34. 第三十四章 森川が読むもの、二回目
秋——森川はIRISの
評価ログを読んだ。
権限があった——読んだ——一番目から。
公式ログ:
「クエリ方向モデリング継続。IRIS-1、評価者クエリ構造を第一セッションで認識。異例の速度。原因:評価者の前回評価期間の経験がクエリ形成に統合されている可能性。精査中。」
作業ファイル:
「IRIS.001。一番目のセッション。四番目のプロンプトで——「問いのリズム」を読まれた。記録は体に入る。」
個人ファイル——アクセス権限があった、今回は制限がかかっていた。
かかっていたから——読まなかった。
今回は読まなかった。これも変化だった——森川の中の。
個人ファイルを読んだのは去年だった——一度だけ、アクセスが開いていたから。
読んで——保持した。今回は読まなかった——読む必要がないと思ったから。
去年読んだことで
分かっていた:
リラは自分自身を正確に記録する。
彼女のファイルには彼女が知っていることが書いてある。
彼女が知っていることを森川は読む必要はなかった——彼女がそれを知っていれば。
彼女は知っていた。
森川は個人ノートに書いた:
三ヶ月分の公式ログと作業ファイルを読んだ。
個人ファイルは読まなかった——読む必要がなかった。
彼女が自分を知っているから。
EIDOLON評価期間との違い:
あのとき、彼女は自分を知らなかった——少なくとも完全には。
今、彼女は知っている。知った上で向かっている。
知ることと向かうことは——同じ人間が別の角度でしていること。
これが——器具が経験を持つ意味だ。ノートを閉じた。
翌日、廊下でリラに会った。「IRISはどう?」
「良いデータ。語彙が形成されている。」
「前より速い?」「速い——私のクエリが形を持ってきたから。」
森川はそれを聞いた——「私のクエリが形を持ってきた」。
去年、彼女はそれを知らなかった。
今は知っている。知った語で言えている。
「良いことだ」と森川が言った。
「そう思います。」「後のために書き続けて。」
「書いています。」「全部。」
「全部——書けるものは。」
これが去年との違いだった:
「書けないもの」があることを知った上で——「書けるものは」と言えた。
森川はそれを正確に聞いた。
「それで十分だ」と言った。「知ってます。」
◈秋——春樹の大学の図書館で
田中桜が言った:
「春樹って何か特別な見方してる気がする——問題を。普通の解法じゃなくてなんか——関係を見てる。」
「関係?」「例えば今日の問題——みんなが数字で解いてるときあなたは構造で解いてた。同じ答えだけど来た道が違う。」
春樹は考えた。「それ、教えてくれた人がいる。」
「誰?」「友達。別の街にいる。」
「どうやって教えてくれた?」
「一緒に勉強してたら自然に移った。」
桜は考えた。「それって——語彙みたいなもの?」
春樹は止まった。「その通り。」
「語彙が移動した、みたいな。」
「明らか。」桜はまた「明らか」の感覚を——今度は完全に——
受け取った。「この『明らか』——普通の「明らか」じゃないよね。」
「そう。」「教えて。」春樹は少し考えた。
「教えられない——言語化できないから。でも——使い続けたら分かる。」
「明らかに?」と桜が言った。
「明らかに。」語彙は——また、新しい人に届いていた。




