介護の仕事なんか
受講料なし、とはまあ、言葉のアヤ。一旦は全額負担します。とりあえず、テキスト代と併せて『初任者研修』の費用を納めなければなりません。未経験の人間を雇い入れる引き替えに、そこの収益事業たる『初任者研修』を受けさせる。しかも、研修終了後には正規入社する必要がある。正規雇用になって一定のあいだ働けば、お祝いに『初任者研修』に掛かったお金をキャッシュバックしてくれる。だいたい上のようなパッケージディールでした。
わたしの場合、当該ホームに嫌気がさして研修終了と同時に再びハローワークのお世話になりに行ったので、キャッシュバックの特典を棒に振りましたけれども、でも、勤務初日から高齢者福祉の本当を目の当たりに出来たことが、かえってこんにちのテレジアと自分との為には祝福でした。『初任者研修』が無駄だとするネット上の書き込みが、いかに正確だったか思い知る期間──ホームでパート勤務した数か月は、そのような期間ともなりました。
なにせ、『初任者研修』で聞く授業と、ホームで見る実際と、あたかも天と地です。前者によれば、ホームで暮らす方々は大事なお客様、この国が今ある有難さを思う時、尊敬と感謝の念を捧げべき方々。その大事なお客様を遇するのに、後者はと言えば、「危ないから立たないで!座ってて!」と怒鳴る正規雇用の介護員たち。「毎日々々同じことを何回言わせるのよ、あなたは」と、尊敬と感謝を込めて、ホームでは“あなた”と呼ぶのでした。
「介護の仕事なんか、国語を運用する力を欠いた者でさえ務まるわざだ。それこそ、どこの誰にさせたって同じ。他には雇ってくれない落伍者に残された最後の道が介護の仕事であろう。賤業だ。底辺だ。一生あの賃金で働かせれば十分」と世間でも大方そう評価しているらしいゆえ、すすんで従事する人は多くない。なるほど、と今更のように頷かされます。
そんなホームと言い条、数か月にわたったOJTがせめてもの救い、対要介護者の場面で用いる基礎の色々を学びとる機縁となりました。




