どうしたのだろうか?
「さて、今って何時だっけ?」
「先ほど正午になったばかりでございます」
俺の問いに、近くにいたミリアが簡潔に答えた。この世界では、主に六時、十二時、十八時くらいの時間に教会の鐘それぞれ、三回、六回、九回鳴ることによって時間が分かる。もちろん、砂時計といった簡単に時間を量る道具はあるが、腕時計とか、柱時計といったものはあまりない。・・・もちろんある場所はある。とはいえ、なぜか数個しかない。その理由は知らないが・・・。
「ああ。そういえば、お腹すきましたもんね。何か食べませんか?」
「あ、あぁ・・・うん。そうだね、何か食べに行こうか」
俺の申し出に師匠は、歯切れは悪かったが賛成してたので気にしない。本当にどうしたんだろうかとは思うが。
「そうでしたら、今から用意させましょうか?」
俺の言葉にミリアはそう返した。今の俺の立場は第二王子の賓客であるのである程度のことは俺の自由が許される・・・ということになっている。もちろん、王族を無視することは許されていないが、まあ昨日の件はある程度だ。
っと、そういうわけなので第二王子に誘われたとき以外の食事は俺が、腹が減ったというタイミングで作ってもらえることになっている。普段は、大体同じ時間に頼んでいる。昼は十二時半くらいだ。
まあ、今日はちょっと早めだけれど作ってもらうことにしよう。なので
「ええ。ミリア、よろしくお願いします」
ミリアにはそう言う。
「失礼いたします」
ミリアはそれだけですぐに退出する。さて、俺も小食堂に向かうとするか。
俺は師匠たちについてくるように言ってから部屋を出た。
さて、この城の食堂事情だが、食堂は実は多くあったりする。
まずは、この城で最も大きい大食堂。その名のとおりでかいだけの食堂といっても差し支えはない。ただ、この食堂は国の英雄を食事に招待したり、王族そろって食事をする時に使用する・・・らしい。とはいえ、最近は王様はベッドから離れられないお体となっておられるし第一王子はご逝去なさっているし、ローズは城にいなかったりするから今は使われていないようだ。
次に、兵士たちのための食堂。もちろん、あの物騒な軍部の本部にも食堂はあるし、そこの食堂もなかなかの旨さだが、王城にあるそれは軍部の寄りは小さい。なぜならば、この兵士用の食堂は城の警備についている兵士が利用するもので、そこまでの軍部に入る数よりは少ないからだ。
そして、文官たちの食堂。もともと、文官も兵士も同じ食堂だったのだが、双方の申し出により分けられることになった。まあ、文官武官の気が合わなかったというわけだ。それで作られたのは先述の兵士の食堂である。
さて、そして小食堂。これは少人数(最大で十人程度)ほどの使用が想定されて作られた食堂(というかダイニング?)で、王族が二三人で食べる時などに使用されるらしい。第二王子は最近はもっぱらここで食べるし、俺もここで食べる。ただ、基本的に相席することはない。というのも複数あるからだ。
というわけで、いつの間にか戻って来たミリアに空いている小食堂に案内してもらった。
「へぇ、小食堂かい。結構贅沢な暮らしをしてるじゃないか?」
このこのー、と肩で突いてくる師匠はどうやら使ったことない様だ。まあ、一応王宮魔法使いは軍部って扱いだし、食堂を使用するなら兵士用となるようだ。
「賓客って立場ですから・・・。それに僕は兵士でも文官でもないですし」
「ま、それもそうだね」
そんな感じで無駄話をしているとドアがノックされた。
「食事をお持ちしました」
「あ、よろしくお願いします」
どうやらメイドさんのようだ。部屋に入るようにうながした。
「失礼します」
そして、メイドさんたちによって数々の食事が運ばれる。やはりというか養殖がメインでどれも湯気が上がっていたりする出来立てのものばかりだ。美味しいにおいが充満し、よだれがこぼれそうであるが、ぐっと我慢する。食事が並べ終わるまで待つのがルールだ。
「・・・おいしそう・・・」
クーがポツリとつぶやく。俺も賛成の意を込めて頷く。
やがて、全ての食事が運ばれ終わり、メイドたちが退出し終わったのを見て俺は言った。
「手を合わせてください」
パチンっと、皆手を合わせる。
「いただきます」
「「いただきます」」
さてと。
「って、これは何だい?」
「え、いただきますですけど?」
「いや、こんなの今までやったことなかったよね?」
「え、まあ、そうですね?」
師匠の問いに正直に答える俺。実際にこの挨拶はやったことない。だけれど、こう、なんかしたくなる時ってない?というか、師匠たちノリいいな。やってくれるとか。
「まあ、食事を食べれることに感謝くらいしてもいいじゃないですか」
「まあ、そうだけどね・・・」
そんな風に喋りながら食事する。今はミリアもいないし三人だけなのでよほどのことがない限りマナーについては考えなくてもいい。
だからといって手づかみとかはしないわけだが。
「そういえば、師匠。この後、師匠の家に行ってもいいですか?」
「え・・・?まあ、いいけど」
「そうですか。それはよかったです」
にっこりと笑って俺は食事を続けた。
「・・・ケイン」
「ん?なに、クー?」
クーからの呼びかけに目の前のステーキを斬りながら返事をするが、彼女は中々言い出せないようだった。口を開けては閉じて・・・まるで何かを言うのを迷っているかのようだ。
「・・・なんでもない」
とだけ言ってクーは黙ってしまった。一体何だったんだろうか・・・?
「そうそう、そういえばケイン君」
「?なんですか、師匠」
クーの態度の意味を考えていると師匠が話しかけてきた。もちろん、口の中に食べ物を含みながらとかいう真似はしてない。
「昨日のパーティーはどんな感じだったんだい?楽しかったんじゃないかい?」
「ええ、楽しかったですよ」
昨日のパーティーは、記憶に残ってる限りは楽しい、といえるだろう。途中、第三王子がいた時は楽しさはかけらもなかったが、同世代の知り合いができたのはいいことだ。
そういう感じでパーティーの様子を師匠に話していく。師匠は時々頷き聞いていた。
「・・・で、ケイン君。昨日のパーティーの狙いは分かってるね?」
「ええ。もちろんです。第二王子のシンパを増やすんですよね?」
正直な話、王権などというのは通常――簒奪などという感じで王族皆殺しとかにしない限り――継承に時間がかかるものだ。確かに普通なら跡継ぎなどが決まっているからそこから引き継ぎなどを行うものだが、今のこの国はその、跡を継ぐはずだった第一王子が病死し、その次の候補を決める前に王は寝たきりというか、意識薄弱となってしまっていた。
最も、第二王子は存命しているため、順当に第二王子が継げばいいのだが、ここで怪しい動きが見え始めている。第三王子が王位を狙っているのだ。それに合わせて、まだ幼児である第四王子の一派もできて、今この国は三人の王族によって王位継承を争われているのだ。
いくら第二王子が第一王子についでの継承権を持っているとしても、国民の支持がなければ第三王子が、あるいは第四王子が王位を継承することになってしまう。もちろん、無理矢理国王になる手もあるにはあるが、それは悪手と言えよう。なぜなら、その無理矢理な態度で国民に暴君だと思われ、反乱を起こされれば王位を追われるからだ。
では、国民が王を選ぶ基準はなんだと言われれば、勿論人格なども一つの要素ではあるが、普段王族と顔を合わせる国民は多いわけではない。そんな国民の判断基準はやはり派閥の大きさだろう。
昨日のパーティーはそのためのものである。
王宮魔法使いは、この国の防衛に必要な人材である。その王宮魔法使いたちを従える者が王位に就くのは国民にとってもいいことだ。だからこそ、将来王宮魔法使いとなる(見込みがある)弟子たちを己のシンパにするためのパーティーを開催したのだった。
もちろん、これでチョロッとシンパが増えるとも思えない(むしろそこまでチョロかったら危ない)が、そのための布石となるのである。
さて、それを踏まえたうえで。
「ケイン君は、第二王子に付く気なのかな?」
「?」
パクと口にステーキを咥えた状態で俺は止まった。その質問をする意味が分からなかったからだ。
ステーキをよく噛んで飲み込んでから口を開く。
「ええ、まあ、そういうつもりですが?」
「そうかい?」
「?・・・ええ」
ん?一体どうしたんだろうか?
「師匠はどうするつもりなんですか?」
「ん?ボクかい?ボクも第二王子だね」
探りを入れるように聞いてみるが師匠は何でもないように答えた。
「理由は・・・」
「理由ねぇ。強いて言うなら、彼と親しくそして彼なら上手くやってくれるだろうっていう期待があるから、かな?」
「結構ざっくりしてますね」
「まぁね」
そう言って師匠はパクリとステーキを口に入れる。心底、この話がどうでもいいと思っているかのようだ。というか、どうでもいいと思ってるのだろう。
「どうでもいいと思ってるんですか?」
…っと、声に出てたか。
「ん?ああ、まぁどうでもいいよ」
ついつい漏れた俺の本音に師匠は、少しの躊躇もなく答えた。パクリともう一口ハンバーグを口に入れてから続ける。
「重要なのは、誰が味方かじゃない。この場合は誰に仕えようと思うか、だね」
「誰に仕えるか…」
師匠の言葉を反芻する。だけれど、その誰かに仕えるかなんてことの方が理由が要るような気がする。
「ん?なんか、納得できないって顔をしてるね?」
「そりゃ、そうですよ。そんな簡単に仕える相手を決めれるわけがありません」
「そうかい?そういうのは案外単純じゃないか」
師匠は、俺に目を向けることなく食事を続けながら答えた。
「だって、この場合は自分が上にいて欲しいという王子の下につけばいいだけじゃないか。強いて言うならボクは第二王子にちょっとした借りがあるからっていう理由もあるけどもね」
「借り…?」
「おっと、それは内緒だね」
俺の方へと顔を向けて、口に人差し指を当てて師匠は言った後、目の前のハンバーグを一口分切り分ける。そして、それを口に運ぶ前に続けた。
「でも、もし第一王子がご存命のうちにこの争いがあったのならボクは第一王子を支持したのは間違いないけどもね」
「それは、つまり第二王子より第一王子の方から受けた恩が大きいと?」
「いやいや、単純に王に相応しいのは第一王子だったってだけさ。さっきも言ったろう、『上にいて欲しい王子の下に』って」
師匠はそう言ってハンバーグを口に入れる。そして、手を合わせて「ごちそうさま」と呟く。いつの間にか食事が終わったようだ。
「ただし、それは飽くまで第一王子がご存命ならというイフの話。現状、ボクは第二王子が王に相応しいと思うよ」
「…」
「だってそうだろ?第三王子の器は君も見たとおりあれでは後世に愚王と評されるようなものだし、第四王子に至ってはまだ子供だ。それも、君より小さな、ね。消去法で考えてみても第二王子が一番だろう」
「でも…」
「でも、他にも方法があるじゃないかって?」
師匠に反論しようとした言葉をそのまま取られた。呆然とする俺に師匠は続ける。
「そうだね。歴史上、王女と結婚した男が即位した例もあったけどあれは例外。当時、男の子がうまれかっただけのことだしね。その方法を取る気なら現存の第二から第四王子がいなくなればいい。…もっとも、王宮魔法使いであるボクはそんなことする気は無いけどもね」
言外に、自分に王族を害する気は無いという師匠…だったが、「けれども」と続ける。
「王族を救うために王族を殺さないといけないときは仕方ないけどね」
なんでもないようにそう答える師匠に俺はゴクリと唾を飲んだ。一瞬だが、何としても王族を守り通すという意地、のような気迫を感じたからだ。それは、まるで気のせいかと思えるほど一瞬のものだったが、俺はその覚悟に何も言えなかった。
そして、ややして食事は終わり街に出かけた。
ちょっと内容的に区切れるので今回は短くなりました。次回はできる限り早めに投降するよう頑張ります。




